エルジーは、盲目の老人(ゲオルグ・ジョン)が売る風船を男に買ってもらい喜びお礼を言う。
1時過ぎてもエルジーが戻ってこないために、ベックマン夫人は心配になり、通りや周辺に向かい彼女の名を呼ぶ。
エルジーの持っていたボールは野原に転がり、電線に引っ掛かていた彼女の風船も飛び去る。
その後、新聞の号外と共に街は騒然となり、新たに犠牲者が出たことが人々に知らされる。
子供たち8人犠牲になり、人々の間に不安が広がる。
少女に時間を訊かれた通行人の老人(ハインリッヒ・ゴトー)は、誘拐殺人犯に疑われ人々に囲まれ責められる。
その後、犯人から自分は無事だという赤鉛筆で書かれた犯行声明が新聞社に届き、鑑定が進められる。
捜査の進展がないことを犯罪局長(ゲルハルト・ビエナート)から責められた警察署長(エルンスト・シュタール=ナックバウア)は、各部署の部下は24時間体制で捜査を行っていることを伝える。
納得しない長官に対し署長は、エルジー・ベックマン事件だけでも1500件弱の証言が集まり、それを基に大規模な捜査を行ったことを伝える。
酒場の手入れをしたカール・ローマン警視正(オットー・ヴェルニッケ)は、売春婦(ヘルタ・フォン・ヴァルター)やその場にいた者たちを取り調べる。
事件により警察の警備が厳しくなり裏社会にも影響を与え、会議を招集した犯罪者のボス(グスタフ・グリュントゲンス)は、強盗のフランツ(フリードリヒ・グノス)や詐欺師(フリッツ・オデマー)、タレコミ屋(テオ・リンゲン)、そしてスリ(ポール・ケンプ)に、今回の件は早急に解決する必要があると伝える。
同じ頃、警察署長を本部長にした捜査本部の会議も開かれ、ローマンも出席して意見が交わされる。
自分たちで犯人を捕える必要があると言うボスは、その方法を考え、乞食の組織を利用しようとする。
乞食たちは物乞いをしながら街を監視し、怪しい人間を見つけようとする。
精神病院を退院した患者のリストから名前が挙がったベッカートの部屋を尋ねたグルーバー警部(テオドル・ロース)は、役人を装い留守中の彼を待つ。
部屋を調べたグルーバーは、木製の机のペン痕や赤鉛筆などを捜し、ゴミ箱に捨ててあったものをチェックしてメモする。
ショーウィンドウを覗いていたベッカードは、鏡に映った少女を見て欲望が抑えられなくなり、口笛を吹きながら彼女の後をつける。
迎えに来た母親と少女がその場を去ったために、動揺しながらカフェに寄ったベッカートは、コニャックを飲んで口笛を吹き、気持ちを落ち着かせようとする。
グローバーから報告を受けたローマンは、部屋にあったタバコの銘柄が気にあり、ある殺人事件の資料を確認しようとする。
風船売りの盲目の老人は、聞き覚えのある口笛が気になり、友人の少年を呼び、口笛を吹いている者がいるか尋ねる。
男が少女と話していると言われた老人は、エルジーが殺された日に聴いた口笛であり、その男が風船を買ったと少年に伝え、後を追うよう指示する。
ベッカートが少女にお菓子を買ってあげている様子を監視していた少年は、手のひらにチョークで”M”と書く。
ベッカートに近づいてぶつかった少年は、”M”の文字がつくよう、彼の背中を叩いてその場を去る。
殺人事件の資料を調べたローマンは、ベッカートの部屋にあったものと同じ銘柄のタバコの吸い殻が見つかっていたことを確認し、それをグローバーに伝える。
タバコの銘柄だけでは証拠不十分だと考えたグローバーは、ベッカートが窓棚で手紙を書いた可能性があることをローマンに伝える。
もう一度ベッカートの部屋を調べたローマンとグルーバーは、窓棚の文字の痕や赤鉛筆の芯の粉を見つけ、ベッカートが犯人だと確信する。
少年からの連絡を受けたボスらは、背中に印をつけた男(ベッカート)を監視していることを知る。
尾行されていることに意気づかないまま、少女とおもちゃ屋に入ろうとしたベッカートは、彼女から背中の文字のことを知らされる。
少女はそれを拭きとろうとするが、ベッカートは何者かが監視していることに気づく。
焦ったベッカートは、少女を残してその場から逃げ去る。
乞食たちに追い詰められたベッカートはオフィスビルに身を隠す。
勤務を終えた人々が続々とビルから出て来たため、乞食たちはベッカートを見つけることができない。
ビルは閉鎖され、ボスに電話をした乞食は、ベッカートが建物内にいるはずだと伝えて応援を求める。
屋根裏部屋に隠れていたベッカートは、現れた警備員に入り口を閉められてしまう。
ボスは、自分たちで犯人を捕らえようとする。
警官に扮したボスはビルに向かい、警備員のダモウィッツ(カール・プラテン)に銃を向けて拷問し、2人の警備員がいることを聞き出して仲間たちにそれを伝える。
入り口のドアを開けようとしたベッカートは、こじ開けようとしてナイフを折ってしまう。
二人の警備員を痛めつけて拘束した一団は、警察への警報を解除しながらベッカートを捜す。
壁の釘を抜いたベッカートは、それを道具にするために叩いて曲げようとする。
