007シリーズ第9作。 1965年に発表された、イアン・フレミング原作のシリーズ最終作”The Man with the Golden Gun”を基に製作された作品。 “黄金銃を持つ男”と言われる殺し屋の抹殺命令を受けたMI6諜報員ジェームズ・ボンドの活躍を描く、製作ハリー・サルツマン、アルバート・R・ブロッコリ、監督ガイ・ハミルトン、ロジャー・ムーア、クリストファー・リー、ブリット・エクランド、モード・アダムス他共演のスパイ・アクション。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ガイ・ハミルトン
製作
アルバート・R・ブロッコリ
ハリー・サルツマン
原作:イアン・フレミング”The Man with the Golden Gun”
脚本
リチャード・メイボーム
トム・マンキーウィッツ
撮影
テッド・ムーア
オズワルド・モリス
編集
レイモンド・ポウルトン
ジョン・シャーリー
メインタイトル・デザイン:モーリス・ビンダー
音楽
ジョン・バリー
モンティ・ノーマン:ジェームズ・ボンドのテーマ
主題歌:ルル“The Man with the Golden Gun”
出演
ジェームズ・ボンド:ロジャー・ムーア
フランシスコ・スカラマンガ:クリストファー・リー
メアリー・グッドナイト:ブリット・エクランド
アンドレア・アンダース:モード・アダムス
ニック・ナック:エルヴェ・ヴィルシェーズ
J・W・ペッパー保安官:クリフトン・ジェームズ
ハイ・ファット:リチャード・ロー
ヒップ:スーン=テク・オー
ロドニー:マーク・ローレンス
ラザー:マーネ・メイトランド
コルソープ:ジェームズ・コシンズ
M:バーナード・リー
Q:デスモンド・リュウェリン
マネーペニー:ロイス・マクスウェル
イギリス 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1974年製作 124分
公開
イギリス:1974年12月19日
北米:1974年12月19日
日本:1974年12月21日
製作費 $7,000,000
北米興行収入 $20,972,000
世界 $97,600,000
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
100万ドルで殺しを請け負う、”黄金銃を持つ男”という異名を持つフランシスコ・スカラマンガ(クリストファー・リー)は、殺し屋ロドニー(マーク・ローレンス)を相手に、自らの腕を磨くために黄金銃で彼を殺す。
ロンドン。
MI6本部長M(バーナード・リー)の元に、諜報員ジェームズ・ボンド(ロジャー・ムーア)を抹殺するという脅迫文と共に、”007”と刻まれた一発の黄金の弾丸が届けられる。
それは、スカラマンガから送られて来たもので、行方のわからない謎の男スカラマンガに、ボンドが暗殺されるいう予告と考えられた。
そのためMは、ボンドの現在の任務を解く。
乳頭が3つあるのが特徴のスカラマンガの所在は誰にも知られず、KGBやギャングをも牛耳る悪の帝王だった。
ボンドは、自分が先にスカラマンガを見つけた場合は事態が変わることをMに確認する。 スカラマンガを捜そうとしたボンドは、Mの秘書マネーペニー(ロイス・マクスウェル)の情報を基にベイルートに飛ぶ。 殺人に使われたスカラマンガの黄金の弾丸を手に入れたボンドは、Q(デスモンド・リュウェリン)と兵器の専門家コルソープ(ジェームズ・コシンズ)の協力を得て、弾丸の製造者がポルトガル人のラザー(マーネ・メイトランド)だとを突き止めてマカオに向かう。 マカオ。 ボンドは、連絡員のメアリー・グッドナイト(ブリット・エクランド)に追跡を邪魔されてしまう。 グッドナイトは、女性が乗っていった車のナンバーを調べるようボンドに指示され、彼女の滞在先のホテルを探りあてる。 女性の部屋に忍び込んだボンドは、彼女を脅す。 ボンドは、女性がスカラマンガの情婦アンドレア・アンダースだということを知る。 アンドレアからスカラマンガの特徴を聞き出したボンドは、何も知らぬ振りをして、スカラマンガに弾丸を渡すことを彼女に強要する。 