1934年に発表された、アガサ・クリスティの同名小説の映画化。 ”オリエント急行”に乗車する名探偵エルキュール・ポアロが遭遇する謎の殺人事件を描く、監督シドニー・ルメット、主演アルバート・フィニー、リチャード・ウィドマーク、アンソニー・パーキンス、ショーン・コネリー、ヴァネッサ・レッドグレイヴ、ローレン・バコール、イングリッド・バーグマン他共演のサスペンス。 |
・ショーン・コネリー / Sean Connery 作品一覧
・ローレン・バコール / Lauren Bacall / Pinterest
・イングリッド・バーグマン / Ingrid Bergman / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:シドニー・ルメット
製作
ジョン・ブラボーン
リチャード・グッドウィン
原作:アガサ・クリスティ
脚本:ポール・デーン
撮影:ジェフリー・アンスワース
編集:アン・V・コーツ
衣装デザイン:トニー・ウォルトン
音楽:リチャード・ロドニー・ベネット
出演
エルキュール・ポアロ:アルバート・フィニー
ラチェット・ロバーツ:リチャード・ウィドマーク
ヘクター・マックイーン:アンソニー・パーキンス
エドワード・ベドーズ:ジョン・ギールグッド
アーバスノット大佐:ショーン・コネリー
メアリー・デベナム:ヴァネッサ・レッドグレイヴ
ナタリア・ドラゴミノフ公爵夫人:ウェンディ・ヒラー
ヒルデガルド・シュミット:レイチェル・ロバーツ
ハリエット・ベリンダ・ハバード:ローレン・バコール
グレタ・オルソン:イングリッド・バーグマン
ルドルフ・アンドレニイ伯爵:マイケル・ヨーク
エレナ・アンドレニイ伯爵夫人:ジャクリーン・ビセット
サイラス”ディック”ハードマン:コリン・ブレイクリー
ジーノ・フォスカレッリ:デニス・クイリー
ピエール・ミシェル:ジャン=ピエール・カッセル
コンスタンティン医師:ジョージ・クールリス
ビアンキ:マーティン・バルサム
イギリス 映画
配給
パラマウント・ピクチャーズ
EMI Films
1974年製作 127分
公開
北米:1974年11月24日
日本:1975年5月
北米興行収入 $35,733,870
■ アカデミー賞 ■
第47回アカデミー賞
・受賞
助演女優賞(イングリッド・バーグマン)
・ノミネート
主演男優(アルバート・フィニー)
脚色・撮影・衣装デザイン・作曲賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1930年、ニューヨーク、ロングアイランド。
大富豪アームストロング家の3歳の娘デイジーが誘拐され身代金が支払われるが、子供は遺体で発見される。
5年後、イスタンブールのアジア側。
ヨーロッパとアジアを結ぶ、大陸横断列車オリエント急行に乗車するために様様な人々が現れ、車掌のピエール・ミシェル(ジャン=ピエール・カッセル)が部屋を振り分ける。
アメリカの大富豪ラチェット・ロバーツ(リチャード・ウィドマーク)、その秘書ヘクター・マックイーン(アンソニー・パーキンス)、執事エドワード・ベドーズ(ジョン・ギールグッド)、イギリスの軍人アーバスノット大佐(ショーン・コネリー)、その恋人で教師のメアリー・デベナム(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)、ロシア貴族のナタリア・ドラゴミノフ公爵夫人(ウェンディ・ヒラー)、そのメイドのヒルデガルド・シュミット(レイチェル・ロバーツ)、アメリカ人女性ハリエット・ベリンダ・ハバード(ローレン・バコール)、スウェーデン人宣教師グレタ・オルソン(イングリッド・バーグマン)、ハンガリー人外交官ルドルフ・アンドレニイ伯爵(マイケル・ヨーク)、その妻のエレナ(ジャクリーン・ビセット)、芸能プロダクションのサイラス”ディック”ハードマン(コリン・ブレイクリー)、自動車販売業をシカゴで営むイタリア人ジーノ・フォスカレッリ(デニス・クイリー)、ギリシャ人医師コンスタンティン(ジョージ・クールリス)、国際寝台車会社の重役ビアンキ(マーティン・バルサム)、そしてロンドンでの事件解決の依頼を受けたベルギー人の探偵のエルキュール・ポアロ(アルバート・フィニー)らだった。 12月だというのに寝台車は満室で、部屋のないポアロは旧友のビアンキの計らいで、ヘクターと同室ながら部屋を確保することが出来る。 イスタンブールを発ったオリエント急行は、カレーに向けて順調に旅を続ける。 車内では、ポワロが乗客の観察を始め、彼はロバーツに呼び止められる。 富豪であるロバーツは、命を奪われる危険性があることをポワロに告げ、彼に身を守るための報酬額を提示するがポワロはそれを断る。 ベオグラードに到着したオリエント急行は、休息を取り再び出発し、特別室に移ったビアンキの部屋をポワロが譲り受ける。 