ナチス・ドイツの攻勢に決して屈しなかったイギリス首相ウィンストン・チャーチルの苦闘を描く、監督ジョー・ライト、主演ゲイリー・オールドマン、クリスティン・スコット・トーマス、リリー・ジェームズ、ベン・メンデルソーン、スティーヴン・ディレイン他共演の戦争ドラマ。 |
・ゲイリー・オールドマン / Gary Oldman / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:ジョー・ライト
製作
ティム・ビーヴァン
リサ・ブルース
エリック・フェルナー
アンソニー・マクカーテン
ダグラス・アーバンスキー
製作総指揮
ジェームズ・ビドル
ルーカス・ウェブ
ライザ・チェイシン
脚本;アンソニー・マクカーテン
撮影:ブリュノ・デルボネル
編集:ヴァレリオ・ボネッリ
衣裳デザイン:ジャクリーヌ・デュラン
美術・装置
サラ・グリーンウッド
ケイティ・スペンサー
メイクアップ&ヘアスタイリング
辻一弘
デヴィッド・マリノースキー
ルーシー・シビック
音楽:ダリオ・マリアネッリ
出演
ウィンストン・チャーチル:ゲイリー・オールドマン
クレメンタイン・チャーチル:クリスティン・スコット・トーマス
エリザベス・レイトン:リリー・ジェームズ
ジョージ6世:ベン・メンデルソーン
エドワード・ウッド/ハリファックス子爵:スティーヴン・ディレイン
ネヴィル・チェンバレン:ロナルド・ピックアップ
ジョン・サイモン/サイモン子爵:ニコラス・ジョーンズ
アンソニー・イーデン:サミュエル・ウェスト
クレメント・アトリー:デヴィッド・スコフィールド
ヘイスティングス・イスメイ将軍:リチャード・ラムスデン
エドムンド・アイアンサイド将軍:マルコルム・ストッリー
アーサー・グリーンウッド:ヒルトン・マクレー
ジョン・エヴァンス:ジョー・アームストロング
ヒュー・ダウディング将軍:アドリアン・ラウリンズ
バートラム・ラムゼー提督:デヴィッド・バンバー
サミュエル・ホアー/テンプルウッド子爵:ベンジャミン・ホイットロー
ダドリー・パウンド提督:ポール・レナード
フランクリン・ルーズベルト:デヴィッド・ストラザーン
イギリス/アメリカ 映画
配給
ユニバーサル・ピクチャーズ
フォーカス・フィーチャーズ
2017年製作 2017分
公開
イギリス:2018年1月12日
北米:2017年11月22日
日本:2018年3月30日
製作費 $30,000,000
北米興行収入 $56,468,400
世界 $150,914,000
■ アカデミー賞 ■
第90回アカデミー賞
・受賞
主演男優賞(ゲイリー・オールドマン)
メイクアップ&ヘアスタイリング賞
・ノミネート
作品・撮影・衣裳デザイン・美術賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1940年5月9日。
ナチス・ドイツ率いるヒトラーは、チェコスロバキア、ポーランド、デンマーク、ノルウェーを占領し、ベルギー国境に300万の兵を送り、ヨーロッパ征服を目論んでいた。
イギリスでは内閣が支持を失い、ネヴィル・チェンバレン首相の後任が選ばれようとしていた。
労働党のクレメント・アトリー(デヴィッド・スコフィールド)は、無策のまま国を危機にさらすチェンバレンの退陣と、挙国一致内閣への参加を保守党に要求する。
保守党と政権を組む条件として、アトリーはチェンバレンの退陣を求める。
海軍大臣のウィンストン・チャーチルがその場にいないことを訊かれたアンソニー・イーデン(サミュエル・ウェスト)は、首相降ろしには関わりたくないのだろうと答える。 辞任を決意したチェンバレンは、首相の座に推薦する声が多い現外相のエドワード・ウッド/ハリファックス子爵(スティーヴン・ディレイン)と共に、平和交渉の道を探る。 しかし、野党が認める首相候補は一人しか思い当たらず、最悪の事態になることが考えられた。 5月10日。 部屋に入ったエリザベスは、ベッドで寝たままのチャーチルから、電報をタイプするよう指示される。 自分の指示通りにタイプが打てないエリザベスに苛立ち怒鳴り散らすチャーチルは興奮する。 