マリー・キュリーの次女エーヴが、1937年に発表した母マリーを題材にした伝記”Madame Curie”を基に映画化されたヒューマン・ドラマの秀作。 キュリー夫妻の偉業と夫婦愛を描く、監督マーヴィン・ルロイ、主演ウォルター・ピジョン、ヘンリー・トラヴァース他共演のドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:マーヴィン・ルロイ
製作:シドニー・フランクリン
原作:イヴ・キュリー
脚本
ポール・オズボーン
ハンス・ラモウ
撮影:ジョセフ・ルッテンバーグ
編集:ハロルド・F・クレッス
美術・装置
セドリック・ギボンズ
ポール・グロース
エドウィン・ブース・ウィリス
ヒュー・ハント
音楽:ハーバート・ストサート
出演
グリア・ガーソン:マリー・キュリー/マリア・スクウォドフスカ
ウォルター・ピジョン:ピエール・キュリー
ヘンリー・トラヴァース:ユージーン・キュリー
メイ・ウィッティ:ユージーン・キュリー夫人
アルバート・バッサーマン:ジャン・ペロー教授
ロバート・ウォーカー:デヴィッド・ルグロー
C・オーブリー・スミス:ケルヴィン卿(ウィリアム・トムソン)
レジナルド・オーウェン:アンリ・ベクレル
ヴァン・ジョンソン:記者
マーガレット・オブライエン:イレーヌ・キュリー
アメリカ 映画
配給 MGM
1943年製作 124分
公開
北米:1943年12月16日
日本:1946年2月14日
■ アカデミー賞 ■
第16回アカデミー賞
・ノミネート
作品
主演男優(ウォルター・ピジョン)
主演女優(グリア・ガーソン)
撮影(白黒)・美術(白黒)
作曲(ドラマ/コメディ)・録音賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1894年、パリ、ソルボンヌ大学(現パリ大)。
ジャン・ペロー教授(アルバート・バッサーマン)の講義を真剣な眼差しで聞く女子学生マリア・スクウォドフスカ(グリア・ガーソン)は、空腹のあまり倒れてしまう。
マリアに食事をさせたペローは、物理学と数学にしか興味がないせいで、友達もいない彼女が、将来は故郷ポーランドのワルシャワに戻り教師になるのが夢だと知る。
マリアに無限の才能を感じたペローは、彼女を金属の磁気性を調べる研究者として、工業団体に推薦することを決める。
そしてペローは、研究室の科学者で物理学の教員ピエール・キュリー(ウォルター・ピジョン)をマリアに紹介する。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
ポーランド出身で、ソルボンヌ大学に通う苦学生のマリア・スクウォドフスカは、ペロー教授にその才能を見出される。
学問一筋であり友人もいないマリー(マリア)は、ペローに科学者ピエール・キュリーを紹介され共同で研究実験をすることになる。
学生と科学者の二人は、お互いを意識する余裕もなかったのだが、やがて二人は尊敬し合い、ピエールはマリーに好意を抱き始める。
そんな時二人は、アンリ・ベクレル博士が偶然に発見したピッチブレンドから放たれる未知の光線の存在を知る。
その後、卒業を控えたマリーは故郷に帰ることになり、ピエールはそれを阻止して彼女に求婚する。
二人は新婚旅行の中でも、新元素のことを意見し、そして、その研究実験に全てを捧げる決意をする・・・。
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前年の「心の旅路」(1942)でグリア・ガーソンと組み、同作で自身もアカデミー賞候補になった、マーヴィン・ルロイによる、キュリー夫妻の偉業と夫婦愛を描いたドラマ。
終戦後(第二次大戦)、アメリカから輸入再開された最初の作品で、日本では1946年2月に公開された。
不屈の努力と、人間の無限の精神力を力強く描きながら、戦時中ということもあり、人々に安らぎも与える描写も散りばめた、マーヴィン・ルロイらしい演出は冴える。
第16回アカデミー賞では、作品賞他、主演男優(ウォルター・ピジョン)、主演女優(グリア・ガーソン)、撮影(白黒)、美術(白黒)、作曲(ドラマ/コメディ)、録音賞にノミネートされた。
主人公キュリー夫妻の人柄や、努力の様子はもとより、苦難の連続の実験過程の描写などは、まるで教育映画を見ているようで、普段科学に接する機会のない者にも、非常に分かり易く描かれている。
ハーバート・ストサートの感動を盛上げる音楽も印象に残る。
夫妻で受賞するノーベル物理学賞は、二人が執念でその存在を証明することになるラジウム発見の偉業に対してではなく、放射能の研究が受賞の理由となっている。
1911年にマリーが再び受賞するノーベル化学賞は、ラジウム及びポロニウムの発見とラジウムの性質とその化合物の研究が受賞理由。
前年の「ミニヴァー夫人」(1942)でも夫婦役を演じたグリア・ガーソンとウォルター・ピジョンは、共に2年連続でアカデミー主演賞候補となった。
*グリア・ガーソンは「ミニヴァー夫人」で受賞。
学問にしか興味がなく、前半きつい感じのするグリア・ガーソンが、後半は夫の愛を受け温和な表情に変わっていくのに対し、実直で内気な夫ウォルター・ピジョンが、妻の才能を大学側に評価させるために、声を荒らげて抗議する力強い演出も興味深い。
「ミニヴァー夫人」(1942)の方が作品としての出来は良いとは思うが、同作は戦意高揚、反ナチスをあからさまに掲げたプロパガンダ映画としての価値が、当時の世情を反映し評価されたという意味では、その時期に、人間の持つ強い意志と深い愛をストレートに描いた本作を高く評価したい。
主演の二人の他、こちらも「ミニヴァー夫人」で揃ってアカデミー助演賞候補になった、主人公の両親役ヘンリー・トラヴァースとメイ・ウィッティ、の他、主人公達の偉業のきっかけを作るアンリ・ベクレル博士を演ずるレジナルド・オーウェンも同作の共演者だ。
恩師役のアルバート・バッサーマンや、偉大なる科学者ケルヴィン卿を演ずるC・オーブリー・スミス、大ベテラン二人の演技で重厚なドラマとなった。
また若手として、ピエールの助手役のロバート・ウォーカーや記者ヴァン・ジョンソン、当時6歳のマーガレット・オブライエンが、後にノーベル化学賞を受賞するマリーの娘イレーヌ・キュリーを可愛らしく演じている。