ジェーンから誰なのかと聞かれたフィロミナは、今日がその子の誕生日で、50歳になることを伝える。
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逆子であったために苦しみながら、フィロミナは男の子を出産する。
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あるパーティーに出席したマーティンは、三面記事専門の編集者サリー・ミッチェル(ミシェル・フェアリー)と話し、仕事に興味があれば連絡して欲しいと言われる。
その後マーティンは、自分が記者だと知ったスタッフのジェーンと話をする。
10代で子供を産み、50年間も秘密にしていた女性が、修道女に子供を奪われて養子に出されという話をしたジェーンは、それは三面記事だと指摘するマーティンから専門外だと言われる。
帰宅したマーティンは、仕事が見つからない現状を考え、三面記事を書くべきかを妻に尋ねる。
数日後。
フィロミナの話を聞くことにしたマーティンは、あるレストランで彼女とジェーンに会う。
食事をしながら話を始めたフィロミナは、50年間、秘密にしていた息子についてを語る。
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妊娠したことを恥じた父親に修道院に預けられたフィロミナは、子供を産んだ後も4年間その場に残る義務があり、親友キャスリーン(チャーリー・マーフィ)らと共に休みなく働かされた。
毎日1時間だけ息子アンソニーに会えるフィロミナは、それを楽しみにしていた。
アンソニーは、キャスリーンの娘メアリーと仲良しだった。
キャスリーンは、メアリーが養子に出される日が近いと考え心配していた。
その件をシスター・アヌンシアタに尋ねたフィロミナは、彼女が内緒で撮ったアンソニーの写真を受け取る。
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写真を見る度に、アンソニーの命の恩人である亡くなったシスター・アヌンシアタを思い出すと言うフィロミナは、写真はこの一枚だけだとマーティンに話す。
そのまま修道院にいたのかをマーティンに聞かれたフィロミナは、出るためには用意できるはずもない100ポンドが必要で、すれができたとしても行く場所がなかったと伝える。
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富豪夫妻が現れたため不安に思ったフィロミナは、メアリーが連れて行かれることを知り、キャスリーンを気の毒に思う。
ところが、メアリーと仲が良いアンソニーも夫妻が連れて行くことが分かり、フィロミナは絶望する。
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”邪悪”な人々だと言うジェーンの言葉に、そこまで考えることはないと意見するフィロミナだったが、マーティンは、ストーリー的には良い表現だと伝える。
優しいシスターもいたと言うフィロミナに、マーティンは、シスターと話すことが可能かを尋ね、修道院は昔よりも親切になったということだった。
息子を一緒に捜してもらえるかと聞かれたマーティンは、フィロミナの故郷アイルランドに行くことに同意する。
現地で母娘に合流したマーティンは、”ボクスホール”に乗っていくと言われたために、”BMW”を借りてフィロミナと二人で修道院に向かう。
ロスクレア。
修道院に着いたフィロミナとマーティンは、尼僧(ウンミ・モサク)に迎えられて部屋に案内される。
洗面所に行きたいと言うフィロミナは、かつてアンソニーと別れた日のことを思い出す。
マーティンは、その場にあった”シスター・ヒルデガード”という人物や”ジェーン・ラッセル”の写真が気になる。
現れたシスター・クレアに挨拶したマーティンは、”ジェーン・マンスフィールド”の写真のことを尋ね、”ジェーン・ラッセル”だと言われる。
マーティンが、なぜ”ジェーン・ラッセル”の写真があるのかと尋ねたところでフィロミナが戻る。
