1979年に発表された、トム・ウルフの同名小説を基に製作された作品。 冷戦下の米ソの宇宙開発競争でNASAの威信をかけたマーキュリー計画に選ばれた者達”ライトスタッフ”(正しい資質)を描く、製作アーウィン・ウィンクラー、ロバート・チャートフ、監督、脚本フィリップ・カウフマン、主演サム・シェパード、スコット・グレン、フレッド・ウォード、エド・ハリス、デニス・クエイド、バーバラ・ハーシー他共演によるアドベンチャー・ロマンの傑作。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:フィリップ・カウフマン
製作総指揮:ジェームズ・D・ブルベイカー
製作
アーウィン・ウィンクラー
ロバート・チャートフ
原作:トム・ウルフ”The Right Stuff”
脚本
トム・ウルフ
フィリップ・カウフマン
撮影:キャレブ・デシャネル
編集
グレン・ファー
リサ・フラッチマン
スティーブン・A・ロッダー
トム・ロルフ
ダグラス・スチュアート
美術・装置
ジェフリー・カークランド
リチャード・ローレンス
W・スチュワート・キャンベル
ピーター・R・ロメロ
ジム・ポインター
ジョージ・R・ネルソン
音楽:ビル・コンティ
出演
チャック・イェーガー:サム・シェパード
アラン・シェパード:スコット・グレン
ヴァージル(ガス)・グリソム:フレッド・ウォード
ジョン・グレン:エド・ハリス
ゴードン・クーパー:デニス・クエイド
グレニス・イェーガー:バーバラ・ハーシー
ベティー・グリソム:ヴェロニカ・カートライト
トルーディー・クーパー:パメラ・リード
アニー・グレン:メアリー・ジョー・デシャネル
ルイーズ・シェパード:キャッシー・ベーカー
ディーク・スレイトン:スコット・ポーリン
スコット・カーペンター:チャールズ・フランク
ウォルター・シラー:ランス・ヘンリクセン
パンチョ・バーンズ:キム・スタンリー
ジャック・リドリー:リヴァン・ヘレム
ジョンソン副大統領:ドナルド・モファット
宇宙飛行士採用担当:ハリー・シェアラー
宇宙飛行士採用担当:ジェフ・ゴールドブラム
本人:エリック・サヴェリード
アルバート・スコット・クロスフィールド:スコット・ウィルソン
チャルマーズ”スリック”グッドリン:ウィリアム・ラス
フレッド:チャック・イェーガー
アメリカ 映画
配給 ワーナー・ブラザーズ
1983年製作 193分
公開
北米:1983年10月21日
日本:1984年9月1日
制作費 $27,000,000
北米興行収入 $21,500,000
■ アカデミー賞 ■
第56回アカデミー賞
・受賞
作曲・録音・音響編集・編集賞
・ノミネート
作品
助演男優(サム・シェパード)
美術・撮影賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
カリフォルニア州、エドワーズ空軍基地。
パンチョ・バーンズ(キム・スタンリー)の店で音速の壁を破る賭けをした空軍テスト・パイロットのチャック・イェーガー(サム・シェパード)は、妻グレニス(バーバラ・ハーシー)との乗馬で肋骨を折ってしまう。
1947年10月14日。
イエーガーは、同僚のジャック・リドリー(リヴァン・ヘレム)の協力で怪我を隠し、X-1(XS-1:当時)”グラマラス・グレニス”で、有人水平飛行による人類史上初の音速の壁を破る。
しかし軍は、ソ連にその情報を知られる危険性を考え、マスコミの発表を阻止する。
1953年、エドワーズ空軍基地。
ゴードン・クーパー(デニス・クエイド)、ガス・グリソム(フレッド・ウォード)、ディーク・スレイトン(スコット・ポーリン)が、死と隣り合わせの彼らの任務を心配する妻達を連れ添い、テスト・パイロットとして基地に赴任する。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
カリフォルニア州、エドワーズ空軍基地。
1947年10月14日。
空軍テスト・パイロットのチャック・イェーガーは、同僚のリドリーに見守られる中、X-1で、有人水平飛行による、人類史上初の音速の壁を破る。
その後イエーガーは、同僚パイロットのスコット・クロスフィールドと記録を争い、彼のマッハ2の記録をあっさり破る。
1957年10月4日。
ソ連が、世界初の人工衛星スプートニク1号の打ち上げを成功させたため、アメリカは宇宙計画推進のためNASAを設立し、アイゼンハワー大統領命から、宇宙飛行士人選の令が下る。
生粋のパイロット、イエーガーは、実験室のモルモットの様なこの計画に興味を示さなかったが、基地に赴任していた、ゴードン・クーパーやガス・グリソムらは、未知への好奇心からそれに志願をする。
