精神科医が親友の婚約者に催眠治療をしたために巻き起こる騒動を描く、フレッド・アステア、ジンジャー・ロジャースのコンビによるミュージカル・コメディ。 監督マーク・サンドリッチ、音楽アーヴィング・バーリン、ラルフ・ベラミー、ルーラ・ギア、ジャック・カーソン他共演。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:マーク・サンドリッチ
製作:パンドロ・S・バーマン
原案
マリアン・アインスリー
ガイ・エンドア
脚本
アラン・スコット
アーネスト・パガノ
ダドリー・ニコルズ
ヘイガー・ワイルド
撮影:ロバート・デ・グラス
編集:ウィリアム・ハミルトン
美術・装置:ヴァン・ネスト・ポルグレイス
作曲:ヴィクター・バラヴァリー
音楽:アーヴィング・バーリン
出演
トニー・フラッグ:フレッド・アステア
アマンダ・クーパー:ジンジャー・ロジャース
スティーブン・アーデン:ラルフ・ベラミー
コーラ・クーパー:ルーラ・ギア
トーマス・コナーズ:ジャック・カーソン
ジョー・トラヴァース判事:クラレンス・コルブ
ロナルド・ハンター:フランクリン・パングボーン
パワーズ医師:ウォルター・キングフォード
アダムス:ケイ・サットン
メイド:ハティ・マクダニエル
アメリカ 映画
配給 RKO
1938年製作 83分
公開
北米:1938年9月2日
日本:1939年9月
製作費 $1,253,000
北米興行収入 $1,731,000
■ アカデミー賞 ■
第11回アカデミー賞
・ノミネート
美術・歌曲・音楽賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
医療基金病院。
精神科医のトニー・フラッグ(フレッド・アステア)は、親友のスティーブン・アーデン(ラルフ・ベラミー)が酔って現れたため、恋人でラジオ歌手のアマンダ・クーパー(ジンジャー・ロジャース)に再び婚約を解消されたのかを尋ねる。
トニーは、アシスタントのトーマス・コナーズ(ジャック・カーソン)と共に、アマンダと結婚したいと言うスティーブンの悩みを聞いてあげる。
アマンダの考えが理解できないスティーブンは、診察を受けさせたいとトニーに伝えて予約を確認する。
翌日、待合室にいた美しいアマンダに気づいたトニーは、パワーズ医師に呼ばれたため彼女をオフィスに遺して席を外す。 録音装置が作動してしまい、トニーの患者に対しての診察結果を聴いたアマンダは、その内容に苦笑する。 ところが、トニーが自分を”意思の弱い愚かでどうにもならない女”とパワーズに話した内容を聴き憤慨して立ち去ろうとする。 そこにトニーが戻り、話をしたいと言われたアマンダは、仕方なく彼の椅子に座り様子を窺う。 自分の心を探ろうとするトニーから、アマンダはどんな夢を見るのかを聞かれる。 夢は見ないと答えるアマンダは協力する気がないため、トニーの不満げな彼を無視してその場を去る。 カントリークラブに向かったトニーはスティーブンと会い、その場にいたアマンダの叔母コーラ(ルーラ・ギア)を紹介される。 アマンダが怒って口もきいてくれないとスティーブンに言われたトニーは、彼女は、当初は大人しくて次第に攻撃的になると伝える。 コーラは、アマンダがトニーをヤブ医者だと言っていたことを知らせる。 その場にいたジョー・トラヴァース判事(クラレンス・コルブ)を紹介されたトニーは、その後、ゴルフの練習を始める。 そこにアマンダが現れたため気になって練習にならないトニーは、彼女に嫌みを言われてしまう。 ダンスの心得があるトニーは、ハーモニカを吹きながらステップを踏み、アイアンとウッドのショットも決めるが、アマンダは姿を消していた。 その後トニーは、サイクリングをしていたアマンダ、スティーブン、コーラに合流する。 トニーが自分と話をしたいらしいと言ってスティーブンとコーラと別れたアマンダは、昨日はなぜ急に不機嫌になったかをトニーに聞かれる。 