今はその時ではないと言うエレインは、いつか話すとベンに伝える。
流れ星を見た夜に、”ドブの中にいるが、そこから星を眺める者もいる”とタイプで打って貼ったメモの意味をエレインに尋ねたベンだったが、いつものように”何だと思う?”としか答えてもらえなかった。
1927年、ニュージャージー州、ホーボーケン。
ある店にいた聾唖者の少女ローズ・キンケイド(ミリセント・シモンズ)は、大女優である母親リリアン・メイヒュー(ジュリアン・ムーア)が掲載されている雑誌のページを破り川に向かう。
紙に”助けて”と書いたローズは、それで船を作り川に流す。
1977年。
自分の家のそばの湖のボートにいたベンは家に戻り、従姉のジャネット(モーガン・ターナー)がいたために驚く。
1927年。
兄ウォルター(コーリー・マイケル・スミス)からの誕生日祝いのハガキを受け取ったローズは、母リリアンの雑誌の切り抜きなどをスクラップする。
それを見ながら、離れて暮らすリリアンのことを想い涙するローズは、窓から見えるマンハッタンを眺める。
1977年。
母エレインの服を着てタバコを吸うジャネットを責めるベンは、秘密の場所が欲しかっただけだと言う彼女から謝罪される。
ジャネットは、母ジェニーに黙っていてくれれば借りは返すとベンに約束する。
家を売ることを心配しながら、ここに住みたいと話すベンは、父の居場所さえ分かればいいのだがとジャネットに伝える。
嵐が近づき、ベンを連れて家に帰ろうとしたジャネットは、タバコのことは内緒にするので、もう少しここにいたいと言う彼を残してその場を去る。
1927年。
ローズは、リリアン主演のサイレント映画”嵐の娘”を劇場に観に行く。
1977年。
”驚きのキャビネット/ワンダーストラック”という本を見つけたベンは、停電になったために、懐中電灯を使ってその内容を読む。
キュレーターについて書かれた本の中に挟まっていた”キンケイド書店”というしおりの裏には、”エレイン、君を待っているよ、愛を込めてダニー”とメモされていた。
1927年。
ローズは、スクリーンの中のリリアンの演技に見入る。
1977年。
キンケイド書店がニューヨークにあることを確認したベンは、その場に電話をかけようとする。
その時、雷が落ちて、ベンは気を失ってしまう。
1927年。
映画は終わり、感動して涙するローズは外に出ると、映画がトーキーになるという宣伝の垂れ幕に気づき、雨の中、家に向かう。
1977年。
病院で意識が戻ったベンは耳が聴こえないことに気づき、ジェニーから、事故に遭ったというメモを見せられる。
口がきけないと思ったベンは、自分の声が聴こえないだけだということを知らされる。
1927年。
家に戻ったローズは、医師である父(ジェームズ・アーバニアク)に如かれて、明日、ジル医師(アンソニー・ナタール)が来るので予習しておくようにと言われ、読唇術と話し方の本を渡される。
それを破ったローズは、父がメイドに色目を使う姿を見つめる。
1977年。
翌日ベンは、バスに乗ってニューヨークに行くことを考える。
1927年。
翌朝、新聞記事を切り抜いたことで叱られたローズは憤慨し、家出してウォルターの元に向かおうとする。
ジル医師が訪ねて来たことを知ったローズは、髪の毛を切る。
1977年。
ベンが姿を消したために、ジェニーは病院の事務員を責める。
1927年。
ジル医師と共にローズの部屋に向かったキンケイドは、娘がいないことに気づく。
フェリー乗り場に向かったローズは、リリアンの新聞記事を手にしてマンハッタンに向かう。
1977年。
バスに乗ってニューヨークに着いたベンは、ターミナルで一夜を過ごす。
1927年。
マンハッタンに着いたローズは、人ごみの中を歩き、よそ見をしていたために馬車に轢かれそうになり転んでしまう。
