ドナルド・ハミルトンの小説”The Silencers”(1962)と”Death of a Citizen”(1960)を基に製作された「サイレンサー」シリーズ第1作。 核実験を利用して世界征服を企む国際犯罪組織の陰謀を阻止しようとするエージェント”マット・ヘルム”の活躍を描く、監督フィル・カールソン、主演ディーン・マーティン、ステラ・スティーヴンス、ダリア・ラヴィ、ビクター・ブオノ他共演のスパイ・アクション・コメディ。 |
・ディーン・マーティン Martin and Lewis / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:フィル・カールソン
製作:アーヴィング・アレン
原作
ドナルド・ハミルトン
”The Silencers”
”Death of a Citizen”
脚本:オスカー・ソウル
撮影:バーネット・ガフィ
編集:チャールズ・ネルソン
音楽:エルマー・バーンスタイン
出演
マット・ヘルム:ディーン・マーティン
ゲイル・ヘンドリックス:ステラ・スティーヴンス
ティナ:ダリア・ラヴィ
タン=ツェ:ビクター・ブオノ
ジョー・ウィグマン:アーサー・オコンネル
サム・ガンサー:ロバート・ウェッバー
マクドナルド:ジェームズ・グレゴリー
バーバラ:ナンシー・コヴァック
アンドレイエフ:ロジャー・C・カーメル
サリタ:シド・チャリシー
ラヴィー・クラヴェジィット:ビヴァリー・アダムス
ドミノ:リチャード・デヴォン
アメリカ 映画
配給 コロンビア・ピクチャーズ
1966年製作 102分
公開
北米:1966年3月16日
日本:1966年6月4日
製作費 $3,500,000
北米興行収入 $16,318,120
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
国際犯罪組織”ビッグO(オー)”の工作員アンドレイエフ(ロジャー・C・カーメル)は、アメリカの情報組織ICE(Intelligence and Counter Espionage)のエージェント、マット・ヘルム(ディーン・マーティン)を抹殺するため、部下のドミノ(リチャード・デヴォン)らにヘルムの名を刻んだ弾丸を渡す。
ICE。
ヘルムの上司マクドナルド(ジェームズ・グレゴリー)は、ある女性エージェントのパートナーとして、休職中のヘルムを復職させようとする。
写真家として優雅に暮らしていたヘルムは、マクドナルドからの電話を無視して、秘書のラヴィー・クラヴェジィット(ビヴァリー・アダムス)と楽しい時間を過ごす。
雑誌社からの連絡を受けたヘルムは、ラヴィーと共にアカプルコに向かうことになる。 ヘルムに連絡がと取れないマクドナルドは、原爆実験地に近いサンタフェ付近でビッグOの工作員の活動が確認されたことを知る。 アンドレイエフとドミノは尾行されながら本部に向かい、リーダーのタン=ツェ(ビクター・ブオノ)が招集した会議を見守る。 アメリカの大部分を死の灰で汚染する計画で世界征服を企むタン=ツェは、不足している情報の件をアンドレイエフに確認する。 ナルディ博士からの実験データを受け取る予定のアンドレイエフは、それをフェニックスから持ち帰ることをタン=ツェに伝える。 尾行の件を問われたアンドレイエフは、相手がICEだということを確認したタン=ツェから、行動を開始したエージェントの中にはヘルムもいると言われて警戒する。 帰宅したヘルムは、見知らぬ女性バーバラ(ナンシー・コヴァック)がいることに気づき、マクドナルドの指示だと考える。 バーバラに迫られたヘルムは、アカプルコのことを話しながら彼女と抱き合うが、ナイフで襲われそうになる。 バーバラは射殺され、撃ったのが同僚のティナ(ダリア・ラヴィ)だと気づいたヘルムは驚く。 ティナから、バーバラがビッグOの工作員だと知らされたヘルムは、マクドナルドの指示に従う気はなかった。 ヘルムは自分が敵に命を狙われていると言うティナから、協力を求められる。 フェニックスである科学者が寝返ると言われたヘルムは、それでも協力を拒むが、既にビッグOの工作員(ドミノら4人)が監視していることを知り、武器が仕掛けられたカメラを用意する。 それで工作員を2人倒したヘルムは、ティナと共に車で逃走し、ドミノは機動部隊に連絡する。 報告を受けたアンドレイエフは、ヘルムをフェニックスで殺すことをドミノに伝える。 フェニックス。 部屋の準備の間プールに向かったヘルムは、その場にいた女性ゲイル・ヘンドリックス(ステラ・スティーヴンス)に水をかけられ、謝罪される。 ヘルムは、10時に”殺人クラブ”に行くようにという本部からの指示を受けたことをティナから知らされ、情報のテープが渡される場所であることを確認する。 ゲイルは、連れのサム・ガンサー(ロバート・ウェッバー)と共に移動バーで戻り、ヘルムに謝罪して酒をおごる。 