日本で行われている弾圧と迫害が信じられないロドリゴとガルペは、フェレイラが棄教したと断定するヴァリニャーノに、師を捜しに行く許可を求める。
それを拒むヴァリニャーノに対して、あくまで噂だと考えるロドリゴは、使命が達成されていないことを訴え、危険が伴う日本への渡航を許可される。
1640年5月25日、マカオ。
日本に密航する中国船が見つかったロドリゴとガルペは、案内役を頼めるかもしれない日本人キチジロー(窪塚洋介)を紹介される。
長崎出身の薄汚い飲んだくれのキチジローがキリシタンではないかと思ったロドリゴとガルペは、それを否定される。
帰国したいと言うキチジローを信じるしかないロドリゴとガルペは、彼を伴い船で日本に向かう。
不安を抱えながら日本に着き上陸したロドリゴとガルペだったが、キチジローが姿を消してしまう。
海岸沿いの洞窟にいたロドリゴとガルペは、現れた老人イチゾウ(笈田ヨシ)がキリシタンだと知る。
人々と共にトモギ村に向かうロドリゴとガルペは、キチジローが彼らを呼んできたことを知り安堵する。
村に着いたロドリゴとガルペは、住人のモキチ(塚本晋也)から、皆が信者であり、イチゾウが”じいさま”と言われて慕われたいることを知らされて歓迎される。
危険なので他の村には行かないと言うイチゾウは、皆、長崎奉行の井上政重を恐れていることをロドリゴとガルペに伝える。
信者を密告すれば銀100枚、修道士なら200枚、司祭なら300枚がもらえると言われたロドリゴは、他の村に司祭が来たことを伝えに行かねばならないと考える。
フェレイラのことを尋ねたロドリゴだったが、イチゾウとモキチは彼のことを知らなかった。
ロドリゴから十字架を見せられたモキチは、祈りを捧げる。
翌日、朽ち果てた炭焼き小屋に連れて行かれたロドリゴとガルペは、その場で隠れて暮らすことになる。
昼間は身を潜めるロドリゴとガルペは、夜になると村に向かい、信者達のために務めを果たし、キリスト教が人々に愛をもたらしたことを知る。
一日中、小屋の中にいなくてはならず、フェレイラの居場所もみつけられないガルペは苛立ち、ロドリゴから、長崎に向かい師を見つけなければならないと言われる。
危険すぎると反論するガルペは、キチジローを行かせようと考えるロドリゴに、いつもいない彼は酔っぱらいで信用できないと伝えるものの、何かしなければならないと反論される。
耐えられなくなったロドリゴとガルペは小屋から出て外で過ごすが、何者かに目撃されたために戻り隠れる。
床下で身を潜めていたロドリゴとガルペは、現れたキリシタンだと言う二人の男から、五島にある自分達の村にも来てほしいと言われる。
二人から、信者であるキチジローから聞いたと言われたロドリゴとガルペは、彼はキリシタンではないと伝える。
8年前に、井上の前で踏み絵により神を否定したキチジローは、家族全員を殺されたが今も信者だと言われたロドリゴとガルペは、五島に向かうことをイチゾウらに伝える。
制止されたロドリゴはガルペを残してほしいと言われ、それに同意して五島に向かう。
五島に着いたロドリゴは村人やキチジローに迎えられ、彼らと共に神に祈りを捧げる。
その後、他の村からも人々は集まり、ロドリゴは喜びを感じる。
フェレイラを知っていると言う老人に会ったロドリゴは、迫害を受ける前に、長崎の近くで彼が人々のために尽くしたことを知るが、行くのは危険だと言われる。
信仰の徴を求める人々のために、ロドリゴは、身につけているものを分け与えた。
しかし、それを手にしようとしないキチジローは、受け取る資格がないとロドリゴに伝える。
神を否定したが生きるためだったと話すキチジローは、家族は拒んだが自分は聖画を踏んでしまったとロドリゴに伝える。
目の前で家族を焼き殺されたキチジローから、自分とガルペに会った時に、再び神に迎えられると思ったと言われたロドリゴは、告解を聞いてほしいか尋ねる。