火事のためにアンソニーの資料が何も残っていないことを、フィロミナはシスター・クレアから知らされる。
ショックを受けたフィロミナは、アンソニーに会えなくても無事に生活していることが分かれば満足だと語る。
シスター・クレアはフィロミナに協力を約束し、口を挟んだマーティンは、年老いたシスター達が何か覚えているのではないかと尋ねる。
亡くなった方も多く高齢者であるため、あくまで自分が対応するとシスター・クレアに言われたマーティンは、部屋を出て周辺を見て回る。
マーティンは、わずか14歳で出産で亡くなった少女や子供達の墓が、整備もされずに放置されていることを知る。
車に戻ったマーティンは、自分に警戒するようにとシスター・クレアに言われたというフィロミナから、1955年に彼女が署名した、アンソニーに対する全権を永久に放棄する宣誓書を見せられる。
アンソニーを捜すこともしないと記されている内容に、署名することを強要されたのかをマーティンに問われたフィロミナは、自分の意思だったと答える。
資料は火事で焼失しているにも拘らず、捜すことを断念する書類だけが残っていることを疑問に思うマーティンだったが、フィロミナは、罪を認めて罰を受けるために署名したとだけ答える。
最大の罪は快楽であるセックスを楽しんだことだと語るフィロミナは、快楽を与えそれを罪とする神の考えが理解できないと言う無神論者のマーティンに、そうは考えていないからだと答える。
二人は宿に戻り、フィロミナがジェーンと共に部屋に行った後、バーで飲んでいたマーティンは、修道院の火事はシスターが火をつけたとバーテンダーに言われる。
裏庭が燃えただけで、シスターが資料を燃やしたと言うバーテンダーは、その理由が、アメリカ人に子供を売っていたからだとマーティンに話す。
その値段は一人1000ドルで、”ジェーン・ラッセル”も1952年に子供を買ったと言われたマーティンは驚き、カトリックで金持ちならば買えたと知らされる。
今回の件で編集者のサリーに連絡したマーティンは、記事が書けることを伝える。
バーで聞いたことをフィロミナに話したマーティンは、修道院の顧客はアメリカ人であるため、支局に赴任していた際の人脈を使い、アンソニーの情報を入手できる可能性を語る。
但し、自分はあくまで代理人であるため、その情報は母親にしか提供されないことを、マーティンはフィロミナに伝える。
アンソニーが自分を想ってくれたかを確かめるために、毎日、息子を想っていると言うフィロミナは、マーティンと共にアメリカに行くことを決意する。
費用は編集者が持つことになり、空港の搭乗ゲートに向かうマーティンは、カートに乗りながら、持参した馬の本のストーリーを延々と語るフィロミナにうんざりしてしまう。
ワシントンD.C.。
ホテルで暫く休んだ二人は、リンカーン記念館に向う。
フィロミナは、アンソニーがどんな人生を送ったのかを異常に気にする。
夜中にマーティンの部屋に向かったフィロミナは、息子捜しに協力してくれたことを感謝する。
部屋に戻ったフィロミナは、アンソニーのことを想いながら、祈りを捧げて眠りにつく。
翌朝、ビュッフェにパソコンを持ち込み資料を調べていたマーティンは、ホテルのサービスに驚き話しかけてくるフィロミナを迷惑に思ってしまう。
気分を害したフィロミナは、席を外して朝食をとろうとする。
移民局のデータを調べていたマーティンは、”アンソニー・リー”で検索した結果を見て、ヘス夫妻が、アイルランドからメアリーとマイケルの二人の子供を迎えたという写真を確認する。
”マイケル・ヘス 1952年7月5日 生まれ”で検索し直したマーティンは、”マイケル・A・ヘス(ショーン・マーホン)”が、レーガン政権の共和党顧問、ブッシュ大統領の法律顧問だったことを知る。
そして、マイケルが、1995年8月15日に亡くなっていることを知ったマーティンは愕然とする。
席に戻ったフィロミナは、パソコンの画面の人物がアンソニーであることを知り、息子が亡くなったことをマーティンに確認する。
マーティンは、嗚咽するフィロミナを抱きしめることしかできなかった。
二人は空港に向かい、マーティンは、アンソニーが8年前に亡くなっていたことをサリーに電話して伝える。