その音を聞いたスリは、それを仲間に伝えて屋根裏部屋に向かう。
ドアのレバーが動いたために驚いたベッカートは、入り口から離れて隠れる。
一団は鍵を開けて中に入り、ベッカートを捜す。
警備室に向かったスリは、自分が男を見つけたと言って仲間に自慢話をする。
その隙に、捕らえられていた警備員のダモウィッツは、警報スイッチを入れて警察に通報する。
屋根裏部屋に向かったスリは、そのことを仲間に伝えるものの、警官が到着するまで男を捜すことになる。
隠れていたベッカートを捕えた一団は、その場から引き揚げる。
逃げ遅れたフランツは逮捕され、警察署に連行されて署長に尋問される。
仲間たちと共に捕えたはずのベッカートのことを聞き出そうとする署長だったが、地下にいたフランツは何も知らないと答える。
ダモウィッツから話を聞いた署長は、屋根裏部屋で男を見つけた話を聞いたことを確認し、彼を帰宅させる。
署長から今回の件の報告書を見せられたローマンは、犯罪者が押し入ったにも拘わらず、金庫が荒らされてなかったことを知る。
ローマンに協力を求めた署長は、フランツのことを任せる。
殺人課のローマンの元に連れて行かれたフランツは動揺し、子供を殺害した犯人を捜していたことを話す。
ようやく核心に迫ったローマンは、仲間が捕えた男をどこに連れて行ったか尋ね、廃墟となった蒸留所だということを聞き出す。
その頃、蒸留所に捕らえられていたベッカートは、無言の大衆と犯罪者の前に連れて行かれる。
取り乱し、その場から出たいと言うベッカートに、ボスは出られないと伝える。
ベッカートは、何かの間違いだと言って無実を主張する。
その時ベッカートは、風船売りの盲目の老人に肩を掴まれる。
風船を手にした老人は、これと同じものをエルジーに買ったはずだとベッカートに伝える。
動揺するベッカートにボスは、被害者の少女”マルガ・パール”をどこに埋めたか尋ねる。
会ったこともないと答えたベッカートに、ボスは被害者の少女たちの写真を見せる。
逃げ出そうとしたベッカートは制止され、人々の怒号を聞きながら、こんなことをする権利はないと反論する。
声を上げた一人の女性は、権利なら死しかないとベッカートに伝え、他の人々もそれに同意する。
その場を鎮めたボスはベッカートに対し、権利はここにいる法の専門家が決めると伝える。
ボスは、テーゲル刑務所で6週間、ブランデンブルグで15年の刑が下り、弁護人もいて法律に従うと伝える。
弁護人などいらないと言うベッカートに声をかけた弁護人(ルドルフ・ブリュムナー)は、余計な発言はしない方がいいと彼に助言する。
ボスは、興奮し続けるベッカートに、自分たちは平穏に暮らしたいので死んでもらうと伝える。
殺す権利はないと言うベッカートは、人々に笑われながら、警察への引き渡しと正式の法廷で裁かれることを要求する。
人々の笑い声は高まり、ボスは、精神異常を主張し国家に面倒を見てもらい、恩赦で無罪放免になり再び子どもを狙うのかと言いながら、そんなことは許さないとベッカートに伝える。
混乱するベッカートは、犯罪を犯すことに誇りを持っている者たちを批判し、自分は呪われていると伝える。
ボスから、仕方なく殺すのかと訊かれたベッカートは、際限なく歩き続けていると誰かがついてくる、それが自分の影だと分かるものの、それから逃げられないことを話す。
ベッカートは、母親と子どもの亡霊も現れ永遠に走り続け、犯行の時だけ解放されると言って、何も覚えていないと伝える。
気づくとポスターの前で事件の記事を読んでいるのだが、犯行の記憶はないと話すベッカートは、心の中で仕方なかったと叫ぶしかなかったと言って、再び興奮する。
席を立ったボスは、仕方なかったというのは犯行を認めたことになり、死刑の確定を主張して人々の賛同を得る。
弁護人は、被告は警察への引渡しを求め、無意識のうちに犯した罪で死刑が求刑されたが、強迫観念による犯行は無罪であり、責任能力のない行為を罰することはできないと主張する。
人々から非難された弁護人は、被告を病人であり、必要なのは刑よりも医師だと伝える。
治る保証はないと言われた弁護人は、他の施設もあると伝えるが、脱走か退院後は再び犯行を始めると言われ、捕らえられても結局は精神異常者扱いになるという意見を聞く。
人を殺す権利は国家や自分たちにはないと言う弁護人は、国家は社会悪に対し、適切な方法で対処する義務があると伝える。
席を立った女性は、子供を失い奪われたことがない者に理解できるはずがないと言って、犠牲者の母親に聞くべきだと弁護人に伝える。
抹殺するべきだと言う人々はベッカートを罵るが、弁護人は、自分の前で殺人を行うことは許さないと言って、法の下で裁くことを主張し、警察に引き渡すことを要求する。
納得できない人々は席を立ち、ベッカートの元に向かうものの、その場に警官が現れる。
その後、起訴されたベッカートは、法の下で裁かれる。
エルジーの母ベックマン夫人は、悲しみに堪えながら訴える。
こんなことでは子共は戻ってこない、子供から目を離してはいけない。