赦しを請い苦しむキチジローと共に、ロドリゴは祈りを捧げる。
五島での6日間とキチジローの信仰の再生で自分が有用だと感じたロドリゴは、トモギ村に戻る。
役人達にイチゾウが捕らえられたことをモキチから知らされたロドリゴは、ガルペと共にその様子を見守る。
村にキリシタンがいることを否定するモキチだったが、役人(菅田俊)から褒美を与えると言われる。
もう一人の役人(イッセー尾形)から、村人は3日以内に申し出ることを指示され、イチゾウは解放される。
それに従わなければ、イチゾウに加えて三人を人質を獲ると言う役人は、そのうちの一人にモキチを指名し、その場を去る。
死を恐れないモキチは、口は割らないとロドリゴとガルペに伝えて、この場から離れないようにと言って、去ろうとする彼らを引き留める。
自分達がいると村が危険だと言うロドリゴとガルペは五島に向かおうとするものの、イチゾウに制止されて残りの人質を選ぶ。
一人が決まり、村人に代わりを頼まれれたキチジローは、それを拒むものの仕方なく引き受ける。
覚悟を決めたモキチは、聖画を踏めと言われた場合の対処をロドリゴとガルペに問う。
踏んでいいと指示したロドリゴだったが、ガルペは違う意見だった。
皆と共に祈りを捧げたモキチは、イチゾウのために作った、イエスが磔られた十字架をロドリゴに渡す。
モキチの強さに感銘を受けて、勇気づけられることを伝えたロドリゴは、神を愛する彼と共に祈りを捧げる。
現れた役人の前で聖画を踏まされたイチゾウらだったが、それを疑われて、十字架に唾を吐き聖母を淫ばいと呼ぶことを強要される。
イチゾウとモキチはそれを拒み、従ったキチジローは解放される。
海岸で磔にされたイチゾウとモキチら三人は、酒を与えられる。
満潮となり、波が迫り溺れ死にそうになった三人を、村人とロドリゴとガルペは見守るしかなかった。
イチゾウともう一人は息絶え、モキチは4日間耐えたものの力尽き、三人の遺体は焼かれる。
その後、役人が山狩りをすると聞いたロドリゴとガルペは、別行動をとることにする。
ガルペは平戸へ、ロドリゴは五島に向かうことになり、二人は無事を祈りながら別れを告げる。
五島に着いたロドリゴは、主が沈黙し続けるために苦しみながらさ迷う。
ある村を見つけたロドリゴは、そこに向かおうとしてキチジローと出くわし、信者がいる村があると言われる。
弱い自分は行き場がないとロドリゴに伝えたキチジローは、モキチとイチゾウのために告解する。
翌日、キチジローに裏切られたロドリゴは、役人に捕らえられてしまう。
銀を受けっとったキチジローは、ロドリゴと神に赦しを請う。
信者であるモニカ(小松菜奈)とジュアン(加瀬亮)らの元に連れて行かれたロドリゴは、彼女らが死を恐れず、天国に行けば平安が待っていると信じていることを知る。
現れた役人(井上)は、それなりの返答をすれば悪いようにはしないと伝えて、残したロドリゴと話す。
百姓の無能さを語る役人は、理解あるロドリゴ次第で彼らを自由の身にすると伝える。
信仰を否定させればいいと言われたロドリゴは、それを断れば殺されると考え、百姓を殺しても信仰はさらに強まることを学んだと話す役人に、自分だけを罰すればいいと伝える。
ロドリゴの考えを理解しない役人は、人々の苦しみが喜びの代償だと彼に伝えてその場を去る。
拘束されたロドリゴは、現れた通辞(浅野忠信)から棄教を勧められ、信者は皆、逆さ吊りにされて、一滴ずつ血を流し死ぬことになると言われる。
フェレイラも同じだと言われたロドリゴは、彼が日本の名を持ち日本人妻もいて、人々に尊敬されていることを知らされるものの、信じようとはしない。
長崎に連れて行かれたロドリゴは、キチジローの姿を見る。
