リチャードから8台にすると言われたレイは住所を聞き、サンバーナーディーノに向かう。
サンバーナーディーノ。
マクドナルド兄弟が経営する店に着いたレイは、大繁盛する様子に驚きながら長蛇の列に並び、順番が来たので注文する。
ハンバーガーとポテトとコーラを頼み、代金を払った直後に注文したものを渡されたレイは驚き、トレーなどもなく商品は紙袋に入れられていることを知らされる。
ベンチに座ったレイは、ハンバーガーをおいしそうに食べる人々の様子を観察しながら、注文したものを食べてみる。
掃除をしている男性(ジョン・キャロル・リンチ)からハンバーガーの味を訊かれたレイは、最高だと答える。
その男性がオーナーのモーリスだと知ったレイは、名刺を渡して挨拶し、システムの素晴らしさに感心したことを伝えて、店内を見学することになる。
モーリスから、完璧に管理された店内の作業を説明されたレイは、30秒でハンバーガーが出来上がる工程を見て驚く。
弟と考えたと言うモーリスからリチャードを紹介されたレイは、見たこともない効率的な店のシステムに感心して、二人を食事に誘い話を聞くことにする。
その夜、三人はレストランで食事し、レイは、故郷で仕事がなかった兄弟がハリウッドに向かい、数年がかりで貯金をして映画館を買収したことを知る。
1929年の大恐慌で無一文になり、アルカディアでホットドッグ店を開くものの、人口が少なかったために店をトラックに積んでサンバーナーディーノに移動した。
1940年代のドライブイン・ブームに乗り、2か月後にBBQ店をオープンして成功したが、その後は横ばいになった。
ドライブインの客層が悪く、よい商売とは言えないことに気づいた兄弟は、主力商品のハンバーガー、ポテト、ドリンクに集中するためのメニューを作り、ウェイトレスも廃止し皿も紙袋にして無駄を省いた。
兄弟は、店を家族向けにしただけでなく、注文から30秒でハンバーガーを出す、効率的な作業方法を考えた。
テニスコートに厨房の図面を描き、スタッフを集めてシミュレーションした兄弟は、それを6時間も続けた末に完璧な配置を完成させた。
究極の効率化だと言うモーリスとリチャードは、世界初のスピード・サービス・システムを採用した厨房を作ったことをレイに話す。
ところが、車で来た客からウェイトレスが来ないという苦情が出て、セルフ・サービスだと言っても受け入れてもらえず、紙袋も不評だった。
派手なオープニング・イベントを開くものの、翌日の開店時には客は現れず、兄弟は諦めて店を閉めようとした。
少年がハンバーガーを3個買いに来たために、気の毒に思ったモーリスは、それを無料で提供する。
その直後に車が現れ、口コミで評判が広がっていたため、一夜にして人気店となった。
モーテルに戻ったレイは、モーリスとリチャードの話を聞いて眠れぬ夜を過ごす。
翌日、開店前からモーリスとリチャードを待っていたレイは、現れた二人にフランチャイズのことを話す。
こんな素晴らしいシステムは広めるべきだと言うレイは、自分は商談に来たのではなく、この店に導かれたとモーリスとリチャードに伝える。
フランチャイズは既にフェニックスとサクラメントでやっていると言うリチャードは、品質維持のために、これ以上、増やすつもりはないとレイに伝える。
優秀な管理者を置けば大丈夫だと言うレイは、壁にかけてあったアーチ(ゴールデン・アーチ)がトレードマークの店の構想図が気に入り、それが既にフェニックスに設置してあることを知る。
フェニックス。
アーチが設置された美しい店のデザインを目の前にしたレイは、フランチャイズの構想が広がる。
イリノイ州、アーリントンハイツ。
帰宅したレイは、興奮しながらある画期的な店を見つけたことをエセルに話す。
いつも目新しいものに飛びつき夢を追うレイに、そろそろ落ち着いて夫婦の生活を楽しむべきだと伝えたエセルは、いつになったら満足するのか尋ねる。
たぶん一生、満足しないと答えたレイは、今まで様々なことに耐えてきたと言うエセルに納得してもらえない。
