1946年初演のガーソン・ケニンの舞台劇”Born Yesterday”の映画化。 無学で下品な富豪の愛人が教育係になった新聞記者との出会いで新たな人生を手に入れるまでを描く、監督ジョージ・キューカー、主演ジュディ・ホリデイ、ブロデリック・クロフォード、ウィリアム・ホールデン、ハワード・セント・ジョン他共演のコメディ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ジョージ・キューカー
製作:S・シルヴァン・サイモン
原作:ガーソン・ケニン”Born Yesterday”
脚本
ガーソン・ケニン
アルバート・マンハイマー
撮影:ジョセフ・ウォーカー
編集:チャールズ・ネルソン
衣裳デザイン:ジャン・ルイ
音楽:フレデリック・ホランダー
出演
エマ”ビリー”ドーン:ジュディ・ホリデイ
ハリー・ブロック:ブロデリック・クロフォード
ポール・ヴェラル:ウィリアム・ホールデン
ジム・デヴェリー:ハワード・セント・ジョン
エディ:フランク・オットー
ノーヴァル・ヘッジス下院議員:ラリー・オリバー
アンナ・ヘッジス:バーバラ・ブラウン
サンボーン:グランドン・ローズ
ヘレン:クレア・カールトン
アメリカ 映画
配給 コロンビア・ピクチャーズ
1950年製作 102分
公開
北米:1950年12月5日
日本:未公開
■ アカデミー賞 ■
第23回アカデミー賞
・受賞
主演女優賞(ジュディ・ホリデイ)
・ノミネート
作品・監督・脚色・衣裳デザイン賞(白黒)
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ワシントンD.C.。
自己中心的で横暴なハリー・ブロック(ブロデリック・クロフォード)は、くず鉄業で財を成した富豪だった。
ビジネスのために現地に到着したハリーは、ホテルのワンフロアを借り切り、婚約者のエマ”ビリー”ドーン(ジュディ・ホリデイ)らと滞在することになる。
新聞記者のポール・ヴェラル(ウィリアム・ホールデン)は、専用エレベーターに乗るハリーに声をかけるものの、相手にされない。
支配人のサンボーン(グランドン・ローズ)に最高級スイートルームに案内されたハリーは、1泊400ドルすることをビリーに自慢する。
ハリーは、サンボーンとボーイにチップを渡すよう部下のエディ(フランク・オットー)に指示し、現われた弁護士のジム・デヴェリー(ハワード・セント・ジョン)とビジネスに関するワイロの話などを始める。 ジムから、取材に来るポールに会っておくべきだと言われたハリーは、ヒゲを剃るために理容師を呼ぶようエディに指示する。 ノーヴァル・ヘッジス下院議員(ラリー・オリバー)の訪問を前に、ビリーに上品な服を着させるべきだとハリーに伝えたジムは、それを着にせずに現われたポールを迎える。 ポールのインタビューに答えるハリーは、子供のころから働き、くず鉄で稼いだ方法を話す。 理容師が来たため、ヒゲを剃らせながら話をしたハリーは、ポールにビジネスのことを詮索されて苛立つ。 酒を飲もうとするビリーを制止したハリーは、客が来るので着替えるよう指示する。 ジムのジョークに憤慨したハリーは、殴りかかり彼を脅す。 美容師を追い出したハリーはポールを残し、ジムが気にしていないことを確認する。 ジムから書類にサインを求められたビリーは、何も考えずにそれに従い、大会社の役員だと言われて気分をよくし、女優だった時のことを彼に話す。 議員との接し方などをジムと話したビリーは、部屋に戻らずにその場で待つ。 そこにヘッジス議員と妻アンナ(バーバラ・ブラウン)が現れ、ビリーは緊張しながら挨拶し、話しかけられるものの、2人の話題についていけない。 ハリーもヘッジス夫妻を歓迎し、アンナから”ブリッジ”をするか訊かれたビリーは、”ジン・ラミー”だけだと答える。 ビリーがアンナに話を合わせないために焦るハリーは、明日、打ち合わせすることをヘッジスに確認し、ビリーが席を外したために苛立つ。 金曜の夜の食事に招待されてヘッジスは、出席することをジムに伝えて、ハリーとビジネスの話をする。 