ボンドは、アンドレアから聞いたナイトクラブに向かうものの、スカラマンガは現れず、ボンドの付近を歩く男が黄金の弾丸を撃ち込まれて射殺される。 警察に扮した現地情報員ヒップ(スーン=テク・オー)に連行されたボンドは、沈没した客船”クイーン・エリザベス”内部に設置された支部に案内される。 ボンドは、待ち構えていたMやQから、殺された男が、太陽エネルギーの研究家で、エネルギー危機を救う画期的な装置”ソレックス・アジテーター”を完成させていたことを知らされる。 その男と関係していた実業家の大富豪のハイ・ファット(リチャード・ロー)に会うために、ボンドはタイに向かう。 バンコクに到着したボンドは、スカラマンガに扮してファットの屋敷内に忍び込み、彼と話をして夕食の招待を受け、その場を立ち去る。 しかし、ボンドの正体をスカラマンガやファットは見破っていた。 その夜、ファットの屋敷に向かったボンドは、スカラマンガの手下ニック・ナック(エルヴェ・ヴィルシェーズ)に襲われ、捕らえられてしまう。 翌朝ボンドは、格闘技で戦うことを強要され、隙を見て逃亡し、ヒップと彼の姪達に救われる。 しかしボンドは逃げ遅れてしまい、運河でボートを奪い、追っ手から逃れる。 アメリカからの観光客として現地で楽しんでいた保安官J・W・ペッパー(クリフトン・ジェームズ)は、以前の事件で関わったイギリス諜報員のボンドを目撃する。 一方、スカラマンガは、ファットから”ソレックス”を奪い彼を殺す。 香港に戻ったボンドは、グッドナイトとの夜を過ごそうとするが、そこにアンドレアが現れる。 ボンドは、自分を殺す強迫文を送ったのがアンドレアだということを、彼女から知らされる。 スカラマンガから逃れられなくなっていたアンドレアは、ボンドに彼を殺させようとしたのだ。 アンドレアは、”ソレックス”をボンドに渡すことを約束し、彼と愛し合おうとする。 そのため、ボンドはグッドナイトをクローゼットに押し込み、アンドレアとベッドを共にする。 その後アンドレアは、スカラマンガの元に戻る。 アンドレアは”ソレックス”を盗み出し、ボンドに渡すつもりでいた。 約束したキック・ボクシング会場に向かったボンドは、席に着くアンドレアが殺されていることに気づく。 そしてボンドは、現れたスカラマンガと対面する。 床に落ちていた”ソレックス”を見つけたボンドは、それをピーナッツ売りに扮したヒップに渡す。 ヒップからそれを受け取ったグッドナイトは、スカラマンガの車に発信機を取りつけようとして、トランクに閉じ込められてしまう。 それを知ったボンドは、スカラマンガの車を追跡しようとして、ショールームの車を奪う。 ボンドは、その車に乗っていたペッパー保安官を乗せたまま、スカラマンガの車を追う。 ペッパーはボンドに気づき、彼が任務で誰かを追跡していることを知り、手を貸そうとする。 バンコク市街からスカラマンガは郊外に向かい、ボンドは警察に追われながらも彼を追跡する。 ボンドは、倉庫に隠れたスカラマンガを追い詰めるのだが、スカラマンガは、車にジェットウイングを装着して飛び立ってしまう。 香港に戻ったボンドは、Mにスカラマンガ逃亡を報告し、グッドナイトの通信信号から居場所を特定する。 ボンドは、水上機”リパブリック RC-3 シービー”でスカラマンガのアジトに向かう。 スカラマンガは、中国側からその連絡を受ける。 現場に到着したボンドは、ニック・ナックとスカラマンガに歓迎され、ファットの財産を奪い建設した施設に案内される。 そしてボンドは、太陽光線と”ソレックス”を利用した兵器で、水上機を破壊するテストを見せられる。 スカラマンガはボンドとランチを共にすることになり、そこにグッドナイトが現れる。 黄金銃を構えるスカラマンガは、”ワルサーPPK”と対決し、偉大な芸術家のようになるのが望みだとと話し、ボンドに決闘を申し込む。 それを受けたボンドは、浜辺での決闘に挑む。 ボンドは姿を消したスカラマンガを追い、ニック・ナックは、彼をマジックルームに向かわせる。 ボンドはスカラマンガを倒し、グッドナイトと合流する。 グッドナイトが、スカラマンガの手下を施設内で冷却されていたヘリウム溶液の中に突き落としたために、温度が急上昇して爆発寸前となる。 ボンドは”ソレックス”を取り外そうとするが、グッドナイトが誤って兵器を作動させてしまう。 太陽が雲に隠れている間に、ボンドは”ソレックス”を装置から外し、グッドナイトと共に施設から出て帆船で島から脱出する。 ボンドとグッドナイトは、香港に到着するまで楽しもうとするが、船内に潜んでいたニック・ナックに襲われる。 ボンドは小柄なニック・ナックを捕らえて、かごに閉じ込めてマストに吊るす。 部屋に戻ったボンドは、Mからの連絡を受ける。 Mからグッドナイトを呼ぶよう指示されたボンドは、”おやすみ/グッドナイト”と伝えて電話を切り、彼女と愛し合う。
