白鯨との闘い In the Heart of the Sea (2015)

1820年。
お腹の子は必ず女の子だと妻ペギー（シャーロット・ライリー）に伝えたチェイスは、捕鯨会社に向かう。

船主のポール・メイソン（ドナルド・サンプター）に迎えられたチェイスは、次回は船長にするという約束にも拘らず、一等航海士としてエセックスに乗船するよう指示される。

名門の出のポラードを船長にすると言われたチェイスは納得できなかったが、破格の報酬と、鯨油2000樽を持ち帰れば次には船長にすることを書面で約束されて承諾する。

帰宅したチェイスは会社側の約束を疑いながら、ペギーからペンダントを渡され、必ず戻ると彼女に誓う。

ポラードは、船長は指揮官であり乗組員とは友達にはなれないという父の言葉を肝に銘じ港に向かう。

ペギーに見送られるチェイスは、沖に停泊中のエセックスに向かい、人々は航海の無事を祈る。

14歳のニッカーソン（トム・ホランド）はキャビンボーイとして乗船し、初航海の恐怖を隠しながら、同じく孤児の17歳のバルジライ・レイ（エドワード・アシュリー）と共に、早く一人前になりたいと思っていた。

船員がつけている鯨のピンが気になったニッカーソンは、地球上で最も巨大なモンスターを銛で突いて殺せばもらえることを知る。

旧知の二等航海士マシュー・ジョイ（キリアン・マーフィー）が乗船していることを知ったチェイスは、酒浸りだった彼が禁酒したことが信じられない。

ポラードと話したチェイスは、簡単な言葉を交わして互いを牽制し合う。

準備が整い、ポラードはエセックスを出航させる。

夕食の際、ポラードから、よそ者の農夫である父親が犯罪者だと言われ侮辱されたチェイスは席を外し、船員の元に向かい今後の指示を与える。

ポラードの従弟ヘンリー・コフィン（フランク・ディレイン）に訓練のことで意見されたチェイスは、鯨がいなくても訓練は行うと伝える。

船酔いで苦しむニッカーソンは、チェイスに甲板に呼ばれ、海に落とされそうになる。

甲板に引き上げられて吐いてしまったニッカーソンは、孤児であることを話し、自分たちは家族だと言うチェイスを信頼し頼もしく思う。

その後、訓練を続けながら航海するチェイスは、ポラードの指示で補助帆を張り速度を上げる。

しかし、嵐が近づくことを伝えたチェイス、縮帆すべきだと意見する。

それを聞き入れないポラードは、そのまま航行するよう指示する。

荒れ狂う海は容赦なくエセックスに襲い掛かり、チェイスとジョイが帆を張るロープを切って、何とか危機を脱する。

ポラードに呼ばれたチェイスは、修理のためにナンタケットに戻る考えの彼から命令違反を指摘され、辞表の提出を求められる。

無謀な航行を不運だったと言うポラードに対し、経験不足で未熟だと反論したチェイスは、激怒する彼から、農夫の息子だと再び侮辱され、出て行くよう指示される。

1樽の鯨油も持ち帰らず寄港するのは、家名を汚し自分にとっても恥だと伝えたチェイスは、満杯の鯨油と共に戻るのが最善だとポラードに伝えてその場を去る。
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不仲の夫婦のようだったと話すニッカーソンは、既婚者だと言うメルヴィルに、見知らぬ者に全財産を渡したことを妻は知っているのか尋ね、知らないと答える彼に呆れる。

結局、航海は続いたと話すニッカーソンは、皆が待ち望んだ”吹いた”という声が聞こえたと伝える。
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南大西洋、出航から3か月。
マッコウクジラの群れを確認したチェイスとポラードは、それぞれのボートでその場に向かう。