男性に助けられたローズは、リリアンが劇場に出演する新聞記事を見せて、その方角を教えてもらう。
1977年。
翌朝、街に出たベンは、キンケイド書店を探そうとする。
お腹がすいたためにホットドッグを買おうとしたベンは、男に財布を奪われたしまい追いかける。
男に逃げられたベンは捨てられた財布を拾い、現金が奪われていることを確認する。
1927年。
プロムナード・シアターに着いたローズは楽屋口から内部に入り、リハーサル中のリリアンの姿を見つめる。
ローズが物音を立てたために彼女に気づいたリリアンは、娘を楽屋に連れて行く。
叱られたローズは、会いたかったとメモして見せるが、リリアンは、車に轢かれるか誘拐されてしまうことを心配していると娘に伝える。
誰でもそうだと反論するローズは苛立つが、リリアンは部屋を出てドアの鍵を閉めてしまう。
1977年。
キンケイド書店を見つけたベンは閉店していることを知り、通りがかったジェイミー(ジェイデン・マイケル)に気づかず、ぶつかってしまう。
ベンに注意するものの、彼が書店を探していると思ったジェイミーは、移転したことを伝えて、父(ラウル・トレス)と共にその場を去る。
1927年。
楽屋の窓から外に出て歩いて去るローズに気づいた女性は、通りがかった警官に彼女のことを伝える。
1977年。
ジェイミーと父親の後をつけたベンは、彼らが”アメリカ自然史博物館”に入ったために二人を追う。
1927年。
自然史博物館で働くウォルターからのハガキを見ながら、その場に着いたローズは中に入る。
1977年。
従業員である父と別れたジェイミーはベンに気づき、彼が落した財布を拾い、彼にそれを見せて逃げて追いかけっこをする。
1927年。
内部に入ったローズは、展示物を興味深く見て回る。
1977年。
ジェイミーを追ったベンは、”ロスいん石ホール”で、数千年前に地球に落下した”アーニートゥ隕石”に興味を持つ。
1927年。
”ロスいん石ホール”でローズは、”アーニートゥ隕石”に触れる。
人々が隕石の上にコインを投げる姿を見ながらスケッチしたローズは、”自分はどこに属するの?”とメモする。
メモで船を作ったローズは、それを隕石の上に置くが、警備員オットー(ダミアン・ヤング)に注意されてその場を去る。
1977年。
ジェイミーに気づいたベンは逃げた彼を追い、着いた場所には狼のジオラマがあった。
プレートにはミネソタ州、ガンフリント湖と記載されてあり、それが自分の住んでいる場所だったことや夢を思い出したベンは動揺する。
なぜここで止まったのかと尋ねたベンは、ジェイミーに耳が聴こえないことを伝える。
知らなかったと言うジェイミーは、互いに自己紹介をする。
学校で習った手話が少しできるジェイミーは、ベンが、雷が落ちたために聾になってまだ間もないといことを知る。
耳が聴こえないことが怖くないかと訊かれ、ジェイミーと話したベンは、現れた女性(ジュリアン・ムーア)が、いつもこのホールに見学に来るので不気味だと言われる。
ベンが家出したことを確認したジェイミーは、どこから来たのか尋ねる。
その場のプレートの”ミネソタ州、ガンフリント湖”をベンが指差したために、ジェイミーは驚く。
1927年。
警備員のオットーに見つかったローズは、彼が現れた警官と話している間にその場を離れる。
1977年。
従業員専用スペースの秘密の部屋にベンを連れて行ったジェイミーは、彼から新聞記事を見せられ、母親が事故死したことを知り気の毒に思う。
父を捜しに来たことを知ったジェイミーは、離婚したのではないと言う彼に、うちは離婚したと伝える。
キンケイド書店に父がいると思ったと伝えたベンは、ジェイミーから、そこが閉店ではないことを知らされる。
ここに来た方法を訊かれたベンは、借りを返してくれた従姉のジャネットが協力してくれたことをジェイミーに伝える。