アマンダは録音した言葉を聴いてしまったと答え、それは出会う前に思ったことだと言ってトニーは弁解する。 一応、許すと言ったアマンダは、結婚のことなどをトニーが口にしたため動揺し、坂道でスピードを上げる。 トニーはチェーンが外れてしまいブレーキをかけられなくなり、道を外れて転倒する。 アマンダはトニーを気遣い、二人はそれをきっかけにして打ち解ける。 その夜、カントリークラブでアマンダとダンスをしたトニーは、スティーブンとうまくやってもらいたいために夢を見る方法を考えたことを伝え、彼女も努力してみると答える。 トニーとアマンダの様子を見たコーラは、二人がいい雰囲気であることをスティーブンに伝える。 食事をした4人だったが、食べ過ぎたスティーブンは気分が悪くなり、トニーが送って行く。 アマンダだけは元気で、トニーに薬を頼まれたトーマスは、リラックスできると言ってそれを部屋にいたコーラに飲ませてしまう。 トーマスからベッドに横たわるよう指示されたコーラは寝室に向い、ソファーで眠ってしまう。 ベッドで眠っていたアマンダは、トニーとの夢を見て目覚める。 素晴らしい夢を見たと言ってそれをコーラに語ったアマンダは、最高の男性に出会ったことを伝える。 迎えに来たスティーブンと共にトニーのオフィスを訪ねたアマンダは、最高の夢が見れたと話す。 スティーブンに席を外してもらったトニーは、特別な人に会えた様子のアマンダの夢の相手を尋ねる。 アマンダが話せないと言うため診察を終えたトニーは、次の予約を取ろうとする彼女に今回で終了だと伝える。 全てを打ち明けることができる医師を紹介すると言うトニーは、他の医師では嫌だとアマンダに言われる。 スティーブンに頼まれて診察をしたが、異常は見当たらないとトニーに言われたアマンダは、仕方なく全てを話そうとする。 アマンダはテーブルの上にあった雑誌の表紙をヒントに、11年振りに見たというのは”赤ずきん”とオオカミの夢だったと伝えて、適当に脚色して話し始める。 パワーズ医師を呼び席を外したトニーは、待合室のスティーブンと現れたパワーズに、アマンダの異常が確認できたと伝え、調節不良症だと診断する。 アマンダの症状が悪いことが分かり治し甲斐があると言って喜ぶトニーとパワーズだったが、スティーブンは二人の会話が理解できない。 パワーズにアマンダの病状を聞いたスティーブンは、あらゆるところが悪い重症だと言われる。 トニーは催眠治療をして潜在意識を探ることをアマンダに伝え、パワーズの部屋に向かう。 アマンダは軽い麻酔で眠り、思うことを話してみるようにとトニーに言われる。 抱きつこうとされたため驚いたトニーは、暫くこのままの状態にしておこうと考え、パワーズと共に結果に期待しながら部屋を出る。 落ち着かないスティーブンはコーラからの電話を受けて、アマンダのラジオ出演の時間が迫っていると言われる。 トニーのオフィスに誰もいないため、隣の部屋で寝ていたアマンダを起こしたスティーブンは、朦朧としてふざける彼女をラジオ局に連れて行こうとする。 タクシーに乗せられたアマンダは、それを降りてしまい通りを歩く。 アマンダを見失ってしまったスティーブンは追って来たトニーから、麻酔がかかった彼女は何をするかわからないと言われる。 ガラスを運ぶトラックに興味を示したアマンダは、警官の警棒を借りてそれを投げてしまい、ガラスを割りその場から逃げる。 何とか放送に間に合ったアマンダは、本番で大失態を演じ、現れたトニーとスティーブンが彼女をその場から連れ出す。 番組スポンサーに呼び止められたアマンダは訴えると言われ、それに対応したトニーとスティーブンだったが、警官とガラス屋も現れる。 トニーは、アマンダが自分の患者だと言ってスティーブンが弁償することを警官に伝える。 トラヴァース判事に呼ばれたトニーは弁解して、判事は友人としてアマンダに意見して治療を止めさせようとする。 トニーはそれに反対するが、アマンダを実験材料のように扱った場合は許さないと判事に警告される。 その夜、カントリークラブに向かったアマンダは、トニーに恋したことをコーラに伝えて驚かせる。 