マンローから鍵を受け取ったホームズは書斎に向かい、天井から落ちた階段のゴミに気づく。
日本から持ち帰った”サンショウ”の葉を取り出したホームズは、注意しながらデスクに置く。
資料を取り出したホームズは、助手のジョン・H・ワトスン(コリン・スターキー)が結婚して引退した日に依頼された、ある事件のことを思い出す。
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約30年前、ロンドン、”ベイカー・ストリート221B”。
第一次大戦後、その住所には名探偵を一目見ようとする者が殺到していた。
ワトソンの本には偽の住所が記載されていたため、ホームズは下宿を知られずに済んだ。
そこに、住所を調べたある人物が訪ねて来る。
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未完成の資料の原稿を置いたホームズは、庭仕事をするロジャーの元に向かい、なぜ書斎に入ったのかを尋ねる。
神聖な場所でありプライベートな部屋だと伝えたホームズは、何か書き物をしているので作家だと思ったと言われる。
作家はワトソンだと言われたロジャーは、鍵を借りて書斎に入り、原稿があったので書きかけまで読んだと正直に話す。
依頼人に妻のことか確認した場面がよかったと言うロジャーの観察力の鋭さに感心したホームズは、男からの依頼はほとんどが妻のことだと伝える。
話の続きを訊かれたホームズは、依頼人の妻アン・ケルモット(ハティ・モラハン)の顔が思い浮び、何も答えなかった。
その後、往診に来たバリー医師(ロジャー・アラム)の診察を受けたホームズは、日本でひいた風邪が治りかけていると言われ、”サンショウ”のことを訊かれる。
副作用があるかと尋ねたホームズは、おそらくあるが”希望”だと言われる。
バリーから、何か月も文通して1週間も共に行動した日本人のことを訊かれたホームズは、診療所に隣接した部屋があると言われるものの、そこに引っ越すことを断る。
バリーから、一人暮らしは無理だと言われたホームズは、家政婦がいると答える。
記憶が定かでない時に、日付に印をするようにと言われたホームズは、バリーから日記帳を渡される。
昼食になり、いつものローヤルゼリーを断ったホームズは、これからはこれだと言ってサンショウを煎じたものを見せる。
その夜、ワイシャツの袖に書かれた”UMEZAKI”と言う文字を確認しながら、ホームズは日本の旅行のことを思い出す。
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駅で梅崎タミキ(真田広之)に迎えられたホームズは、今夜は自宅に泊っていただき、サンショウを捜すのは明日からにすると言われる。
梅崎の自宅に着き部屋に案内されたホームズは、彼の名前を忘れないようにワイシャツの袖に書いておく。
食事の席でホームズは、20年前に初版で購入したという著書を梅崎から見せられ、サインを求められる。
サンショウの産地の場所を尋ねたホームズは、海のそばで列車で2日はかかると言われる。
驚いたホームズは、頭が冴えているうちにやり終えたいことがあるため、それにはサンショウの効果が必要だと梅崎に伝える。
自分が自伝を書いた場合は多くの修正が必要だとワトソンには言ってあると話すホームズは、梅崎から著書を執筆中なのかと訊かれ、書こうとはしていると答える。
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最後の事件の原稿を出したホームズは、アンの写真を手に取り、死ぬ前に何としても書き終えねばならないと呟き、”妻のことか”と依頼人に尋ねたところから書き始める。
翌日、ホームズは原稿をロジャーに渡し、昼食の後でハチの世話を手伝ってほしいと伝える。
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依頼人のトーマス・ケルモット(パトリック・ケネディ)から、”221B”の守衛から内緒でここの場所を教えてもらったと言われたホームズは、彼に名刺を渡す。
”妻のことかね?”とホームズから言われたケルモットは、なぜそれが分かったのか尋ねる。
とにかく話を聞こうと言われたケルモットは、妻は子供を望んだが、1人目は3か月、2人目は4か月で流産し、医師に次は難しいと言われて落胆したことを話す。