チェイスらは、格闘の末に50樽は鯨油が採れるオスの鯨を仕留める。

その後は苦労したチェイスらは、1か月かけてホーン岬を回り太平洋に向かうものの、鯨は一頭もいなかった。

エクアドル、アタカメス。
上陸したポラードは、スペイン人のペラエス船長（ジョルディ・モリャ）から、船を破壊された話を聞く。

一日に3000樽は採れるほどの鯨の群れがいたことを話すペラエスは、白い大理石のような”悪魔”さえいなければ問題なかったと話す。

その体長30ｍの鯨に6人が殺されたと言うペラエスは、食いちぎられた腕を見るたびに思いだすと伝えるものの、ジョイは話を信じることができない。

ペラエスは席を外し、ポラードは、今すぐ出航して半年後には鯨油を満杯にして戻れるとチェイスに伝え、同意する彼とジョイと共に準備を始める。

赤道に沿って4800キロ進むものの、希望は失望に変わり、船員の不満が募る。

出航から14か月、遠海漁場。
ついに鯨の大群を見つけたポラードは、ボートを下ろすよう指示し、チェイスらは漁を始める。

暫くして転覆させられたチェイスらは、白鯨の巨大な姿に驚く。

ボートで船に戻り修理を始めたチェイスは、何かが激突して浸水したことに気づく。

攻撃を仕掛ける白鯨に対し、最大の銛を手にしたチェイスは勝負を挑む。

チェイスの放った銛が刺さったまま、白鯨は海中に向かう。

マストが折れて船は傾き、それを知ったポラードは、海面に姿を現した白鯨の巨体を見て驚く。

銛綱を切ったポラードは、船に戻るよう指示する。

海水を掻い出そうとしたベンジャミン・ローレンス（ジョゼフ・マウル）は、破損した樽から鯨油が漏れていることに気づく。

船に戻ったポラードは、白鯨が船を破壊し、2名が死亡したことをチェイスから知らされる。

海水が増え続けているという報告を受けたポラードは、船を離れる準備をするよう指示し、帆や食料、物資を運び出す。

船は沈み始め、火が鯨油に引火したために、乗組員のボートは避難する。

取り残されたチェイスは海に飛び込み、ボートまで泳ぎ着き、運び出した銃をジョイに渡す。

爆発した船は、船員の目の前で沈没する。

南米西　2000海里（3700km）。
わずかな食料と水で漂流しなければならないため、動揺したコフィンは、責任はチェイスにあると言って銃を向ける。

ポラードに制止されたコフィンは思い留まり、コックのウィリアム・ボンド（ゲイリー・ビードル）に銃を渡す。

帆を張って東に移動する三隻のボートは、イースター島に向かおうとするものの、まったく近づいていないことが分かる。

その後、嵐の中で、チェイスは白鯨が悠然と泳ぐ姿を目撃する。

嵐は収まり、ジョイの強打した頭部の傷を確認したチェイスは重傷だったてめに水を与えて彼を気遣う。
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死を待つしかないジョイに、水を与えるのは無駄だと言ったコフィンの言葉が忘れられないニッカーソンは、動揺しながら、十分に話したとメルヴィルに伝える。

心の奥底にある苦悩を知りたいと言うメルヴィルは、自分の苦悩を訊かれ、”ナサニエル・ホーソーン”のような文豪でないことだと答える。

この噂を聞き衝撃を受けて心を奪われ、今、書かなければ一生チャンスはないと思ったと言うメルヴィルは、書き上げても真実に迫れるかは疑問だが、話を続けてほしいとニッカーソンに伝える。
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漂流34日目。
陸が見えたために喜ぶチェイスらは、ボートを必死に漕ぐものの、白鯨がつけてきていることに気づく。

漕ぐのを止めさせたチェイスは、白鯨の襲撃に備える。

襲いかかった白鯨は三隻のボートを沈め、島（ヘンダーソン島）に流れ着いたチェイスは、ペギーのペンダントがなくなっていることに気づく。

ポラードはこの地が”デュシー島”だと考え、沖を航行する船に見つけてもらうしかないと思い、漂着したボートや物資を集める。

その後、洞窟で白骨化した死体が見つかり、チェイスは、待っても救助の見込みはないと考える。

ボートを修理して出発することになり、ケイレブ・チャペル（ポール・アンダーソン）ら三人は、残ることをポラードに伝える。

ジョイも残ることになり、必ず迎えに来ると言うチェイスは、酒瓶を大切に持っていた彼に別れを告げる。

漂流48日目。
ポラードのボートが姿を消し、リチャード・ピーターソン（オジー・イクヒル）が息を引き取ったことを知ったチェイスは、海に葬ると言うローレンスを制止して、食料にすることを考える。
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遺体を解体し、残りを丁寧につなぎ合わせて海に流したことを話すニッカーソンから、非難するか問われたメルヴィルは、しないと答える。