その場から逃げ出したエリザベスは、チャーチル夫人のクレメンタイン(クリスティン・スコット・トーマス)が夫を批判するため、自分がミスをしたことを伝える。 納得できないクレメンタインはチャーチルの元に向かい、最近マナーが悪く不親切で攻撃的、厳し過ぎて横柄で無礼だと伝える。 秘書のことだと思ったチャーチルは、クレメンタインから、首相になった際は嫌われ者になってほしくないと言われる。 既に嫌われていると言うチャーチルにクレメンタインは、権力者は思いやりや穏やかさを持つべきであり、尊敬される首相になってほしいと伝える。 屋敷から去ろうとしたエリザベスは電報を受け取り、それをチャーチルに渡すために部屋に戻る。 クレメンタインらと共に戦況を伝えるラジオ放送を聴くチャーチルは、エリザベスの呼びかけを制止するものの、バッキンガム宮殿からの電報だと知る。 電報を受け取ったチャーチルはエリザベスに感謝し、クレメンタインに身支度を手伝ってもらい屋敷を出る。 バッキンガム宮殿。 野党の協力を得られる唯一の人物だと言われた国王は、様々な失策や兄エドワード8世の結婚を支持したことなどをあげて、納得いかない気持ちをチェンバレンに伝える。 チャーチルが訪れたことを知らされた国王は、チェンバレンの辞任を認めて、彼に対する議会の仕打ちを残念に思う。 チェンバレンはその場を去り、チャーチルを迎えた国王は彼を首相に任命し、内閣の組閣を命ずる。 差し出した手にキスされた国王は、それをズボンで拭い、定期的に会う予定を決めて、その場を去るチャーチルを見送る。 ダウニング街10番地/首相官邸。 政敵ではあるが外せないチェンバレンとハリファックス、アトリーも入れることをイーデンに伝えたチャーチルは、家族と共に祝杯を挙げる。 5月13日。 ナチス・ドイツに対して徹底抗戦して勝利を手にすると力強く訴えるチャーチルだったが、その内容は平凡であり、チェンバレンはハンカチをしまう。 ハリファックスと話し合ったチェンバレンは、”平和”や”交渉”の言葉を一言も入れなかったチャーチルの演説に失望する。 自分がガンであることをハリファックスに伝えたチェンバレンは、何としてもチャーチルを降ろさなくてはならないと考える。 チャーチルが、あくまでもドイツとの和平交渉を拒む場合は、自分達は辞任するべきであり、そうなれば不信任投票になり、党はその事態を容認しないために彼は終わると、ハリファックスはチェンバレンに伝える。 その場合は首相を受けるつもりかと訊かれたハリファックスは、チャーチルが消えるなら考えるが、重要なのは融和政策を議論することだとチェンバレンに伝え、そのためには記録が要ると言われる。 チャーチルがドイツとは交渉しないという公的な宣言を文書に残さなけらばならないと、チェンバレンはハリファックスに伝える。 戦争省に配属されたエリザベスは、内部を案内されて部屋に向かう。 陸軍のエドムンド・アイアンサイド将軍(マルコルム・ストッリー)から、英仏両軍約50万の兵士が敗走と撤退を始めていることを知らされたチャーチルは、イギリス空軍のヒュー・ダウディング将軍(アドリアン・ラウリンズ)からは、航空機が不足して制空権も奪われているため、本土防衛のために温存しておくべきだと言われる。 数日以内に西ヨーロッパは崩壊すると報告されたチャーチルは、国民に告知することを提案されるものの、フランスの抗戦を支援する考えを伝える。 フランスに向かいレノー首相と会談したチャーチルは、反撃計画がないことを知り、まだ侵略されたわけではないと伝える。 議員の間ではチャーチルの評価は更に下がり、ハリファックスは、友人である国王に、首相を替えて和平の道を探ることを伝える。 5月19日。 勇気が湧き、国民を鼓舞したいと話すチャーチルだったが、イーデンは反対する。 対策を考えようとしたチャーチルは、クレメンタインから破産寸前だと言われて葉巻を減らすと答えたために、彼女は呆れてしまう。 出会った頃の話をしたチャーチルは、クレメンタインと共に愛を確かめる。 官邸から出たチャーチルは、記者からフランスからの撤退の件を問われて、手の甲を見せてVサインをして見せる。 