トラヴァース判事との食事のテーブルに着く前にアマンダは、トニーを強引にダンスに誘う。 しかし、演奏が終わってしまい、バンド・リーダーと交渉したアマンダは、歌うことを条件に演奏してもらう。 アマンダはトニーと踊り、他のクラブ・メンバーも踊り始める。 スティーブンは嫉妬したことをアマンダに伝え、彼女は恋をしたことについて話そうとする。 その相手が自分であり、遂に幸せな結婚ができると確信したスティーブンは、トニーとコーラにそれを伝えようとする。 興奮するスティーブンから、アマンダが結婚する気になったと知らされたコーラは、事態が混乱し始めたことに戸惑う。 スティーブンからトニーと踊る許可を得たアマンダは、愛してしまったことをトニーに伝える。 戸惑うトニーとスティーブンとは結婚できないと言うアマンダは、解決策が見つからないまま席に戻る。 スティーブンは、アマンダと共に翌日オフィスに来てほしいとトニーに頼まれる。 診察は終わったと言うスティーブンだったが、アマンダはそれに同意し、トニーからぜひともと頼まれて承知する。 翌日、スティーブンは用があり来られなかったため、代わりに付き添ったコーラは席を外し、トニーはアマンダと話をする。 ”赤ずきん”の話が嘘だったことを確認したトニーは、自分の夢を見て恋をしたことをアマンダに確かめる。 信頼が生じたことにより恋と勘違いしていると語るトニーは、悲しそうな表情で考えこむアマンダに優しく接する。 自分を信頼するかを確かめたトニーは、アマンダを隣の部屋に連れて行きリラックスさせる。 特殊なライトを前にしてトニーにそれを見つめるよう言われたアマンダは、催眠術をかけられる。 スティーブンを愛して結婚し、トニーは酷い男であり愛していない・・・そしてトニーも自分を愛していない・・・。 後悔しながら直ぐに戻ると言ってトニーは席を外すが、アマンダも部屋を出てしまう。 もう一人の自分から、正直にアマンダに対し愛を伝えるよう言われたトニーだったが、彼女が車に乗りコーラと共にスティーブンの元に向かったことに気づきそれを追う。 カントリークラブに着いたアマンダは、クルー射撃をしていたスティーブンに寄り添う。 アマンダは、トニーの悪口を言いながら銃を放ち、トラヴァース判事の射撃の邪魔をしてしまう。 現れたトニーに銃を向けたアマンダは発砲してしまい、その場は騒動になる。 トニーはアマンダが催眠状態だとスティーブンに伝え、尚も発砲してくる彼女に近づき目覚めさせて騒ぎは収まる。 アマンダが自分を憎んでいるとスティーブンから知らされたトニーは、もう一度催眠術をかけると言って、彼女を愛していることをスティーブンに伝える。 暗示したことを取り除き、自分かスティーブンのどちらかをアマンダに選ばせると言うトニーは、失敗したら彼女は一生、不幸な結婚をすると話す。 そして自分は嫌われ続けると言うトニーに、友人としての気持ちは変わらないことを伝えたスティーブンは、アマンダから手を引くことを決める。 ところが、トラヴァース判事に説明を求められたスティーブンは、トニーが行ったことを卑劣だと言って避難し、二度とアマンダに会えないようにして欲しいと判事に訴える。 判事がそれを認めたため、トニーは困惑してしまう。 その夜、アマンダとスティーブンの結婚式前夜のパーティーが行われ、トラヴァース判事は祝辞を述べるが、コーラはこの結婚に納得がいかない。 現れたトニーはアマンダをダンスに誘うが、スティーブンがそれを拒み彼女もトニーを嫌う。 諦めないトニーは、コーラと踊りながらアマンダに近づき歌う。 外の空気が吸いたいと言うアマンダと共にその場を離れたスティーブンは、長距離電話がかかってきたため彼女を一人にする。 電話はスティーブンを誘い出すためにトニーが仕組んだことで、トーマスがホノルルの記者に扮し電話ボックスから対応する。 その間にアマンダに近づいたトニーは、踊りながら彼女に催眠術をかけようとする。 電話ボックスのトーマスに気づいたスティーブンは、トニーの企みを知りアマンダの元に戻る。 