メキシコの麻薬カルテル壊滅作戦に参加するFBI捜査官が目撃する謎の作戦部隊の常軌を逸した行動を描く、監督ドゥニ・ヴィルヌーヴ、主演エミリー・ブラント、ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン他共演の犯罪サスペンス。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
製作
ベイジル・イヴァニク
エドワード・L・マクドネル
モリー・スミス
サッド・ラッキンビル
トレント・ラッキンビル
製作総指揮
ジョン・H・スターク
エリカ・リー
エレン・H・シュワルツ
脚本:テイラー・シェリダン
撮影:ロジャー・ディーキンス
編集:ジョー・ウォーカー
音楽:ヨハン・ヨハンソン
出演
ケイト・メイサー:エミリー・ブラント
アレハンドロ・ギリック:ベニチオ・デル・トロ
マット・グレイヴァー:ジョシュ・ブローリン
デイヴ・ジェニングス:ヴィクター・ガーバー
テッド:ジョン・バーンサル
レジー・ウェイン:ダニエル・カルーヤ
スティーヴ・フォーシング:ジェフリー・ドノヴァン
ラファエル:ラオール・トゥルヒージョ
ファウスト・アラルコン:フリオ・セサール・セディージョ
フィル・クーパーズ:ハンク・ロジャーソン
マヌエル・ディアス:ベルナルド・サラシーノ
シルヴィオ:マキシミリアーノ・ヘルナンデス
バーネット:ケヴィン・ウィギンズ
ギエルモ・ディアス:エドガー・アレオラ
デルタフォース・リーダー:ディラン・ケニン
アメリカ 映画
配給 Lionsgate Films
2015年製作 121分
公開
北米:2015年9月18日
日本:2016年4月9日
製作費 $30,000,000
北米興行収入 $46,889,290
世界 $84,872,440
■ アカデミー賞 ■
第88回アカデミー賞
・ノミネート
撮影・作曲・音響編集賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
アリゾナ州、チャンドラー。
FBI・CIRG(重大犯罪対応群)のケイト・メイサー(エミリー・ブラント)らは、SWATと共に誘拐事件の容疑者の家に突入する。
奥の部屋で発砲した容疑者を射殺したケイトは、同僚のレジー・ウェイン(ダニエル・カルーヤ)から、銃弾で開いた壁の奥に何かがあることを知らされる。
壁を壊したケイトとレジーらは、隠されていた死体を発見する。
家からは数十体の死体が見つかり、駆け付けたケイトの上司デイヴ・ジェニングス(ヴィクター・ガーバー)は、司法省に連絡するよう指示する。
その後、裏の物置の床下に隠されていた爆弾が爆発し、警官が二人犠牲になる。
レジーと共に本部に呼ばれたケイトは、メキシコの犯罪組織”ソノラ・カルテル”の幹部であるアメリカでのボス、マヌエル・ディアス(ベルナルド・サラシーノ)のことを訊かれる。 マニエルの兄ギエルモ(エドガー・アレオラ)とファウスト・アラルコン(フリオ・セサール・セディージョ)の名は知らないと答えたケイトは、自分の専門外だと答える。 国防総省のマット・グレイヴァー(ジョシュ・ブローリン)から結婚しているかと訊かれたケイトは、していないと答え、子供もいないと伝える。 外で待つようにと言われたケイトは、暫くして再び呼ばれ、カルテルの捜査とマヌエル追跡の専任捜査官が必要だと言われる。 作戦リーダーのマットを紹介されたケイトは、選ばれたことを知らされ、”ルーク空軍基地”に向かいギエルモに会うと言われる。 ジェニングスから、異なる機関の作戦の参加には志願が必要だと言われたケイトは、今日の事件の首謀者を逮捕できることを確認して志願する。 メキシコ、ソノラ州、ノガレス。 ルーク空軍基地。 アレハンドロに挨拶したケイトは、メキシコのシウダー・フアレスに行くと言われ、テキサスのエルパソに向かうと思っていたために戸惑う。 その後、眠っていたアレハンドロは何かに驚いて目覚め、作戦の予備知識が必要かと尋ねたケイトは、力まずに自分達のやることを見ているようにと言われる。 エルパソ。 謎の男アレハンドロから、自分のしてきたことは理解できないだろうと言われたケイトは、真実を知りたいとマットに伝える。 