その後もセールスを続けたレイは、フランチャイズのことを諦めきれず、再びモーリスとリチャードの元に向かう。
アメリカのためにフランチャイズ化してほしいと兄弟に伝えたレイは、フェニックスの店のアーチを見た時、教会の十字架のように人を惹きつけるものを感じたと話す。
”マクドナルド”は、新しいアメリカの教会になると言うレイに外してもらったモーリスは、これはアーチが国中にかかる壮大な夢だとリチャードに伝える。
糖尿病のモーリスにこれ以上、苦労させたくないリチャードだったが、やり方を変えて管理体制を徹底すると言われて説得される。
モーリスとリチャードと契約を結んだレイは、すべてを自分に任せてほしいと伝えて、フランチャイズ化を進める行動を開始する。
それが順調には進まないレイは、資金繰りのために家を抵当に入れて銀行から融資を受ける。
イリノイ州、デス・プレーンズ。
1号店の予定地を確認したレイは、今度こそ成功してみせると誓う。
秘書のジューンと共に準備を進めるレイは、モーリスとリチャードが慎重に物事を考え過ぎるために苛立つ。
オープンした店の厨房で厳しく監視するレイは、慣れないスタッフの中で、手際よく作業をするフレッド・ターナー(ジャスティン・ランデル・ブルック)の仕事ぶりに感心する。
久しぶりにエセルとクラブで食事をしたレイは、友人のジェリー・カレン(ウィルバー・フィッツジェラルド)らに、始めたレストラン・ビジネスに投資することを提案する。
ドライブイン程度の話だろうとからかう友人達に、エセルは、真面目に聞いてあげてほしいと伝える。
エセルに感謝するレイは、話を聞きたいと言う友人達に、革新的な厨房の店のフランチャイズ化を語り、投資で稼げる可能性がある1号店を見に来ることを勧める。
その後レイは、話に興味を持った出資者と次々とフランチャイズ契約を結ぶ。
レイが一月に3店も開店したことを知ったリチャードは、話の進み方が早過ぎることを気にして、品質が保てるかが心配だとモーリスに伝える。
イリノイ州、シャンバーグ。
視察に来たレイは、独自のメニューを追加してゴミが散らかる店舗を見て呆れてしまう。
ハンバーガーの質の悪さを知り憤慨したレイは、ゴルフ上にいたオーナーの元に向かい、その件を非難する。
クラブを退会したレイは、暇な金持ちとの付き合いはやめて、新しい友人を作るとエセルに伝える。
ある日、聖書を売りに来たレナード・ローゼンブラットを呼び止めたレイは、ユダヤ人の彼に聖書を売る理由を尋ねる。
生活のためだと言うレナードが気に入ったレイは、彼とフランチャイズ契約を結ぶ。
イリノイ州、ウォキーガン。
店のオーナーとなったレナードは、完璧なシステムを監視して、妻のマイラは、小さな子供たちへのサービスとしてアメを配った。
レイは、チームメイトとして皆と仕事をすることは、商売よりも満足感があるとエセルに話す。
オーナーやスタッフを”ゴールデン・アーチ”の下で働く”ファミリー”と呼ぶレイは、事業を拡大させて、中西部にフランチャイズ店を展開していく。
レイがデス・プレーンズを1号店としていることを知ったモーリスとリチャードは驚く。
アシスタントとなったフレッドと共に、オープンするミネアポリス店を訪れたレイは、オーナーのジム・ズィーンらに歓迎される。
ジムと高級レストランで食事をしたレイは、オーナーのロリー・スミス(パトリック・ウィルソン)を紹介される。
フランチャイズを全国に広げる考えのレイは、ローリーから、ミネアポリスにはもう一店舗増やせると言われる。
自分が投資してもいいと言うローリーは、候補地も決めてあるとレイに伝える。
ピアノを演奏する女性が気になったレイは、ローリーに彼女を紹介してもらうが、ジョアン(リンダ・カーデリーニ)は彼の妻だった。
フランチャイズ展開のことなどを話したレイは、ピアノに戻ると言うジョアンから好きな曲を訊かれ、”Pennies from Heaven”と答える。
歌い始めたジョアンの元に向かったレイは、彼女と共にピアノを弾き歌う。
