1896年、オスマン帝国、カッパドキア、カイセリ県。
エルジェス山の麓の村に住むギリシャ人青年スタヴロス・トプゾクルー(スタティス・ヒアレリス)とアルメニア人のヴァルタン・ダマディアン(フランク・ウォルフ)は、山から運んだ氷を売っていた。
緊急会議を招集した地方長官は、首都の銀行に放火したアルメニアの反乱分子のことを話し、皇帝アブデュルハミト2世から、危険な少数民族を排除する命令が下ったことを伝える。
途中、部隊のメフメト大尉に止められて、仕方なく氷を渡したスタヴロスは、人種を訊かれたためにギリシャ人だと答え、アルメニア人のヴァルタンは、首都の放火に関わったか訊かれる。
コンスタンティノープルに行くには2週間かかるとスタヴロスから指摘されたメフメトは、8年前に従軍していたヴァルタンが、自分に仕えていたことを思い出して再会を喜ぶ。
部下に氷を戻すよう指示したメフメトは、アルメニア人が目の敵にされていることをヴァルタンに伝え、自分とここにいることを勧める。
スタヴロスから、ヴァルタンの家族は村にいると言われたメフメトは、それならば神の手に委ねようと二人に伝える。
村に戻ったヴァルタンは、皆が教会に集まっていることを弟から知らされるものの、氷を売らなければならなかった。
アルメニア人から離れるようにと村人から警告されたスタヴロスは、迎えに来た母親ヴァッソ(エレナ・カラム)と共に家に戻る。
スタヴロスがヴァルタンといたことを非難するヴァッソから、息子に甘いと言われた夫のイサーク(エレナ・カラム)は、スタヴロスの頬を叩く。
イサークに許しを請うスタヴロスは、夕食をとるよう指示される。
狙われているのはアルメニア人だと皆に話すイサークだったが、スタヴロスは、次はギリシャ人だと言って二階に向かう。
家を抜け出して酒場に向かったスタヴロスは、ヴァルタンと共に踊り始め、普段から話していたアメリカ行きのチャンスだと言われる。
アルメニア人への襲撃が始まり、教会に火が放たれ、ヴァルタンは反抗するものの襲われる。
スタヴロスは、ヴァルタンの弟と共に教会にいた人々を助ける。
翌朝、スタヴロスは、殺されたヴァルタンの遺体の傍で佇む。
地方長官は、捕らえたスタヴロスを開放することを友人のイサークに伝える。
イサークが長官の言いなりであることに納得いかないスタヴロスは、祖母(エステル・ヘムズレー)の元に向かう。
祖母の金を当てにしていたスタヴロスは、アメリカに旅立つことを伝える。
コンスタンティノープルに行かせてくれれば、働いて稼ぐ考えのスタヴロスから、最後の希望だと言われた祖母は、祖父の形見だと伝えて短剣を渡す。
欲しいのは金だと言って現金を探すスタヴロスは、祖母の懐の中にあることを知るものの、当然、奪う気にはなれなかった。
帰り道に、アメリカに行くと言うアルメニア人のホハネス・ガルダシャン(グレゴリー・ロザキス)に出会ったスタヴロスは、咳をして病弱にも見える彼が、少しずつ前進する考えであるために靴を譲る。
食事もせずにスタヴロスを待っていたイサークは、戻ってきた息子と話をする。
この地を離れる気のイサークは、スタヴロスを先陣としてコンスタンティノープルに向かわせる決心をしたことを伝える。
感謝するスタヴロスにイサークは、一族の財産を全て持っていくよう指示する。
これまで帝国に従ってきたが、誇りは失っていないと話すイサークは、宝飾品を埋めてある場所をスタヴロスに掘らせる。
いとこのオデッセウス(セーラム・ルドウィグ)からの手紙を読んだイサークは、スタブロスが金を持参すれば事業パートナーにするという内容だった。
ヴァッソの嫁入り道具だった宝飾品の箱を掘り出したスタヴロスとイサークは、それを家族の元に運ぶ。
箱の中の宝飾品を手にするヴァッソは、自慢げに話をする。
スタヴロスは、コンスタンティノープルに妹3人を呼び寄せて良き夫を世話し、事業が軌道に乗ったら4人の弟達を働かせて、長男としての役目を果たすようにとイサークから指示される。