ラジオ演説を始めるチャーチルは原稿をチェックし、初めて国民の前で話す。 ドイツによるフランス侵攻はほんの一部であり、勝利を手にするまで戦い続け、決して諦めず服従せず、必ず勝つことを誓う。 官邸に戻ったチャーチルは、素晴らしい演説だったと言うクレメンタインに、この10年、真実を語る唯一の政治家だったもののウソをついた、本当は全面撤退だと伝えて嘆く。 だからと言って国民を不安にさせることはないと言うクレメンタインは、危機が迫っているからこそ今知る必要はないとチャーチルに伝える。 翌日、新聞記事の勝利のVサインの写真を見て笑ってしまったエリザベスは、庶民の間では侮辱するサインだとチャーチルに伝えるものの、彼は気にする様子もなく笑い飛ばす。 国王からの電話を受けたチャーチルは、国民を正しく導く必要があり、誤った情報で迷わせるべきではないと言われる。 5月25日。 数日中に我が国の陸軍を失うことをアイアンサイドに確認したチャーチルは、迫るドイツ軍を海岸に近づけてはならないと考え、ヘイスティングス・イスメイ将軍(リチャード・ラムスデン)の意見を聞く。 現時点では一部隊も救出できないと言われたチャーチルは、次の作戦についての回答を求め、カレーに”第30歩兵旅団”4000人が残っていることを知らされる。 その部隊を東に向かわせてドイツ軍を引きつけ、ダンケルクの兵士を海路で脱出させる時間稼ぎをさせることを考えたチャーチルは、イスメイから、可能ではあるが大きな犠牲を伴うと言われる。 4000人が全滅しても30万人を救うためだと言うチャーチルは、カレーの司令官クロード・ニコルソン准将に、全滅を覚悟で敵を引きつける指示を出すよう命ずる。 不必要な犠牲を回避する方法があると意見したハリファックスは、イタリアが和平交渉の仲介を申し入れてきたことをチャーチルに伝える。 イギリスの主権が保障されるのであれば考慮すると答えたと言われたチャーチルは、ヒトラーが主権を認めるとは考えられず、ドイツ側にも利点があると言うハリファックスの言葉を遮る。 ヒトラーにイギリスは征服できないと分からせることが重要だと言うチャーチルは、そのために軍隊が必要であり、ダンケルクから兵士を救出するまで敵を防がねばならないと伝える。 全責任を負うと言うチャーチルの言葉が本気なのか確認したハリファックスは、当然だと答える彼に、4000人を犠牲にする前に他の道を探るべきではないかと尋ねる。 あくまで和平交渉にこだわるハリファックスは、それに参加することも拒むのかと問い、チャーチルから、自分とチェンバレンと話したいと言われる。 カレーに指令を出すよう指示したチャーチルは、ハリファックスとチェンバレン以外を部屋から出す。 陸では敗れたと話を切り出したハリファックスは、チャーチルから、我が国は青銅器時代から海洋国家でドーバー海峡は防衛ラインであり、海を知らないドイツは、この島にたどり着かなくてはならないと言われる。 しかし国民を守る術がないと言うハリファックスは、史上最強の軍隊を持つヒトラーを止めるには、対話による解決しか道がないという考えを変えない。 ハリファックスをイタリア大使と会談させて、ドイツとの和平交渉の可能性と条件を探らせるというチェンバレンの提案を、チャーチルは仕方なく聞き入れる。 アメリカ大統領フランクリン・ルーズベルト(デヴィッド・ストラザーン)と電話で話したチャーチルは、退役駆逐艦50隻の提供を求める。 中立法のせいで軍需品輸出ができないと言われたチャーチルは、航空母艦を送るので、購入済みの戦闘機”P-40”を引き取りたいとルーズベルトに伝える。 それも新法が禁じていると言われたチャーチルは、西半球の危機を救うにはアメリカの協力が必要だと伝えるものの、ルーズベルトは、友人のことはひと時も忘れていないと答えるだけだった。 カナダ国境まで”P-40”を運ぶので、それを馬で移動させて国境を越えることを提案されたチャーチルは、まともに答える気になれなかったものの、ルーズベルトに感謝して電話を切る。 地図のドーバー海峡を確認したチャーチルは、バートラム・ラムゼー提督(デヴィッド・バンバー)に電話をして、ダンケルクの兵士を救うために民間の小型船の徴用を指示する。 