会社に戻ったレイは、帳簿も担当するジューンから資金が底をつくと言われる。
自分の取り分が純益の1.4%しかないことを知ったレイは、リチャードに電話をして契約の再交渉を求めるが、それを断られる。
レイを擁護するモーリスの意見を聞き入れようとしないリチャードは、兄と対立してしまう。
資金繰りが厳しくなったレイは、銀行からの連絡を受けたエセルから家を抵当に入れた件を追及され、何も答えることができない。
銀行に向かったレイは、自宅に電話したことを非難するものの、3か月も返済が滞納していると言われて苛立つ。
ローリーの店に向かったレイは、彼とジョアンとで話し合う。
売る上げは順調だが経費がかかり過ぎることをローリーに指摘されたレイは、アイスクリームの冷凍庫の電気代のことを気にする彼から、ジョアンが解決策を考えたと言われる。
ジョアンから、パウダー・シェイクを使えば購入費と電気代が激減すと言われたレイは納得できなかったものの、その場に用意してあったチョコレートとバニラ味の”インスタミックス”の袋を見せられる。
バニラを選んだレイは、それを水に混ぜたジョアンからグラスを渡されて飲み、本物と同じだと二人に伝える。
自分の店で試し、納得できれば全国に広めることをレイに勧めたローリーは、検討してみると言われる。
その件をリチャードに伝えたレイだったが、本物のミルク抜きのシェイクでなければダメだと言われ、電話を切られる。
銀行からの最後通告を受け取ったレイは、融資限度額の増額を検討してもらうが、ローンの返済がない限り無理だと言われる。
その話を聞いていた”テイスティ・フリーズ”のハリー・J・ソナンボーン(B・J・ノヴァク)は、銀行を出たレイに話しかける。
店のファンだと言うハリーは、繁盛しているのに儲かっていないのは、事業の方法に問題があるとレイに伝えて、彼と共にオフィスに向かう。
帳簿をチェックしたハリーは、事業の問題点を的確に指摘し、土地を加盟店が用意するのではなく、自分で土地を買い加盟店にリースすることをレイに提案する。
それを加盟の契約条件にすれば、店舗の建設前に安定した収入源が確保でき、更に拡大資金を確保すれば土地の買収が進むので”土地”がキーポイントだと、ハリーはレイ伝える。
土地が利益を生み、すべてをコントロールするパワーになり、品質を保てない店はリース契約を解除すると話すハリーは、モーリスとリチャード、そして銀行も支配できるとレイに伝える。
その意味が、マクドナルド兄弟が実質的に経営権を失うことであると確認したレイは、1号店の土地の前で誓った時を思い出しながら決断を迫られる。
ハリーと手を組むことになったレイは、”フランチャイズ・リアルティ社”を設立し、全国に店舗を展開する準備を始める。
フランチャイズ・リアルティは急成長し、その存在を知ったリチャードは、レイがCEOであることをモーリスに伝える。
リチャードからの電話で説明を求められたレイは、会社を作っただけであり、契約の変更ではなく、店内のことは干渉できるが店外は別だと伝える。
ローリーの店を訪ねたレイは、パウダー・シェイク”インスタミックス”を採用したと彼とジョアンに伝えて、全国に広めることを知らせる。
親子ほどの年齢差があるレイとジョアンだったが、二人は惹かれ合う仲になり、エセルはそれに気づく。
リチャードからの電話を受けたレイは、インスタミックスの件を訊かれ、その使用を許可しようとしない彼から契約書に従うようにと言われ、それを断ったために電話を切られる。
エセルと離婚することにしたレイは、家と車と保険は渡しても事業を手放す気はなかった。
マクドナルド兄弟との契約を破棄するために大金を使ったレイは、二人に新発売のイチゴ味のインスタミックスを送る。
モーリスとリチャードは、レイが”マクドナルド”を設立したことを知り驚く。
その件をリチャードから問われたレイは、マクドナルドの不動産を扱っているだけだと答える。
