アルフレッド・ヒッチコックによるサスペンスの傑作「知りすぎていた男」(1956)のオリジナル作品。 平凡な一家が国際的暗殺計画に巻き込まれる姿を描く、監督アルフレッド・ヒッチコック、主演レスリー・バンクス、エドナ・ベスト、ピーター・ローレ、フランク・ヴォスパー他共演の犯罪サスペンス。 |
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■ スタッフ キャスト ■
監督:アルフレッド・ヒッチコック
製作:マイケル・バルコン
脚本
チャールズ・ベネット
エドウィン・グリーンウッド
A・R・ローリン
D・B・ウィンダム・ルイス
撮影:クルト・クーラント
編集:ヒュー・スチュワート
音楽:アーサー・ベンジャミン
出演
ボブ・ローレンス:レスリー・バンクス
ジル・ローレンス:エドナ・ベスト
アボット:ピーター・ローレ
ラモン・レヴィーン:フランク・ヴォスパー
クライヴ:ヒュー・ウェイクフィールド
ベティ・ローレンス:ノヴァ・ピルビーム
ルイ・ベルナール:ピエール・フレスネー
アグネス:シセリー・オーツ
ビンステッド:D・A・クラーク・スミス
ギブソン:ジョージ・カーゾン
イギリス 映画
配給 ゴーモン・ブリティッシュ
1934年製作 75分
公開
イギリス:1934年12月9日
北米:1935年3月22日
日本:1935年12月17日
製作費 £40,000
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
スイス、サンモリッツ。
旅行中のイギリス人ボブ・ローレンス(レスリー・バンクス)は、娘のベティ(ノヴァ・ピルビーム)と共にジャンプ競技を観戦していた。
ベティが、着地点に飛び出した愛犬を助けようとしたため、ボブの親友である選手のルイ・ベルナール(ピエール・フレスネー)が転倒し、観客の中に飛び込む。
幸い大事には至らず、ボブは、転んだ男性アボット(ピーター・ローレ)のことを気遣う。
ルイも怪我をしていなかったことを確認したボブは、彼が旅立つことを知り、ベティと共に残念に思う。
クレー射撃に出場している妻ジル(エドナ・ベスト)と共に、ルイの最後の夜に食事をする提案をしたボブは、ベティと競技場に向かう。 射撃の準備をしていたジルは、ベティに声をかけられたたためにブローチを渡す。 その場にいたアボットは、音がする懐中時計をベティに見せる。 ジルはクレーを外してしまい、結局、ラモン・レヴィーン(フランク・ヴォスパー)に負けてしまう。 その夜、ボブの家族と共に食事を楽しんでいたルイは、ジルと踊っている最中に銃弾を胸に受ける。 ルイは、部屋に行きブラシを探し、領事館のギブソンの元に向かうようにと言い残し、ジルに部屋の鍵を渡して息を引き取る。 窓の銃弾の跡が確認され、その場にいたラモンは手紙を受け取る。 ルイが死んだことをジルから知らされたボブは、ブラシの話を聞き鍵を渡される。 ボブはルイの部屋に向かい、ラモンも入ろうとするものの、中から鍵がかけられていた。 ブラシを探すボブは、警官が現れたために焦り、シェービングブラシに隠されていたメモを見つける。 ”ワッピング G・バーバーがA・ホールと接触 3月21日”という内容を確認したボブは、別のドアから外に出る。 ラモンに話しかけられたボブは、見つけた物があれば渡すようにと言われ、何もなかったと伝える。 支配人から部屋にいた理由を訊かれたボブは、イギリス領事館に電話をする許可を求めオフィスに向かう。 ジルが警官に尋問されていることを知ったボブは動揺し、伝言を受け取る。 メモを見たボブは焦り、尋問中のジルの元に向かいそれを渡す。 ”何も話すな、指示に従わなければ子供に二度と会えない”という内容を確認したジルは卒倒し、ボブはメモを火の中に捨てて燃やしてしまう。 その頃、ベティはラモンに連れ去られ、馬車で移動していた。 ロンドン。 警部らは帰り、ボブは、残っていた外務省の秘書官ギブソン(ジョージ・カーゾン)から、ルイは特殊任務を受けた自分たちの同僚だったと言われ、メモの入っていたブラシと同じものを見せられる。 