頼りないスタヴロスに全てを託すことを心配するヴァッソは、イサークから、息子が家族を失望させるようなら、それは親の責任であり、一族は凋落する運命だと言われる。
絶対に失望させないことをヴァッソに誓ったスタヴロスは、金が隠してある上着を着せてもらい、両親に見送られて旅立つ。
筏の船頭に金を奪われそうになったスタヴロスは泳げないために焦り、岸にいたトルコ人のアブドゥル(ルー・アントニオ)に助けられる。
アブドゥルと共に旅を続けたスタヴロスは、調子がいい彼を警戒するようになる。
羽目を外し過ぎるアブドゥルに襲い掛かったスタヴロスは殴られて意識を失い、宿の部屋に運ばれる。
意識を取り戻したスタヴロスは、荷物は運んだと言うアブドゥルが、妹の毛布や母の敷物を宿代にしたことを知る。
アブドゥルを見限ったスタヴロスは、その場を去る。
ある村にたどり着いたスタヴロスは、汽車で先回りしていたアブドゥルから、品物を盗まれたと言われて告発される。
品物のリストを見せたアブドゥルは信用されるものの、警察と判事に全てを奪われる。
上着に隠してあった硬貨を飲み込んだスタヴロスは、再びアブドゥルと旅をするが、彼を相手にしない。
諦めて祈りを捧げ始めたアブドゥルに襲い掛かったスタヴロスは、彼を短剣で刺殺する。
ラバが逃げ去ったことに気づき嘆くスタヴロスは、アブドゥルの所持金を奪う。
ある町に着いたスタヴロスは、コンスタンティノープル行きの汽車に乗る。
コンスタンティノープル。
港に向かったスタヴロスは、アメリカの客船の乗員に”アメリカ、アメリカ”と叫ぶものの、気づいてもらえない。
敷物商のいとこオデッセウスを訪ねたスタヴロスは歓迎され、食事を与えられる。
アメリカ船が出航する汽笛を気にするスタヴロスは、店の商品が売れていないことを知る。
オデッセウスから、自分が持参した金でペルシャに仕入れに行くと言われたスタヴロスは、全てを奪われたことを正直に話す。
スタヴロスを追い払おうとしたオデッセウスだったが、仕方なく彼を店で働かせる。
イサークに手紙で知らせると言われたスタヴロスは、父には知られたくないとオデッセウスに伝える。
知れば父はショック死すると言うスタヴロスは、失ったものを必ず取り返すとオデッセウスに伝え、ある計画を成功させて自慢の息子になる考えを話す。
イサークには何も伝えないことを約束したオデッセウスは、スタヴロスに掃除をさせる。
商人である富豪のアレコ・シニコグルー(ポール・マン)の4人の娘の一人が不器量であるため、結婚できるか父親が心配していることを思い出したオデッセウスは、彼女とスタヴロスを引き合わせようと考える。
納得できないスタヴロスはその場を去り、船会社に向かい、渡米費用が110トルコリラであることを確認する。
オデッセウスからの手紙を受けたイサークは、スタヴロスの身に起きたことを家族に知らせる。
スタヴロスからの手紙も読んだイサークは、商売がうまくいっていないオデッセウスが怠けてばかりいるため全てを奪われたとウソをつき、店を出てある計画を実行するという息子の考えを知る。
人夫などをして必死に働いたスタヴロスは、ひもじい思いをしながらも、家族には心配させないような手紙を書く。
スタヴロスは、大きな計画を必ず実現させることをイサークに誓う。
疲労困憊しながら、知り合ったガラベ(ジョン・マーレー)と共に働き続けるスタヴロスは、”アメリカ、アメリカ”と呼ばれながら渡米費用を貯める。
しかし、いくら働いても小銭しか稼げないスタヴロスは、絶望しかける。
ガラベがあてがってくれた女と愛し合ったスタヴロスは、彼女に金を奪われてしまう。
ガラベと共に女の元に向かい、金は大家に払ったことを知ったスタヴロスは、諦めるしかなかった。
落胆して泣くだけのスタブロスがたわ言ばかり言っていたことを非難するガラベは、皆を集めて行動を起こそうとする。
