誤解がもとで巻き起きる男女の恋愛騒動を描く、フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースのコンビによるスクリューボール・コメディ・ミュージカルの名作。 監督マーク・サンドリッチ、エドワード・エヴェレット・ホートン、ヘレン・ブロデリック、エリック・ローデス、エリック・ブロア他共演。 |
・ルシル・ボール / Lucille Ball / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:マーク・サンドリッチ
製作:パンドロ・S・バーマン
原作:ドワイト・テイラー
脚本
ドワイト・テイラー
アラン・スコット
撮影:デヴィッド・エイベル
編集:ウィリアム・ハミルトン
美術・装置
キャロル・クラーク
ヴァン・ネスト・ポルグラス
音楽
アーヴィング・バーリン
マックス・スタイナー
出演
ジェリー・トラヴァース:フレッド・アステア
デイル・トレモント: ジンジャー・ロジャース
ホレス・ハードウィック:エドワード・エヴェレット・ホートン
マッジ・ハードウィック:ヘレン・ブロデリック
アルベルト・べディーニ:エリック・ローデス
ベイツ:エリック・ブロア
花屋の店員:ルシル・ボール
エレベーターの男性/ダンサー:デニス・オキーフ
アメリカ 映画
配給 RKO
1935年製作 101分
公開
北米:1935年9月6日
日本:1936年1月29日
製作費 $609,000
北米興行収入 $1,782,000
世界 $3,202,000
■ アカデミー賞 ■
第8回アカデミー賞
・ノミネート
作品・ダンス監督・美術・歌曲賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ロンドン、”サッカリー・クラブ”。
アメリカ人ダンサーのジェリー・トラヴァース(フレッド・アステア)は、プロデューサーのホレス・ハードウィック(エドワード・エヴェレット・ホートン)のショーに出演予定だったため彼を待っていた。
現れたホレスは、ジェリーを呼んでホテルに向かおうとする。
ジェリーは、”静寂”が規則であるため気を遣っていたが、帰り際に思いきりステップを踏んでクラブのメンバーを驚かせる。
ホテルの部屋でジェリーは、ホレスの付き人である風変わりな男ベイツ(エリック・ブロア)を紹介される。
ジェリーは身を固めるようにとホレスに言われるが、自由な人生がいいと答えて躍り始める。
下の階の部屋で寝ていたデイル・トレモント(ジンジャー・ロジャース)は、その音で目が覚めてしまい、ホテルの支配人に苦情を言う。 支配人は、ホレスに電話をして下の階の女性のことを話す。 ホレスは苦情だと思わずに女性の部屋に向かうが、憤慨したデイルは上の階に向かう。 気分よく踊っていたジェリーは、ドアを開けて入って来たデイルに一目惹れしてしまう。 うるさくて寝られないと言われたジェリーは謝罪し、一人でいると踊りだしてしまう病気だと伝える。 その場を去ったデイルを追ったジェリーは、何とか彼女の気を引こうとするが相手にされない。 灰皿の砂を見てあることを思いついたジェリーは、戻ってきたホレスから苦情だったと言われる。 ジェリーは、部屋の床に砂を撒いて音をたてないようにして踊り、デイルは眠ることができる。 翌日ジェリーは、デイルに花を届ける手配をする。 デイルと出くわしたジェリーは、彼女が馬車で出かけることを知り御者に扮して彼女に近づく。 馬車を走らせながらステップを踏んでしまったジェリーは、デイルに自分だと気づかれてしまい、止めるよう指示される。 止め方がわからないジェリーは、彼女を何とか厩舎まで連れていく。 ジェリーと別れたデイルは、乗馬中に雨に降られてしまい、雨宿りしていた場所にジェリーが馬車で現れる。 考えられる限りの言葉でデイルへの気持ちを伝えたジェリーは、何とか心と心が触れ合うことができる。 ホテルに戻ったデイルは、イタリアのファッション・デザイナー、アルベルト・べディーニ(エリック・ローデス)が部屋にいることに気づく。 イタリア行きに乗り気でないデイルは、親友マッジ(ヘレン・ブロデリック)からの電報を受け、同じホテルに彼女の夫がいることを知る。 アルベルトの誘いを断り滞在延長を決めたデイルは、マッジの夫が滞在している部屋が真上の階だと知り驚く。 デイルは、ジェリーがマッジの夫だと思い、現れた彼を一方的に非難して殴ってしまう。 ジェリーに惹かれていたデイルは怒りが収まらず、アルベルトにアメリカに帰国する考えを伝える。 