シリルは黙って聞いていた。
ヘンリエッタ・ハーディング伯爵夫人(ジーナ・マッキー)を迎えたシリルとレイノルズは、ドレスを試着してもらい満足する彼女に感謝される。
その夜、レストランでシリルと待ち合わせたレイノルズは、ジョアンナにドレス渡して出て行かせることを提案される。
納得したレイノルズは、最近、自分の心が乱れることを話し、よく考える母が夢に現れたり香りが漂う気がして、近くにいるのを強く感じるとシリルに伝える。
死者に見守られていると心安らぎ、不気味には思わないと話すレイノルズは、別荘に行くことを提案するシリルから、自分も明日、向かうと言われる。
いい考えだと伝えたレイノルズは、愛車”ブリストル405”で海辺の町に向かう。
夜が明けて、ヴィクトリア・ホテルのカフェに寄ったレイノルズは、ウエイトレスのアルマ・エルソンに興味を持つ。
注文を聞きにきたアルマに”ウェルシュ・ラビット”など数品を伝えたレイノルズは、注文を覚えたかを彼女に尋ねて、そのメモをもらっておくと言って微笑む。
食事を運んだアルマは、他に用はあるか尋ねて、レイノルズから夕食を一緒にと言われる。
その誘いを受けたアルマからメモを渡されたレイノルズは、彼女の名が書かれていることを確認する。
その夜、アルマと共にレストランに向かったレイノルズは、”本当の顔が見たい”と言って彼女の口紅を落とす。
母のことを訊かれて話したアルマは、レイノルズの母はどこにいるか尋ねる。
芯地の中にいると言うレイノルズは、その意味を訊かれ、上着の芯には何でも縫い込めて、秘密やコイン、言葉、メッセージなどだとアルマに伝える。
子供の頃、服の裏地に様々なものを隠すことを覚えたと言うレイノルズは、自分しか知らない胸の部分に母の髪の毛を入れているので、いつもそばにいれると話す。
レイノルズは、自分に仕事を教えてくれた素晴らしい女性なので、離れないようにしているとアルマに伝える。
アルマを別荘に連れて行ったレイノルズは、再婚時に自分が作ったウェディングドレスを着た母の写真を見せる。
父はその何年か前に亡くなり、ドレス作りを手伝ってくれたのが姉のシリルだとレイノルズは話す。
ドレス作りを手伝うと結婚できないという迷信があると言われたアルマは、シリルが結婚しているかを尋ねる。
していないと答えたレイノルズは、自分が結婚しない理由を訊かれ、ドレスを作るのが仕事で独身主義者だとアルマに伝える。
結婚で偽りの自分になりたくないと話すレイノルズは、アルマから強いふりをしている言われる。
それを否定して自分は強いと伝えたレイノルズは、誰に対してか訊かれる。
他人からの期待や思い込みによって苦悩が生まれると話すレイノルズは、手伝ってもらいたいことがあると言って、アルマに服を脱いでもらう。
アルマを台の上に立たせたレイノルズは、彼女に合うドレスの仕立てを始めて、生地の色を選び採寸をしようとする。
そこに現れたシリルに挨拶したアルマは、不躾な彼女の態度に戸惑う。
採寸を始めたレイノルズが計るサイズをシリルがメモし、胸が小さ過ぎることなどを気にするアルマに対し、完璧だと言うレイノルズは、他にも頼みたいことがあると伝える。
シリルから理想の体型だと言われたアルマは、レイノルズが腹部の丸みが好きだということを知らされる。
レイノルズが倉庫から運んできたドレスを着たアルマは、別荘で一夜を過ごす。
翌朝、散歩に出たアルマは、レイノルズから、長いこと自分を探していたように思えると言われる。
レイノルズの仕事にアルマは完璧であり、彼女は自分が正しい存在に思えた。
ロンドン。
その後アルマは、ドレスを仕上げてくれたレイノルズと共レストランに向かう。
現れたシリルと話したレイノルズは、得意客の富豪婦人バーバラ・ローズ(ハリエット・サンソム・ハリス)が、再び結婚することを知らされる。
自宅にアルマを連れて行ったレイノルズは、彼女を部屋に案内して、自分は隣の部屋で明日は早いと伝える。
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朝の4時から仕事をして夜中までそれが続いても、レイノルズは常に準備ができていて、彼の指示通りに永遠に立っていられるので、それは誰にも真似できないとアルマは語る。
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時にアルマは、レイノルズとシリルの意見と違っても、それを曲げないこともあった。
そんなアルマとレイノルズは、肉体関係を持つ。
しかし、朝の時間を邪魔されたくないレイノルズは、アルマが無駄な動きをすることに対して注意し、それに意見されて気分を害し席を外す。
シリルは、朝食はレイノルズの後にするべきだとアルマに伝えるものの、彼が気難しいだけだと反論する。
習慣は大切であり、乱さないことだと言われたアルマは、意見しようとするアルマの言葉を遮る。
レイノルズにとって朝は静かな時間であり、朝食の時間が台無しになると夜まで調子が狂うとアルマに伝えたシリルは、彼女を納得させようとする。
それでも気難しいだけだと言うアルマに、そうだとしても考えを改めるべきだと伝えて、シリルは席を立つ。