ラジオを大音量で聴くビリーに呆れたハリーは、その電源を切る。 ジムとアンナが話す席でラジオを聴いたビリーは、ハリーに再び電源を切られる。 提出した修正案で、政府が鉄スクラップ価格を保証してくれることを確認したハリーは、その場を去るヘッジス夫妻を見送る。 自分の無学とビリーの品の悪さと態度に嫌気がさしたハリーは、ジムから彼女を家に戻せと言われるものの、それでも惹かれていると伝える。 ビリーを何とかする方法を考えるジムは、婚約して7年になる彼女と結婚することをハリーに提案する。 急ぎたくないと言うハリーは、何をするか分からないビリーの教育係として、ポールを雇うことにする。 ポールを呼んだハリーは、教養がないビリーのために彼を週200ドルで雇い、改めて彼女をポールに紹介して後を任せる。 ビリーと話したポールは、言葉遣いを直したいと言う彼女に、まず本を与え、言葉も直すと伝える。 ビリーは、本名は”エマ”なのだが、そんなタイプではないと言いながら、ポールのことが気に入り彼を見送る。 ハリーとジン・ラミーを始めたビリーは、ここは上品な街なのでポールの話をよく聞き、うまくやらなければ家に帰すと言われたために、あなたも勉強するべきだと伝える。 余計なお世話だと言うハリーは、ビリーが鼻唄を歌い始めたために苛立ちやめさせる。 結局ゲームに勝ったビリーは、ハリーから55ドル60セントを受け取りご機嫌になる。 苛立つハリーは寝室に向かい、ビリーは、戻って来たポールから新聞と本を受け取る。 新聞に興味がなかったビリーは、視力がよくないことをポールに伝え、メガネをかけることを勧められる。 ビリーは、似合わないと言いながら、メガネをしている彼にキスしてしまう。 男性は別だと伝えたビリーはポールを見送り、今後が楽しみだと思う。 翌日、ポールは本を持って現れ、メイドのヘレン(クレア・カールトン)は彼とビリーの関係が気になる。 ビリーに歓迎されたポールは、彼女の自分を見る目を気にしながら、2人で市内巡りを始めて国会議事堂に向かう。 議会図書館。 ポールは、そんなビリーに、歴史、政治、法律や社会のことなどを熱心に教える。 ウォーターゲート・コンサートを楽しみ芸術にも触れたビリーは、ニューヨークの父から8年ぶりに手紙が来たことをポールに伝える。 ハリーとの結婚に反対する父は、ガスの検針係をしていたが足が弱くなり、今はエレベーター係をしていると話すビリーは、母が死んだ後で4人の子供を育ててくれた父に恩返ししたいとポールに話す。 ビリーは、100ドル渡したときに激怒した父のことを話しながら、ポールから手紙が来た理由を訊かれ、自分が書いたからだと答える。 毎日、自分を想ってくれている父のことを何年も考えなかったと言うビリーは、後悔しているとポールに伝える。 ポールから会うべきだと言われたビリーは、自分がハリーといる限り父は会わないつもりだと伝える。 ナショナル・ギャラリー・オブ・アート。 ハリーの話になったポールは、自己中心的な危険人物だとビリーに伝える。 自分に惹かれているので、ポールがハリーを嫌っていると思ったビリーは、彼の考え方が嫌いで理解できないと言われ、同感だと伝える。 ジェファーソン記念館。 その後も本から知識を得たビリーは、そのことには満足するものの、ポールが自分に対して行動に移さないために、タイミングを逃せば何も起きないと彼に伝える。 ホテルに戻ったハリーは、にわか知識を自慢するビリーと教育係のポールの態度に苛立つ。 休息だと言ってポールは帰ってしまい、ハリーがこの街で何をするつもりなのかが気になるビリーは、一応、共同経営者になっている身であり、違法行為はしたくないと彼に伝える。 ビリーから借りた本を返しに来たヘレンが感想を話し始めたため、苛立つハリーは彼女を追い出す。 メイドと気安く話すなと言われたビリーは、辞書を引き、”非社交的”だとハリーに伝えて非難する。 そこにジムとヘッジス議員が現れ、ビリーに声をかけた2人は、機嫌が悪いハリーと話をする。 