アンは、生まれた子が死んだと思い込み、亡骸もないのに墓石を二つ建てさせて、重度な鬱状態となった。
気分転換に”アルモニカ”を勧められたアンはレッスンに励むのだが、彼女はその際に子供達の名前を呼び、それを聞いたケルモットは、演奏もレッスンも禁じたことをホームズに伝える。
レッスンするマダム・シルマー(フランシス・デ・ラ・トゥーア)は危険人物だと言うケルモットは、アンに呪いをかけたと話す。
証拠があるのかとホームズから訊かれたケルモットは、レッスンをやめたはずなのに領収書がポストに入っていたと言って、それをホームズに見せる。
アンからはレッスンは受けてないと言われるものの、預金の引き出しも停止したと言うケルモットは、昨日、彼女がマダム・シルマーの所へ行ったことを目撃したことを話す。
部屋に押し入るものの、マダム・シルマーからアンはいないと言われたケルモットは、それをアンに問い詰めるものの、何週間もレッスンには行っていないということだったとホームズに伝える。
アンの写真を受け取ったホームズは、最後の質問で判断すると言って、彼女の香水について尋ねる。
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ベッドでそこまで読んでいたロジャーは、母が部屋に入ってきたために原稿を隠し、早く寝るようにと言われる。
父のことを覚えているかと訊かれたロジャーは、海に連れて行ってくれたと答える。
それは写真で見たことだと言うマンローは、父が寝る前に即興で作り話をしたことは覚えてないかと尋ねる。
覚えていないと言うロジャーから、ママはどうなのと訊かれたマンローは、話は苦手だと伝えて部屋を出る。
翌日、ミツバチの世話の仕方をロジャーに教えるホームズは、天敵はスズメバチで、自分達の敵でもあると伝える。
ミツバチの減少の原因を突き止めると言うホームズは、ロジャーと共に世話を始める。
作業を終えてローヤルゼリーの話になったホームズは、その研究論文に加えた日本のサンショウに様々な効力があり、老いにも効くとロジャーに伝える。
その効果はローヤルゼリーの数倍で、これからはサンショウを摂取すると言うホームズは、原稿の続きのことと内容は実話かと訊かれ、作り話など無意味だと答える。
ロジャーから、どうして香水のことを依頼人に聞いたのかと言われたホームズは、その時のことを思い出す。
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ケルモットに香水のことを尋ねたシャーロックは、アンナが使っていたのは”カメオ・ローズ”であることを確認し、棚にあったそれを取り出す。
翌日、アンを尾行したシャーロックは、書店に入り裏口から出た彼女が、裏庭のベンチに座り建物の上階を見つめている姿を確認する。
ケルモットと共に、上階のマダム・シルマーの部屋に向かったホームズは、その場を調べる。
ホームズは、庭のベンチに座るアンを確認し、ケルモットは、妻がここに来たのを目撃したと言って内部を調べる。
その場にはレッスン中の少年しかいなかったが、それでもケルモットはアンを捜したため、ホームズは彼の強引な行動を非難する。
ケルモットはその場を去り、マダム・シルマーから、アンが来たのは何週間も前だと言われたホームズは、彼女が少年のレッスン代を払っていたことに気づく。
マダム・シルマーはホームズが全てを知っていたと考え、ホームズは、この場には残り香がないと言って部屋を出て、裏庭から去っていたアンを追う。
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ホームズに感化され始めたロジャーは、母から、ポーツマスのホテルで家政婦の仕事があると言われたため、不満げな態度をとる。
朝食にサンショウを入れたロジャーは、ホームズと親しくし過ぎるのは良くないと母から言われても、話をまともに聞こうとしない。
マンローからポーツマスの話をされたホームズは、考えておくと伝える。
ロジャーと出かけるマンローの姿を見つめながら、ホームズは日本のことを思い出す。
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広島。
梅崎に原爆が投下された場所に案内されたホームズは、石を亡くなった身内と思いながら祈りを捧げている男性を目撃する。