そんなアルマだったが、仕事ではレイノルズの要望に応えて満足させる。
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仕事詰めのレイノルズは、時々、落ち込み、暫くの間、何もできない状態になった。
その期間をアルマに尋ねたロバート・ハーディ医師(ブライアン・グリーソン)は、数日続き、また元気になることを知る。
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山間部の別荘で休養中する間は優しいレイノルズだったが、元気になり仕事を始めるとアルマに厳しく接する。
裏山でキノコ採りをするアルマは、家政婦から、ひだがあるのが毒キノコだと教えられる。
アルマは、レイノルズのためにキノコを調理するには、バターを控えめにするようにと言われる。
ロンドンに戻ったレイノルズは、シリルから、バーバラの結婚式にたぶん誘われると言われる。
心を乱されたと言うレイノルズは、今はまだ聞きたくなかった話しだとシリルに伝える。
レイノルズは、バーバラは贔屓客だと言われる。
バーバラを迎えてドレスの準備をしたレイノルズは、情緒不安定気味の彼女から、式には必ず出席してほしいと言われる。
式当日、ドミニカ人の富豪ルビオ・ゲレロ(サイラス・カーソン)と息子のキャルと共に開いたバーバラの記者会見にもアルマと共に出席したレイノルズは落ち着かない。
その後パーティーでバーバラは意識を失ってしまい、アルマは、ドレスが可哀そうだと言って涙する。
バーバラには着る資格がないと言われたレイノルズは、アルマと共にそれを取り戻そうとする。
部屋に向かったレイノルズは、使用人のティッピー(フィリス・マクマホン)から、バーバラがドレスを着たまま眠っていると言われて激怒する。
レイノルズに指示されてドレスを脱がせたアルマは、バーバラの生き方には口出ししないが、”ハウス・オブ・ウッドコック”の服はもう着させないようにとティッピーに伝える。
ドレスを持ち帰るレイノルズは満足してアルマに感謝し、彼女から愛していると言われる。
ベルギーのモナ・ブラガンザ王女(ルイザ・リヒター)を迎えたレイノルズは、世界で一着しかないウェディングドレスを作ることを約束する。
添え物のように扱われたアルマは、採寸する王女に話しかけて祝福し、自己紹介してここに住んでいることを伝える。
その後アルマは、レイノルズのために彼を驚かせることを考え、それをシリルに話して相談する。
レイノルズのために夕食を作り、散歩から帰った彼を驚かせて二人きりで夕食をしたいと話すアルマは、シリルに協力を求めるものの反対される。
そういう行為をレイノルズは嫌うと言われたアルマだったが、自分なりの方法で彼を知りたいと伝えて、考えを変えようとしない。
数日後、皆が帰りシリルも外出し、散歩から帰ったレイノルズを迎えたアルマは、彼に愛を伝える。
シリルがいないことを知ったレイノルズは、戸惑いながらアルマが着ている完成したドレスをチェックし、入浴することを伝える。
その後、レイノルズに王女の話をしたアルマはドレスのことを尋ね、今まで事あるごとに自分が手掛けているので、当然ウェディングドレスも作ると言われる。
素っ気ないレイノルズに、楽しい夜にしたいだけだと伝えたアルマは食事を用意する。
アスパラガスはオイルと塩で食べたいことを知りながら、バター・ソースを使ったことなどで意見されたアルマは、自分がこの場にいる理由を尋ねる。
不意にこんなことをした訳を訊かれたアルマは、二人だけで過ごす時間が欲しかったと伝えるものの、レイノルズは理解しようとしない。
自分の時間は好きなように使うと伝えたレイノルズは、その間、何もせずにただ待つだけだと言うアルマに、何を待つのか尋ねる。
追い払ってくれるのを待つと言われたレイノルズは、自分を破滅させるつもりかとアルマに問い、この生活が嫌なら元いた場所に戻るようにと彼女に伝える。
気分を害したアルマは、それ以上、何も話さずに席を立つ。
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たまにはペースダウンすることも必要だと、アルマはロバートに話す。
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その後、毒キノコについて調べたアルマは、それを細かくして、レイノルズに出すお茶に混ぜる。
シリルから、アルマを出て行かせたいか訊かれたレイノルズは、”待つだけ”にはさせないでほしいと言われる。
アルマが気に入っている様子のシリルに意見したレイノルズだったが、自分には議論では絶対に勝てないと言われる。
気分が悪いことを気にしながら王女のドレスの最終チェックをしたレイノルズは、それにもたれて倒れてしまう。
アルマは、部屋に向かい嘔吐したレイノルズを気遣う。
病気と思えるレイノルズが倒れたためにドレスが損傷したことを知ったシリルは、その状態を詳しく聞く。
アルマに寄り添われてベッドに横たわるレイノルズは、様子を見に来たシリルに、仕事に戻ると伝えるものの、休むようにと言われる。