議会に関する件が時間がかかることを知ったハリーは、他の議員に頼むことをほのめかし、ヘッジスは彼の態度を気にしながら部屋を出る。 ビリーに呼ばれたヘッジスは、同情してくれる彼女と話し、誰に従うか考えるべきだと言われ、一理あると考えながらその場尾を去る。 ジムからいつものように書類にサインを求められたビリーは、内容の説明を求め、合併に関することだと知る。 それに反対するビリーはサインを拒み、ジムを困らせる。 書類の内容を確認しようとしたビリーは、現れたハリーに意見し、こんな生活から逃げたいと伝える。 本を読みいろいろなことを知ったと言うビリーは、もっといい人生があるはずだとハリーに伝える。 口論になったビリーは、自分を所有物のように言うハリーに逆らうものの、殴られて強引にサインさせられる。 泣きながらサインしたビリーは、出て行けと言うハリーをファシストと罵る。 憤慨したハリーはビリーの本を破り、ジムに書類を渡し、彼女を追い出すことを伝える。 教育が裏目に出たと言われたハリーは、ポールをクビにすることをジムに伝える。 しかし、ビリーを愛しているハリーは、彼女を元に戻す方法がないかジムに尋ねる。 出て行こうとするビリーは、ハリーから遅くなるなと言われるものの、彼を罵倒してその場を去る。 ジェファーソン記念館に向かったビリーは、”人間の心に対するいかなる専制も許さない”と誓ったトーマス・ジェファーソンの言葉を思い出し、ポールに電話をする。 ビリーが夜中になっても戻らないために苛立つハリーは、彼女を捜しに行ったエディから見つからないと言われ、我慢の限界に達する。 ビリーと結婚するべきだとハリーに助言したジムは、議員の話になり、真面目で誠実な彼らを買収できると思うのは間違いだと伝る。 金で買える議員もいるがまれだと言われたハリーは、ビリーの本を読んでみる。 ポールと共にホテルに戻ったビリーは、部屋に誰もいないことを確認し、その場に向かい書類を持ち出そうとする。 エレベーターに乗ったビリーは、旅立つことをハリーに話し、驚く彼から結婚することを提案される。 愛していると言われるものの、結婚を断ったビリーは、彼にキスされる。 部屋に着いたビリーとポールは、その場にいたハリーに見つかってしまう。 ハリーから帰るように指示されたポールは去ろうとするが、密かに寝室に向かう。 いろいろ考えたと言うハリーは、勉強はやめさせると言って、結婚することをビリーに伝える。 それを断ったビリーは窓に向かい、ポールが部屋にいることを確認する。 自分が利用されていることに気づいたと言うビリーは、もう指示には従わないとハリーに伝えて話を聞こうとしない。 ビリーから出て行くと言われたハリーは、眠っているジムを起こす。 書類を手に入れたポールは、ビリーに合図をして寝室を出る。 手続きが済んだら追い出すと言われたビリーは喜び、ハリーとジムと共に寝室に向かう。 その間にポールは、部屋から出てロビーに向かう。 ビリーは、合併は詐欺だと言っていたポールが、新聞に掲載するために書類を持ち出したことをハリーとジムに伝える。 焦るジムは、公表されたら終りだと言いながら、ハリーに合併を中止させようとする。 ジムの意見を聞こうとしないハリーは、戻って来たポールが書類を持っていないことを確認し、どこにあるか聞き出そうとする。 言うことを聞かずに殺された者がいると言うビリーの話を制止したハリーは、ポールから強引に書類のことを聞き出そうとする。 ジムから手を引けと言われたポールは、人々に事実を知らせることが仕事であり、書類は自分に郵送されるとハリーに伝える。 ジムからすべて合法だと言われたポールは、書類の内容で知ったことを訊かれ、会社の合併と修正案の関係だと答える。 殺人や政府と支持者間の買収や腐敗を暴くために仕事をしていると言うポールは、ハリーから口止め料を払うことを提案される。 暫く考えたポールはビリーと去ろうとするが、ハリーが彼に襲いかかる。 ハリーを制止したジムは、彼の行いを責める。 ポールは、脅せば問題を解決できると思っているハリーを非難する。 10万ドルを提示されたポールはそれを断り、納得できないハリーは、ジムからもポールらが正しいと言われて苛立つ。 