ロバーツの執事ベドーズは、主人の傲慢な態度に嫌気がさしていた。 積雪で立ち往生した列車内で、深夜、ポワロは周囲の騒がしさで目覚めてしまい不快感を感じる。 翌朝、ベドーズがロバーツの部屋に向かうのだが返事はなく、車掌のピエールがドアをこじ開ける。 すると、ロバーツが殺されているのが見つかり、居合わせたポワロは、ビアンキとコンスタンティン医師を呼ぶ。 ロバーツの遺体を確認したコンスタンティン医師は、慎重なポワロの監視の下、10~12の胸の刺し傷などから、死亡時間を推測する。 ビアンキはポワロに捜査を依頼し、彼は特別室の利用を許可され、早速、捜査を始める。 ポワロは、ロバーツに一番身近な存在だったヘクターから、簡単なメモ書きのような彼への脅迫状を見せられる。 殺害現場の手がかりの多さを気にしたポワロは、灰皿の焼け焦げた紙の”AISY ARMS”という文字から、彼が母国を捨てた理由を知る。 ポワロは、その文字が、5年前に誘拐殺害された幼女の名前”DAISY ARMSTRONG”(デイジー・アームストロング)だと気づく。 実行犯は逮捕され処刑されたが、黒幕は金と共に姿を消したと言われ、不幸な死や自殺した被害者の両親を含め、5人もの命がその事件で奪われていた。 ポワロは、その犯人がロバーツだったという結論に達する。 そしてポワロは、車掌のピエールから尋問を始め、殺人が行われた寝台車にいた彼から、犯行時刻の様子を聞く。 その後ポワロは、ヘクターにロバーツの正体を教え、彼がアームストロング夫人と知り合いであり、可愛がられたことを知る。 ビアンキは、ポアロが尋問する相手を順番に犯人の可能性があると言い張るが、コンスタンティン医師が疑問点も指摘する。 次にポワロは、ロバーツの執事ベドーズに、主人の就寝前の様子などを聞き、彼の主人がアームストロング事件の主犯でイタリア系アメリカ人だったことを伝える。 ビアンキは、今度はロバーツにいつでも近づけるベドーズが犯人だと言い始め、除雪車が現れたため、ポワロに捜査を急がせる。 ロバーツの部屋とドアでつながっていたハバード夫人を尋問したポワロは、彼女が、男性が部屋に入ったといって騒いだことを追求する。 ハバード夫人は、部屋に寝台車付車掌のボタンが落ちていたことを知らせるが、ピエールのボタンが紛失していないことがわかる。 ポワロは、次にスウェーデン人宣教師オルソンを呼ぶが、彼女は、旅行の目的が布教のための資金集めだとしか語らなかった。 そしてビアンキは、オルソンが犯人だと言い出し、ポアロは次にアンドレニイ伯爵夫人を尋問して、夫人のパスポートのサインが本物かを確認する。 ポワロはビアンキを伴い、ドラゴミノフ公爵夫人の部屋に向かい、彼女がアームストロング夫人の後見人だったことについて説明を求める。 公爵夫人は、女優だったアームストロング夫人の母親の親友で、アームストロング家の事情などにも詳しかった。 メイドのヒルデガルドは、アームストロング家のメイドとも親しく、彼女の写真を持っていることをポワロに知らせるが、写真の入っている鞄には、ボタンの取れた車掌の制服と帽子が隠されていた。 ポワロは、ロバーツの部屋に落ちていた”H”のイニシャルの付いたハンカチの持ち主も捜していたが、ヒルデガルドはそれを否定する。 次に、アーバスノット大佐を尋問し始めたポワロは、彼にアームストロング大佐との関係を尋ねる。 アーバスノットは、事件前にロバーツに会い、乗客の中で彼しか使わない、パイプ・クリーナーが部屋に残されていた疑問をポワロは指摘する。 ポワロはアーバスノットを犯人とは断定せず、列車に乗る前のフェリーで聞いてしまった、”全てが終わってから・・・”という言葉の意味を、大佐の恋人メアリーから聞きだそうとする。 メアリーに、激しく言い寄るポワロを見たアーバスノットは、それを制止し、仕方なく妻との離婚後にメアリーに求婚するつもりだったことを告げる。 その後、イタリア人フォスカレッリを尋問していたポワロは、ハバード夫人が、犯行に使われたナイフを持って現れたことに気づく。 ハバード夫人は、それが化粧バッグに入っていたということをポワロに告げ、彼は食堂車で全ての謎を解くことにして、全員を食堂車に集める。 そしてポワロは、最後にハードマンを尋問するが、彼は実は、ロバーツの警護を頼まれた、”ピンカートン探偵社”の探偵だったことがわかる。 ポワロは、アームストロング家のメイドである”ポーレット・ミッシェル”の写真をハードマンに見せ、彼がそのメイドを知っていることを確認する。 食堂車に集まった乗客の前で、証拠品や捜査状況を説明し始めたポワロは、見つかった車掌の制服がピエールの体格に合わないことから、ベオグラードで乗車した男が犯行に及んだとの見解を述べる。 しかし、それは単純な答えで、外部の犯行ではないことを仮定した推理を始める。 