スティーブンは朦朧とするアマンダを目覚めさせて、トニーは、彼女がスティーブンに抱き付いたため、計画が失敗したと考える。 翌日、結婚式を前に、コーラはスティーブンが見張っていることをトニーに伝え、窓から入るように指示する。 アマンダの意識を失わせるためには時間が足りないと考えるトニーは、殴ればいいとトーマスに言われる。 窓から侵入した部屋にスティーブンがいたためそれを逃れたトニーは、アマンダの部屋に向い彼女を殴ろうとする。 それができないと言うトニーだったが、押入って来たスティーブンが彼に殴り掛かり、パンチがアマンダの顔面を捉えてしまう。 スティーブンを抑え込むトーマスは、今の内に催眠術をかけるようトニーに指示する。 トニーは、自分がアマンダを愛しているという暗示をかける。 そして結婚式は始まり、トニーとアマンダが新郎新婦として現れたため、トラヴァース判事は驚いてしまう。
...全てを見る(結末あり)
*フレッド・アステア/ジンジャー・ロジャース 共演作
・「空中レヴュー時代」(1933):RKO
・「コンチネンタル」(1934):RKO
・「ロバータ」(1935):RKO
・「トップ・ハット」(1935):RKO
・「艦隊を追って」(1936):RKO
・「有頂天時代」(1936):RKO
・「踊らん哉」(1937):RKO
・「気儘時代」(1938):RKO
・「カッスル夫妻」(1939):RKO
・「ブロードウェイのバークレー夫妻」(1949):MGM
*(簡略ストー リー)
精神科医のトニー・フラッグは、親友のスティーブンから相談を受ける。
恋人でラジオ歌手のアマンダから婚約を解消されたスティーブンは、彼女の考えが理解できないため診察してほしいことをトニーに頼む。
アマンダに会ったトニーだったが、彼女を批判した録音を聴かれてしまう。
それを知らないまま、トニーはアマンダの潜在意識を確かめるために見る夢の内容を聞くが、夢は見ないと言う彼女は気分を害して立ち去る。
アマンダがなぜ不機嫌になったのか理解できないまま、トニーは何んとか彼女の夢の内容を聞き出そうとする。
その後アマンダは、見た夢の中でトニーに恋してしまい、それを知ったトニーは、彼女に催眠術をかけてスティーブンとの結婚を成立させようとするのだが・・・。
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RKOの名コンビ、フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースの8作目の共演作。(10作で共演)
製作のパンドロ・S・バーマン、監督マーク・サンドリッチ他、前年の「踊らん哉」(1937)とほぼ同じスタッフ、同作の主演者フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースにより製作された作品。
医療施設とは思えないような病院内やオフィスの豪華なセットなど、大袈裟なマーク・サンドリッチの演出もいかにも当時のハリウッドらしくていい。
また、カントリークラブでの出来事などで優雅な気分を味わえる。
第11回アカデミー賞では、美術、歌曲、音楽賞にノミネートされた。
オスカー候補になった、アーヴィング・バーリンの楽曲も実に心地よい。
フレッド・アステアが精神科医であるという設定が興味深くとても愉快であり、ダンスの心得もある医師が、ゴルフの腕前を見せる場面なども楽しい。
催眠状態になり悪戯をする姿も可愛らしいジンジャー・ロジャースは、茶目っ気のある役柄を見事に演じ、フレッド・アステア以上の熱演を見せる。
主人公の親友で恋人に翻弄されるラルフ・ベラミー、ヒロインの叔母ルーラ・ギア、主人公のアシスタントのジャック・カーソン、判事のクラレンス・コルブ、カントリークラブの職員フランクリン・パングボーン、医師ウォルター・キングフォード、主人公の秘書ケイ・サットン、そしてヒロインのメイド役でハティ・マクダニエルなどが共演している。