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静かなる男 The Quiet Man (1952)

元ボクサーが平穏な生活を求め訪れた故郷アイルランドの片田舎で惹かれた女性の愛を手に入れようとする姿を描く。
製作を兼ねたジョン・フォードが4度目のアカデミー監督賞を受賞した。
主演ジョン・ウェインモーリン・オハラヴィクター・マクラグレンウォード・ボンドバリー・フィッツジェラルド他共演による秀作ドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(ロマンス)

ジョン・フォード / John Ford 作品一覧
ジョン・ウェイン / John Wayne 作品一覧
ジョン・ウェイン / John Wayne/Pinterest


スタッフ キャスト ■
監督:ジョン・フォード

製作
メリアン・C・クーパー
ジョン・フォード
原作:モーリス・ウォルシュ
脚本:フランク・S・ニュージェント

撮影:ウィントン・C・ホック
編集:ジャック・マレー
美術・装置
フランク・ホタリング

ジョン・マッカーシーJr.
チャールズ・S・トンプソン
音楽:ヴィクター・ヤング

出演
ジョン・ウェイン:ショーン・ソーントン
モーリン・オハラ:メアリー・ケイト・ダナハー
ヴィクター・マクラグレン:”レッド”ウィル・ダナハー
ウォード・ボンド:ピーター・ロネガン神父
バリー・フィッツジェラルド:ミケリーン・オグ・フリン
アーサー・シールズ:シリル・プレイフェア牧師
アイリーン・クロウ:エリザベス・プレイフェア
フランシス・フォード:ダン・トビン
ミルドレッド・ナトウィック:サラ・ティラン
チャールズ・B・フィッツシモンズ:ヒュー・フォーブス
ジェームズ・フィッツシモンズ:ポール神父
ショーン・マクローリー:オーウェン・グリン
ケン・カーティス:ダーモット・フェイ
ジャック・マックゴーラン:イグナティウス・フィーニー
メエ・マーシュ:ポール神父の母
マイケル・ウェイン:レース場の少年
パトリック・ウェイン:レース場の少年

アメリカ 映画
配給 Republic Pictures
1952年製作 129分
公開
北米:1952年8月14日
日本:1953年3月12日
製作費 $1,750,000


アカデミー賞 ■
第25回アカデミー賞

受賞
監督・撮影賞(カラー)
ノミネート
作品
助演男優(ヴィクター・マクラグレン
脚本・美術賞(カラー)


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
1920年代、アイルランド
アメリカのピッツバーグからやって来たショーン・ソーントン(ジョン・ウェイン)は、平穏な生活に憧れ故郷の片田舎の村イニスフリーに向かおうとする。

キャッスルタウン駅。
ショーンは、自分の荷物を勝手に運び始めた初老の男性ミケリーン・オグ・フリン(バリー・フィッツジェラルド)に、村まで案内してもらうことになる。

途中ミケリーンは、ショーンの巨体や出身地を気にしながら馬車を走らせる。

石橋に差し掛かり馬車を降りたショーンは、あるあばら家を見て、持ち主の未亡人サラ・ティラン(ミルドレッド・ナトウィック)から、必ずあの家を買い取ると断言する。

それを不思議に思うミケリーンに、ショーンは自分がこの地で生まれたことを伝える。

鼻たれ坊主だったショーンを思い出したミケリーンは、どうすれば、これほどまでに成長するのかと驚いてしまう。

その後、教区の司祭ピーター・ロネガン(ウォード・ボンド)に出くわしたショーンは、ミケリーンに彼を紹介される。
...全てを見る(結末あり)


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
アメリカ人ショーン・ソーントンは、生まれ故郷のアイルランドの片田舎の村に戻ってくる。
生家を、財産家の未亡人ティランから手に入れたショーンだったが、そのことがきっかけで、隣人の大地主ダナハーの恨みを買ってしまう。
更に、ショーンがダナハーの妹メアリー・ケイトに惹かれたため、二人の仲は益々こじれる。
一触即発の二人だったが、挑発するダナハーに対し、元ボクサーで、試合中に相手を殺した経験を持つショーンは、頑なに戦いを避ける。
紆余曲折の末に、ショーンとメアリー・ケイトは結婚することが出来るのだが、彼女は仕来りにより持参金にこだわる。
二人を結婚させるために、村人に騙されたと思い込むダナハーは、ショーンがそれに加担したと思い込み、一層彼に敵意を見せる・・・。
__________

1933年、”Saturday Evening Post”に掲載されたモーリス・ウォルシュの短編を基に製作された作品。

個人的には、ジョン・フォードジョン・ウェインのコンビでは、「捜索者」(1956)に次いで好きな作品。

第25回アカデミー賞では、監督、撮影賞(カラー)
を授賞した。
ノミネート
作品
助演男優(ヴィクター・マクラグレン
脚本・美術賞(カラー)