ケイトは、マットから、黒幕を捕えたいなら指示に従うようにと言われる。 5台の車両で国境を越えてフアレスに向かったマットらは、現地の連邦警察に護衛されて危険地帯を走行する。 警察に拘束されていた男を車に乗せる様子を見守るケイトは、アレハンドロから、ここまでは安全だが危険なのは戻りの国境であり、買収されている者が多いメキシコの警官を信用するなと言われる。 その後、一団は渋滞に巻き込まれ、周囲を警戒するアレハンドロは、銃を持つようケイトに指示する。 車を降りたデルタフォースとアレハンドらは、怪しい車の銃を持つ男達に銃を捨てるよう警告する。 それを無視した男達をアレハンドロらは容赦なく射殺し、もう一台の男達も殺す。 動揺する車内に残っていたケイトは、発砲してきた男を射殺する。 空軍基地に戻ったマットは、ケイトから違法行為だと言われて非難される。 CIAではないかと言われたマットは、このままではアメリカがフアレスになってしまうため、それを阻止する行動だとケイトに伝える。 自分の役目をケイトから訊かれたマットは、カルテルに混乱を引き起こすのが目的であり、見るもの全てを学べと伝えてその場を去る。 連行したギエルモの元に向かったマットは、彼を牽制する。 メキシコ側の責任者ラファエル(ラオール・トゥルヒージョ)と話したアレハンドロは、国境での渋滞時の件を謝罪され、ファウストの”アリゾナへの道”と言われるトンネルがあることを知らされる。 ウォーターサーバーのタンクを持ってギエルモの元に向かったアレハンドロは、彼を拷問する。 日が暮れて気を落ち着かせていたケイトは、デルタフォースの隊員に連れられて建物の屋根に上り、フアレスが戦場化している様子を見て驚く。 ルーク空軍基地に戻ったマットらは、迎えに来たレジーの車でツーソンに向かう。 不法入国者達が集められている場所に向かったマットとアレハンドロは、ノガレスから来た者達から話を聞く。 何をしているのか訊いても教えてもらえないケイトだったが、不信感を抱くレジーは、作戦についての説明をマットに求める。 拒めば抜けるとレジーから言われたマットは止めようとしないが、ケイトも抜ける気であるため説明を始める。 ギエルモからノガレスの東にトンネルがあると聞き出したことを話すマットは、自分達が混乱を起こせば、ボスのファウスト・アラルコンはマヌエルをメキシコに呼び戻すため、そのボスの居場所が分かると伝える。 ファウストの命令により、メキシコでは毎日、多数の者が誘拐されて殺されると言うアレハンドロは、見つけることが難しい彼を捜し出せば大勢を救えると話す。 一応、納得したレジーとケイトは、フェニックスに戻る。 翌日、作戦本部が設置されているモーテルに向かったケイトとレジーは、アレハンドロとマットが不法入国者から情報を聞き出している様子を見守る。 トンネルの場所を知ったアレハンドロとマットは、SWATを呼ぶようケイトに指示する。 その後、マヌエルの資金の洗浄屋の女を逮捕させたマットは、金を差し押さえて口座を全て凍結させる。 ゴムバンドで束ねられた現金を確認したケイトは、マットの指示を無視してレジーと共に銀行に向かう。 毎日、現金で9000ドルが預け入れられて洗浄されていることを知ったケイトは、1700万ドルを差し押さえたことをマットに伝えるものの、見せかけの逮捕では起訴には持ち込めないと言われる。 マヌエルを逮捕できると言うケイトだったがに、マットは、マヌエルがメキシコに戻るまで待つ考えを変えない。 その件をジェニングスに話したケイトは、立件したいことを伝えるが、それを実行したところで麻薬問題が解決するわけもなく、混乱を起こして敵を挑発し、ミスを待つのが最善策だと言われる。 この作戦は、自分達に決定権がない上層部の判断で行われ、超法規的行動も恐れることなく、制約は外されたとジェニングスから説明されたケイトは、納得できないままレジーとバーに向かう。 そんなケイトの行動を、アレハンドロが監視していた。 仕事を忘れて、女としての自分を取り戻すようレジーから助言されたケイトは、彼の友人である警官のテッド(ジョン・バーンサル)を紹介される。 テッドと意気投合したケイトは、アパートに向かい愛し合おうとするが、彼が持っていた、札束を丸めるゴムバンドに気づく。 