そして、アメリカ中から集められた精鋭は、様々なテストを受け、”マーキュリー・セブン”として7人が選抜される。
彼らは、ソ連に対抗すべく、アメリカの威信を賭けたマーキュリー計画に挑むことになる・・・。
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人類史上初めて水平飛行による音速の壁を破った伝説のテスト・パイロット、チャック・イェーガーの生き様を平行して描いた人間ドラマでもある。
第56回アカデミー賞では作品賞をはじめ8部門でノミネートされ、作曲、録音、音響編集賞を受賞した。
・ノミネート
作品・助演男優(サム・シェパード)
美術・撮影・編集賞
フィリップ・カウフマンの演出と脚本は、アメリカが威信を賭けたソ連との宇宙計画主導権争いの緊迫感や当時の国民の関心度を、再現フィルムなどを効果的に使い、アメリカ人の底力やロマンを感じさせる、見事な物語に仕上げている。
どう見てもニュースフィルムに見えない、ロケット打ち上げの”美しい”映像などは、セットだとしたら、どのように撮影したのかと目を疑うほど素晴らしい。
迫力を増す轟音と共に、その工夫と努力は見事なものだ。
「アポロ13」(1995)のような作り物とは違う、本物に迫る迫力がある。
誰もが知る月面着陸のアポロ計画の、前のステップを描いた本作により、当時の人類の偉大な足跡を改めて確認できる。
アカデミー作曲賞を獲得したビル・コンティの音楽は、チャイコフスキーやホルストの曲を参考にしているとも言われる。
彼の代表作「ロッキー」(1976)をも上回る、感動を盛り上げるテーマ曲は素晴らしい。
ラストで、G・クーパーが乗り込むマーキュリー9(フェイス7)の発射シーンに流れるその曲は、何度聞いても鳥肌が立つ。
イェーガーを演じるサム・シェパードは、テスト・パイロットとしてのプライドを貫く男の美学を端整なマスクと物静かな雰囲気で好演し、アカデミー助演賞候補になった。
マーキュリー・セブンに選ばれる、その後に活躍する若き日のスコット・グレン、エド・ハリス、デニス・クエイド、フレッド・ウォード、ランス・ヘンリクセン、スコット・ポーリン、チャールズ・フランクの演技からは、選ばれし資質を持つ宇宙飛行士の逞しさが十分に伝わってくる。
特に、自信過剰の楽天家、ゴードン・クーパー役のデニス・クエイドは、当時、若手のホープとして売り出し中だけあり、ラストも飾る演技も実に爽やかだ。
ヒーローのイエーガーの妻、飾り気のない落ち着いた雰囲気のバーバラ・ハーシー、グリソム夫人ヴェロニカ・カートライト、G・クーパー夫人パメラ・リード、グレン夫人役のメアリー・ジョー・デシャネル、シェパード夫人役のキャッシー・ベーカー、パンチョ役キム・スタンリー、イエーガーの同僚のジャック・リドリー役のリヴァン・ヘレム、イエーガーのライバルであるクロスフィールド役のスコット・ウィルソン、ジョンソン副大統領役のドナルド・モファット、宇宙飛行士採用担当役のハリー・シェアラー、ジェフ・ゴールドブラムなどが共演している。
「アルマゲドン」(1998)で、ブルース・ ウィリスとリヴ・タイラーが別れを惜しみ抱き合うシーンは、ガス・グリソムがエドワード・ホワイト、ロジャー・チャフィーらと共に、アポロ1号火災事故で訓練中に死亡した際の、発射台記念碑で撮影された。
二人が抱き合うシーンは、初期の宇宙計画への賛美とオマージュだ。
また、本作ラストで、G・クーパーの打ち上げを見守るガス・グリソム(F・ウォード)が、この事故で死亡したことが説明される。
作品中、特にガス・グリソムに関する描写が丁寧に描かれているのも、その後に亡くなる犠牲者へ敬意を払っていると言える。
チャック・イェーガーは、テクニカル・アドバイザーとして製作に参加し、作品にゲスト出演もしている。
(パンチョの店のバーテン)
さらには、報道ジャーナリストのパイオニアであるエリック・サヴェリードが、本人役でロケット打ち上げ中継の実況場面で度々登場する。
また、かなり脚色されているらしいイエーガー役については、イエーガー(サム・シェパード)が、初めて音速の壁を破ってから、ドラマが終わる16年間、外見上、全く年をとらない。
それは、ヒーローが多く登場する、このドラマの本質を生かした演出で、それほど気になることもない。
因みに、ラストの、イエーガーがNF-104で高度記録に挑むのは、マーキュリー9(フェイス7)の打ち上げの7ヶ月後の出来事だ。
何度見ても、身震いするほど見事なエンディング、自分の中でベスト10には必ず入たくなる作品だ。