この作戦に名前が必要だと言われたラムゼーは、発電機を見ながら”ダイナモ作戦”と名付ける。 5月26日。 国王の存在は最重要であり、自分が正しいと思うことをするべきだと意見された国王は、議会の内情を話すチャーチルから、党はハリファックスを首相に望んでいるが、彼は無能だと言われる。 ハリファックスは自分の親友だと言う国王は、自分は嫌われ、第一次大戦の”ガリポリの戦い”以来、信用されていないと話すチャーチルに、人を怖がらせるからだと伝える。 自分も、何を考えているか分からないので怖いと伝えた国王は、感情を抑えられない野生児だと言うチャーチルの話を聞く。 閣議は始まり、大きな戦闘は起きていないと話すチャーチルは、アイアンサイドから、抗戦はしているが全面包囲され、死傷者は6割になったというカレーの戦況を知らされる。 ハリファックスから和平交渉の件を問われたチャーチルは、最後まで戦い抜く姿勢を貫く方針を伝えて、イーデンの賛同を得ながら、敗戦より戦いを諦める方が恥だと伝える。 和平交渉はドイツとイタリアの罠だと言うチャーチルは、口を挟むハリファックスを黙らせて、組閣の際にあえて政敵を入閣させたものの多すぎたと言って、提案は国にとって無益であり危険だという考えを述べる。 最後まで戦い抜くというヒロイズムこそが危険だと反論するハリファックスは、その最後とは破滅であり、避けられる戦いは避けるべきだと伝える。 早期撤退は負け戦では恥ではないという言葉に憤慨したチャーチルは、ハリファックスから、ヨーロッパは敗北したので軍隊が全滅する前に交渉するべきだと言われる。 ヒトラーは無理な要求はしてこないと言うハリファックスに、いつになったら学ぶのだと声を荒げるチャーチルは、この先、何人の独裁者にすり寄り思うがままにさせる気かを問い、憤慨して席を外す。 チャーチルを呼び止めたハリファックスは、イタリア大使との交渉を許可したことを確認するものの、過程の話であり交渉などあり得ないと言われる。 交渉を拒むなら辞任する気のハリファックスは、野心の犠牲になって死んでいく若者を黙って見ていられないと伝える。 無抵抗で死ぬのかと言われたハリファックスは、”ガリポリの戦い”で十分だと伝えるものの、チャーチルは、作戦に欠点はなく上層部が判断を誤ったことが敗因だと反論する。 和平交渉か自分の辞任かを24時間で決めるようにとチャーチルに伝えたハリファックスは立ち去る。 その件をチェンバレンに話したハリファックスは、自分が辞めれば不信任投票になり、国王は支持すると伝える。 官邸に戻ったチャーチルは、カレーの司令官ニコルソン准将に対し、徹底抗戦がダンケルクへの支援となり、最大限の経緯を表することを通達する文をエリザベスにタイプさせる。 救出には迎えないと付け加えるようにとチャーチルから指示されたエリザベスは動揺する。 真実が知れないことが辛いと言うエリザベスは、何人生き残れるかチャーチルに尋ねる。 エリザベスに地図を見せてダンケルクとカレーの戦況を説明したチャーチルは、完全に包囲されたそれぞれの部隊は攻撃を受け続けているため、救出の準備はしているものの、1割が助かればいい状況だと伝える。 勇気を持つようにと言われたエリザベスは、救出できなかった場合には何日持ち堪えられるか尋ねる。 チャーチルから、1日か2日だと言われたエリザベスは、震えながらダンケルクとカレーの地図に触れる。 その後、チャーチルからの指令を受け取ったニコルソンの部隊は、空爆により全滅する。 カレーは陥落し、死者、捕虜の数は不明という報告が入り、チャーチルは心を痛める。 心配するクレメンタインに一人にしてほしいと伝えたチャーチルは、ラムゼーに電話をかけて”ダイナモ作戦”の状況を尋ねる。 告知したばかりだと言われたチャーチルは声を荒げ、船舶の提供は要請ではなく命令だと伝えて電話を切る。 5月27日。 ドイツ軍の本土上陸についてが話し合われ、速やかに対抗措置をとるよう命じたチャーチルは、ハリファックスから、イタリアの和平交渉提案を記録に残すようにと言われる。 