イギリスの劇作家パトリック・ハミルトンの同名戯曲(1938)の映画化で、1940年のイギリス版映画のリメイク作品。 オペラ歌手の宝石を狙う音楽家がその姪に接近して彼女を精神的に追い込みながら宝石を手に入れようとする策略を描く、監督ジョージ・キューカー、主演シャルル・ボワイエ、イングリッド・バーグマン、ジョセフ・コットン、メイ・ウィッティ、アンジェラ・ランズベリー他共演によるサスペンス・ドラマの秀作。 |
・イングリッド・バーグマン / Ingrid Bergman / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:ジョージ・キューカー
製作:アーサー・ホーンブロウJr.
戯曲:パトリック・ハミルトン”Gas Light”
脚本
ジョン・ヴァン・ドルーテン
ウォルター・ライシュ
ジョン・L・ボルダーストン
撮影:ジョセフ・ルッテンバーグ
編集:ラルフ・E・ウィンターズ
美術・装置
セドリック・ギボンズ
ウィリアム・フェラリ
エドウィン・B・ウィリス
ポール・ハルズキンスキー
音楽:ブロニスラウ・ケイパー
出演
シャルル・ボワイエ:グレゴリー・アントン
イングリッド・バーグマン:ポーラ・アルクイスト
ジョセフ・コットン:ブライアン・キャメロン
メイ・ウィッティ:ベッシー・スウェイツ
アンジェラ・ランズベリー:ナンシー・オリヴァー
バーバラ・エヴァーレスト:エリザベス
テリー・ムーア:ポーラ・アルクイスト(14歳)
アメリカ 映画
配給 MGM
1944年製作 113分
公開
北米:1944年5月4日
日本:1947年6月
■ アカデミー賞 ■
第17回アカデミー賞
・受賞
主演女優(イングリッド・バーグマン)
美術賞
・ノミネート
作品
主演男優(シャルル・ボワイエ)
助演女優(アンジェラ・ランズベリー)
脚本・撮影賞(白黒)
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1875年10月、ロンドン。
世間を騒がす、ソーントン広場の絞殺事件は、いまだに未解決のままだった。
殺された歌手の姪ポーラ・アルクイスト(イングリッド・バーグマン)は、失意のうちに、叔母のようなオペラ歌手になるためイタリアに向かう。
やがてポーラは、音楽家グレゴリー・アントン(シャルル・ボワイエ)と恋に落ち結婚の約束をするが、ポーラは自分を見つめ直すために、1週間コモ湖への旅行に向かう。
ポーラは途中、列車内で、イギリス人の老婦人ベッシー・スウェイツ(メイ・ウィッティ)と出会う。
話題好きのスウェイツ夫人に、ソーントン広場の絞殺事件を興味心身に語られ、ポーラは動揺してしまう。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
1875年、ロンドン。
世間を騒がす、オペラ歌手殺害事件で、その姪ポーラ・アルクイストは、失意のうちに、自身も歌手になるためイタリアに向かう。
ポーラは、音楽家グレゴリー・アントンと恋に落ち、彼女は不安を抱えながらも結婚を決意する。
そして、ロンドンに住むことになり、二人の優雅な生活は始まるが、メイドのナンシーは、ポーラの様子がおかしいことに気づき、アントンは使用人に、妻が病気だと伝える。
少年時代から、殺されたポーラの叔母のファンだった、スコットランド・ヤードの総監助手キャメロンは、街でポーラを見かけ彼女が気になる。
隣人のスウェイツ夫人に、アントン夫妻について尋ねるキャメロンは、夫妻の屋敷の異常さを知らされる。
キャメロンは、既に終了していたポーラの叔母の絞殺事件の調査を始め、被害者の宝石が見つかっていないことを知る。
外出もできず、様々な出来事で気分が落ち込むポーラに、夫アントンも、彼女が神経病ではないかと疑い始めるのだが・・・。
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第17回アカデミー賞では作品賞をはじめ7部門でノミネートされ、イングリッド・バーグマンが主演女優賞を、そして美術賞を受賞した。
・ノミネート
作品
主演男優(シャルル・ボワイエ)
助演女優(アンジェラ・ランズベリー)
脚本・撮影賞(白黒)
話の筋立てとしては、それほど奇抜ではないが、主人公と妻の心理描写や、全体的に漂う陰鬱な雰囲気を、ジョージ・キューカーが繊細なタッチで描いている。
原題でもあるガスの燈、宝石、手袋や屋敷の近所の立地図など、小道具の使い方もなかなかうまい。
アカデミー主演賞にもノミネートされたシャルル・ボワイエは、紳士的な音楽家から、ロンドンに住み着いた途端に悪役に豹変し、妻を精神的に追い込む、非情な殺人鬼振りが、イメージとギャップがあり興味深い。
策略で精神的に追い込まれ、ついには錯乱状態寸前にまでなってしまう、アカデミー主演賞を受賞したイングリッド・バーグマンの、細やかな心理表現は秀逸だ。
ファンであった、オペラ歌手殺人の犯人を追い、陥れられようとするその姪を救おうとする、正義感のある警察官を、ジョセフ・コットンがスマートに演じている。
どこにでもいる、世話焼きで噂話好きの夫人を好演する、大ベテランのメイ・ウィッティが閉めるラストは、陰気な雰囲気の内容を和らげる、ややヒッチコック作品を彷彿させるエンディングでもある。
アカデミー助演賞にノミネートされた、良家のメイドにしては、ふしだらな役柄のアンジェラ・ランズベリーの小悪魔的魅力と、最後に警察に協力する耳の悪い料理人役のバーバラ・エヴァーレストが、不審な物音にも気づかないところなども、気の利いた演出となっている。