1948年に発表されたアガサ・クリスティーの短編小説、1953年初演の戯曲”Witness for the Prosecution”を基に映画化された作品。 未亡人殺害容疑をかけられた男性の弁護を引き受けた法廷弁護士が謎の事件関係者に翻弄されながら解決策を探る姿を描く、監督、脚本ビリー・ワイルダー、タイロン・パワー、マレーネ・ディートリッヒ、チャールズ・ロートン、エルザ・ランチェスター共演によるサスペンスの傑作。 |
・マレーネ・ディートリッヒ / Marlene Dietrich / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:ビリー・ワイルダー
製作:アーサー・ホーンブロウJr.
脚本:
アガサ・クリスティー(戯曲)
ラリー・マーカス
ビリー・ワイルダー
ハリー・カーニッツ
撮影:ラッセル・ハーラン
編集:ダニエル・マンデル
音楽:マティ・メルニック
出演
レナード・ヴォール:タイロン・パワー
クリスティーネ・ヴォール/ヘルム:マレーネ・ディートリッヒ
ウィルフリッド・ロバーツ卿:チャールズ・ロートン
プリムソル:エルザ・ランチェスター
ブローガン=ムーア:ジョン・ウィリアムス
マイヤーズ検事:トーリン・サッチャー
エミリー・ジャーン・フレンチ夫人:ノーマ・ヴァルデン
メイヒュー:ヘンリー・ダニエル
カーター(執事):イアン・ウォルフ
ジャネット・マッケンジー(家政婦):ユーナ・オコナー
ダイアナ:ルタ・リー
アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1957年製作 116分
公開
北米:1958年2月6日(1957年12月限定公開)
日本:1958年3月12日
製作費 $3,000,000
興行収入
世界 $9,000,000
■ アカデミー賞 ■
第30回アカデミー賞
・ノミネート
作品・監督
主演男優(チャールズ・ロートン)
助演女優(エルザ・ ランチェスター)
編集・録音賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1952年。
エリザベス女王が即位して間もないイギリスのロンドン、法廷弁護士のウィルフリッド・ロバーツ卿(チャールズ・ロートン)は、病気療養を終える。
そしてウィルフリッド卿は、口うるさい付き添い看護師のプリムソル(エルザ・ ランチェスター)と共に帰宅する。
自宅兼事務所に戻ったウィルフリッド卿は、執事カーター(イアン・ウォルフ)らに迎えられる。
早速、事務所に向かったウィルフリッド卿だったが、プリムソルに葉巻を没収されて、寝室に連れて行かれる。
ウィルフリッド卿は、階段に取り付けられた昇降機に興味深々だったが、そこに、事務弁護人のメイヒュー(ヘンリー・ダニエル)が現れる。
メイヒューは、未亡人殺しの容疑者レナード・ヴォール(タイロン・ パワー)の弁護をウィルフリッド卿に依頼しようとするが、彼は退院直後を理由にそれを断ってしまう。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
病気療養を終え、事務所に戻った法廷弁護士ウィルフリッド卿は、未亡人殺害容疑をかけられた男性レナード・ヴォールの弁護を依頼される。
しかい、付添い看護師プリムソルは、病明けのウィルフリッド卿の体を気遣い気が気ではない。
しかし、謎の多いヴォールの妻クリスティーネの言動に興味を持ったウィルフリッド卿の心は、既に法廷に向いていた。
手強い検事と証人の確たる証言を、ことごとくかわしたウィルフリッド卿だったが、検察側の証人に立ったクリスティーネが、なんと夫ヴォールが犯人だという証言をしてしまう。
それにより、被告ヴォールとウィルフリッド卿は窮地に追い込まれるのだが・・・。
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堅苦しく難解(特に字幕の場合)なストーリーになりがちな法廷劇を、ユーモアと皮肉を巧みにミックスしながら、シンプルな展開と驚きの結末で観客を魅了する演出と脚本、ビリー・ワイルダーの職人芸が堪能できる。
第30回アカデミー賞では作品賞をはじめ6部門でノミネートされた。
・ノミネート
作品・監督
主演男優(チャールズ・ロートン)
助演女優(エルザ・ ランチェスター)
編集・録音賞
ユーモアを誘う階段の昇降装置、依頼人を試す眼鏡の反射や、医者と薬嫌いの弁護士が弄ぶ錠剤、ココアの代わりにブランデーを入れてあるポット、さらには便箋と、きらりと刃先が輝く凶器のナイフなど、小道具の使い方も抜群にうまい。
法廷劇らしい、正義感が感じられる勇ましいマティ・メルニックの音楽も印象に残る。
若い頃は美男イメージが先行し、演技力に疑問もあったタイロン・パワーも、40歳を過ぎた「長い灰色の線」(1955)辺りから、実力を見せ始め、本作で演技派としても認められた。
やや、やつれているようにも感じるが、渋みのある迫真の演技を見せてくれる。
しかし、彼は翌年、心臓麻痺で44年の生涯を閉じ、結局は本作が遺作となった。
ユーモラスな出演者が多い中、元クラブ歌手という設定のマレーネ・ ディートリッヒは、二役を変装でこなし、際立つ存在感を見せてくれる。
さらに、56歳にして100万ドルの脚線美も披露してくれる。
個性溢れる登場人物の中で、葉巻と酒に目がないチャールズ・ロートンと、付添い看護師エルザ・ランチェスターの、実生活でも夫婦である、息の合ったの二人のやり取りは絶妙だ。
自信満々で茶目っ気のある、病み上がりの弁護士C・ロートンが、階段の電動昇降機で遊んだり、注射を怖がるシーン、口うるさい付添い看護師E・ ランチェスターが、言うことを聞かない主人の態度に対し、ふてくされてしまったり、実は彼の悪さを全てお見通しだったというラストも笑わせてくれる。
ウィルフリッド卿(C・ロートン)の、元助手の弁護士ジョン・ウィリアムス、協力者で事務弁護人のヘンリー・ダニエル、検事トーリン・サッチャー、殺人の被害者夫人のノーマ・ヴァルデン、ウィルフリッド卿の悪さに加担したりもする執事イアン・ウォルフ、被害者の家政婦で唯一人の舞台のオリジナル・キャスト、彼女にとっても本作が遺作となるユーナ・オコナー、そして、主人公の若い恋人ルタ・リーなどが共演している。
エンドロールで、結末は人に言わないようようにという注意があるように、そのどんでん返しには初めて見る方は驚くはずだ。
しかし、ラストを知っていても、その全体的な作品自体の面白味や質の高さで、何度見ても十分楽しめる。