その場でサンショウを見つけた梅崎は、シャーロックを呼び寄せる。
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ロジャーが戻ったことに気づいたホームズは、ハチの世話を始める。
ホームズを慕うロジャーの姿を見つめながら、マンローは今後のことを考える。
翌日、海水浴の約束をしたホームズが部屋から下りて来ないために、様子を見に行ったロジャーは、気分が悪そうな彼を気遣う。
問題はないと言うホームズだったが、ロジャーの名前が思い出せず、袖に書いてある”ROGER”という文字を確認する。
手の震えなども気になるホームズだったが、ロジャーと共に海岸に向かう。
ひと泳ぎしたロジャーは、写真の女性が書く理由かとホームズに尋ね、書いているというよりも思い出していると言われる。
ホームズは、数か月前に兄のマイクロフト(ジョン・セッションズ)が亡くなり、ディオゲネス・クラブから遺品の引き取りの連絡があったことをロジャーに話す。
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小さな収納箱には読んだことがないワトソンの著書があり、いつもの事件簿である一冊が目に留まったが、結末は間違っていた。
自分を主人公にした映画を観たことがなかったホームズは、それを鑑賞する機会があり、その内容は酷いものだった。
ドイツ人の女性がアルモニカを使って夫人を毒殺する動機は何なのかを考えるホームズは、それを調べようとした際にアンの写真を見つけた。
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数年前なら、アンが被害者なのか、何があったのかは全て話せたはずなのだが、ホームズは、あの事件を最後に引退したこと以外は、何も思い出せなかったことをロジャーに伝える。
そのため、ハチの世話をしながら、事件のことをありのままに記録しておこうと考えたことをホームズは話す。
家に戻ったロジャーはミツバチに刺されるが、スズメバチとは違い針を残すと言うホームズが、それを抜いて塩水を飲ませる。
心配をかけるので母親には黙っているようにとホームズから言われたロジャーは、原稿を書くのかと尋ねる。
秘密を守れるかと言われてそれを約束したロジャーは、ホームズと握手する。
その夜、デスクに向かったホームズは、アンを尾行した時のことを思い出す。
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夫のサインを偽造したアンは、小切手を現金にして薬局に向かい、毒物を購入する。
法律事務所に向かったアンは、夫の遺言を確認して、財産は配偶者に相続されることを確認する。
駅に向かい急行列車の時間を確認したアンは、ある男性に現金を渡す。
公園のベンチに座ったアンは、アヤメの花びらのハチに気づき、それが手袋にとまった瞬間に声をかけてきたホームズから、ミツバチに好かれたようだと言われる。
香水は”カメオ・ローズ”だということをアンに確認したホームズは、許可を得てその場に腰掛け、アヤメの話をする。
植物学者かと訊かれたホームズは、趣味が高じただけだと答え、未来を占い手相を見るとアンに伝える。
ホームズが語ることは全て当たっていると言うアンは、正体を知っていることを伝えて名刺を見せる。
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次の記憶はアンが去る様子であり、その間に起きたことをホームズは思い出せない。
焦るホームズは、サンショウを煎ずる準備を始める。
物音に気づいたロジャーは、ホームズの部屋から煙が出ていたため、母を呼んで彼の元に向かい、ランプの火を消す。
翌日、往診に来たバリー医師は、立ち眩みで倒れたようだとマンローに伝える。
ホームズが煎じ薬を皮下注射しようとしたことを知ったバリーは、渡した日記帳をチェックし、印だらけであることを確認する。
ロジャーから、これで引っ越せなくなったと言われたマンローは、あんな病人では無理だと伝える。
サンショウがなくなっていることに気づいたロジャーは、捨てたのかと母に尋ね、それを否定する彼女から、そう思う理由を訊かれ、恨みがあるからだと答える。
母から誰に習った言葉なのか訊かれたロジャーは辞書だと答え、ホームズに届いた手紙を燃やすよう指示される。