帰国しようとするマーティンに、記事は使えると言うサリーは、取材を続けるように指示する。
マーティンは、再び息子を失ったたフィロミナの悲しみを察する。
アンソニーの自分への想いを一生知ることができないと考えたフィロミナは、滞在を延期して、息子を知っていた人達に会ってみたいことをマーティンに伝える。
二人はホテルに戻り、マーティンは、レーガン大統領と写っているマイケルの写真をパソコンの画面でフィロミナに見せる。
その場に自分もいるとフィロミナに指摘されたマーティンは、マイケルに会っていたことを思い出す。
その時のことをどんなことでもいいので教えてほしいとフィロミナに言われたマーティンは、よく覚えていないと答える。
固い握手をしたことを思い出したマーティンは、聡明な雰囲気だったマイケルと挨拶をしたことをフィロミナに伝える。
それを知ったフィロミナは喜び、マーティンに感謝する。
マイケルと仕事をした女性に会ったフィロミナとマーティンは、妹のメアリーの電話番号を教えてもらえることになる。
フィロミナは、マイケルがゲイであると言われるのだが、バイセクシャルであった可能性もあり、子供がいたかを尋ねる。
それを否定されたフィロミナは、マイケルと一緒に写っているピート・オルソン(ピーター・ハーマン)の写真などを見て、息子がゲイであると気づいていたことをマーティンに伝える。
メアリーの家を訪ねる途中、なぜ50年もの間この件を隠していたのかをマーティンに聞かれたフィロミナは、罪を犯したからだと答える。
子供を産んだ罪と人を欺いた罪、どちらが重大であるかを考えたフィロミナは、今回の件を話す気になったことをマーティンに伝える。
メアリー(メア・ウィニンガム)に会った二人は、マイケルがエイズで亡くなったことを知る。
マイケルが家族の墓地には埋葬されていないため、場所はピートに聞いてほしいとフィロミナはメアリーに言われる。
フィロミナは、マイケルがアイルランドの話をしたかを尋ねるが、メアリーはそれを否定する。
その場を去り、帰りの車内でマーティンは、母親を良く知るフィロミナに、メアリーが何も尋ねなかったことを疑問に思う。
話す言葉が見つからないのは当然だと言うフィロミナは、告解したいために教会に寄りたいとマーティンに伝える。
マーティンは、罪を告白したいと言うフィロミナに、告白すべきなのはカトリック教会だと不満を訴える。
神が聞いているとフィロミナに言われたマーティンは、無神論者であり神を信じないために、幸福な人生に宗教は必要ないという考えを伝えて彼女と口論になる。
教会に着いたフィロミナは、マーティンを罵倒して車を降り、懺悔室に向かう。
サリーに電話をしたマーティンは、マイケルの経歴と人生などを話し、自分も会っていたことと修道院の罪も伝える。
神父に質問されたフィロミナは、何も話せずにその場を離れ、聖水にも触れずに教会を出る。
その様子を見ていたマーティンは、動揺しているフィロミナに謝罪する。
マイケルのことを記事にしてほしくないと言うフィロミナは、銀行から借金をして1万ポンドを渡すので、それを取材費に充ててほしいとマーティンに伝える。
罪の意識を感じるフィロミナに、マーティンは、マイケルのことを知る権利があると伝える。
息子が自分を憎んでいたと言うフィロミナに、決めつけるべきではないと意見するマーティンは、ピートに会うことを勧める。
ワシントンに戻ったマーティンは、ピートと会う約束が取れず、連絡先も知らせてもらえない。
ホテルに戻ったマーティンはフィロミナの部屋に向うものの返事がなく、ボーイにドアを開けてもらい、彼女がバルコニーで泣いていることに気づく。
フィロミナは、マーティンがピートと連絡をとれないことを知り、自分と会いたくないのだと考える。
帰国すると言い出すフィロミナに、マーティンは、”ギネス”ビールのグラスの”ケルティック・ハープ”のマークを彼女に確認させる。
パソコンのマイケルの写真を見せたマーティンは、彼のスーツに同じハープのバッジが付いていることを知らせる。
アイルランドが嫌いなら、なぜ国の象徴のバッジを胸に付けていると思うかを問うマーティンは、フィロミナを納得させてピートの家に向かう。