ホレスは、理由もわからずデイルに殴られたジェリーの件で警戒し、ベイツに彼女を監視させる。 デイルはジェリーを気にしながら旅立ち、彼女をベイツが追う。 ジェリーはデイルが発ったことを知り、ホレスと共に劇場に向かいステージに立つ。 第一幕が終わり楽屋にいたジェリーは、ホレスが読むマッジからの電報で、彼女がデイルの友人だと知る。 ジェリーは、翌日の飛行機で旅立つことをホレスに伝えてステージに向かう。 ヴェニス。 飛行機で到着したジェリーが自分に気づいたため、デイルは逃げ出してしまう。 マッジにデイルの居場所を聞いたジェリーは、彼女を知っているのかと言われる。 ジェリーにデイルを紹介しようとしていたマッジは、彼女に好印象を持っているようなので安心する。 ホテルが満室のため、ジェリーはホレスと新婚用の部屋に泊まることになる。 アルベルトは、ホレスがデイルを困らせている男だと思い込み、脅しをかける。 マッジと会えたホレスはデイルのことを聞かれ、まだ会ったことがないと答える。 デイルに、ホレスが会ったことがないと言っていたと伝えたマッジは、彼を陥れる(ジェリーを)と息まくデイルを止めようとしない。 ジェリーをマッジの夫と思い電話をしたデイルは、彼がいることを確認して部屋に向かう。 それをジェリーから知らされたホレスは、入浴中だったためにその場から出られない。 デイルは、ジェリーをからかうつもりで彼に迫るが、彼女の魂胆に気づいたジェリーはそれをかわす。 その様子を隣の部屋で聞いていたホレスは、思ったっ通りデイルが何か企んでいると考えるが、ジェリーは、即プロポーズすると言って出ていく。 部屋に戻ったデイルは意気消沈し、マッジとホレスの夫婦の関係を心配してやり過ぎたと後悔もする。 食事の時間となり、マッジとテーブルに着いていたデイルは、ジェリーが現れたため動揺する。 ジェリーとデイルが知り合いだったことを確認したマッジは、二人にダンスすることを勧める。 マッジは二人の仲を取り持つことを考えていたため、ジェリーに寄り添うようデイルに指示する。 デイルは、自分の夫と親密になるよう促すデイルの態度を不思議に思いながらジェリーと踊る。 踊り終えたジェリーは、芝居は止めて本音で話すことを提案し、デイルは正体を知っていることを伝える。 何も気にすることはないと言うジェリーは結婚を申し込み、デイルは、なぜこんな男を愛したのかと呟きながら再び彼を殴る。 デイルはその場を去るが、ジェリーは愛されていることで満足だった。 旅立とうとするデイルは、マッジに夫からプロポーズされたことを伝える。 マッジは驚きもせず、夫のことは何とかするので、良き相手を見つけるよう助言される。 そこにホレスが現れ、デイルのいる部屋のドアを閉めたマッジは彼を殴る。 部屋に戻ったホレスは、殴られた理由がわからないことをジェリーに伝える。 混乱するデイルは、ショーを成功させたアルベルトから結婚を申し込まれ、今すぐしてほしいと頼む。 ジェリーとホレスは、今夜、結婚する客のために部屋を交換してほしいとホテル側に言われて承諾する。 マッジに呼ばれたホレスは、今回の件を聞かれジェリーと共に説明を始める。 そこにデイルから電話が入り、マッジは、自分の忠告に従いデイルがアルベルトと結婚したことを知らされ驚く。 それを聞いていたジェリーは動揺し、マッジは、デイルに殴られたりしたホレスが悪いと言って彼を責める。 殴られたのはジェリーであり、彼は、デイルがホレスと自分を間違えていたことに気づく。 自分達がいた部屋にデイルがいることを知ったジェリーは、まだ鍵を持っていたため、革命を起こすと言ってその場に向かう。 アルベルトは、部屋でジェリーが待ち構えていたために驚き、一旦その場を離れる。 ジェリーはホレスと共に、デイルの部屋の真上の部屋に向かう。 ホテル側に、部屋に男がいたと抗議したアルベルトは警戒する。 天井からステップの音が響き始め、デイルはそれが”ホレス”の仕業であると言って、アルベルトに止めさせようとする。 アルベルトが現れるだろうと考えたジェリーは、ステップをホレスと交替してデイルの部屋に向かう。 デイルは、アルベルトが剣を持ってホレスの元に向かったことをマッジに知らせる。 アルベルトは、ホレスの部屋に入り彼を脅す。 ジェリーは、今回の件は誤解だと言ってデイルに説明を始める。 ホレスはアルベルトに剣を向けられるが、そこに現れたマッジは、自分が夫を殺すのでやめてほしいと頼む。 ジェリーとデイルはゴンドラに乗り、誤解が解けた二人はその場の雰囲気を楽しむ。 アルベルトも真相を知るが、そこにゴンドラを漕いでいたベイツが現れ、ジェリーとデイルが流されたことを伝える。 