拳銃を手にするもののテッドと揉み合いになり暴発し、押さえつけられて首を絞められたケイトは、もがき苦しむ。 そこにアレハンドロが現れ、テッドに銃を向けて彼女を助ける。 汚職警官の逮捕の囮にされたことをマットに確認したケイトは、銀行に入るなと警告したはずで、マヌエルを捕えるためにはいい展開になったと言われる。 テッドを紹介したレジーに、ケイトは気にすることはないと伝える。 アレハンドロに痛めつけられたテッドは、まともな刑務所か殺される場所に行くかと言われ、カルテルの情報は全て話すので、娘の安全を保証してほしいと伝える。 テッドを拷問するアレハンドロは、警察内部にいる、カルテルの息がかかった者の名前を吐かせようとする。 ケイトの様子を見に行ったアレハンドロは、テッドはこちらの捜査状況を調べていただけで、目的は自分達だけだと伝える。 自分の大切な人に似ているとケイトに伝えたアレハンドロは、、今は休むようにと言って、明日になればマヌエルがメキシコに呼び寄せられるために、始末できると話す。 翌日、モーテルに向かったケイトとレジーは、衛星映像の追跡で、マヌエルがメキシコに呼ばれて、トンネルを確認したことをマットから知らされる。 突入作戦が実行されることになり、単独行動ができないCIAのために、自分達がそれに利用されていることを知ったケイトとレジーは、マットからその通りだと言われる。 同行する必要はないと言うレジーに対し、ケイトは、作戦を見届けたいと伝えて装備を準備する。 衛星映像でのマヌエルの車の追跡が始まる。 カルテルの運び屋だったシルヴィオは、パトカーのトランクに麻薬を積み込みトンネルに向かう。 日暮れに目的地に着いたマットらは、サーマルカメラや暗視ゴーグルなどをチェックする。 目標に近づき、マットは自由射撃を許可してトンネルに入り、銃撃戦が始まる。 メキシコ側で麻薬を降ろすシルヴィオは、銃声を聴き逃げようとする一人を射殺したアレハンドロに銃を向けられたため、メデジンかと尋ねる。 現れたケイトが銃を向けたため、彼女の防弾チョッキを撃ったアレハンドロは、呼吸を整えて地上に戻るよう指示する。 シルヴィオのパトカーでその場を離れたアレハンドロは、メキシコ側に出たことを本部に伝える。 息子がいるとシルヴィオから言われたアレハンドロは、これは家族のためだと伝えて行き先を教える。 トンネルから出て来たケイトに殴られたマットは、彼女を落ち着かせる。 シルヴィオが口にしたメデジンのことをマットに尋ねたケイトは、かつて全てのドラッグを支配していたメデジンが他の者達に市場を奪われ、その世界の秩序が乱れたと言われる。 その秩序を、アレハンドロが再び取り戻そうとしているとも言われたケイトは、彼がコロンビアのカルテルに雇われていることを知る。 妻の首を切り落とし娘を酸の中に投げ込んだ男を倒すためなら、アレハンドロは誰の仕事でもすると話すマットは、ケイトから、これは許されないことであり暴露すると言われる。 考えを変えようとしないケイトに、マットは大きな過ちだと伝える。 前方に現れたのがマヌエルの車だということを本部に確認したアレハンドロは、近づいて停めさせるようシルヴィオに指示する。 マヌエルに降りるようスピーカーで伝えろと指示したアレハンドロは、マヌエルに銃を捨てさせて、シルヴィオも車から降ろす。 アレハンドロはシルヴィオを射殺し、マヌエルの脚を撃つ。 マヌエルに銃を向けて脅したアレハンドロは、ボスの元に連れて行くよう指示し、車を運転させて走り去る。 屋敷に着いたアレハンドロは、マヌエルを銃撃して見張りを射殺する。 食事中のアラルコン一家に近づいたアレハンドロは、ファウストに銃を向ける。 席に着きファウストと話したアレハンドロは、自分を恨むなと言われるものの、そうはいかないと伝える。 息子達は見逃してくれと言われたアレハンドロは、神に会う時が来たと伝えて、怯える妻と二人の息子を射殺する。 驚くファウストに食事をしろと伝えたアレハンドロは、彼も射殺する。 その後、ケイトのアパートに忍び込んだアレハンドロは、怯える彼女を見て、殺された娘を思い出すと伝える。 今回の作戦は全て法に準じたものだという書類にサインすることを求められたケイトは、それを拒む。 ケイトに銃を向けたアレハンドロは、拒めば自殺することになると伝えてサインを強要する。 サインしたケイトに、法と秩序が残る小さな町に行くようにと伝えたアレハンドロは、狼の地であるこの場所では生きていけないと言って、銃を分解してその場を去る。 車に向かうアレハンドロにベランダから銃を向けたケイトは、彼を撃つことができない。 ノガレス。 母親は、街から聴こえる銃声を気にしながら、息子の試合を見守る。
