フリッツ・ラングとベルトルト・ブレヒトの原案を基に、ナチス最高幹部でベーメン・メーレン保護領副総督のラインハルト・ハイドリヒ暗殺事件”エンスラポイド作戦”を題材にした、ブライアン・ドンレヴィ、ウォルター・ブレナン、アンナ・リー共演によるフィルム・ノワールの代表作にして反ナチ映画の傑作サスペンス。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:フリッツ・ラング
製作
フリッツ・ラング
アーノルド・プレスバーガー
原案
フリッツ・ラング
ベルトルト・ブレヒト
脚本:ジョン・ウェクスリー
撮影:ジェームズ・ウォン・ハウ
編集:ジーン・ファウラーJr.
音楽:ハンス・アイスラー
出演
フランティチェク・スヴォボダ医師/カール・ヴァニヤック:ブライアン・ドンレヴィ
シュテファン・ノヴォトニー教授:ウォルター・ブレナン
マーシャ・ノヴォトニー:アンナ・リー
ヤン・ホラク:デニス・オキーフ
ヘリー・ノヴォトニー:ナナ・ブライアント
エミール・チャカ:ジーン・ロックハート
カート・ハース:トニオ・セルヴァルト
アロイス・グルューバー:アレクサンダー・グラナック
リッター:ラインハルト・シュンツェル
デディッチ:ジョナサン・ホール
バーニャ:ライオネル・スタンダー
ラインハルト・ハイドリヒ:ハンス・ハインリッヒ・フォン・トワルドフスキー
アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1943年製作 134分
公開
北米:1943年3月23日
日本:1987年12月19日
■ アカデミー賞 ■
第16回アカデミー賞
・ノミネート
録音・音楽賞(ドラマ・コメディ)
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1942年、第二次大戦中、ナチス・ドイツ占領下のプラハ。
ナチス最高幹部である国家保安本部長官、ベーメン・メーレン保護領副総督ラインハルト・ハイドリヒ(ハンス・ハインリッヒ・フォン・トワルドフスキー)は、サボタージュが相次ぐ軍需工場をゲシュタポの管理下に置くことを命ずる。
5月27日。
ゲシュタポに追われていた外科医フランティチェク・スヴォボダ(ブライアン・ドンレヴィ)は、逃亡に使用するはずの車の運転手バーニャ(ライオネル・スタンダー)が連行されたことを、買い物をしていたマーシャ・ノヴォトニー(アンナ・リー)から知らされる。
マーシャは、現れたゲシュタポに、スヴォボダが向かった方向と違う場所を教える。
スヴォボダは映画館に逃げ込み、館内ではで“死刑執行人”と言われたハイドリヒが撃たれたことが知らされ、街は厳戒態勢となる。
帰宅したマーシャの父親で大学教授のシュテファン・ノヴォトニー(ウォルター・ブレナン)は、ハイドリヒ襲撃事件についてを家族に知らせる。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
1942年、第二次大戦中、ナチス・ドイツ占領下のプラハ。
ナチス最高幹部でベーメン・メーレン保護領副総督のラインハルト・ハイドリヒが襲撃される。
襲撃犯である愛国者のフランティチェク・スヴォボダ医師は、ゲシュタポに追われる途中、買い物をしていたマーシャという女性に逃亡を助けられる。
市内は厳戒態勢となり、外出禁止令も出される中、スヴォボダは行き場所を失ってしまいマーシャの家に向かう。
驚くマーシャは、スヴォボダを知人だと言って父親シュテファンや家族に紹介し、彼はその場に泊めてもらうことになる。
ゲシュタポは、犯人を匿った者や家族まで処刑することを通告し、調べを受けたシュテファンは連行されてしまう。
その場を逃れたスヴォボダは、マーシャに父を救うための協力を求められる。
スヴォボダは、マーシャの家族を巻き込むことになったことで苦悩する・・・。
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1942年5月27日に実行されたラインハルト・ハイドリヒ暗殺事件”エンスラポイド作戦”から1年も経たない、1943年3月に本作が公開されたところにまず注目したい。
占領国ナチス・ドイツに屈することなく抵抗したプラハ市民の勇気を称えると共に、戦いが続く場に向けたフリッツ・ラングと盟友ベルトルト・ブレヒトのメッセージが伝わる力作として高く評価したい。
戦地や当事国での迫害や弾圧が続く中で、その苦しみに焦点を置くのではなく、それに屈せずにあくまで抵抗する市民の姿をひたすら描く、フリッツ・ラングの思いが込められた力強い演出は秀逸だ。
多くの登場人物の役割分担とその人間描写、小道具の使い方なども見事だ。
中心となる家族の家長である大学教授が、死を前に息子に残す言葉、”未来の自由な社会を手に入れるために戦うことの大切さ、それを実行して死んだ父親を思い出すように・・・”と語る姿は、当時の人々にどれだけの勇気と希望を与えたか計り知れない。
第16回アカデミー賞では、録音、音楽賞(ドラマ・コメディ)にノミネートされた。
当時のナチス・ドイツの同盟国である日本では公開されるはずもなく、1987年にようやく劇場公開された。
”エンスラポイド作戦”については、「暁の7人」(1975)でその詳細が描かれている。
本作のエンディングで”THE END”の前に”NOT”と強調して表示されているのだが、戦いが続いている緊迫感が伝わるメッセージとして印象に残る。
個人的には、ジョン・フォード一家のメンバーとして脇役で活躍したアンナ・リーが、非常に重要な役柄である大学教授の娘を熱演しているのが嬉しい。
愛国者である外科医、暗殺の実行犯ブライアン・ドンレヴィ、弾圧に屈しない大学教授ウォルター・ブレナン、その娘アンナ・リー、その婚約者デニス・オキーフ、母親ナナ・ブライアント、ゲシュタポのスパイ、ジーン・ロックハート、ゲシュタポ本部長のトニオ・セルヴァルト、その部下役アレクサンダー・グラナックとラインハルト・シュンツェル、抵抗地下組織のジョナサン・ホールとライオネル・スタンダー、ラインハルト・ハイドリヒ役のハンス・ハインリッヒ・フォン・トワルドフスキーなどが共演している。