ジョン・フォードは、前人未到の4度目のオスカー獲得(監督賞)となった。
参考:本作以外の受賞作
・「男の敵」(1935)
・「怒りの葡萄」(1940)
・「わが谷は緑なりき」(1941)

2013年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。

フォード作品に馴染みのない方には、本作を代表としたフォード一家の独特のハーモニーが滑稽に思えるかもしれない。
これは、一連のフォード作品を観て、会話して楽しんだ当時の流行のようなものであり、この雰囲気がなければ始まらないというほど、私は好きでたまらない。
それは中心が家族であったり、軍隊であったりもする。

アイルランド人気質、つまり、気性が荒く、大酒のみで喧嘩っ早い、しかし団結心があり、家族を大切にすることをモットーにする。
それを基に作られているフォード一家の作品が、一種独特であるのは当然理解できる。

西部劇で多く見せていたこの雰囲気を、自分達の故郷アイルランドのオールロケでフォードが製作したところに価値がある。
特にアカデミー撮影賞を受賞したウィントン・C・ホックの撮影は秀逸で、アイルランドの美しくのどかな田園風景や町並みが素晴らしい。

アイルランドそのものを描きたいフォードの演出は、カトリックプロテスタントがうまい具合以上協調し合っている様子が実に興味深く、また実にユーモラスに描かれてもいる。

ヴィクター・ヤングの、アイルランド民謡を随所に使い、時に哀愁漂う効果的な音楽も聴き惚れてしまう。

普段からお洒落なジョン・ウェインと、モーリン・オハラの着こなしの良さ、衣装のカラーリングなども注目だ。

故郷の片田舎に戻り、辛い過去を背負いつつ、いつものキャラクターより謙虚に見えるジョン・ウェインもなかなかいい。

ウェイン扮する”ショーン”という名前、これは、アイルランドスコットランドで、男の子によく付ける典型的な呼び名で、アメリカ的に言えば”ジョン”に相当する。
スコットランド出身のショーン・コネリーなどが有名なところだ。

アイルランド人気質そのものという感じの火の玉娘モーリン・オハラと、ジョン・ウェインをも圧倒する迫力のヴィクター・マクラグレン、神父に相応しくないところが可笑しいウォード・ボンド、未亡人ミルドレッド・ナトウィックのキャラクターは、他のフォード作品同様に大いに楽しめる。

翌年亡くなる、ジョン・フォードの実兄フランシス・フォードの、対決が始まり臨終の床から起き上がってしまう老人役も愉快だ。
フォードは兄のために、ラストで主演二人の直前に登場させる気の使いようだ。

酔いどれの世話好き、愛すべきミケリーン役のバリー・フィッツジェラルドとプレイフェア牧師役のアーサー・シールズは兄弟。
モーリン・オハラとフォーブス役のチャールズ・B・フィッツシモンズ、若い神父役のジェームズ・フィッツシモンズも姉弟。
また子役でジョン・ウェインの子供達、特にこの後にジョン・フォードに可愛がられるパトリック・ウェインがスクリーンデビューし、製作者となるマイケル・ウェイン、娘達もレースの場面で登場する。

本作には有名な裏話がある。
上映時間129分が長いと主張する映画会社は、2時間以内に収めることをフォードに要求する。
フォードは要求通り2時間の試写を会社側に見せるのだが、ウェインマクラグレンの”問題”のクライマックス、対決の途中で上映が終わってしまい、会社側は当然129分の上映を認めたということだ。

建物に入り口などが小さいため、いつもより一段と大柄見えるジョン・ウェインは、ミケリーン役の小柄なバリー・フィッツジェラルド(162cm)から、”6フィート6インチ(198cm)か?”と訊かれるのだが、”4&1/2(194cm)”と答える場面で、その巨体と逞しさを強調させている。
ウェインは誰よりも大きく、強くなければならない、そこがファンにはたまらなく嬉しいのだ。

アメリカでは、今でもジョン・ウェイン作品が上映され、スクリーンに彼が登場するだけで大喝采が起きる。
最近の作品を観ても、”ジョン・ウェイン”の名前は登場する。
そういう文化があることが実に羨ましい。

そして、かつて晩年のジョン・ウェイン作品を劇場で観た際に、タイトル・クレジットでスクリーンに”JOHN WAYNE”と映し出されただけで涙した自分も、その気持ちは同じだ。

主人公を励ます牧師(A・シールズ)夫人アイリーン・クロウ、ジョン・フォードの娘婿、本作でも美声を聴かせてくれる、歌手でもあるケン・カーティス、村人のショーン・マクローリー、後年「エクソシスト」(1973)の監督役で出演する、ダナハー(ヴィクター・マクラグレン)の使用人ジャック・マックゴーラン、ポール神父(J・フィッツシモンズ)の母親役でメエ・マーシュなども共演している。


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