これまで苦悩していた恥ずべき秘密をついに話したと言うニッカーソンは、メルヴィルから、妻にも話していないか訊かれる。

自分の正体を知っても愛してくれると思うかと逆に尋ねたニッカーソンは、話を聞いていた妻から、もちろん愛すると言われて驚く。

出会った時に告白されても一緒にいると言う妻は、その時の強さがあなたを支え、もう十分に苦しんだとニッカーソンに伝える。

漂流71日、南米沖　1200海里（2222Km）。
クジ引きで自分が死ぬことになったポラードは覚悟を決め、コフィンに銃を渡す。

引き金を引いたコフィンは米神を撃ち抜き、ポラードの代わりに命を絶つ。
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ニッカーソンは、最後の生き残りになることを最も恐れたとメルヴィルに話す。
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現われたポラードにバルジライが死んだことを知らせたチェイスは、3隻目にはもう会うことはないだろうと考える。

そこに白鯨が姿を現し、銛を手にしたチェイスは仕留めようとする。

しかし、目前に迫る白鯨の目を見つめたチェイスは、銛を置いてしまう。

その後チェイスは、離れて行ったポラードと二度と会うことはなかった。

漂流87日目。
ポラードのボートは、帆船に発見される。

1821年2月18日　漂流90日。
チリのマス・アフェラ島沖で救助されたチェイスらは、故郷に戻るまで更に3か月かかった。

1821年6月11日　ナンタケット。
町の人々に迎えられたチェイスらだったが、誰にも声をかけられず、彼らも何も語らなかった。

娘フィービー・アン（ブルック・ディモック）を連れたペギーは、チェイスを抱きしめる。

フィービー・アンは、初めて会う父に声をかけられて戸惑う。
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会社に呼び出されたチェイスは、ポラードから、世間と捕鯨産業全体に及ぼす影響を考え、今回の事件を”海のモンスター”のせいにしないことが話し合われたことを知らされる。

”生存の方法”も公にするべきではなく、捕鯨産業を守らなければならないと、ポラードは付け加える。

会社側から、沈没の原因は座礁で乗組員は溺死にすると言われたチェイスは、船長と多額の報酬、よそ者ではなく地元の名家の証も保証するとことを約束される。

それを拒んだチェイスは、同じ考えを主張するべきだとポラードに伝えてその場を去る。

ニッカーソンに声をかけられたチェイスは、航海に同行できたことを光栄に思うと言われ、自分こそそう思うと彼に伝える。

鯨を仕留めた者の証であるピンをニッカーソン渡したチェイスは、幸運を祈り別れを告げる。
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翌日、ポラードが聴取を受け、チェイスと同じ考えであることを伝えて真実を語る。

ポラードは再び海に出るものの、白鯨は姿を現さなかった。

船はハワイ沖で座礁し、ポラードは二度と海に戻らなかった。

約束を守ったチェイスはヘンダーソン島に戻り、他界したジョイ以外の、奇跡的に生き残った者たちを救出した。

その後チェイスは、家族と共にベッドフォードに移り、商船の船長として航海に出たと語るニッカーソンは、払った金の価値はある話だったはずだとメルヴィルに伝える。

自分が求めていたものと違うと言うメルヴィルは、危険な領域に挑戦する勇気という、別のテーマに興味があるとニッカーソンに伝える。

ニッカーソンから、自分が話したことを全部書くつもりかと訊かれたメルヴィルは、あくまで小説なので、すべてを書く必要はないと思うと答える。

金を返そうとするニッカーソンは、メルヴィルから約束したと言われ、自分が預かると言う妻が現金を受け取る。

ピッツフィールドに帰るメルヴィルに別れを告げたニッカーソンは、ペンシルベニアで土から油が出た話をする。

その話を知っていると言うメルヴィルに、驚くことだと伝えたニッカーソンは、彼を見送る。
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ハーマン・メルヴィルは1850年に小説を書き上げ、翌年に”白鯨”が出版された。

ナサニエル・ホーソーンはこう語った。
”ホメロスによるアメリカの叙事詩のようだ”と。