1952年に発表された、アーネスト・ヘミングウェイの同名短編小説の映画化。 運に見放されながらも漁に出る老人の生き様を描く、監督ジョン・スタージェス、主演スペンサー・トレイシーによるドラマ。 |
・ドラマ
■ スタッフ キャスト ■
監督:ジョン・スタージェス
製作:リーランド・ヘイワード
原作:アーネスト・ヘミングウェイ
脚本:ピーター・ヴィアテル
撮影:ジェームズ・ウォン・ハウ
編集:アーサー・P・シュミット
音楽:ディミトリ・ティオムキン
出演
スペンサー・トレイシー:老人/ナレーター
フェリッペ・パゾス:少年
ハリー・ビレーヴァー:マーティン/カフェの主人
アメリカ 映画
配給 ワーナー・ブラザーズ
1958年製作 86分
公開
北米:1958年10月7日
日本:1958年10月21日
■ アカデミー賞 ■
第31回アカデミー賞
・受賞
音楽賞(ドラマ・コメディ)
・ノミネート
主演男優(スペンサー・トレイシー)
撮影賞(カラー)
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
キューバ。
老人(スペンサー・トレイシー)は、メキシコ湾に小船を浮かべる漁師だった。
しかし、84日間も魚が釣れない日々が続き、初めの40日は、少年(フェリッペ・パゾス)が一緒だったが、老人を見限った彼の両親が別の船に乗りこませた。
少年は老人を慕い、空の船で帰る彼を毎日迎えに行った。
やせた手足や顔のしわが、長年の苦労を物語る老人だったが、海の色と同じ目だけは生き生きとしていた。
少年は老人の役に立ちたくて、漁の餌を用意して食事の世話をした。
いつも立ち寄るカフェの主人マーティン(ハリー・ビレーヴァー)は、食事を取りに来た少年に、老人は限界だとつぶやく。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
メキシコ湾に小船を浮かべる漁師の老人は、彼を慕う少年に見守られながら毎日を送っていた。
84日間も獲物を得られず、運に見放された老人だったが、少年は老人を信じて励ます。
翌日も同じように漁に出た老人は、一本の竿に手応えを感じ、その獲物に集中する。
その後、姿を現さない相手との根競べが始まり、綱から手を離せない老人は、食事や休息もままならない。
その時、船よりも大きな、巨大カジキが海面に姿を現し老人は驚く。
三日間の小康状態の末、ついに老人はそのカジキを仕留め、港へと船を向かわせる。
しかし、捕らえたカジキを狙いサメの大群が現れ、老人の闘いは再び始まる・・・。
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1954年にヘミングウェイが受賞することになるノーベル文学賞は、もちろん長年の執筆活動の功績に対するるものだが、本同名小説によるところが大きいと言われている。
1961年、ライフル自殺をする彼だが、人生に悲観し始めている、彼の心境が語られているような気もする。
原作を読んだ方なら分かるだろうが、この物語が映画になるのだろうかと、誰もが考えただりう。
困難なロケ環境や、淡々と老人の心境を描く地味なストーリーを、中米各地やハワイのロケで、海や自然の美しさを生かし見事に描写している。
西部劇やアクションを得意とする監督ジョン・スタージェスは、孤独な老人の心の動きや、彼を慕う少年との友情を、終始、抑え気味に描いている。
クレジットには登場しないが、ヘンリー・キングとフレッド・ジンネマンら、名匠が補助しているのも注目だ。
第31回アカデミー賞では、音楽賞(ドラマ・コメディ)を受賞した。
・ノミネート
主演男優(スペンサー・トレイシー)
撮影賞(カラー)
アカデミー賞に輝くディミトリ・ティオムキンの、老人の見る夢の心地よさを表現しているような音楽も素晴しい。
もともと老けて見えるので驚きはしないが、実はまだ50代である、スペンサー・トレイシーの完璧な演技も心を打つ。
彼が担当するナレーションも味わい深い。
老人を尊敬し、好きでたまらない少年を、フェリッペ・パゾスは健気に演じている。
漁師の子供というより、どうも知的な少年に思える彼は、本作公開の翌年起きる、キューバ革命の活動家で、経済学者のフェリッペ・パゾスの息子である。
ドラマに登場する少年よりも年下の頃に本作を観た自分は、映画とは思えずにドキュメンタリーと勘違いしてしまったことを思い出す。