不満そうなロジャーに、ホームズへの手紙は変人からばかりだと言うマンローは、介護までやらされることを迷惑に思い、病院かホームに入れるべきだと伝える。
ホームズが回復すると信じるロジャーは、母が燃やそうとした日本のからの手紙をホームズに渡す。
梅崎さんからだと伝えたロジャーは、ホームズから読んだかと訊かれ、我慢したと答える。
いろいろ質問するロジャーに、ローヤルゼリーもサンショウも自分には効果がないようだが、君が一番の刺激だとホームズは伝える。
手紙を読むようにと指示したホームズは、手紙は出さないと言っていた梅崎が心変わりをしたのは、母親が死んだからだろうとロジャーに伝え、そこに現れたマンローにベッドに戻される。
数歩歩いてみただけだと言うホームズに、倒れたら迷惑だと伝えたマンローは、用がある場合はベルを鳴らすようにと言ってそれを渡す。
マンローはロジャーを連れてその場を去り、ハチが閉じ込められたガラス玉を手に取るホームズは、日本でのことを思い出す。
食堂で、草木も生えぬ焼け野原に生えていたサンショウに驚いたことを梅崎に伝えたホームズは、サンショウのスープを飲んで互いに咳き込んでしまう。
その後、渡された著書にサインしたことを梅崎に伝えたホームズは、20年前の初版本ではない図書館の本だと言って彼を非難する。
養蜂にもサンショウにも詳しくないと言って苛立つホームズに対し、梅崎は、目的は果たせたと伝える。
自分の手紙を見て名前に聞き覚えはないのかと言われたホームズは、梅崎から、ロンドン在住だった外交官の父はイングランドの文化を愛したと話す。
勉学の助けになるようにと、父から贈られたという本を梅崎から渡されたホームズは、父が自分に相談した結果、無期限にイングランドに留まることが皆の利益だと判断したという内容の手紙を確認する。
”この本を読めば彼の頭脳明晰さが分かるだろう、彼の意見を軽視するべきではない”というのが父の最後の言葉だと伝えた梅崎は、再婚もせずに老いた母が苦しむのはあなたのせいだと言って、ホームズを責める。
父親は自己犠牲を言い訳にして逃げたにすぎないと言うホームズは、残念ではあるが、やはり会ったことは覚えていないと梅崎に伝える。
駅で別れを告げる梅崎は、もう手紙は出さないと言って、サンショウの効果が出たら教えてほしいとホームズに伝え、ハチが閉じ込められたガラス玉を渡してその場を去る。
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眠ってしまったホームズは、ガラス玉を落としたことに気づいて目覚め、それを拾おうとしてベッドから落ちてしまう。
ホームズの叫び声を聴いたロジャーは部屋に向かい、彼を介抱して傷の手当てをする。
ロジャーにガラス玉を渡したホームズは、ニホンミツバチだと言ってそれを彼に譲る。
ハチが12匹死んだことをロジャーから知らされたホームズは、奇病か突然変異かもしれないと考える。
ハチを調べると言ってガウンを羽織ったホームズは、書斎にある拡大鏡をロジャーに取りに行かせる。
拡大鏡を捜したロジャーは、二重底になっていた引き出しの中にあった女性の手袋を見つける。
拡大鏡も持ってホームズの部屋に戻ったロジャーは、現れた母に、これから調査をすることを伝える。
養蜂所の住人が殺される事件が多発していると言って、ホームズはロジャーの話に合わせる。
去ろうとする母を呼び止めたロジャーは、ホームズは、見ただけでどこにいたか当てるとことができる言って、嫌がる彼女を引き留めてホームズに推理してもらう。
汽車でポーツマスに行き仕事の面接をして採用になり、あまり好きではない姉には会わず、家主がうるさいからという理由をつけて戻ってきたと、ホームズはマンローに伝える。
ロジャーから、いつから働くのかと訊かれたマンローは、来週の月曜日からだと答える。
自分も当然行くと言われたロジャーは、靴磨をするしかないので親の言いなりだと不満を訴える。
いつも仕事のことで愚痴ばかりこぼし、字もろくに読めないと言って、ロジャーは母を非難する。
ショックを受けたマンローはその場を去り、ロジャーの失言に驚いたホームズは、母に謝罪しなければ後悔することになると伝える。
母の元に向かったロジャーは、仕事嫌いだった父親が招集された話を聞く。
空軍に入った夫は優秀であり、戦闘機に乗って最初の出撃で帰らぬ人になったと、マンローはロジャーに話す。