サムを紹介されたヘルムは、ティナのことは妻だと伝える。 団体旅行で来たことをヘルムに伝えたゲイルは、タバコの火を借りようとして、彼のズボンにカクテルをこぼしてしまう。 部屋に戻ろうとしたヘルムは、ティナに誘われて彼女の部屋に向かう。 ドミノとヘルムの部屋にいたアンドレイエフは、その場の電話を仕掛けをしてあるものと交換する。 その後、ティナとクラブに向かったヘルムは、ゲイルとサムに気づく。 その様子をアンドレイエフはが監視する。 有名なダンサー、サリタ(シド・チャリシー)のショーが始まり、ヘルムは、彼女が客の男性からテープを受け取ったことに気づく。 サリタが自分たちにテープを渡す予定だということをティナに確認したヘルムは、彼女を楽屋口に向かわせる。 アンドレイエフの合図で席を立ったサムは、物陰からサリタに発砲する。 その場は混乱し、サリタに近づいたゲイルはテープを受けとり何かを言われ、ヘルムはサムを殴り倒す。 ティナと共にゲイルを連れ出そうとしたヘルムは、アンドレイエフに襲われるものの叩きのめす。 ホテルの部屋に戻ったヘルムは、ゲイルのドレスを剝ぎ取り、エージェントではないと言う彼女からテープを奪う。 弁護士を呼ぶと言うゲイルは、電話機に仕掛けられていたガスをヘルムとティナに吹きかける。 逃げようとしたゲイルは、現われたマクドナルドに捕らえられ、ガスを吸ったヘルムは意識を失う。 意識が戻ったヘルムは、マクドナルドからティナは無事だと言われ、確保したのはコンピューター・テープだと知らされる。 国際的な原爆の陰謀で、ビッグOが関わる”死の灰”に関する内容であり、2日後の地下実験の指示がテープに入っていると、マクドナルドはヘルムに話す。 テープを渡した科学者ナルディには逃げられたが、顔を見ればわかると、ヘルムはマクドナルドに伝える。 ヘルムは、暗号名”カウボーイ”である工作員サムが、作戦のことを探る手掛かりになると言うマクドナルドから、ビッグOの本拠地がサンフアンだと知らされる。 ゲイルを尋問したマクドナルドとヘルムは、テープはサリタから渡され、サムにはホテルで誘われただけで無関係だと言われるものの、彼女を疑う。 自分が親切そうだったからだと話すゲイルは、サリタから”絶対に彼らに渡さないように”と言われたことをマクドナルドとヘルムに伝える。 意味は分からないが、サリタが”サンフアンのウィグワン”とも言ったと話すゲイルは、それでも信じようとしないヘルムに憤慨して殴ろうとする。 誤ってマクドナルドを殴ってしまったゲイルは彼に謝罪し、サムが敵のスパイだと知らされる。 ヘルムから、サンフアンの”ウィグワム”の場所を一緒に捜すと言われたゲイルは、それを拒むものの、その話が本当なら信じてもらえることになる。 断れば連邦刑務所行きだと言われたゲイルは、ヘルムと行動するしかなかった。 ゲイルがスパイでも裏切りと見なされ、どちらにしても追われる立場であるため、ヘルムはマクドナルドの指示に従う。 ティナの様子を見に行ったヘルムは、ゲイルと行動することを伝えて、用心するようにと言われて準備を始める。 マクドナルドから、前後に弾丸を発砲できる”逆ピストル”と、爆弾ボタンを使用したジャケットを支給されたヘルムは、ゲイルと共に出発する。 警官に扮したドミノからの連絡を受けたアンドレイエフは、ヘルムの車を追う。 ドミノのパトカーに衝突されたヘルムは、挟み撃ちしようとするアンドレイエフをかわし、2台を正面衝突させる。 ヘルムは、サムや死の灰作戦のことを訊いても何も話さないゲイルに酒を飲ませ、酔わせて聞き出そうとする。 ゲイルが何も話そうとしないために、ヘルムは街道から外れた場所で車を止めて、ベッドを装備した車内で一晩過ごそうとする。 酔わないと言いながら眠ってしまったゲイルは、夜中に目覚め、雷雨の中で逃げようとする。 しかし、ゲイルは雨に濡れて泥だらけになっただで車に戻り、スパイではないとヘルムに伝えて、彼と愛し合う。 翌日、ガソリンスタンドに寄ったヘルムは、ウィグワンの場所が見つからないために苛立つ。 口論となったゲイルはモーテルに向かってしまい、ヘルムは、停車した車からクラブにいた科学者ナルディが降りて、別の車に乗るのを目撃する。 マクドナルドに電話をしたヘルムは、ナルディが乗った車のナンバーを教える。 ヘルムは、地下実験が5時間後には行われると言われ、敵の行動を阻止するようマクドナルドから指示される。 ティナのことを訊かれたマクドナルドは、ビッグOに誘拐されたことをヘルムに伝える。 ガソリンスタンドの店主に扮していたジョー・ウィグマン(アーサー・オコンネル)は、ゲイルを追い出発したヘルムのことをビッグOの本部に報告する。 ゲイルに追いついたヘルムは、猟をしている男たちが発砲していたため、敵に囲まれたのでもう終りだと言って、彼女から話を聞き出そうとする。 