ユージン・オニールの戯曲を基に製作された作品。 第二次世界大戦下、西インド諸島からイングランドに向かう貨物船乗組員の航海を描く、製作、監督ジョン・フォード、主演ジョン・ウェイン、トーマス・ミッチェル、イアン・ハンター、バリー・フィッツジェラルド、ジョン・クォーレン、ワード・ボンド、アーサー・シールズ、ミルドレッド・ナトウィック他共演のドラマ。 |
・ドラマ
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■ スタッフ キャスト ■
監督:ジョン・フォード
製作
ジョン・フォード
ウォルター・ウェンジャー(クレジットなし)
原作:ユージン・オニール
”The Moon of the Caribbees, In the Zone, Bound East for Cardiff, and The Long Voyage Home”(戯曲)
脚本:ダドリー・ニコルズ
撮影:グレッグ・トーランド
編集:シャーマン・トッド
音楽:リチャード・ヘイグマン
出演
”オリー”オルセン:ジョン・ウェイン
ドリスコル:トーマス・ミッチェル
スミティ:イアン・ハンター
コーキー:バリー・フィッツジェラルド
船長:ウィルフリッド・ローソン
アクセル:ジョン・クォーレン
フリーダ:ミルドレッド・ナトウィック
ヤンク:ワード・ボンド
ドンキーマン:アーサー・シールズ
デイヴィス:ジョセフ・ソーヤー
ニック:J・M・ケリガン
ベラ:ラファエラ・オッティアーノ
スペイン人娘:カルメン・モラレス
ジョニー:ジャック・ペニック
パディ:ボブ・E・ペリー
ノルウェー:コンスタント・フレンケ
スコッティ:デビッド・ヒューズ
ビッグ・フランク:コンスタンティン・ロマノフ
ティム:ダン・ボーゼイ
マックス:ハリー・テンブルック
一等航海士:シリル・マクラグレン
二等航海士:ダグラス・ウォルトン
ジョー:ビリー・ビーヴァン
アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1940年製作 105分
公開
北米:1940年10月8日
日本:1949年5月20日
製作費 $682,495
■ アカデミー賞 ■
第13回アカデミー賞
・ノミネート
作品・脚色・撮影(白黒)・編集・特殊効果・作曲賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
第二次世界大戦下。
イギリスの不定期貨物船”グレンケアン”は、西インド諸島からボルチモアを経由しイングランドに向かう予定だった。
スウェーデン人の”オリー”オルセン(ジョン・ウェイン)、ヤンク(ワード・ボンド)、デイヴィス(ジョセフ・ソーヤー)は、停泊中の船の甲板から陸を見つめていた。
陸からの連絡を受けた船長(ウィルフリッド・ローソン)は、下船した者がいなか水夫部屋で点呼を始める。
オウムを飼うオリーなどがいることを確認した船長は、アクセル(ジョン・クォーレン)のベッドの下の、アイルランド人古参水夫ドリスコル(トーマス・ミッチェル)がいないことに気づく。
船員1人が警察に連行されたことを皆に話した船長は、それがドリスコルだと考える。 ボートで戻ったドリスコルは、甲板でうたた寝していたと伝える。 警官があごを砕かれたと話す船長は、ドリスコルの手を調べ、傷がないことを確認してその場を去る。 陸での揉め事を皆に話したドリスコルは、女たちがもうじき船に来ることを伝える。 しばらくすると、ベラ(ラファエラ・オッティアーノ)が女たちを連れて現れ、船長は彼女らの乗船を許可し、ドリスコルがすべてを任される。 果物カゴを持参した女たちは、その中に酒を隠してあり、イギリス人のスミティ(イアン・ハンター)は女(カルメン・モラレス)から酒瓶を受け取り、ドンキーマン(アーサー・シールズ)がその栓を開ける。 神経質で常に考え込んでいるスミティのことが気になるドンキーマンは、女絡みの悩みか陸に未練があると考える。 スミティは、自分のことを詮索するドンキーマンと話をする気にならない。 甲板で楽しんでいたドリスコルらは、乗務員のコッキー(バリー・フィッツジェラルド)がからかわれたことをきっかけに、喧嘩を始める。 