ホレスとマッジ、そしてアルベルトはジェリーとデイルを捜すものの見つからず、燃料切れになってしまう。 ホテルに戻ったジェリーとデイルは、皆に説明しに行こうとするが、デイルが一人で向かう。 ベイツは、捜しに行ったホレスらのボートの燃料を抜いておいたため、今夜は戻らないことをジェリーに知らせる。 邪魔が入らなくなったジェリーは、デイルとの時を楽しむ。 漁船に救ってもらったホレスらはホテルに戻り、マッジはアルベルトが激怒していることをジェリーとデイルに知らせる。 デイルと共にアルベルトの元に向かったジェリーは説明を始めるが、ホレスがベイツの話を伝える。 マッジはベイツに直接話すよう指示し、彼は、デイルを監視して様々な変装をしたのだが、今日は、結婚式の神父に扮していたため、その結婚は成立しないことを話す。 それを聞いたジェリーは、アルベルトに部屋を間違っているのではないかと問う。 そして、めでたく結ばれたジェリーとデイルは、愛を確かめ合い軽やかなステップを踏む。
...全てを見る(結末あり)
マッジに会ったデイルは、彼女の夫がジェリーだと思いながら話をする。
*フレッド・アステア/ジンジャー・ロジャース 共演作
・「空中レヴュー時代」(1933):RKO
・「コンチネンタル」(1934):RKO
・「ロバータ」(1935):RKO
・「トップ・ハット」(1935):RKO
・「艦隊を追って」(1936):RKO
・「有頂天時代」(1936):RKO
・「踊らん哉」(1937):RKO
・「気儘時代」(1938):RKO
・「カッスル夫妻」(1939):RKO
・「ブロードウェイのバークレー夫妻」(1949):MGM
*(簡略ストー リー)
ロンドン。
アメリカ人ダンサーのジェリー・トラヴァースは、プロデューサーのホレスとホテルに向い、部屋でステップを踏み始める。
その音がうるさくて眠れない下の階のデイル・トレモントは、ジェリーに苦情を言う。
デイルに一目惚れしてしまったジェリーは、彼女の気を引こうとするものの相手にされない。
その後、ジェリーの気持ちに根負けしたデイルだったが、ジェリーが親友マッジの夫だと勘違いしてしまう。
ショックを受けたデイルは、ファッション・デザイナーのアルベルトと共に旅立つ。
その頃ジェリーは、マッジとデイルが親しい間柄だと知り、ホレスと共にデイルを追いヴェニスに向かうのだが・・・。
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RKOの名コンビ、フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースの4作目の共演作。
(10作で共演)
二人とは5作で組むマーク・サンドリッチの軽妙且つパンチの効いた演出により、このコンビの最高作との評価も得た。
その結果、北米興行収入で約1億7800万ドル、全世界では約3億2000万ドルの大ヒットとなった。
スクリューボール・コメディ・タッチの展開を一捻りさせ、観客をイライラさせながら画面に引き込むマーク・サンドリッチの演出は絶妙で、コメディとしての質も非常に高い仕上がりとなっている。
加えて言うまでもなく、フレッド・アステアとジンジャー・ロジャース優雅なダンスと歌、素晴らしい衣装、そして夢の国の様なセットなども素晴らしい出来栄えで、大恐慌による不況が続く中、人々の心を癒したことが想像できる。
第8回アカデミー賞では、作品、ダンス監督、美術、歌曲賞にノミネートされた。
1990年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
アカデミー歌曲賞にノミネートされた”Cheek to Cheek“他のアーヴィング・バーリンの楽曲、マックス・スタイナーの優雅な曲の印象的だ。
また、ウディ・アレンの「カイロの紫のバラ」(1985)やフランク・ダラボンの「グリーンマイル」(1999)で本作がオマージュ的に使われるなど、国民に愛されている名作であることも確認しておきたい。
常に陽気で前向きなダンサー、無駄のない動作や軽快なステップで楽しませてくれるフレッド・アステア、華麗な衣装に身を包む、軽やかな身のこなしと美しさで画面を占領するジンジャー・ロジャース、間の抜けたプロデューサー役がはまっているエドワード・エヴェレット・ホートン、その妻で、夫を手玉に取るヘレン・ブロデリック、ファッション・デザイナーのエリック・ローデス、プロデューサーの付き人として笑わせてくれるエリック・ブロア、そして、花屋の店員でルシル・ボール、ダンサーなどでデニス・オキーフが端役出演している。