医者を呼ぶと言われたレイノルズはそれを拒み、ドレスのことをシリルに頼む。
シリルはその場を去り、彼女に呼ばれたアルマは部屋に残りレイノルズに寄り添う。
工房の者達総出で、ドレスの修繕は始まる。
怯えるレイノルズを安心させるアルマは、自分が看病することを伝える。
その後、シリルから医師のロバートを呼んだことを知らされたアルマは驚き、彼に挨拶する。
アルマは診察を望まないものの、シリルは強引にロバートをレイノルズの部屋に連れて行く。
ボルティモア卿夫人の名付け子であるロバートが来ていることをシリルから知らされたレイノルズは、彼の診察を拒み”うせろ”と言って追い払う。
ロバートを見送ったシリルは、アルマを連れて工房に向かい、ドレスの修繕状況を確認する。
間に合うかは分からないと言われたシリルは、朝9時にはベルギーに届けるので、それまでに仕上げるようにと指示する。
修復作業を手伝ったアルマは、裾の裏地に縫い込まれていた、”呪われることなく”という文字が書かれた布を外してしまう。
ウェディングドレス姿の母親の幻覚を見たレイノルズは、彼女に語り掛ける。
その場に現れたアルマは、レイノルズの熱が下がったことを確認する。
翌朝、目覚めたレイノルズはベッドから置き上げり、仕上がったドレスの横のソファで眠るアルマの足に口づけする。
アルマに愛を伝えたレイノルズは、君なしではいたくないと言って、いろいろやらなければいけないことも君なしではできない、変化も必要だと話し、彼女に求婚する。
それを受け入れたアルマは、シリルらに見守られながらレイノルズと結婚する。
新婚旅行から戻り、ボルティモア卿(ニコラス・マンダー)の邸宅のパーティーに出席したレイノルズは、ロバートに気づいたアルマから彼を紹介される。
病気の際の無礼を謝罪したレイノルズは、ボルティモア卿夫人(ジュリア・デイヴィス)に誘われて食事のテーブルに着く。
レイノルズは、ロバートと歓談するアルマを夫人と共に気にする。
食事後のゲームの時間でアルマと言い合いになったレイノルズは、夫人と相手を代わり、まるで子供が結婚相手のようだと言われる。
ニューイヤーズ・イヴ。
ロバートから舞踏会に誘われたいたアルマは、それに興味を示さず仕事をすると言うレイノルズに腹を立てて、一人で出かける。
アルマのことが気になるレイノルズは、”デヴォンシャー・ホール”に向かう。
新年を迎える騒ぎの中でアルマを見つけたレイノルズは、彼女を連れ帰る。
顧客のヴォーン夫人(ジェーン・ペリー)のドレスをチェックしていたレイノルズは、席を外しシリルの部屋に向かう。
大きな過ちを犯したことをシリルに話したレイノルズは、アルマが入って来たことに気づかないまま、彼女がこのハウスには相応しくない存在だと伝える。
すべてを覆したアルマが自分を混乱させたと話すレイノルズは、アルマから、ヴォーン夫人はドレスに満足していると言われる。
そんなことは関係ないと言ってレイノルズは声を荒げ、シリルは、報告してくれたアルマに感謝する。
静かな死の気配を感じるこの場に我慢できないとシリルに伝えたレイノルズは、その場を去る。
森で採って来た毒キノコを料理してオムレツを作ったアルマは、それをレイノルズのテーブルに置く。
何も語らず、アルマの様子を窺いながらナイフとフォークを手にしたレイノルズは、オムレツを食べる。
”無力のままで倒れてほしい、救いなく、優しく、素直に・・・”と言うアルマは、助けるのは自分だけだとレイノルズに伝える。
やがて強さは戻り死にはしない、死を望んでもそうはならない、おとなしくなるだけだと言われたレイノルズは微笑む。
倒れる前にキスしてほしいと伝えたレイノルズは、アルマにキスして抱きしめる。
その後、気分が悪くなったレイノルズは、ロバートを呼ぶべきか考えるものの、自分が元気にしてあげると言うアルマと互いに愛を確かめる。
アルマは、訪ねて来たロバートを迎える。
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レイノルズが治らなくても、翌日、彼がいなくても構わないとアルマは考える。
自分を待っていてくれるはずであり、安らぎのある聖地、この世か来世に続く道に何があろうとも、ひたすら耐えて再びレイノルズの元に戻ることを、アルマはロバートに話す。
レイノルズに恋することで人生が謎ではなくなると、アルマは付け加える。
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素直にロバートの診察を受けるレイノルズの姿を見ながら、アルマは微笑む。
時々、レイノルズとの将来と終わりを考えるアルマは、自分には未来が見えて問題はすべて解決すると思う。
愛する人達や子供達や友人達が戻り、喜んで迎えてくれる、皆が楽しそうに笑いゲームをしたり・・・。
子供をシリルに預けたレイノルズとアルマは、デヴォンシャー・ホールに向かい踊る。
年齢を重ねて違う見方ができれば、レイノルズのことを理解できるとアルマは考える。
自分がドレスを管理して守り抜きくと、膝にもたれるレイノルズに伝えたアルマは、でも今はここにいると言われる。
レイノルズから、空腹だと言われたアルマは微笑む。