謝罪するロジャーに、マンローは、口は災いの元だということを学ぶようにと伝える。
その後、ロジャーから手袋を見せられたホームズは、ワトソンが忘れたものだと考える。
原稿の手袋だと言うロジャーに、自分は執筆をやめたと伝えたホームズは、全てが事実だと確信する彼に、今は何も思い出せないと伝える。
事件を解決していれば引退しなかったと言いながら興奮するホームズは、拡大鏡を投げ捨てて、罪の意識で苦しむ胸の内をロジャーに伝え、なぜ自分に”梅崎の事件”を与えたのかを神に問う。
ロジャーから”ケルモットの事件”だと言われたホームズはそれに気づかず、ケルモットを梅崎と間違えたと指摘される。
お茶だと言う母とキッチンに向かおうとしたロジャーは、呆然とするホームズに、死んだらハチの世話は誰がするのかと尋ねる。
分からないと言うホームズは、全ては解決できないとロジャーに伝える。
眠っていたホームズは、夢の中で事件を思い出し、目覚めて手袋を手に取る。
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アンから、自分がケルモットに渡した名刺を渡されたホームズは、夫の服の中から見つけたと言われる。
探偵の仕事は手相を見ることではないはずだと言われたホームズは、それは手段であり、夫に激しい怒りを感じているあなたによからぬ行動をさせないためだとアンに伝える。
ホームズから、夫のサインを偽造して預金を下ろし毒物を買い、遺言を確認し謎の男に金を渡して逃亡を計画したことは、探偵ならば、それから推理すれば夫の暗殺計画を見抜くと言われたアンは動揺する。
しかし誤算が二つあり、マダム・シルマーの部屋でケルモットが騒ぎ自分の邪魔をした際に、あなたを追ったものの、自分が来るの待っていたとホームズはアンに伝える。
その理由は、ウィンドーショッピングをするタイプではなく、しかもタキシードの仕立て屋だったからだとホームズから言われたアンは、二つ目を訊く。
駅で会った男の正体は、風貌から石工職人だと分かったと言うホームズは、流産した子と自分の墓石のための金を渡したとアンに伝える。
殺害計画は見せかけであり、自分を試したことをアンに確認したホームズは、名刺を見つけて、夫に対し怒りがこみ上げたと言われる。
探偵を雇わなければ夫は自分が理解できなかったのか、あなたなら分かってくれると思ったと、アンはホームズに伝える。
壁の向こう側にいる死者は傍にいることを夫は理解せず、壁のこちら側の自分達は・・・と言いかたアンに、ホームズは”孤独”だったのかと尋ねる。
自分もずっと孤独だったと言うホームズは、知識で埋め合わせたとアンに伝える。
それで満足かと訊かれたホームズは不満はないと答え、幸運にも自分の居場所を見つけて、誰かがいればいいと思ったと話す。
アンから、二つの心が住めるところに連れていってほしいと言われたホームズは、あなたを愛する人の元に戻るようにと伝える。
バッグの中から毒の瓶を取り出して中身を捨てたアンは、ホームズに感謝する。
役に立てたかなとアンに伝えたホームズは、彼女が忘れて行った手袋に気づく。
ホームズは、その場を去るアンを見つめる。
その後ホームズは、女性が轢死した事件のことを新聞の記事で知りショックを受ける。
アンの墓参りをしたホームズは、その場にいたケルモットに彼女の写真を返そうとするものの、受け取ってもらえなかった。
初めて言い知れぬ空虚さを感じたホームズは、自分は孤独だと気づく。
考え込む日々を送る自分を心配したハドスン夫人(サラ・クローデン)は、ワトソンに手紙を書き、彼は1か月以上傍にいてくれた。
事件の詳細をホームズから聞いたワトソンは、それを小説にして、ホームズを”名探偵”として書いた。
ホームズが悲しみの中で塞ぎこまないようにと考え、ワトソンは手袋を引き出しの二重底に隠した。
その3年後、ワトソンは別れも言わずに世を去った。
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ホームズは、人生半ばで亡くなった女性と未だ生き永らえている男の真実の物語を書き終える。
翌日、ロジャーを捜したホームズは、彼がハチの世話をしていることをマンローに確認する。
ハチに刺されて倒れているロジャーを見つけたホームズは、家に戻り救急車を呼ぶ。
慌てているホームズに気づいたマンローは、ロジャーに何かあったことを知り庭に向かう。