そこに現われたウィグマンらに銃を向けられたヘルムは、彼の名を知り、ゲイルが”ウィグワム”と聞き間違えたことに気づく。 サムも現れてヘルムから銃を奪い、実験で使うミサイルのことを話してしまう。 ウィグマンに制止されたサムは、ヘルムに挑発される。 ヘルムとゲイルを捕えたことを知ったタン=ツェは、本部に連行するようウィグマンに指示する。 ヘルムとゲイルを連れたウィグマンらが本部に到着し、タン=ツェは実験の開始を確認する。 タン=ツェは、発射したミサイルの目標を変えられることをヘルムに話し、それを実験予定の原爆に直撃させようとする。 死の灰がアメリカ南西部一帯を廃墟にし、それをソ連の謀略に見せかけ、米ソを対立させて両国の終焉を招き、ビッグOが世界を征服する計画だった。 現われた”カウボーイ”だったティナを、二重スパイだと見抜いていたヘルムは、彼女の部屋に連れて行かれ、味方になるようにと言われるものの、それを断る。 部屋を出ようとするヘルムを、殺されると言って引き留めたティナは、揉み合って彼のジャケットのボタンをむしり取ってしまう。 ボタンが爆弾だと気づいたティナはそれを投げるが、爆破のショックで気を失う。 敵を倒すヘルムは、タン=ツェに向かって爆弾を投げる。 ティナは意識が戻るものの、力尽きる。 抵抗するゲイルに”逆ピストル”を奪われそうになったサムは、発砲して自分に弾丸を受けて息絶える。 無事だったタン=ツェは反撃し、ヘルムを追い詰めて、二重スパイになりICEの情報を流すようにと伝える。 ゲイルは、逆ピストルで敵を2人倒す。 現われたゲイルを下がらせたヘルムはカートに乗り、彼女を救って爆弾で追っ手を撃退する。 制御室に向かったヘルムとゲイルは、そこを爆破してミサイルの目標地点を変更する。 その場に現れたタン=ツェは、ヘルムとゲイルに銃を向けて目標地点を戻す。 タン=ツェに銃を向けられたヘルムは、ジャケットを脱ぐようにと言われる。 逆ピストルでタン=ツェを射殺したヘルムは、発射されたミサイルの目標地点を再び変える。 その後、任務を終えたヘルムは自宅に戻り、ゲイルと共に出かけようとする。 ゲイルが酒のグラスでベッドのボタンを押してしまい、彼女とヘルムは、浴槽に移動したベッドから滑り落ちてしまう。
...全てを見る(結末あり)
ホテルのチェックインを待つヘルムを監視するアンドレイエフは、買収していたフロント係から、ヘルムの部屋の鍵を受け取る。
参考:
・「サイレンサー/沈黙部隊」(1966)
・「サイレンサー/殺人部隊」(1966)
・「サイレンサー/待伏部隊」(1967)
・「サイレンサー/破壊部隊」(1968)
*(簡略ストー リー)
休職中のアメリカ情報組織ICE(Intelligence and Counter Espionage)のエージェント、マット・ヘルムは、現われた同僚のティナと共に、国際犯罪組織”ビッグO(オー)”の、核実験を利用した世界征服計画を阻止する任務につく。
ティナと共にフェニックスに向かったヘルムは、ビッグOから寝返った科学者が、ダンサーのサリタに渡すテープを手に入れようとする。
旅行者だと言うゲイルと出会ったヘルムは、クラブのステージ上で殺されたサリタからテープを受け取った彼女を敵のスパイだと思い疑うのだが・・・。
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ドナルド・ハミルトンの小説を基に製作され作品で、”007シリーズ”の成功によるスパイ映画ブームに乗ったシリーズ第1作。
核実験にミサイル攻撃を仕掛けて世界征服を企む、国際犯罪組織”ビッグO(オー)”の陰謀を阻止しようとする、アメリカの情報組織ICEのエージェント”マット・ヘルム”の活躍を描くスパイ・アクション・コメディ。
コメディであるために”007シリーズ”に比べるとかなり滑稽な内容ではあるが、アクションなどを含めて十分に楽しめる作品に仕上がっている。
何と言っても、酒好きでプレイボーイのエージェント”マット・ヘルム”を演ずるディーン・マーティンが、持ち味を活かした演技で熱演し、歌なども随所に挿入され、ファンを大いに楽しませてくれる。
主人公にスパイと疑われながら協力する、風変わりな女性を魅力的に演ずるステラ・スティーヴンス、前年の「ロード・ジム」(1965)とは全く違う役柄が興味深い、主人公の同僚ではあるが二重スパイだったダリア・ラヴィ、国際犯罪組織”ビッグO”のリーダー、ビクター・ブオノ、その部下である工作員アーサー・オコンネル、同じくロバート・ウェッバー、主人公の上司ジェームズ・グレゴリー、ビッグOの工作員ナンシー・コヴァック、ロジャー・C・カーメル、リチャード・デヴォン、主人公の秘書ビヴァリー・アダムス、そして、ダンサーとして登場するシド・チャリシーが見事なパフォーマンスを披露してくれる。