アメリカで酷い仕打ちを受けた経験がある男から、理想の世界ではないと言われたスタヴロスは、”革命”を起こす話に加わる。
イサークは、オデッセウスが当てにならないというスタブロスからの手紙を受け取る。
集会場は兵士に襲われて皆が殺され、一命を取り留めたスタヴロスは、死体と共に運ばれる馬車から落下する。
瀕死のスタヴロスはオデッセウスの家にたどり着き、父には言わないでほしいと伝えて、計画があると呟きながら助けを求める。
回復したスタヴロスはシニコグルー家に招待され、アレコの娘トムナ(リンダ・マーシュ)を紹介される。
その件についての手紙を受け取ったイサークらは、スタヴロスが仕事を辞めてアレコの事業を手伝うことを知る。
生活が一変したスタブロスは、浮浪者のような青年が履いている靴が自分のものだと気づき、かつて、それを譲ったホハネスであることを確認する。
アメリカ行きは目前だと言って、咳き込むホハネスを励ますスタヴロスは、彼に食事を与える。
己のことだけを考えて生きろと伝えたスタヴロスは、お人よしだった自分が失敗した苦い経験を話す。
アレコから、トムナの持参金は500トルコリラだと言われたスタヴロスはそれを拒み、110トルコリラを要求する。
意味不明なことを言うスタブロスの要求を受け入れたアレコは、彼を息子として認める。
一週間後に嫁がせるトムナが怖がっていることを知ったアレコは、彼女からスタヴロスの心が読めないと言われる。
アメリカの写真を見せるスタヴロスが、そこに行った夢も見たと言われたと怯えながら話すトムナを励ますアレコは、若者は夢を見る者だと伝える。
スタヴロスはいい青年で、夢など直ぐに忘れると言うアレコは、トムナを安心させる。
別荘がある島の話をしたアレコは、長男が産まれたら財産は全て渡すとスタヴロスに伝える。
将来の話をしたアレコは、家族を連れてある場所に向かい、スタヴロスに新居の鍵を渡す。
アレコと家族に帰ってもらったトムナは、スタヴロスの感想を聞くが、自分を妻として愛せるか尋ねても答えてもらえない。
心配事があるのを感じていたトムナは、隠していることを話してくれないスタヴロスに、望み通りのことをすると伝えて泣き崩れる。
トムナを抱きしめることもできず、自分の沈黙が怖いと言われたスタヴロスは、何も答えることができない。
自分が去る夢を見たと言われたスタヴロスは、トムナから正夢かと訊かれて、そうだと答える。
アメリカに行く計画をスタヴロスから聞いたトムナは、その理由は自分のような人間にしかわからないと言われる。
持参金でアメリカに行ってほしいと言われたスタヴロスは、トムナの気持ちに感激し、不幸になるので自分を信じてはだめだと伝える。
子供が産まれたら考えもきっと変わると言われたスタヴロスは、自分を信じるなと伝えて去ろうとする。
1年待つと伝えたトムナだったが、スタヴロスはその場を去る。
その後、店で、アルメニア系アメリカ人の客アラトゥーン・ケバビアン(ロバート・H・ハリス)に後で話したいと伝えたスタヴロスは、彼の妻ソフィア(キャサリン・バルフォー)に挨拶するようにとアレコから指示される。
アメリカに行きたがっているスタヴロスの夢は叶うわけがないと言うアレコだったが、ソフィアは、必ず行けると彼に伝える。
トルコ人のソフィアは、結婚してアメリカに渡ったことをスタヴロスに話す。
アラトゥーンとアレコは昼食に向かうが、それに同行しないソフィアは、スタヴロスに荷物を運んでもらいホテルの部屋に向かう。
アメリカの雑誌や写真に興味を示すスタヴロスにそれを見せたソフィアは、酒を飲んで酔う。
アラトゥーンが戻り、ソフィアは、ダンスができるレストランの予約をスタヴロスに任せる。
レストランで食事してダンスを楽しんだアラトゥーンは眠ってしまい、ソフィアは父が決めた結婚式の翌日にアメリカに渡り、二人の息子も産まれたことをスタヴロスに話す。
妻としての役目を終えたが、心は今も22歳の自分がときめきを求めているとスタヴロスに話すソフィアは、手にキスする彼に、アラトゥーンを連れ帰ることを伝える。
