タクミに近づいたアーサーは彼に水を与え、ここから出られなくなったので助けてほしいと言われる。
道を教えたアーサーだったが、タクミがその後も迷っているため、駐車場に行ける道まで付いて行く。
タクミと別れたアーサーだったが、渡したコートに忘れ物をしたため、彼を呼び止め、道が途切れていることに気づく。
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大学教授のアーサーは、不動産業者の妻ジョーン(ナオミ・ワッツ)と共に、友人との食事に向かう途中、車の中で口論になる。
ガブリエラ・ラフォルテ(ケイティ・アセルトン)らとの食事の席でも気まずい思いをしながら、アーサーとジョーンは帰宅する。
アーサーは、ジョーンとの生活を諦めることを考える。
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手首を切っていたタクミに応急処置をしたアーサーは岩を登り、自殺を考えた理由を彼に尋ねる。
生きたくなかったと言うタクミは、会社でミスをして資料室に飛ばされ、無視されて嫌な思いをしながらも、家族を養うために働くしかなかった辛い胸の内を語る。
その程度のことで自殺しようとする考えが理解できないアーサーは、文化の違いだとタクミに言われる。
その後、人の気配を感じたアーサーだったが、あの世に行く前の魂”霊”が漂っているとタクミは語る。
神を信じるカトリックの”煉獄”だと話すタクミは、科学者のアーサーが、科学で全て解き明かすことができて、神は人間が創ったものだと言ったために、それならば、なぜ命を絶つのかと問う。
あの世で君を待つのは誰で、なぜ死にたいのかともタクミから訊かれたアーサーは、自分は観光に来たと答える。
コートから睡眠薬を出したタクミは、それを持参している理由をアーサーに尋ねる。
一人で行くと伝えて薬を受け取ったアーサーは、崖下に落下してしまう。
その場に向かったタクミは、アーサーの脇腹に刺さっていた枝を抜く。
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帰宅したアーサーは、ソファーで眠っていたジョーンを起こさないようにして、着ていたコートをかけてあげる。
ガスにかけてあったヤカンに気づいたアーサーは、それを止めて、目覚めたジョーンに火事になるところだったと伝える。
謝罪するジョーンが、家が灰になってしまうことを気にしたため、アーサーは、家は問題ではないと伝える。
二人は口論になり、年収2万ドルのアーサーにまともな仕事を見つけることを要求するジョーンは、自分を利用していると言って非難する。
アル中と女たらしという話になった二人の意見は全くかみ合わない。
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夜になり、何とか歩けたアーサーは、タクミと森の中をさ迷いながら、家族の話を聞き、妻子の名前は”キイロ”と”フユ”だと言われる。
昼間のことを互いに謝罪した二人は、水の音が聴こえたために川に向かう。
二人は水を飲み、下流に向えば助かるとタクミから言われたアーサーは、傷口に水をかける。
富士山の方角が分かれば、駐車場はその西だと考えるアーサーだったが、タクミから東だと言われる。
岩の上の一輪の花を見つけたタクミは、霊があの世に行く時に花が咲くと言われていると話す。
首を吊っている者を見つけたアーサーは、その男性が身分証でドイツ人であることを知り、タクミから、このような人間が世界中から集まる場所だと言われる。
アーサーとタクミは、寒さを凌ぐためにドイツ人の服を貰うことにする。
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体調不良を訴えたジョーンは検査を受け、小さな脳腫瘍が見つかり、切除する手術を医師から勧められる。
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寒さに耐えながら歩き続けるアーサーとタクミだったが、雨が降ってきたために岩場に向かう。
しかし、川の水がその場に流れ込み、二人は外に押し流される。
意識のないタクミの名を呼び蘇生しようとしたアーサーは、彼が目覚めたために、近くにあったテントに向かう。
その場にはミイラ化した死体があり、アーサーは脱がした服を着る。
電源が入る無線機があったため、アーサーは、日本語で助けを求めるようタクミに指示する。
ライターを見つけたアーサーは、タクミの手のひらを温める。
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手術を翌日に控えるジョーンを気遣うアーサーは、不安だと言う彼女を励ます。
死ぬこと自体ではなく、病院で死ぬことが怖いと話すジョーンは、手術に立ち会えるか頼んでみると言うアーサーに、あなたが死ぬ時には、病院で死なないと約束してほしいと伝える。
アーサーはそれを約束し、ジョーンから理想の場所を見つけてほしいと言われる。
死ぬ時が分かるだろうかと尋ねたアーサーは、感じると思うと言うジョーンに、理想の場所を見つけることを約束する。
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火を起こしたアーサーは、回復したタクミと森の手強さなどを話し、テントにあったコンパスで方位を確認するが、火山岩の影響で乱れることに気づく。
何か理由があり、森に呼ばれて引き留められていると言うタクミは、なぜ、死体の男性は万全な装備だったのだろうとアーサーから訊かれ、死を覚悟する者とそうでない者がいると答える。
男性は道に迷ったのだろううと言うタクミは、よくあることだと話す。
森に入って直ぐに張られていたリボンのことを思い出したアーサーは、戻る場合の目印だとタクミに言われ、自分はパンを撒いたと伝える。