それはドイツが我が国の侵略に失敗した後になるだろうと、チャーチルはハリファックスに伝える。 辞任をほのめかすハリファックスと共に、現実から目をそらしているとチェンバレンから指摘されたチャーチルは、イーデンに意見を求めるものの答えを得られない。 選択肢はないようだと言うチャーチルは、ヒトラーの和平案が、中央ヨーロッパの支配権と植民地の返還にとどまりイギリスの主権を保証するなら、その可能性を検討することを伝える。 チャーチルに感謝したハリファックスは、和平交渉の覚書の準備を始める。 エリザベスに自分の考えをタイプさせていたチャーチルは、その場にあった彼女の兄の写真を見ながら所在を尋ねる。 兄がダンケルクへの撤退中に戦死したことを知ったチャーチルは、エリザベスの顔を暫く見つめる。 側近からカナダへの亡命を勧められた国王は、今、思い感じているのは怒りだと伝える。 葛藤して苦しむチャーチルの気持ちを察するクレメンタインは、世界の運命はあなたの肩にかかっている伝えて励まし、国王が訪ねて来たことを知らせる。 部屋に現れた国王は、ハリファックスの訪問を受けて、和平交渉の可能性が高まったことを聞いたとチャーチルに伝える。 内閣がムッソリーニへの親書を作成し、その後ヒトラーとの和平交渉になることを伝えたチャーチルは、ハリファックスの考えは正しかったと言う国王に、今の気持ちを尋ねる。 まず自分の気持ちを聞きたいと言われたチャーチルは、明確には答えられず、勇敢に戦って敗れた国は再起できるが、それを避けた国に未来はないと国王に伝える。 西ヨーロッパ各国は降伏したため恐怖を感じていると言うチャーチルは、戦時内閣において徹底抗戦を支持する者はいないため、本日、下院で方針の転換を発表する考えを話す。 チャーチルの横に腰かけた国王は支持すると言って、当初は疑問を感じていたと伝える。 首相就任を最も恐れたのはヒトラーであり、そのケダモノを怯えさせる男を自分は信頼し、今後はいかなる場合でも支持することを、国王はチャーチルに約束する。 敵と戦おうと言われたチャーチルは、議会で訴える考えはあるが、党の支持が得られなければ講和を選ぶしかないと国王に伝える。 自分が助言する番だと言う国王は、街に出て人々の声を聞き真実を話すようにと伝えて、本土決戦が近いなら国民も覚悟を決めなければならないはずだと意見する。 このような事柄を率直に話し合える友人がいなかったと伝えたチャーチルは、真の友になれたと言う国王に、もう自分を恐れていないかと尋ねる。 国王は、少しは怖いが耐えられると答える。 5月28日。 史上最大の民間船団は、ドーバー海峡を渡る。 閣議に出席するチャーチルは、車を降りて地下鉄に向かい、少女にウエストミンスター駅への行き方を尋ねる。 自分に気づいた様子の少女から、ディストリクト線で東に一駅だと教わったチャーチルはホームに向かう。 その頃、チャーチルが現れないまま閣議は始まり、ハリファックスは、和平交渉の覚書の内容を確認する。 自分に気づき驚く人々と共に地下鉄に乗ったチャーチルは、レンガ職人のウィルソンからマッチを借りて葉巻に火を点ける。 ジョークを言いながら、赤ん坊を抱く女性ジェシーに声をかけたチャーチルは、その他の乗客から自己紹介される。 敵がロンドン中に現れた場合にどのような行動をとるか尋ねたチャーチルは、全員が戦う意思があることを確認する。 ヒトラーに頭を下げて、国に有利な条件を引き出し和平協定を結んだ場合を尋ねたチャーチルは、全員が反対し、少女までもがダメだと言う姿に心を打たれて涙ぐむ。 ウエストミンスター駅に着いたため、チャーチルは車両から降りてウェストミンスター宮殿に向かい、閣外大臣への演説を行う。 下院で演説を行う予定のチャーチルは、内閣は和平交渉に入るための草案を作成しているが、それが自分の責務か考えたと伝える。 地下鉄で話した人々の名前をあげて、この勇敢な市民は、講和を選んでも、戦い抜いた結果より良い結果になるとは思えないと考えていると話す。 講和により国家が失われるのは明らかだと言うチャーチルは、ナチスに屈した場合、自分達はどうなるかを大臣達に問う。 