自分がここにいることは誰も知らないと言うベンは、ジェイミーからサンドイッチを分けてもらい、アルファベットの手話を教わる。
ジェイミーに、家族や狼のジオラマの前に佇む先ほどの女性の写真を見せてもらったベンは、彼がクイーンズに住んでいることを知る。
ベンから”ワンダーストラック”の本を見せてもらったジェイミーは興味を示し、かなり古い本はこの博物館のものだと思う。
ジェイミーは、キンケイド書店のしおりが挟まっていたことを知る。
疲れたと言うベンを寝かせたジェイミーは、後で戻ると伝えて部屋を出る。
1927年。
”博物館の始り”(ワンダーストラックの本と同じデザイン)というホールに向かったローズは、展示物を興味深く見て回るが、警備員オットーと警官に気づき身を潜める。
1977年。
戻ったジェイミーはベンを起こして、父に友達の家に泊まる許可を得てきたと伝えて、二人で資料室などを見て回る。
1927年。
オットーと警官と話した事務員の連絡を受けて自分を捜すウォルターに見つかったローズは、彼の仕事場に連れて行かれて、ここに来た理由を訊かれる。
1977年。
狼の資料を持ち出したベンとジェイミーは、部屋に戻りそれを興味深く見る。
その中に自分の家のスケッチがあったためにベンは驚き、エレインに対しての調査依頼書も見つける。
博物館のジオラマ製作のためであり、図書館員だったエレインに協力を求めた内容を確認したベンは、差出人の”ダニエル・ロベル”が父親ではないかと考える。
ジェイミーの父が知っている可能性があるため、ベンは、明日、聞いてほしいと頼む。
プレイヤーのレコードをかけたジェイミーは、それに触れて音を感じるベンから、手話で友達だと言われる。
1927年。
ウォルターのアパートに連れて行かれたローズは、仲の良い兄と共に楽しい時間を過ごす。
1977年。
ベンが眠った後で、”ワンダーストラック”の本を見ていたジェイミーは、その中のイラストがこの部屋だと気づく。
驚いたジェイミーは、ベンを起こしそれを知らせる。
それが”驚きのキャビネット”だと気づいたベンは、父がこの本を持っていたことと、家のスケッチがファイルにある理由を考える。
キンケイド書店は閉店したのではなく移転したとことをベンに教えたジェイミーは、それを始めて会った時に言ったのだが、聾唖とは知らなかったと伝える。
理解できないベンは戸惑い、今まで黙っていたジェイミーを非難する。
友達がいなかったからで、ベンに色々なものを見せたかったジェイミーは、父親が見つかれば去ってしまうと思ったと伝える。
意味が分からないベンは納得せず、友達なら一緒に父を捜してくれるはずだと言ってその場を去る。
1927年。
優しい兄にベッドを用意してもらい眠ろうとするローズは、街の様子が気になる。
翌日、キンケイド書店を見つけたベンは、店内に入り二階に向かうものの、店主の声に気づかづその場で眠ってしまう。
奥から現れた店主のウォルター(トム・ヌーナン)は、二階にいるベンに気づかない。
兄ウォルターの店に向かったローズ(ジュリアン・ムーア)は手話で彼と話し、目覚めたベンが荷物を落としたために驚く。
ウォルターはベンの耳が聴こえないことに気づき、ベンはローズが聾唖者だと知る。
心配してくれるウォルターに大丈夫だと伝えたベンは、荷物を拾ってくれたローズが、”ワンダーストラック”の本を手にして驚く様子を見て不思議に思う。
ウォルターと話した後でメモしたローズは、”ベン?”という文字をベンに見せる。
驚くベンに母親はどこか尋ねたローズは、彼から、エレインが事故死した新聞記事を渡されて、それをウォルターに見せる。
”どうやって自分達を見つけたのか”というメモをウォルターから見せられたベンは、書店のしおりをローズに渡す。
裏に書かれた”エレイン、・・・愛を込めて ダニー”というメモをウォルターに見せたローズは、ベンが父を捜しに来たと言っていることを兄から知らされる。
