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心の旅路 Random Harvest (1942)

1941年に発表された、ジェームズ・ヒルトン同名小説を基に製作された作品。
記憶を失った男性と妻の愛の軌跡を描く、監督マーヴィン・ルロイロナルド・コールマングリア・ガーソン共演によるラブ・ロマンスの傑作にして映画史上に残る珠玉の名作。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(ロマンス)


スタッフ キャスト ■
監督:マーヴィン・ルロイ

製作:シドニー・フランクリン
原作:ジェームズ・ヒルトン
脚本
クローディン・ウェスト
ジョージ・フローシェル
アーサー・ウィンペリス
撮影:ジョセフ・ルッテンバーグ
編集:ハロルド・F・クレッス
音楽:ハーバート・ストサート

出演
チャールズ・レニア/ジョン・スミス:ロナルド・コールマン
ポーラ・リッジウェー/マーガレット・ハンソン:グリア・ガーソン
ジョナサン・ベネット医師:フィリップ・ドーン
キティ・チルセット:スーザン・ピータース
シムズ医師:ヘンリー・トラヴァース
ビッファー:レジナルド・オーウェン
タバコ屋店主:ユーナ・オコナー
サム:リス・ウィリアムズ
シェルドン:オーブリー・メイザー
デーフェンター夫人マーガレット・ワイチャーリ
チェットウィンド・レイニア:アーサー・マーゲットソン
ジョージ・レイニア:メルヴィル・クーパー
ジュリアン・レイニア:アラン・ネイピア
リディア・レイニア:ジル・エズモンド
牧師:アイヴァン・シンプソン
ブリジット:アン・リチャーズ
ロイド:チャールズ・ウォルドロン
ロイド夫人:エリザベス・リスドン
リバプールの薬屋:アーサー・シールズ

ジュリア:ノーマ・ヴァルデン

アメリカ 映画
配給 MGM
1942年製作 126分
公開
北米:1942年12月17日
日本:1947年7月8日
製作費 $2,000,000


アカデミー賞 ■
第15回アカデミー賞

・ノミネート
作品・監督
主演男優(ロナルド・コールマン
助演女優(スーザン・ピータース
脚本・美術(白黒)
作曲賞(ドラマ/コメディ)


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
1918年、秋。
第一次大戦終結の頃、イギリス中部メルブリッジの軍人精神障害者施設のジョナサン・ベネット医師(フィリップ・ドーン)は、戦争で息子が行方不明になったロイド夫妻(チャールズ・ウォルドロン/エリザベス・リスドン)の訪問を受ける。

ベネット医師は、戦場で傷を負い記憶を失った患者ジョン・スミス(ロナルド・コールマン)をロイド夫妻に面会させる。

しかし、スミスが息子ではないことを知った夫妻は、ショックを受けながら立ち去る。

ある日、気晴らしに散歩をしたスミスは施設を出てしまい、終戦を祝う町の雑踏と霧の中で迷ってしまう。

スミスはたばこ屋で、店主(ユーナ・オコナー)に施設の患者だということを知られてしまう。

その直後、店に入ってきたポーラ・リッジウェー(グリア・ガーソン)に、スミスは逃げるように言われ店を出て行く。
...全てを見る(結末あり)


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
1918年、秋、イギリス中部。
第一次大戦終結の頃、軍人精神障害者施設で、戦場で傷を負い記憶を失った患者ジョン・スミスは、ある日、気晴らしに散歩に出て、終戦を祝う町の雑踏の中で、霧にまぎれて迷ってしまう。
タバコ店にいたスミスの、上品で弱々しい様子が、現れたポーラ・リッジウェーには気になった。
旅芸人一座の花形で女優のポーラは、スミスを劇場の楽屋に連れて行き、自分の舞台を見せようとするが、彼は倒れてしまう。
ポーラは、スミスを献身的に介抱するのだが、彼が精神障害者施設から逃げ出したことを知る。
何も言葉を返せないスミスを哀れに思い、見捨てられないポーラは、一座を辞めて彼と共に逃亡する。
ポーラは、デヴォンという片田舎の村にスミスとたどり着き、彼は不自由だった言葉や体力も回復し、作家を志してみることにする。
ある日、記事が採用され、わずかな原稿料を手にしたスミスは、ポーラに求婚し、二人は幸せな生活を始める。
その後、二人には子供も生まれ、リバプールの新聞社から採用の通知スミスに届く。
そして、現地に赴き新聞社に向かおうとしたスミスは、自動車に撥ねられ意識を失い、記憶は3年前の戦場に戻ってしまう・・・。
__________

ラストで、主人公が記憶を取り戻していく描き方などを含め、戦時中に、これだけ心を癒してくれる作品を作れたことにまず驚どろかされる。

第15回アカデミー賞では作品賞以下7部門にノミネートされたが、惜しくも受賞は逃す。
・ノミネート
作品・監督
主演男優(ロナルド・コールマン
助演女優(スーザン・ピータース
脚本・美術(白黒)・作曲賞(ドラマ/コメディ)

陳腐な邦題に変えられてしまう、昨今の作品と比べて頂きたいのが本作の邦題だ。
原題”Random Harvest”(手当たり次第の収穫)に「心の旅路」という、主人公の心情を見事に表現した、素晴しいタイトルを付けたことに拍手を贈りたい。

2度の記憶喪失に遭い、その間に一人の女性との愛の記憶をたどっていくという、数奇な運命に苦悩する主人公と、夫の記憶が戻ることを、健気に待ち続ける妻との運命的な愛を、甘くまた切なく描いたマーヴィン・ルロイの演出は秀逸だ。

ほとんどがイギリス人キャスト・スタッフで作られた作品だけあり、のどかな田舎町のセットなど、白黒作品ながら美しく見事な出来栄えである。

施設から失踪する前半と、後半の紳士役とでは別人のようなロナルド・コールマンの熱演は、表情を比べるとその素晴しさがよく分かる。

また、彼のトレードマークの整えられた”コールマンひげ”も印象に残る。

この年に「ミニヴァー夫人」(1942)でアカデミー主演賞を受賞するグリア・ガーソンは、外見の美しさに加え、清らかな心の持ち主を好演している。

ミニヴァー夫人」のイギリス中流家庭の夫人役とは違い、芸人一座として、踊りまで披露してくれる。

アカデミー助演賞候補のスーザン・ピータースの、小悪魔的可愛らしさも注目だ。
彼女は、数年後に仕事につまづき結婚にも失敗したため、重度のうつ病となり、内臓疾患や拒食症などにより、1952年に31歳の若さでこの世を去っている。

また、「ミニヴァー夫人」(1942)や翌年の「キュリー夫人」(1943)でもグリア・ガーソンと共演した、ヘンリー・トラヴァースレジナルド・オーウェンの出演も、心洗われるストーリーに欠かせない存在である。

主人公の屋敷の執事オーブリー・メイザー、デヴォンのホテルの女主人マーガレット・ワイチャーリ、主人公の兄弟、夫妻アーサー・マーゲットソンメルヴィル・クーパーアラン・ネイピアジル・エズモンドアイヴァン・シンプソン、タバコ屋の店主ユーナ・オコナー、旅芸人一座のマネージャー、リス・ウィリアムズリバプールの薬屋アーサー・シールズ、他ノーマ・ヴァルデン、、アン・リチャーズチャールズ・ウォルドロンエリザベス・リスドンなど、当時の作品でお馴染みの役者の出演も嬉しい。


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