娘を誘拐した犯人から口止めされたのではないかと言われたボブは、メモのことも訊かれる。 ジルもその場に現れ、ギブソンは、ルーパという外国の政治家の暗殺計画を知ったためにルイは殺されたと話し、ボブにメモの件を再び尋ねる。 その件は話せないが、娘が誘拐され、何も話すなと脅されたメモのことを伝えたボブは、奥の部屋にいた友人のクライヴ(ヒュー・ウェイクフィールド)から、ベティの件で電話が入ったことを知らされる。 相手の女から、その場にいる役人には何も話すなと言われたボブは、電話に出たベティが無事であることを確認する。 電話を代わったジルは、直ぐに助けると言ってベティを安心させ、居場所を訊くものの切れてしまう。 逆探知したギブソンは、ワッピングの公衆電話からかけてきたことを知り、スコットランドヤードに張り込みの依頼をするよう指示する。 ワッピングについて訊いても何も答えないボブに、事態が悪化したらあなたのせいだと伝えたギブソンは、その場を去る。 犯人が警官を見たら自分たちが話したと思われるため、ボブは、それより先に行動しなければならないとジルに伝えて、クライヴに協力してもらう。 ワッピング。 自分も診てもらったボブは、入ってきた者が持つ懐中時計の音に聞き覚えがあることに気づく。 バーバーに襲われ麻酔をかけられそうになったボブは、抵抗して彼を麻酔で眠らせる。 何者かが現れたために、白衣を着て医師に扮し治療をしているように見せかけたボブは、入ってきたラモンに、仲間が奥の部屋にいることを知らせる。 ラモンと話すアボットが、今夜のことやベティの話をして去ったため、ボブはクライヴと共に二人を追う。 二人が入った建物の入り口のメモと同じ太陽のマークを確認したボブは、”太陽神”を崇めるカルト集団の教会に入る。 壇上に上がり話し始めたアグネス(シセリー・オーツ)は、体験したい者を募る。 指名されたクライヴは、アグネスに催眠術をかけられて眠る。 信者は外に出て、ボブはクロケット夫人に銃を向けられ、アボットが現れる。 歯科医の件も気づいていたアボットは、ボブが持っていた拳銃を奪い、彼を集会に誘う。 そこにラモンも現れ、騒ぎを起こしたボブは彼と揉み合いになり、胸のポケットの”ロイヤル・アルバート・ホール”のチケットを確認する。 クライヴを起こしたボブは、ジルの元に向かい”ロイヤル・アルバート・ホール”に行くことを指示するよう伝える。 クライヴは窓から逃げるものの、ボブは捕らえられる。 ボブを殴ったアボットは、ジルに電話をして、”ロイヤル・アルバート・ホール”に向かった場合は娘の命はないと伝えるよう、アグネスに指示する。 ジルに電話をしたクライヴは、”A・ホール”は男ではなく”ロイヤル・アルバート・ホール”だったと言って、暗殺はそこで起きるのでその場に向かうよう指示する。 アグネスは電話をするものの、ジルは出かけた後だった。 それを知ったアボットは、クライヴと共に現れた警官に、面倒を起こす酔っ払いだと伝えて、クライヴを逮捕させる。 連れて来られたベティを抱きしめたボブは、涙する彼女を安心させる。 狙撃するタイミングをラモンと確認したアボットは、彼を”ロイヤル・アルバート・ホール”に向かわせようとする。 アボットは、ボブとベティは長い旅に出るとジルに伝えるようラモンに指示する。 ロイヤル・アルバート・ホール。 ラジオで演奏を聴くアボットらは、その時を待つ。 桟敷席の異変に気づき動揺するジルは、思わず叫び声をあげる。 反対側の桟敷席にいた外交官ルーパは銃弾を受け、その場は騒然となる。 ジルから犯人のラモンのことを知らされた警官は、逃げた彼を追う。 アボットの元に戻ったラモンは、ルーパが肩に軽傷負っただけであることをラジオ放送で知る。 ラモンから、ジルが叫んだせいだと言われたアボットは、尾行されていないことを彼に確認する。 しかし、建物が警官に囲まれていることを知ったアボットは、手下に見張らせる。 一人の警官が射殺されて銃撃戦となり、その場に到着したジルは、ベティが建物内にいないことを願う。 