...全てを見る(結末あり)
息子に起こされた警官のシルヴィオ(マキシミリアーノ・ヘルナンデス)は、サッカーの試合に向かう。
レジーに送ってもらったケイトは、待っていたマットとパートナーのアレハンドロ・ギリック(ベニチオ・デル・トロ)と共に、プライベートジェットに乗り込む。
”デルタフォース”のスティーヴ・フォーシング(ジェフリー・ドノヴァン)に迎えられたマットらは、軍事情報センターで連邦保安官やDEA(麻薬取締局)と合流し、作戦の説明を受ける。
父シルヴィオが帰ってこないために、息子は母とサッカーの試合に向かう。
参考:
・「ボーダーライン」(2015)
・「ボーダーライン: ソルジャーズ・デイ」(2018)
*(簡略ストー リー)
FBI・CIRG(重大犯罪対応群)のケイト・メイサーは、メキシコの犯罪組織”ソノラ・カルテル”の幹部マヌエル追跡作戦の専任捜査官として、指揮官である国防総省だと言うマット・グレイヴァーに選抜される。
作戦は実行され、マットのパートナーである謎の男アレハンドロと編成部隊と共に、世界有数の危険地帯であるメキシコのフアレスに向かったケイトは、法を無視した行動に驚く。
作戦の真意が理解できないケイトは、不可能と言える麻薬組織自体の壊滅ではなく、その世界の状況を把握できるような秩序を取り戻すことが目的だと知らされるのだが・・・。
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現在、最も注目されているとも言える映画監督ドゥニ・ヴィルヌーヴの作品で、凶悪な麻薬組織とそれに群がる利権や汚職の現実を生々しく描く、リアリズム映画の秀作。
序盤のハイライトでもある、アメリカ側の武装部隊が世界有数の危険地帯シウダー・フアレスに向かい、その場で行われる、法を無視した作戦行動などの緊迫感を伝える演出は秀逸だ。
戦場と化すフアレス、衛星映像を表現する上空からの撮影、終盤のサーマルカメラや暗視ゴーグルの視線で捉える戦闘映像など、ロジャー・ディーキンスの撮影と、それを盛り上げるヨハン・ヨハンソンの音楽の素晴らしさが印象に残る。
二人は、第88回アカデミー賞でそれぞれ、撮影、作曲賞にノミネートされた。(他のノミネート音響編集賞)
麻薬組織壊滅作戦ではなく、それが不可能であることを百も承知の国家が、自分達の都合がいいように監視、把握できる、その世界の”秩序”を保つための計画だったというストーリーも実に巧みだ。
原題の”Sicario”(スペイン語で”殺し屋”)としない、大人が考えているとは思えない安っぽい邦題には幻滅だ。
続編”Soldado”(兵士)は”・・・2”となるのだろうか?
結局、”謎”の作戦に利用されていた現実に気づき絶望に近い体験をする、FBI捜査官を熱演するエミリー・ブラント、カルテルに家族を惨殺された恨みから、それを潰すためならあらゆる行動に出る抹殺者を好演するベニチオ・デル・トロ、作戦を成功させるために全てを利用する指揮官であるCIAのジョシュ・ブローリン、主人公の上司ヴィクター・ガーバー、作戦を探ろうとして主人公に近づく汚職警官のジョン・バーンサル、その友人で主人公の同僚ダニエル・カルーヤ、作戦に参加するデルタフォースのジェフリー・ドノヴァン、メキシコ側の警察責任者ラオール・トゥルヒージョ、カルテルのボス、フリオ・セサール・セディージョ、幹部でアレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)に捕らえられボスの屋敷に案内するベルナルド・サラシーノ、その兄エドガー・アレオラ、カルテルの運び屋であるメキシコの汚職警官マキシミリアーノ・ヘルナンデスなどが共演している。