奉行所に拘束されたロドリゴは、捕らえられたモニカらと共に平穏な日々を過ごし、主の”見棄てない”という声を聞く。
通辞を伴い役人と話し合うことになったロドリゴは、祖国では正しい教えも、今の日本では無益であり危険だという結論に達したと言われる。
自分達は真理をもたらしたと言うロドリゴは、日本で相応しくないと言うなら真理とは呼べないと伝える。
役人から、この土地で信仰を広めるのは無理だと言われたロドリゴは、毒される前には30万人の信者がいた土地のせいではないと伝えるものの、返事が得られない。
自分もあなた方の考えも変わらないと言うロドリゴは、信仰を試すなら、更なる難題を与えてほしいと伝えて、井上に会うことを望む。
役人達が笑い始めたために不思議に思ったロドリゴは、モトギ村から自分に対応していたその場にいた役人が奉行の井上だと知り驚く。
現れたキチジローが、井上の指示に従う者かもしれないとモニカから言われたロドリゴは、彼から告解を求められる。
自分の弱さを悔い赦しを請うキチジローに、救う価値を見出せないロドリゴだったが祈りを捧げる。
その後、モニカら5人は聖画を踏むことを強いられ、全員がそれを拒む。
4人は牢屋に戻り、残されたジュアンが斬首される姿を見たロドリゴは愕然とする。
連れて来られたキチジローは、聖画を踏んで解放される。
江戸から戻った井上はロドリゴを呼び、4人もの側室をもつ大名を例にとり、キリスト教と同じだと言って、それが理解できれば日本が禁じる理由が分かるだろうと伝える。
教会は一人の妻をと教えていると言うロドリゴは、日本も4人ではなく一人を選んではどうかと井上に提案する。
選ぶのはポルトガルかと訊かれたロドリゴは、自分達の教会だと答えるものの、異国の妻を娶るのかと言う井上は笑ってしまう。
結婚は国籍が問題ではなく愛と貞節だと話すロドリゴに、醜い女の愛にうんざりする男もいると伝えた井上は、布教は自分にとって醜い女かと言われる。
その通りだと言う井上は、子を産めぬ女は真の妻になれないと伝える。
教えが広まらないのは教会のせいではなく、教会と信者を引き裂いた者のせいだと伝えたロドリゴは、それが自分だと考える井上から、日本を理解していないと言われる。
ロドリゴからはキリスト教を理解していないと言われた井上は、多くの考えと違い、自分は邪宗とは考えないものの危険なことには変わりなく、醜い女の愛と子を産めぬ女の妻の資格についてよく考えるようにと伝えてその場を去る。
その後、モニカらはよそに連れて行かれ、モキチから渡された十字架を隠し持つロドリゴも海岸に向かう。
そこにモニカらと共にガルペが連れて来られ、通辞から、自分が棄教して生きているとは伝えてあると言われえる。
体にむしろを巻かれたモニカらは船に乗せられ、彼女らを助けるために、ガルペは棄教を迫られていた。
船は沖に向かい、ガルペは自分を身代わりにするようにと叫ぶ。
モニカらは海に落とされ、助けに行こうとするガルペを止められないロドリゴは苛立つ。
海に沈んだモニカと共にガルペは水死し、ロドリゴは、自分達が彼らに苦しみを押し付けたと言う通辞から非難される。
その後、神は沈黙し続け、苦しむロドリゴはある場所に連れて行かれる。
フェレイラが現れ、動揺しながら話すロドリゴは、この場が寺であり学んでいると言われる。
沢野忠庵と名乗るフェレイラが、井上の命令で天文学の書を書いていることを知ったロドリゴは、知識豊富な国ではあるが、医学と天文学が遅れていると言われる。
井上を手伝えることを嬉しく思い充実していると言うフェレイラは、キリスト教の不正を示しデウスの教えに反証する書を書いていることも、同行していた通辞から話すように促される。
人の魂を歪める拷問より酷い仕打ちだと言うロドリゴは、通辞から、彼から学び自分を棄てるようにと言われる。