渡米するための三等のチケットを手に入れたスタヴロスは、アメリカに向かうことになったホハネスから、8人の仲間と現地で靴磨きをすることを知らされる。
それに加わろうとしたスタヴロスは、裕福な自分は無理だと言われる。
渡米することをトムナに話すスタブロスは、家族が悲しむと言われるものの、自分は平凡な生活は望まないと伝えて考えを変えない。
アメリカに着けば自分の罪は清められるとトムナに話すスタヴロスは、船で旅立つ。
その後スタヴロスは、同じ船に乗っていた一等のソフィアの部屋に呼ばれる。
やがて、陸が見えたために、乗客はアメリカに着いたことを確認する。
眠っていたアラトゥーンは、メイドのバーサからロングアイランドに着いたと言われ、彼女に、ソフィアの件で本当のことを話すようにと伝える。
ホハネスに呼ばれて陸を確認したスタヴロスは、咳き込み具合が悪い彼を気遣う。
アラトゥーンに呼ばれたスタヴロスは、ソフィアと関係を持ったことを許す気はないため、強制送還されるいと言われる。
興奮するソフィアが部屋に押し入り、スタヴロスの方がはるかに喜びを与えてくれたとアラトゥーンに言い寄る。
ソフィアを落ち着かせて部屋に戻したスタヴロスは、弁解をせずに身を売ったことを認めて、到着次第、送還させると言うアラトゥーンに襲い掛かる。
船員に取り押さえられたスタヴロスは病室に連れて行かれ、その場にいたホハネスに絶望していることを話す。
スタヴロスは、この旅をやり直すことが望みだとホハネスに伝える。
咳き込むホハネスは、上陸したら何も話さないようにと医師から指示され、病気が知られたら送還されると言われる。
翌日、ニューヨーク港に入港した船に検査官が現れる。
気持ちがたかぶるので咳が出るとホハネスに伝えたスタヴロスは、アメリカで成功して、家族を呼び寄せることができることを考えるようにと話して聞かせる。
自分は海に飛び込んで泳ぐとホハネスに伝えたスタヴロスは、泳げないはずだと言われるものの、必要になれば何でもできると伝える。
ベッドに戻ったホハネスは、他の仲間と共に入国できることになり、興奮する彼は咳き込みながらスタヴロスにそれを伝えようとする。
その後ホハネスは、共に海に飛び込み逃亡の邪魔をするとスタヴロスに伝える。
コンスタンティノープルのオデッセウスに渡して父に送ってほしいと言って、ホハネスに手紙を渡したスタヴロスは、一等の乗客が甲板で踊り始めた中に入る。
叫びながら踊り始めたスタヴロスを見つめるホハネスは、彼と出会った時のことを想い出しながら、靴を脱いで手紙を残し海に飛び込む。
翌日、下船するスタヴロスは、バーサから、ソフィアからだと言われてカンカン帽と50ドルを渡される。
死んだホハネスに扮して仲間達と入国手続きを済ませたスタヴロスは、名前を訊かれる。
”ホハネス・ガルダシャン”と答えたスタヴロスは、管理官から、”ホハネス”をアメリカ風にした”ジョー・アーネス”という名前を名乗ることを提案される。
その名前が気に入ったスタヴロスは、マンハッタンに向かうフェリーに乗る。
下船したスタヴロスは、地面に口づけをして喜びをかみしめる。
それを手紙で知ったイサークは、同封されていた50ドルの価値を考え、大金であることをヴァッソに伝える。
手紙は、”ここは故郷と違わない、ここには新しいチャンスがある、新たなスタートが切れる、皆も心の準備を、懸命に働いて一人ずつ全員を呼び寄せるつもりです。”と締めくくられていた。
その頃、スタヴロスは靴磨き店で、幸せを感じ夢と希望を胸に家族を想いながら働く。
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エリア・カザンは語る。
家族が待っていることを常に考えながら、伯父は、何年もかけて家族全員を一人ずつアメリカに呼び寄せた。
しかし、伯父の父親だけは生まれ故郷で死んだ。