ニューメキシコ州、ローズバーグ行きの駅馬車に乗り合わせた人々の人間模様を描く、製作総指揮ウォルター・ウェンジャー、製作、監督ジョン・フォード、主演クレア・トレヴァー、ジョン・ウェイン、トーマス・ミッチェル、ジョージ・バンクロフト他共演による西部劇の傑作にして映画史上に残る不朽の名作。 |
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■ スタッフ キャスト ■
監督:ジョン・フォード
製作総指揮:ウォルター・ウェンジャー
製作:ジョン・フォード
原作:アーネスト・ヘイコックス
脚本
ダドリー・ニコルズ
ベン・ヘクト
撮影:バート・グレノン
編集
オソー・ラヴァリング
ドロシー・スペンサー
美術・装置アレクサンアー・タルボフ
音楽:リチャード・ヘーゲマン
出演
クレア・トレヴァー:ダラス
ジョン・ウェイン:リンゴー・キッド
トーマス・ミッチェル:ブーン医師
ジョージ・バンクロフト:カーリー・ウィルコックス連邦保安官
アンディ・ディバイン:バック
ジョン・キャラダイン:ハットフィールド
ルイーズ・プラット:ルーシー・マロリー
ドナルド・ミーク:サミュエル・ピーコック
バートン・チャーチル:ヘンリー・ゲートウッド
トム・タイラー:ルーク・プラマー
ティム・ホルト:ブランチャード中尉
ヤキマ・カナット:騎兵隊員/スタント
ジャック・ペニック:ジェリー
フランシス・フォード:ビリー・ピケット
ハンク・ウォーデン:騎兵隊予備隊員
アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1939年製作 96分
公開
北米:1939年3月2日
日本:1940年6月19日
製作費 $531,300
■ アカデミー賞 ■
第12回アカデミー賞
・受賞
助演男優(トーマス・ミッチェル)
音楽賞
・ノミネート
作品・監督・編集・撮影(白黒)・美術賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1880年代、アリゾナ準州。
アパッチの酋長ジェロニモが各地を襲い、その脅威を心配する駅馬車の御者バック(アンディ・ディバイン)は、連邦保安官のカーリー・ウィルコックス(ジョージ・バンクロフト)に、護衛を要請する。
カーリーは、プラマー兄弟に仕返しをするため刑務所を脱獄したリンゴー・キッド(ジョン・ウェイン)を追っていた。
プラマー兄弟がローズバーグにいると聞き、カーリーは、駅馬車の護衛を引き受ける。
酔いどれのヤブ医者ブーン”ドク”(トーマス・ミッチェル)と、娼婦ダラス(クレア・トレヴァー)は、厄介者扱いされて町を追われる。
ドクは、酒の行商人サミュエル・ピーコック(ドナルド・ミーク)と出会い、 彼の酒目当てに同じ駅馬車に乗ることになる。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
アパッチの活動が激しくなる中、駅馬車の御者バックは、連邦保安官のカーリーに護衛を依頼する。
脱獄囚リンゴー・キッドを追っていたカーリーは、彼が敵討ちに、駅馬車の目的地ローズバーグに向かうと気づき護衛を引き受ける。
そして、酔いどれヤブ医者ブーン、娼婦ダラス、騎兵隊士官の身重の妻ルーシー、ギャンブラー、ハットフィールド、酒の行商人ピーコック、横領金を手にした銀行家ゲートウッドなどを乗せ、駅馬車は、御者バックの掛け声と共にローズバーグを目指す。
途中リンゴーも同乗することになり、娼婦ダラスと恋に落ちるが、一行の行く手にはアパッチの脅威が迫っていた・・・。
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1937年に発表された、アーネスト・ヘイコックスの短編小説”Stage to Lordsburg”を基に製作された作品。