指示されて棄教を勧めにきたと言うフェレイラは首の傷を見せて、穴吊りの拷問の痕だと伝えてその様子を説明し、井上の前で聖画を踏んだことを話す。
フェレイラは、15年布教したが、この国は沼地であり苗を植えても育たずに根は腐るので、キリスト教は根付かないと話す。
ロドリゴから、広まった時期もあると言うわれたフェレイラは、日本人が信じたのは歪んだ教えであり、自分達の神など信じていないと伝える。
ザビエルの時代から改宗者はいたと言うロドリゴに、神の御子を教えるために呼んだ”大日”は太陽だと伝えたたフェレイラは、聖書ではイエスが三日で甦るが、日本では神の太陽は毎日、昇り、自然の内にしか神を見いだせないため、人間を超えるものはないと語る。
日本人はキリスト教の神の概念を持てないと言われたロドリゴは、自分達の神や主、デウスを崇めていると伝える。
それは、日本人には理解でいきない神の名だと言うフェレイラに、デウスのために命を断った殉教者を見たと伝えるものの、キリスト教の信仰を守り死んだのではないと反論される。
彼らは無のために死んだのではないと意見するロドリゴは、同意するフェレイラから、君のために死んだと言われる。
聖画を踏み救った人々の数を訊かれたフェレイラは、分からないが、ロドリゴが救える数ほどではないと答える。
弱さの正当化だと言われたフェレイラは、”山河は改む”という日本のことわざを引用し、日本人の本性は変わらないと伝える。
フェレイラの考えを情けなく思うロドリゴは、恥さらしだと伝えるものの、今は日本名と、死刑にされた男から継いだ妻子もあるので構わないと言われる。
ある場所に連れて行かれたロドリゴは、現れたキチジローから告解を求められる。
人々のうめき声が気になり苛立つロドリゴは、フェレイラから、5人の信者が穴吊りにされていることを知らされる。
同じ目に遭わされたことを話すフェレイラは、5人を救うためにロドリゴに棄教を勧める。
拷問を見せられたロドリゴは、フェレイラから、自分が棄教しない限り救えないと言われる。
聖画を前にロドリゴは、”それでよいのだ、踏みなさい”と言う主の声を聞く。
ロドリゴは聖画を踏んで崩れ落ち、5人は拷問から解放される。
その後、棄教したロドリゴは、井上の命令によりフェレイラと共にキリシタンの徴を探し、貿易の検閲も手伝った。
井上に呼ばれたロドリゴは、江戸で死んだ岡本三右衛門の名を名乗るように指示される。
残された妻子と共に暮らすようにと言われたロドリゴは、キリシタンはまだいることを知らされるものの、沼地には何も育たないと井上に伝える。
ロドリゴは、日本人は自分に負けたのではないと考える井上から、日本という沼地に負けたのだと言われる。
その後ロドリゴは、残りの人生を江戸で過ごした。
ロドリゴは、井上の指示で何度も棄教の証明書に署名させられた。
召使として一緒にいてくれるキチジローに感謝するロドリゴは、彼から最後の司祭だと言われて動揺する。
今でも苦しんでいるキチジローは、自分や家族、主も裏切ったことで告解を聞いてほしいとロドリゴに伝える。
主の沈黙と闘ったと考えるロドリゴは、共に苦しみ沈黙していたのではないという主の声を聞く。
理解していると言うロドリゴは、沈黙の中で主の声を聞いたと言いながら、キチジローと共に祈りを捧げる。
1667年。
持っていたお守りの中から聖画の札が見つかったキチジローは、賭けで勝ったと言うものの役人に連れ去られ、ロドリゴは厳しく監視される。
ロドリゴの信仰は消え去り、息を引き取った彼の棺は役人に見張られた。
妻だけがロドリゴに触れることが許され、守り刀を彼の懐に収める。
ロドリゴの遺体は仏教の慣わしで火葬され、戒名も与えられた。
しかし、ロドリゴの心については神だけが知っていた。
火葬されるロドリゴの手には、モキチから渡された十字架が置かれていた。