エルマー・ブラニー・ハリスによる、同名の舞台劇の映画化。 よそ者や障害者に対する偏見と共に人間の優しさや素朴な愛の素晴らしさなどを描く、監督ジーン・ネグレスコ、ジェーン・ワイマン、リュー・エアーズ、チャールズ・ビックフォード、アグネス・ムーアヘッド共演による映画史上に残る珠玉の名作。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ジーン・ネグレスコ
製作:ジェリー・ウォルド
原作:エルマー・ブラニー・ハリス
脚本
イルマ・フォン・クーベ
アレン・ヴィンセント
撮影:テッド・D・マッコード
編集:デヴィッド・ウィスバート
音楽:マックス・スタイナー
出演
ジェーン・ワイマン:ベリンダ・マクドナルド
リュー・エアーズ:ロバート・リチャードソン医師
チャールズ・ビックフォード:ブラック・マクドナルド
アグネス・ムーアヘッド:アギー・マクドナルド
スティーブン・マクナリー:ラッキー・マコーミック
ジャン・スターリング:ステラ・マグワイア・マコーミック
イアン・ウルフ:牧師
アメリカ 映画
配給 ワーナー・ブラザーズ
1948年製作 101分
公開
北米:1948年9月14日
日本:1949年8月9日
■ アカデミー賞 ■
第21回アカデミー賞
・受賞
主演女優賞(ジェーン・ワイマン)
・ノミネート
作品・監督
主演男優(リュー・エアーズ)
助演男優(チャールズ・ビックフォード)
助演女優(アグネス・ムーアヘッド)
脚本・編集・撮影(白黒)・美術(白黒)
作曲(ドラマ/コメディ)・録音賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
カナダ、ノヴァスコシアの北東、ケープブレトン島。
漁業と農業で一年を過ごすこの村で、都会生活に飽きたロバート・リチャードソン(リュー・エアーズ)は、開業医として質素ではあるが満ち足りた生活を送っていた。
リチャードソンに好意を持ち、善意で世話をするステラ・マグワイア(ジャン・スターリング)を秘書に、彼は小さな診療所を開業していた。
ステラは叔父の財産を相続していたため、それを漁師のラッキー・マコーミック(スティーブン・マクナリー)が狙っていた。
ある日、ロバートは製粉業のブラック・マクドナルド(チャールズ・ビックフォード)の牛のお産を手伝いに行き、聴覚障害で、言葉が不自由な娘ベリンダ(ジェーン・ワイマン)に出会う。
リチャードソンは、治療代の代わりに、池で釣りをすることをブラックに承知してもらう。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
田舎暮らしに安らぎを求めていた開業医ロバート・リチャードソンは、製粉業を営む貧しいブラック・マクドナルドの娘で、聴覚障害者のベリンダと出会う。
彼女に興味を持ったリチャードソンは、娘の賢さに気づいていたブラックの許可を得て、手話や読唇術を教える。
その後ベリンダは、リチャードソンの献身的な指導で、手話で会話を始めるようになる。
しかし、彼女が言葉を話せないのを逆手に取り、漁師マコーミックは、彼女を暴行してしまう。
ベリンダは妊娠し、やがて男の子を出産するが、心無い村人達の言葉や視線は、リチャードソンやマクドナルド家の人々を傷つけてしまう・・・。
__________
第21回アカデミー賞では作品賞以下12部門にノミネートされ、ジェーン・ワイマンが主演女優賞を受賞した。
・ノミネート
作品・監督
主演男優(リュー・エアーズ)
助演男優(チャールズ・ビックフォード)
助演女優(アグネス・ムーアヘッド)
脚本・編集・撮影(白黒)・美術(白黒)
作曲(ドラマ/コメディ)・録音賞
純真な心の持ち主である、言葉を話せない女性と、彼女を支える医師との親交が、憎しみや妬みを持つ人間の心をも動かしてしまうラストは、ジーン・ネグレスコの丁寧な演出により涙なしでは見られない。
全編で流れる、マックス・スタイナーの清らかで美しい主題曲も、心に残る名曲だ。
アカデミー賞(主演賞))を受賞したジェーン・ワイマンの、言葉を一言も発しない、表情豊かな演技は秀逸だ。
特に、医師リュー・エアーズから母親になることを知らされた際の、彼女の喜びの表情は忘れられない。
ご存知の通り、元大統領ロナルド・レーガン夫人だった彼女は、この年に彼とは離婚している。
アカデミー賞は逃すものの、ベリンダとその貧しい家族を温かく見守るリュー・エアーズの優しさは、アメリカの良心を感じさせてくれる。
「西部戦線異状なし」(1930)で注目を浴びた彼だったが、戦時中に兵役を拒否したことで、映画会社やファンから非難され、その苦しい時期を乗り越えてのカムバックは見事だった。
共にアカデミー助演賞にノミネートされた、主人公ベリンダの父親チャールズ・ビックフォードと叔母役のアグネス・ムーアヘッドの好演が、本作の価値を高めたことは間違いない。
ベリンダを使用人扱いしていた二人が、彼女と心を通わせた時に、本作のテーマとも言っていい、”人の優しさ”が最も伝わるシーンとなる。
特に、ベリンダが手話で”お父さん”と語るシーンは印象的だ。
ベリンダに暴行を加える漁師スティーブン・マクナリー、その妻となる、医師に心を寄せる秘書ジャン・スターリング、牧師イアン・ウルフなどが共演している。