...全てを見る(結末あり)
ラザーを脅したボンドは、弾丸を引き渡す場所で受け取った女性(モード・アダムス)を追い香港に向かう。
*(簡略ストー リー)
MI6のMの元に、諜報員ジェームズ・ボンドを抹殺するという脅迫文と共に、”007”と刻まれた一発の黄金の弾丸が届けられる。
それは、100万ドルで殺しを請け負う”黄金銃を持つ男”という異名を持つスカラマンガから送られて来たものだった。
ボンドはMの反対を押し切り、誰も知らないと言われるスカラマンガの所在を捜そうとする。
ベイルートに向かったボンドは、殺人に使われた黄金の弾丸を手に入れ、Qの協力を得てその製造者を突き止めマカオに向かう。
その後ボンドは、黄金の弾丸を作った男が、それを渡した女性アンドレアを追う。
香港に着いたボンドは、連絡員のグッドナイトに接触する。
その後ボンドは、アンドレアがスカラマンガの情婦だと知り、彼女を利用しようとするのだが・・・。
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黄金の弾丸を発射出来る組み立て式の黄金銃や、壊れた橋をジャンプするカーアクション、更にジェットウイングを装着して空を飛ぶ車等々、ボンドの秘密兵器は控えめながら、見せ場も多いアクション大作に仕上がっている。
しかし、純粋なスパイ劇からは、かけ離れてしまったコメディ色の強いアクションに終始しているのが気になる。
1300万ドルに膨れ上がった製作費は、派手なシーンで活かされてはいるが、興行収入は前作を下回る結果に終わった。
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北米興行収入 $20,972,000
世界 $97,600,000
「上海から来た女」(1947)をヒントにした、クライマックスのマジックルームの決闘シーンなど、工夫を凝らした場面はあり、プーケット島近郊の自然も美しい。
特に香港のイギリス情報部支部が、火災のため沈没座礁し、傾いた客船”クイーン・エリザベス”の内部にあるという設定はなかなか面白い。
*船体は、本作の撮影後1975年に解体された。
軽快でリズミカルなルルの主題歌”The Man with the Golden Gun”も印象に残る曲に仕上がっている。
前作「死ぬのは奴らだ」(1973)で初登場して好評だったロジャー・ムーアが、女好きな反面、任務のために厳しく接するシーンなども興味深い。
スカラマンガを演ずる名優クリストファー・リーの、”黄金銃”がなくとも存在感抜群の悪役の注目だ。
彼は原作者イアン・フレミングとは従兄弟、女優のハリエット・ウォルターは姪。
ボンドに協力する情報員でありながら少々失敗もしてしまうブリット・エクランドは、ピーター・セラーズの元妻で、当時30歳を過ぎていたものの、キュートな魅力で、色気よりもコミカルな演技で楽しませてくれる。
「オクトパシー」(1983)でもボンド・ガールを、「美しき獲物たち」(1985)ではカメオ出演しているモード・アダムスが、呆気なく殺されてしまうのは残念だ。
前作「死ぬのは奴らだ」(1973)の保安官役があまりの好評で、観光客として再び登場するクリフトン・ジェームズ、スカラマンガの部下である殺し屋を怪演するエルヴェ・ヴィルシェーズ、タイの実業家リチャード・ロー、現地の情報員スーン=テク・オー、そしてレギュラーのMのバーナード・リー、今回はあまり活躍の場がないQのデスモンド・リュウェリン、さらにはマネーペニー役のロイス・マクスウェルとお馴染みの顔ぶれも登場し、MI6の兵器の専門家ジェームズ・コシンズなどが共演している。