チャーチルは、得する者もいるだろうが、空やバッキンガム宮殿、ウィンザー城、ウェストミンスター宮殿に”ハーケンクロイツ”が翻ることになると伝える。 それに反対する大臣達に、チャーチルは、自分が交渉や降伏を考えたらこの地位を奪うだろうと伝えて、全員の賛同を得る。 大臣達の考えが市民と同じだということを確認したチャーチルは、戦い抜くことを誓う。 閣議室に向かったチャーチルはその件を話し、下院の大臣達は、家族や友人を失っても全員が降伏よりも死を選ぶ考えだと伝える。 それが国民の総意だと言うチャーチルは、今後も市民の気持ちを代弁し続けることが義務だと伝え、和平交渉は行わない考えをふまえた行動をするよう指示する。 国会での演説を控えるチャーチルはその場を去り、その原稿を作るためにエリザベスを呼ぶ。 不信任決議を出すしかないと考えるハリファックスだったが、下院に行って話すと言うチェンバレンは、チャーチルの演説を聞いてからだと伝えて席を立つ。 議会に向かい、エリザベスと共に準備した原稿を前に演説を始めたチャーチルは、歴史上、侵略に備えたことはなかったのは絶対的な自信があるからだと話す。 必ず祖国を守ることができると言うチャーチルは、何年もかかり一国で戦うかもしれないが、何があろうともやり通すのが政府の決意であり、議会と国民の総意だと語る。 イギリスとフランスは同盟国として死を覚悟して国土を守り抜き互いを守り、たとえヨーロッパのほとんどがナチスの手に渡っても決して怯まず、最後まで戦い抜くことをチャーチルは誓う。 自分達は、フランスで戦う、海で戦う、空で戦う、どんな犠牲を払っても祖国を守り抜く、海岸で戦う、敵の上陸地点で戦う、原野、街で戦う、丘で戦う、決して降伏はしないと訴えるチャーチルは殆どの議員達の賛同を得る。 もしもイギリスの大部分が征服され飢えに苦しむことになっても、海の向こうの我がイギリス帝国艦隊に守られながら闘争を続ける。 神の導きにより、新世界が全力を挙げて旧世界の救済と解放に踏み出す日までと語るチャーチルを議員は支持し、ハンカチを手にしたチェンバレンは、それを額に当てる。 チャーチルは、歓喜する議員達と共に”勝利を”と叫ぶ。 何が起きたのか訊かれたハリファックスは、言葉を武器に変えたチャーチルは戦場に乗り込んだと答える。 チャーチルは、騒然となり静まらない議会を去る。 ダンケルクの30万人の兵士は、”ウィンストンの民間船団”により本土に移送された。 ネヴィル・チェンバレンは半年後に死去した。 ハリファックス子爵は外務大臣を解任され、駐アメリカ大使に左遷された。 その年の7月、総選挙に負けたチャーチルは退陣した。 ”成功も失敗も終わりではない、肝心なのは続ける勇気だ ウィンストン・チャーチル”
...全てを見る(結末あり)
ウィンストン・チャーチル(ゲイリー・オールドマン)の秘書となるエリザベス・レイトン(リリー・ジェームズ)は、細かい指示を受けて本人と対面する。
国王ジョージ6世(ベン・メンデルソーン)は、首相就任が、友人であるハリファックスでなかったことを不満に思い、その理由をチェンバレンに問う。
記者達に声をかけたチャーチルはイーデンに迎えられ、早速、組閣の準備を始める。
議会に向かったチャーチルの演説は始まり、チェンバレンは、それを振れば賛同の意思表示であるハンカチを用意し、ハリファックスも注目する。
ラジオ演説を控えるチャーチルは、その原稿を読んだイーデンから、こちら側が優勢であるように思える内容は問題だと言われる。
閣議が開かれ、チャーチルはアイアンサイドから戦況を知らされ、連合軍はダンケルクまで撤退して孤立しているということだった。
予定通り月曜の昼食を国王と共にしたチャーチルは、家族と共にカナダに亡命することを側近から提案されていることを知らされる。
エリザベスに内閣を招集すること伝えたチャーチルは、ベルギーが陥落したことを知り、次はフランスだと考える。
ラムゼーに連絡したチャーチルは、860隻の船舶が確保されたことを知り、”ダイナモ作戦”の開始を命ずる。
__________
*(簡略ストー リー)
1940年5月10日、ロンドン。