”ハンサム”だと言われたアーサーは、パンくずを撒く”ハンサムとグレーテル”だと話すタクミに、笑いながら”ヘンゼルとグレーテル”だと伝える。
結婚指輪を見たタクミは、妻は事情を知っているのかとアーサーに尋ね、彼女が2週間前に死んだことを知らされる。
関係は冷え切っていたが、仲の良い時期もあったと言うアーサーは、互いが悪かったと語る。
妻はアルコール依存症だったが仕事が出来て、時々口論になり、自分が数年前に勤務先の同僚と浮気をした際、隠していたが突きとめられ、それ以来、険悪な関係になったことをアーサーは話す。
最悪な状況になり、妻はアルコールの量が増えて、自分を罵倒し自己嫌悪になったということだった。
2回離婚しかけ、信頼を失ったのは自分のせいだと言うアーサーは、妻を愛していたかをタクミに訊かれ、世界で一番、愛していたと伝える。
浮気したのは魔が差したからだと話すアーサーは、その後は互いに心を閉ざし、感謝せずに済むよう気を遣うという、奇妙なゲームのような生活を続け、そして妻は病気になり全てを保留したと語る。
絶望や悲しみではなく罪の意識で来たと話すアーサーは、今となっては謝るチャンスもないと後悔するが、タクミから遅くないと言われる。
妻は死んだと言うアーサーに、愛する人の霊は闇に紛れて傍にいる、森が呼び寄せているとタクミは伝える。
自分が悪かったと涙しながら謝罪するアーサーは、妻のいない人生は考えられないと話すが、タクミから、永遠に一緒にいると言われる。
アーサーは、ジョーンに処方された睡眠薬を火に投げ込んでしまう。
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ジョーンの死後、失意の日々を送っていたアーサーは、彼女宛の小包を受け取る。
ネットで死ぬための”理想の場所”を調べたアーサーは、日本の富士山の麓にある、青木ヶ原の樹海のことを知る。
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翌朝、動けなくなったタクミに、助けを呼んで必ず戻ると伝えたアーサーは、無線機で助けを求めながら森をさ迷うが、足を踏み外して岩場に落下してしまう。
その頃、山岳レスキュー隊員は、樹海で電波をキャッチしたという連絡を受けて捜索を始める。
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ジョーンの手術後、アーサーは、彼女のお気に入りだった階段のあるレイクハウスで、蘭の世話をして過ごした思い出などを語り励ます。
二人は、腫瘍は良性だったと医師から言われて安堵する。
病院を移動することになり、救急車で運ばれるジョーンと携帯電話で話しながら車で後を追うアーサーは、互いの好きな色などを訊きながら楽しい会話をする。
その時、救急車はトラックに衝突され、アーサーはジョーンに駆け寄る。
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山岳レスキュー隊からの無線連絡を受けたアーサーは、どこにいるかと訊かれて、岩に階段があると伝える。
”カイダン”という日本語を訊いたレスキュー隊は、二手に分かれて捜索を始める。
階段に向かうものの無線機を落してしまったアーサーは、サイレンの音に対して叫び声をあげる。
リボンの場所を見つけたアーサーは助けを求めながら進み、倒れ込むもののレスキュー隊員に発見される。
アーサーは、森の奥に人がいることを伝えながら救急車に運ばれる。
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葬儀を終えたアーサーは、好きな色、季節、本など、ジョーンのことはよく知らなかったことを葬儀屋に語る。
好きな本は童話で、最近、ジョーンの姉妹が、彼女に童話を贈ったことをアーサーは知らされる。
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病院でタカハシ医師(ジェームズ・サイトウ)の治療を受けて回復したアーサーは、カウンセリングを受けて、退院したら森に戻り一緒にいた者を捜すと伝える。
約束したと言うアーサーだったが、レスキュー隊が捜索したはずであり、駐車場の監視カメラには自分は映っていたが、他の者の姿はなかったと言われる。
一緒にはいたが、一緒にいた人物がいつどのようにして森に迷い込んだかは知らないと話すアーサーは、本人を見つけなければ身元を確認できず家族にも連絡できないと言われ、”タクミ・ナカムラ”と妻子が”キイロ”と”フユ”という名前だったと伝える。
妻子が名前としてはおかしいとカウンセラーに言われたアーサーは、レスキュー隊員がテントを見つけていないかを尋ね、その付近にいることを伝えるものの、誰もいなかったとということだった。
その後、樹海に向かったアーサーは、ヒモで目印をつけながら森を進み、自分が置いた小包を見つける。
ヒモが終わってしまい、ノートのページを破り丸めて捨てて目印にしたアーサーは、テントの場所にたどり着きタクミを捜す。
自分のコートを見つけたアーサーは、その場にタクミではなく蘭が咲いていたため、霊があの世に行く時に花が咲くと言っていたタクミの言葉を思い出す。
ジョーンは自分と共にいて、この森が呼び寄せたとも言われたアーサーは、小包の中身が、童話”ヘンゼルとグレーテル”であったことを確認し、岩に咲く蘭を見つめる。
帰国して、絵本と蘭を自宅に持ち帰ったアーサーは、大学に復帰する。
学生と話していたアーサーは、絵本に挟んであったメモに書かれている”キイロ”と”フユ”が英語では”黄色”と”冬”であることを知らされる。
日本語が話せる学生から、それは色と季節であり人の名前ではないと言われたアーサーは、本を手にしながら微笑む。
その後、ジョーンのお気に入りの場所であるレイクハウスに向かったアーサーは、持ち帰った蘭を庭に植えて彼女を想う。