今回の殺人を、アームストロング事件に結びつけたポワロは、メアリーがアームストロング夫人の秘書で、アンドレニイ伯爵夫人が夫人の妹であることと、”H”のハンカチが、夫人との親密な関係を否定した、ドラゴミノフ公爵夫人のものだと断定する。 さらに、公爵夫人のメイドのヒルデガルドがアームストロング家のコックだったことも暴き、アームストロング大佐との接触を否定したアーバスノットが口走った”12人の陪審員”という言葉で、ポワロは閃きを感じていた。 ロバーツの遺体の傷は12箇所で、陪審員は12人、脅迫文の文字は12で、そして寝台車の乗客は12人だった。 探偵のハードマンは元警官で、アームストロング家のメイドと恋に落ち、そのメイドは、車掌ピエールの娘だったのだ。 宣教師オルソンも、アメリカで誘拐された幼女の世話をして、事件後に奉仕の道を歩み、ベドーズは、アームストロング大佐の部下で、フォスカレッリは運転手だった。 殺人を計画したのは、アームストロング夫人の母ハバード夫人で、ベドーズがロバーツと彼女との部屋のドアの鍵を開け、ヘクターが飲み物に薬を混ぜる。 ”DAISY ARMSTRONG”というメモに気づいたロバーツは、薬を飲んで意識を失い、ヘクターはメモを燃やしながら、彼がピエールに返事をしたように見せかける。 その後、ハバード夫人が男がいたと言って騒ぎ、ポワロが寝静まった後、全員が次々とロバーツをナイフで突き刺して復讐を果たした、というのがポワロの推理だった。 ポワロは判断をビアンキに任せ、彼は制服を着てロバーツを殺した真犯人がいるという結論で、事件に終止符を打つ。 そして、ハバード夫人とアンドレニイ伯爵夫人母娘と乗客達は祝杯をあげ、除雪が終わったオリエント急行は出発する。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
イスタンブール。
ロンドンで事件解決の依頼を受けた、名探偵として名高いベルギー人エルキュール・ポアロは、”オリエント急行”に乗車しカレーに向かう。
列車には様々な人々が乗り合わせていたが、雪のために停車した車両内で、ポワロの隣の客室にいた、アメリカ人富豪ロバーツが、身体中を刺されて死亡しているのが発見される。
国際寝台車会社の重役ビアンキは、居合わせたポワロに捜査を依頼する。
そして、それを引き受けたポワロは、一等寝台車12人の乗客や車掌達の尋問を始める。
独自の捜査と推理で事件の謎を解いていくポワロだったが、その事件の裏には、怨念を晴らすための”ある者達”の、周到な計画が隠されていた・・・。
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実力派スターが演ずる、多彩な登場人物を見事に操り、その中でも異彩を放つキャラクターの名探偵ポワロを中心にして、ユーモアとペーソスが微妙に絡み合う、シドニー・ルメットのシャープな演出は冴え渡る。
公開されるや、全世界で大ヒットを記録して、3500万ドルを超す、当時としては驚異的な興行収入をあげた作品。
あまりの評判に、アガサ・クリスティ作品の映画化は続き、「ナイル殺人事件」(1978)、「クリスタル殺人事件」(1980)、「地中海殺人事件」(1982)、「ドーバー海峡殺人事件」(1984)、「死海殺人事件」(1988)などが製作された。
第47回アカデミー賞では、気の弱い宣教師という設定のイングリッド・バーグマンが、助演女優賞を受賞した。
イングリッド・バーグマンは、主演賞として「ガス燈」(1944)、「追想」(1956)に続いて3度目の受賞となった。
・ノミネート
主演男優(アルバート・フィニー)
脚色・撮影・衣装デザイン
作曲賞
ドラマ途中で、全員が犯人であることは知らされるのだが、その動機や実行計画を、様々な人間模様を描き、全てを一つに関連付けながら謎を解き明かしていく手法は実に面白い。
クライマックスで、満足気に推理を完結させるポワロや、国際寝台車会社の重役が見せる、人情物語も実に心地よい。
劇的なドラマを盛り上げるリチャード・ロドニー・ベネットの音楽も印象に残る。
完全無欠の名探偵ポアロのアルバート・フィニー、作品にアクセントを加える国際寝台車会社重役マーティン・バルサムと医師ジョージ・クールリス、アメリカの大富豪にして誘拐殺人犯、そして被害者のリチャード・ウィドマーク、その秘書アンソニー・パーキンス、執事ジョン・ギールグッド、イギリス軍人ショーン・コネリー、その恋人ヴァネッサ・レッドグレイヴ、ロシア貴族の公爵夫人役ウェンディ・ヒラー、メイドのレイチェル・ロバーツ、計画の立案者で誘拐された幼女の祖母ローレン・バコール、宣教師イングリッド・バーグマン、ハンガリー人外交官マイケル・ヨークと妻で少女の叔母ジャクリーン・ビセット、探偵で誘拐事件で死亡するメイドの恋人コリン・ブレイクリー、運転手のデニス・クイリーなどが共演している。