攻勢を続けて西ヨーロッパの侵略を進めるナチス・ドイツへの政策に失敗して退陣したチェンバレンに替わり、ウィンストン・チャーチルが国王ジョージ6世により首相に任命される。
政敵であるチェンバレンと外務大臣のハリファックスをあえて内閣に残したチャーチルは、ドイツに対する徹底抗戦の姿勢を変えようとしない。
敵との和平交渉だけが国土を守る道と考えるチェンバレンとハリファックスは、チャーチルと対立するものの説得することができない。
イギリス及び連合軍兵士約30万人が、ドーバー海峡を隔てたダンケルクで包囲される中、チャーチルは国家の存続をかけた決断を迫られる・・・。
__________
第二次大戦を勝利に導いたウィンストン・チャーチルの、イギリス首相就任からダンケルクから連合軍を撤退させる”ダイナモ作戦”の決行、そしてナチス・ドイツに対する徹底抗戦を訴えた信念を貫く闘いを描く歴史戦争ドラマ。
特殊メイクによりウィンストン・チャーチルになり切ったゲイリー・オールドマンの、圧倒的存在感と渾身の演技が話題になった。
「プライドと偏見」(2005)「つぐない」(2007)のジョー・ライトによる、歴史的事実を克明に描くリアルな映像が見どころの作品でもある。
イングランド及びイギリスの歴史上、最大の危機に直面した国民が決断を迫られる中、国家の未来を託されたウィンストン・チャーチルの苦悩は、原題の”Darkest Hour”にすべてが集約されている。
刻々と迫る脅威に耐えるしかない”暗黒の時”を表現するために、街中など以外はほとんど照明を使わない映像で演出されているところなども注目したい。
上記で事実を克明にと記したのは、ほとんどの部分でという意味であり、チャーチルの秘書を務めたエリザベス・レイトンが本人に対面したのは1941年の5月であり、カレーの第30歩兵旅団司令官クロード・ニコルソン准将は空爆で戦死したことになっているが、実際には1943年に捕虜の身で死亡しているなど、ドラマチックに演出するため、脚色はされている場面も多い。
当時のニュース・フィルムのような、大袈裟な日にちの表示などが、戦争の緊迫感を伝えている。
北米興行収入は約5700万ドル、全世界では約1億5100万ドルのヒットとなった。
第90回アカデミー賞では作品賞以下6部門にノミネートされ、各方面から絶賛された熱演により、ゲイリー・オールドマンが念願の主演男優賞を、またメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した。
*ノミネート
作品、撮影、衣裳デザイン、美術賞
首相となった夫を常に支えるクレメンタイン・チャーチルをユーモアを交えて演ずるクリスティン・スコット・トーマス、チャーチルの秘書エリザベス・レイトンのリリー・ジェームズ、当初はチャーチルを恐れ嫌うものの、国家のために協力し合い戦い抜くことを誓う国王ジョージ6世を、雰囲気ある演技で印象的に演ずるベン・メンデルソーン、チャーチルの政敵であり、前首相ネヴィル・チェンバレン(ロナルド・ピックアップ)と共に平和交渉で講和の道を歩もうとするエドワード・ウッド/ハリファックス子爵のスティーヴン・ディレイン、内閣の貴族院議長ジョン・サイモン/サイモン子爵のニコラス・ジョーンズ、チャーチルの側近である陸軍大臣で後の首相アンソニー・イーデンのサミュエル・ウェスト、労働党党首である後の首相クレメント・アトリーのデヴィッド・スコフィールド、軍事首席補佐官・参謀、ヘイスティングス・イスメイ・イギリス陸軍将軍のリチャード・ラムスデン、同じく帝国参謀本部総長、エドムンド・アイアンサイド将軍のマルコルム・ストッリー、無任所大臣、アーサー・グリーンウッドのヒルトン・マクレー、イギリス空軍、ヒュー・ダウディング将軍のアドリアン・ラウリンズ、”ダイナモ作戦”を指揮するイギリス海軍、バートラム・ラムゼー提督のデヴィッド・バンバー、保守党議員サミュエル・ホアー/テンプルウッド子爵のベンジャミン・ホイットロー、第一海軍卿、ダドリー・パウンド提督のポール・レナード、そしてフランクリン・ルーズベルトの声を担当するデヴィッド・ストラザーンなどが共演している。