第12回アカデミー賞では作品賞をはじめ7部門でノミネートされて、助演男優(トーマス・ミッチェル)と音楽賞を受賞した。
*ノミネート
作品・監督・編集・撮影(白黒)・美術賞
1995年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
善と悪が、はっきりしている明解なストーリー、モニュメント・バレーを駆け抜ける駅馬車の、当時としては斬新かつ画期的なショット、アパッチの襲撃やクライマックスの決闘の迫力と緊張感、そして、やがて訪れる平和までを息つく間もなく描く、無駄なくテンポ良く進行するジョン・フォードの演出は秀逸だ。
特に、クライマックスのアパッチ襲撃の場面は、とてつもないスピード感と迫力で、他の追随を許さない。
今見ても、驚くばかりのアクションシーンが展開し、伝説となっている、ヤキマ・カナット他のスタントも素晴らしいの一言だ。
既に全盛期が過ぎ低迷していた西部劇が、本作がきっかけで、黄金の1940年代へと突入していくことになる。
その意味でも、本作の功績は大きい。
アカデミー賞を受賞する、ジョン・フォード作品の常連リチャード・ヘーゲマンらの、アメリカ民謡を編曲した軽快な音楽は、原野を疾走する駅馬車のスピードや緊迫感を、見事に表現している。
女性ながらも、西部劇の主演を張るクレア・トレヴァーの、悲哀と逞しさを感じる演技も注目だ。
残念ながら本作は、ジョン・ウェインの主演作ではない。
ジョン・フォードに可愛がられていた彼が、重要な役に抜擢され、その後の大活躍で、後年、代表作のように言われたという経緯がある。
但しそれが、とてつもないジョン・フォードの傑作だったため、ジョン・ウェインの代名詞のようになったのだ。
まだまだ木偶の坊気味の若いジョン・ウェインだが、大ファンとして贔屓目に見ても、どうもこの初登場シーンは好きになれない。
カメラを意識し過ぎるあの目線など、フォードがよくOKを出したなと思えるほどだ素人臭い。
それほどフォードに特別視されていたということなのか・・・。
しかし、駅馬車に同乗してからは、撮影当時まだ31歳だったにしては、まずまず貫禄のあるいい雰囲気では演じている。
ご承知の通り、まだこれからという感じは拭い切れず、その証拠に、本格的にトップスターに上り詰めていくには10年近くかかっている。
因みに、私の中でのフォード、ウェインコンビのNo.1作品は「捜索者」(1956)と断言する。
本作は作品としては満点だが、ジョン・ウェインの真の魅力は、当然のごとくまだ発揮されていない。
初々しい若者を温かく見守ってやろう、ぐらいの出来だと思う。
ジョン・フォードは、それを十分承知していたはずで、彼自身、後年”デューク(ウェイン)”はどんな世界でも超一流になれる素質があった」と明言している。
酒浸のヤビ医者トーマス・ミッチェルは、同じ年の「風と共に去りぬ」(1939)のスカーレットの父親役をも凌ぐ好演で、見事にアカデミー助演賞を獲得した。
人情味ある連邦保安官のジョージ・バンクロフト、おしゃべり御者のアンディ・ディバイン、伊達男のギャンブラー、ジョン・キャラダイン、クライマックスで、ダラス(C・トレヴァー)に感謝を述べるシーンはホッとする大尉夫人ルイーズ・プラット、気弱な酒の行商人ドナルド・ミーク、不平を重ねる詐欺師の銀行家バートン・チャーチル、リンゴーの仇役トム・タイラー、護衛の騎兵隊中尉ティム・ホルト、バーテンのジャック・ペニックなど、当時の作品に頻繁に登場する脇役陣も見逃せない。
また、停車駅の酔いどれ役でフランシス・フォード(ジョン・フォードの兄)やハンク・ウォーデンも端役出演しているだけで、ファンにはたまらなく嬉しい。
1940年の日本公開時、原題「Stagecoach」を邦題に訳す際、”駅馬車”という日本語がなかった時代、”舞台監督”と訳した笑い話もある。