マンローは、到着した救急車で運ばれるロジャーに付き添う。
現れたギルバート警部(フィル・デイヴィス)から、アドレナリンを打ったもののロジャーの容態は良くないと言われたホームズは、足跡が混乱ぶりを示していると言って、攻撃から逃げたのだろうと伝える。
激痛と苦しみ、そしてショックを受けたはずのロジャーを案ずるホームズは、ギルバートから、ロジャーにハチ・アレルギーはあったかと訊かれ、ないと答える。
ロジャーの部屋を調べたホームズは、ガラス玉のハチを見て、ロジャーがミツバチに刺された時に針を抜いたことを思い出す。
マンローが養蜂箱に火を放とうとしていることに気づいたホームズは、それを制止する。
なぜ直ぐに教えなかったと言われマンローから責められたホームズは、こんなことになるとは思わなかったと伝える。
自分は母親であり、息子を奪ったホームズを非難するマンローは、あなたが刺されればよかったと言って彼を罵倒する。
ハチは悪くないと言うホームズは、それが命より大事なのかと問われ、大事なのはロジャーであり、自分の宝物だとマンローに伝えて泣き崩れる。
ミツバチに罪はないと言ってマンローの手を取り、スズメバチの巣の場所に向かったホームズは、ハチの死因を調べていたロジャーが、この巣を見つけたと伝える。
ハチへの攻撃をやめさせようとしてロジャーがスズメバチに水をかけたと言うホームズは、マンローから、なぜスズメバチだと分かったのかを訊かれ、ミツバチは刺した際に針を残すと答える。
ロジャーには針が刺さっていなかったと言うホームズは、スズメバチに襲われても養蜂箱を守ろうとした彼の行動は、足跡で分かるとマンローに説明する。
ホームズとマンローは、スズメバチの巣に火を放つ。
翌日、マンローと共に病院に向かったホームズは、昔、自分の助けを必要とした女性がいたことを話す。
女性のためだと思い事件を推理したのだが、彼女は結局、自ら命を絶ち、自分はその女性の絶望を分析し、結果的に彼女を追いこんでしまったとマンローに伝える。
嘘をついてでも何とか女性を救うべきだったと考えるホームズは、抱き寄せて、2人だけで生きていこうと言えなかったことを後悔しているとマンローに話す。
田舎で暮らしているのはその女性のせいだと言うホームズは、もう誰も傷つけたくないとマンローに伝える。
マンローは、敷地や養蜂と共に家を自分とロジャーに譲る考えのホームズから、どこかに行かないでいてくれれば助かると言われる。
そこに医師が現れ、ロジャーの意識が戻ったことを知らされたマンローは、ホームズの手をとり病室に向かう。
家に戻り、梅崎への手紙を書いたホームズは、父親との会合を思い出した際のことを綴る。
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事件を解決できずに、ある女性を死なせてしまい空虚な日々を送っていたホームズは、兄のマイクロフトに呼ばれてディオゲネス・クラブに向かう。
外交官である梅崎の父親に会ったホームズは、国王に仕えたいと言う彼が適任者だと伝える。
日本にいる妻子をどうするか悩んでいるという梅崎に対しホームズは、手紙を書き、”イングランドに留まることになった、帰国できるかは分からない”と伝えるよう助言した。
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父親は、極秘任務だが長年にわたり大英帝国に仕え、イギリス領マラヤからアラビア海を飛び回り、強い心と尊厳を持ち家族を愛していたので、彼を誇りに思ってほしいとホームズは書き綴る。
翌日、手紙を郵便配達人に渡したホームズは、回復したロジャーと共に丘に向かう。
ホームズは、亡くなったワトソン、マイクロフト、ハドソン夫人、梅崎の両親、そしてアンを想いながら、それぞれの石を置く。
ガラス玉も置いたロジャーから、それは自分とあなただと言われたホームズは、これはまだ先だと伝える。
原稿を書き上げたことをロジャーに知らせたホームズは、いよいよ文学界に進出だと言って、人生に悔いはなく、やり残してはいけないと語る。
ロジャーにガラス玉を渡したホームズは、”ガラス・ハチそしてロジャー”という題で物語を書くことを勧める。
ハチの世話の仕方を訊くマンローにそれを教えるようロジャーに指示したホームズは、広島で見た光景を思い出しながら、石に囲まれて祈りを捧げる。