二人が誰なのか疑問に思うベンは、”自分はローズで、兄のウォルター”だというメモをローズから見せられる。
ローズが博物館の狼のジオラマの前にいたことを思い出したベンは興奮して、どういうことか教えてほしいと伝える。
ベンを落ち着かせたローズは目に涙をためながら、彼に”一緒に聞きてほしい”というメモを見せる。
店を出たローズはベンを連れてバス停に向かい、メモした後でクイーンズ行きのバスに乗る。
フラッシング・メドウズ・コロナ・パーク。
”クイーンズ美術館”に着いたローズは、ベンを”ニューヨークのパノラマ”に案内してメモを渡す。
それは、あせらずにゆっくりと読んでほしいという言葉で始まっていた。
”この美術館に15年勤めているが、物語はそれよりも前の話で、1927年に子供だった自分は、初めてニューヨークに来て兄ウォルターに助けられた。
ウォルターは自然史博物館に勤めていたので、両親から遠く離れたいと兄に頼み、ニューヨークに残り勉強したかった。
聾唖者の子供達が通う学校を兄に見つけてもらい、学び始めた。
幼い頃に両親が離婚したのだが、母は有名人だったために、当時は大スキャンダルだった。
印刷業者になるための勉強中にビルと出会い、彼と結婚して男の子が生まれた。
聾唖者に健常な子が育てられるかという周囲の不安を他所に、息子は両親との違いを難なく乗り越えた。
結婚後に、ウォルターが自然史博物館の展示部の仕事を見つけてくれて、模型作りが好きだったので自分には向いていた。
息子を連れて何年も仕事を続け、やがて1964年に開催される”ニューヨーク万国博覧会”の計画が始まり、博覧会の目玉の一つがニューヨークを忠実に再現した世界最大のパノラマだった。
チャンスを逃したくないと思い、パノラマのために自然史博物館を辞めたのだが、夫のビルは亡くなり息子と二人暮らしを続けた。
人気のパノラマはそのまま展示されることになり、その管理者となった。
その頃、息子は自然史博物館の最年少のジオラマ設計主任になり、調査のためミネソタ州のガンフリント湖を訪ねたのだった。”
物語の息子がダニーだということと、ローズが自分の祖母であることを確認したベンは、父の居場所を尋ね、会うためにミネソタからここまで来たことを伝える。
パノラマの中に連れて行かれたベンは、ローズからメモを読むようにと指示される。
”調査の協力を頼んだ図書館員のエレインが湖の小屋に住んでいて、ダニーは彼女に歓迎された。
調査は順調に進み、ダニーは狼のジオラマを完成し、自分は今でも息子が作った唯一つの作品をよく見に行く。
”ワンダーストラック”の本にキンケイド書店のしおりを挟んだダニーは、エレインのために愛の言葉をメモしたのだった。
心臓病だったダニーは、夫と同じく徴兵も免除されるが、調査から数年後に発作で亡くなった。”
ベンの気持ちを察するローズは、涙する彼を抱きしめる。
”パノラマは単なるニューヨークの模型ではなく、あなたの父親の人生の物語である。
この仕事を受けた時に、こっそりとパノラマに個人的な思いを託し、建物の中にダニーの思い出の品を隠した。”
自然史博物館の場所に向かったローズは、その中にあった、ベンが描いた狼の絵を渡す。
”ダニーの葬儀に男の子を連れた女性エレインが現れ、ダニーの手紙にあった女性だった。
以前にも息子と自然史博物館に来たエレインは、狼のジオラマを見せたと言うことだった。”
何も覚えていないと言うダニーは、以前、見たから狼の夢を見るのかと考える。
その時、落雷で館内は停電し、ベンはジェイミーがいることに気づく。
ジェイミーから尾行していたと言われたベンは、ローズと共に屋上に向かい、マンハッタンの明かりが消えて、ニューヨーク中が停電したことを知る。
ローズからジェイミーのことを訊かれたベンは、友達だと答える。
三人は、暗闇の中で夜空を見つめる。