武器が用意されて狙撃隊も配備され、付近の建物の住民は避難する。 警官隊は建物に突入するが、内部の扉は壊せなかった。 何とか脱出したボブはベティの部屋に向かい、怯える彼女を抱きしめる。 弾薬を運んだアグネスは、もうごめんだと言って手を引こうとするラモンに銃を向けて、尾行された彼を責める。 警官隊の銃弾を受けたアグネスは息を引き取り、窓際に向かったアボットは応戦する。 アボットから、ベティを連れてくるようにと言われたラモンは、逃げようとするボブを銃撃する。 窓から屋根に逃げたベティを追うラモンは、彼女を追い詰める。 ラモンを撃つよう命ぜられて狙撃手が、ベティに当たる可能性があると言うため、ジルが銃を手にする。 ベティに近づくラモンは、ジルに射殺されて屋根から落下する。 警官隊は建物内に押し入り、無事だったボブは声をかけられる。 懐中時計の音がしたため、警官はドアに向かって発砲する。 ドアの裏に隠れていたアボットは、撃たれたアボットは息絶える。 助けられたベティは、ボブとジルに抱きしめられる。
...全てを見る(結末あり)
事件について沈黙を守っていたボブは、話を聞きに来た警部から、誘拐ではないかと言われて動揺する。
”G・バーバー”という歯医者を見つけたボブは、クライヴに診察を受けさせる。
ラモンから、ベティに渡したブローチを受け取ったジルは、演奏が始まった会場内を監視する。
★ヒッチコック登場場面
上映から約33分、主人公が犯人を追う通りで、バスが通過する時に黒いトレンチコートを着て道路を横断する男性がヒッチコックなのだが、彼だと確認することはほぼ不可能だ。
*(簡略ストー リー)
スイス、サンモリッツ。
旅行中のイギリス人ボブ・ローレンスと妻ジルは、友人のルイが殺される事件に巻き込まれる。
ルイの言い残した言葉に従い、彼の部屋であるメモを見つけたボブは、娘のベティが誘拐されたことを知り、何も話すなという伝言を受け取る。
ロンドンに戻っても事件について沈黙するボブは、外務省の秘書官ギブソンから、ルイが特殊任務を受けた同僚であり、亡国の政治家暗殺計画に気づいたために殺されたことを知る。
犯人からの電話を逆探知したギブソンは、警察の出動を要請し、ボブは友人クライヴの協力を得て、ベティを捜そうとするのだが・・・。
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アルフレッド・ヒッチコックによるサスペンスの傑作「知りすぎていた男」(1956)のオリジナル作品。
両作は大筋では似ているが、本作は、犯人が立て籠もった建物で警察との激しい銃撃戦が繰り広げられる終盤にかなりの重点が置かれている。
*1911年にイーストエンド・オブ・ロンドンで実際に起きた、”シドニー・ストリートの包囲”がモデル。
国際犯罪が絡む殺人事件を描く内容にも拘らず、ユーモラスなセリフやシーンを随所に挿入して観客を惹きつける、若きヒッチコックの才能を十分に楽しめる。
これは、「知りすぎていた男」(1956)にも継承されている。
冒頭で主人公の妻が射撃の名手だということが紹介され、クライマックスでは、娘を救おうとする母親が、狙撃手のライフルを手にして犯人を射殺するという、奇抜なアイデアと演出も驚きだ。
見せ場である”ロイヤル・アルバート・ホール”で演奏される、アーサー・ベンジャミン作曲の”Storm Clouds Cantata”は、「知りすぎていた男」(1956)でも使われた。
国際的暗殺事件に巻き込まれ、誘拐された娘を救おうとするレスリー・バンクス、その妻で射撃の名手でもある、当時のハーバート・マーシャル夫人エドナ・ベスト、犯罪組織のリーダーを異様な雰囲気で怪演するピーター・ローレ、その仲間である狙撃手フランク・ヴォスパー、主人公に協力する友人ヒュー・ウェイクフィールド、誘拐される主人公の娘ノヴァ・ピルビーム、主人公の友人であり殺される工作員ピエール・フレスネー、犯罪組織の一員であるシセリー・オーツ、D・A・クラーク・スミス、外務省の秘書官ジョージ・カーゾンなどが共演している。