外出先から戻って来たピートに強引な取材をするため、家の玄関に向かったマーティンだったが、自分の名前とマイケルの母フィロミナがいると伝えただけで追い払われる。
マーティンは車に戻りフィロミナに謝罪するものの、彼女は車を降りて玄関に向う。
入り口に現れたピートは、奪われた息子の話がしたいとフィロミナに言われて、彼女を家に招き入れる。
マーティンと共にマイケルの記録ビデオを見せてもらったフィロミナは、彼がロスクレアの修道院を訪ねていたことを知り驚く。
自分が連れて行ったと言うピートは、フィロミナを捜すためだったと伝える。
シスター・ヒルデガード(バーバラ・ジェフォード)の姿も映っていたため、彼女はマイケルの居場所が分からないと言っていたとフィロミナは話す。
フィロミナを見つけられないと言うシスター・ヒルデガードが、息子を見捨てた母親だと話していたことをピートは語る。
見捨てなどしないと言うフィロミナは、マイケルが修道院に埋葬されていることをピートから知らされる。
それがマイケルの意志だったことをピートから知らされたフィロミナは、息子が自分とアイルランドを想っていたことを理解する。
ロスクレア。
フィロミナと共に修道院を訪ねたマーティンは、冷静な彼女を部屋に残してシスター・ヒルデガードを捜す。
周囲の制止を無視して車椅子に乗るシスター・ヒルデガードに会ったマーティンは、死にゆくものを母親に会わせなかったのは、神に背く行為だと言って批判する。
シスター・ヒルデガードは、自制と禁欲によって自分は神に近づいたと話し、この場に連れてこられた肉体の誘惑に負けた少女達は、自らを責めるべきだと言い切る。
その件は過ぎたことであり、自分達に何を望むのかをマーティンに問うシスター・ヒルデガードに対し、その場に現れたフィロミナは何も望んでいないと伝える。
息子を見つけただけだと言ってその場を去ろうとするフィロミナだったが、せめて謝罪するべきであり、出産で死んだ母子の墓を整備するべきだと伝える。
自分を裁くのは神だと言うシスター・ヒルデガードに、マーティンは、イエスは車椅子から放り出すだろうと伝える。
それを制止してその場の人々に謝罪するフィロミナに対し、騙した相手になぜ謝るのかとマーティンは問う。
自分の問題であるというフィロミナは、何もしないのかとマーティンに言われる。
それを否定したフィロミナは、シスター・ヒルデガードに赦すと伝える。
それだけかなのとマーティンに言われたフィロミナは、赦しには大きな苦しみが伴うと答え、人を憎みたくないと付け加える。
怒りが収まらないと言うマーティンを落ち着かせたフィロミナは、息子の墓への案内をシスター・クレアに頼み、その場を去る。
自分は赦せないとシスター・ヒルデガードに伝えたマーティンも部屋を出る。
マイケルの墓前でたたずむフィロミナは、様々な思いを巡らせる。
現れたマーティンに、自分が見つけることをマイケルが知っていたと伝えたフィロミナは、私的なことなので記事にはしないと言われる。
マーティンから売店で買ってきたイエスの置物を受け取ったフィロミナは、それを墓前に置き祈りを捧げる。
記事にしてほしいと言うフィロミナは、皆に知ってもらいたいとマーティンに伝える。
車に乗ろうとしたフィロミナは、読み終えた馬シリーズの著書についてを話す。
アメリカに旅立つ際にはうんざりしたフィロミナの話だったが、彼女との友情が芽生えていたマーティンは、ストーリーを聞かせてほしいと彼女に伝える。
フィロミナが話すストーリーを聞きながら、マーティンは車を走らせる。
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2009年、マーティン・シックススミスは、著書”The Lost Child of Philomena Lee”を出版する。
今なお多くのアイルランド人の養子と母親が、互いを捜し続けている。
フィロミナ・リーは、イングランドで子供や孫達と暮らし、ロスクレアの息子の墓を訪れている。
マーティン・シックススミスは、作家、司会者などとして活躍し、ロシア史の著書を出版した。