ポールは、ヘッジス議員と共に、追及を逃れることはできないとハリーに伝える。 ジムから聞いた話をするビリーは、共同経営者の自分は126の土地を所有しているため、それを1年に1っか所ずつ返すつもりで、何かあればすべて暴露するので、その時は刑務所行きだとハリーに伝える。 ポールと去ろうとするビリーは、ハリーから後悔すると言われるものの、話を聞こうとせず、ドアを開けようとしないエディを脅して部屋を出る。 ジムは、ビリーとポールはまともではないと言うハリーに、彼女らのような者が自分たち悪党を苦しめるのだと伝えて、グラスの酒を飲み干す。 その後、警官に車を止められたポールは、運転免許証の提示を求められ、結婚証明書を見せてしまう。 新婚だったポールとビリーを、今回は大目に見ようとした警官は、運転に気よつけるようにと伝える。 これは宿命なので大丈夫だと言うビリーは、意味が理解できない警官に、辞書を引くようにと伝えて、ポールと共にその場を去る。
...全てを見る(結末あり)
独立宣言書など様々なものに興味を持ち始めたビリーは、メガネをかけるようになる。
ポールと館内を見学するビリーは、疑問に思ったことなどを彼に尋ねる。
トーマス・ジェファーソンの像を前にビリーは、彼のことはここに来る前から知っていたとポールに伝える。
*(簡略ストー リー)
ワシントンD.C.。
自己中心的で横暴なハリーは、くず鉄業で財を成した富豪だった。
ハリーは、無学で下品な婚約者のエマ”ビリー”ドーンがビジネスの妨げになると考え、弁護士のジムと相談して、取材に来た新聞記者のポールを彼女の教育係として雇う。
ポールと惹かれ合う仲になったビリーは、彼から本を与えられ、市内観光で国会議事堂などを回り様々な知識を吸収して、何事にも自分の考えを持つようになるのだが・・・。
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既に様々な名作を手掛けていたジョージ・キューカーの無駄のない軽快な演出が光るコメディの秀作。
映画監督、脚本家としても活躍していたガーソン・ケニンの演出した舞台劇”Born Yesterday”の映画化であり、オリジナルキャストのジュディ・ホリデイが主演を演じた。
*富豪のハリーの部下エディ役のフランク・オットー、ハリーと手を組むヘッジス下院議員のラリー・オリバーも舞台で同じ役を演じている。
第23回アカデミー賞では作品賞以下5部門にノミネートされ、ジュディ・ホリデイが主演女優賞を獲得した。
*ノミネート作品・監督・脚色・衣裳デザイン賞(白黒)
2012年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
ドラマの舞台がワシントンD.C.あるところがポイントで、教養のない主人公が、アメリカの精神を知り知識を得るには最適な場所と言える。
市内の観光名所、国会議事堂、議会図書館、ナショナル・ギャラリー・オブ・アート、ジェファーソン記念館などを回りながら、主人公が、アメリカという国家について考え、教養を身につけていく姿が興味深く描かれている。
無学で下品な女性として登場する主人公なのだが、ジュディ・ホリデイがシーンの度に着替える衣裳の素晴らしさも注目だ。
舞台の当たり役でもあり、主人公を見事に演じたジュディ・ホリデイの演技は各方面で絶賛され、その年の演技賞を総なめにした。
特に、「サンセット大通り」のグロリア・スワンソン、「イヴの総て」のベティ・デイヴィスを抑えてのオスカー受賞は偉業とも言える。
自己中心的で粗暴な富豪を熱演するブロデリック・クロフォード、主人公に惹かれながら彼女の教育係を務める新聞記者をいい雰囲気で演ずるウィリアム・ホールデン、問題がある富豪に手を焼きながらも補佐として働く弁護士のハワード・セント・ジョン、富豪の部下フランク・オットー、富豪と手を組む下院議員のラリー・オリバー、その妻バーバラ・ブラウン、ホテルの支配人グランドン・ローズ、ホテルのメイド役クレア・カールトンなどが共演している。