憤慨したモーリスは、リチャードが考案したゴールデン・アーチを盗んだレイを非難するが、ビジネスの世界は弱肉強食だと言われる。
自分たちにできるかと訊かれたモーリスは、できないしやりたくもないとレイに答える。
侮辱されたモーリスは訴える考えを伝えて興奮し、レイから無理だと言われて気分が悪くなり倒れてしまう。
モーリスは糖尿病治療のために入院することになり、リチャードは兄のことを心配する。
ある日、兄弟は、レイが見舞いに来たために驚き、モーリスは白紙の小切手を渡される。
モーリスから何の代金だと訊かれたレイは、回復したら話をしようと伝えてその場を去る。
レイにはかなわず追い払うこともできないと、モーリスはリチャードに伝える。
その後リチャードは、270万ドルと永続的に利益の1%を要求し、レイに経営権を譲ろうとする。
弁護士をまじえた交渉が行われ、金額は支払われるが、1%のロイヤリティは口約束ということで納得し、モーリスとリチャードはレイに経営権を譲る。
135万ドルの小切手をモーリスと共に受け取ったリチャードは、トイレでレイと出くわす。
リチャードから、出会った日に店の中を案内しすべてを見せたにもかかわらず、なぜ自分で始めなかったのかと訊かれたレイは、同じアイデアで始めても失敗しただろうと答える。
他にも何人にも見せたが、一人も成功しなかったはずだと言うレイは、君達が持つ特別なものが欠けているからだとリチャードに伝える。
レイは、それが何かわからないリチャードに、システムだけでない、”マクドナルド”という栄誉ある名前だと伝える。
無限の可能性を秘めている、いかにもアメリカらしい響きの名前だと言うレイは、”クロック”という店で食事をしようとは思わないと伝える。
美しい響きの”マクドナルド”と言う名の男はいじめられないと言うレイは、苦笑いするリチャードに、ポケットに135万ドルの小切手は入っているはずだと伝えて去ろうとする。
名前にかなわないから買収したのかと訊かれたレイは、初めて店の名前を見た時に一目で惹かれ、その時に手に入れようと決めたと答えて、実現したとリチャードに伝える。
リチャードからまだ手に入れていないと言われたレイは、そう思うかと伝えてその場を去る。
その後、レイ側の弁護士から、本店の所有権は残るが”マクドナルド”及びそれに似た名前は使用できないと言われたモーリスとリチャードは、看板から自分たちの名前を外す。
才能があっても成功できるとは限らず、必要なのは執念と覚悟だと考えるレイは、新店建設の前で営業を続ける、”ビッグM”をトレードマークにしたモーリスとリチャードの店を見つめる。
1970年、ビバリーヒルズ。
演説の準備をしていたレイは、妻となったジョアンから車の用意ができたと言われる。
すべての始まりである1号店について語るスピーチを口にしたレイは、一瞬、考え込み、部屋を出て車に向かう。
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ジューン・マルティーノは”マクドナルド”の共同所有者となり、女性で初めて”ニューヨーク証券取引所”で上場に立ち会った。
フレッド・ターナーは、レイ・クロックの後を継ぎ会長になり、”マクドナルド”の店舗を世界100か国に広めた。
ハリー・J・ソナンボーンは、”マクドナルド”の最初のCEOとなったが、レイ・クロックと対立して1967年に退任し、公の場で会社のことを二度と口にしなかった。
レイとジョアンは結婚して、彼は1984年に死去した。
ジョアンは、資産のうち1500万ドルを”救世軍”や”NPR/ナショナル・パブリック・ラジオ”に寄付した。
”マクドナルド”は世界有数の不動産保有企業であり、毎日、世界人口の1%がその食品を食べている。
サンバーナーディーノの”ビッグM”は数年で廃業し、モーリスとリチャードとの”口約束”は守られなかった。
現在の価格で、年間1億ドルの価値があったと言われる。
結局、”マクドナルド”のシェイクは、アイスクリーム入りに戻った。