騒ぎになり、ジョニー(ジャック・ペニック)が船員に怪我をさせてしまい、甲板に現れた船長はその場を鎮め、女たちに報酬も払わず追い払ってしまう。 その後、出港した船はボルチモアに到着し、故郷のストックホルムに戻るオリーが、元の農夫になることが仲間たちの間で話題になる。 船長の話を聞いてしまったコーキーは、積み込まれた荷物が高性能爆弾であることを知り、それをオリーらに伝える。 船員を集めた船長は、報酬の増額を伝えて、この任務が自分の支配下にはないことを話し、船を離れることを禁ずる。 その理由をスミティから訊かれた船長は、積荷のことが漏れては困ると答え、それ以上の意見を聞こうとしない。 その夜スミティは、荷物から小箱を取り出し、出港する船から降りてしまうものの、すぐに捕らえられて連れ戻される。 船は出港してイングランドを目指し、その後、穏やかな航行が続く。 その後、嵐となり、食事中に大きな音がしたため、ヤンクは錨が外れたと考え、危険を承知で外に出る。 ドリスコルらもその場に向かい、甲板で倒れているヤンクを助けて部屋に連れ戻す。 ヤンクは肋骨が肺に刺さる重傷を負い、二等航海士(ダグラス・ウォルトン)から対処を求められた船長は、どうすることもできないと言って、一等航海士(シリル・マクラグレン)を呼ぶよう指示する。 回復していると話しかけながらヤンクを励ますドリスコルは、ウソだと気づいている死を覚悟する彼から、そばにいてほしいと言われ、見張りに向かわずに看病しようとする。 様子を見に来た船長は、薬を探してみるとドリスコルに伝えて、ヤンクに声をかけてその場を去る。 一緒に世界を回った話を始めたヤンクは、ドリスコルやオリーに見守られながら息を引き取る。 船長から渡された薬を持ってきたアクセルは、手遅れだったことを知り愕然とする。 その後、甲板でヤンクの葬儀が行われ、遺体は水葬される。 戦闘海域が近づき、潜水艦の攻撃が心配され、船長は船内の光が漏れないように、窓にペンキを塗ることを指示する。 コーキーは、パリにいるドイツのスパイが、スイスの女スパイを通して暗号の手紙を送っていたという話を皆にする。 ドンキーマンは、常に何かに怯えるスミティに、自分はいつも一緒だと言って安心させようとする。 船長室に隠してあった酒を飲んだスミティは、現れたコーキーに、船長が双眼鏡を忘れたので捜していたと伝える。 スミティはその場を去り、コーキーは、彼が、その場にあった国際暗号表を見ていたと思い込む。 その夜スミティは、空になった酒瓶を窓から捨てる。 見張りをしていたアクセルは、窓から光が漏れたことに気づき、それが潜水艦への信号だと考える。 スミティが小箱に何かを入れるのを目撃したデイヴィスは、コーキーから、スミティが暗号表を見ていたことを知らされる。 アクセルと見張りを代わったオリーは、光が点滅するのを目撃したと言われるものの気にしなかった。 ドリスコルも部屋に戻り、アクセルは、スミティの窓から光が漏れていたことを皆に話す。 スミティを疑うデイヴィスの話を聞いたドリスコルは、海図室で針路を確認していたと言われ、コーキーからは、暗号表を見ていたことを知らされる。 スミティのベッドにあった小箱を調べたドリスコルは、イギリス人である彼を疑う気になれないが、コーキーとデイヴィスから、完璧なスパイである可能性を指摘される。 心も閉ざしているスミティの、”スミス”という名前も気になるデイヴィスは、ドイツ人の”シュミット”だと言い張る。 ドリスコルは、小箱が爆弾だと考えられるために、バケツの水に浸けてしまう。 見張りのスミティを捕らえ、抵抗する彼を黙らせて鍵を奪ったドリスコルらは、小箱を開けて中身を確認する。 手紙の束を解いたドリスコルは、怪しい内容を読んでみる。 船に直接届いた手紙を不思議に思うドリスコルは、それが妻からの手紙だということを知る。 国王から勲章を授与された身でありながら、スミティがアルコール依存症でイギリス海軍を不名誉除隊になったことが明らかになり、ドリスコルは手紙を読んだことを後悔する。 スミティが心を閉ざし悩んでいた理由が分かったドリスコルは、彼を疑った者たちを非難する。 甲板に戻ったスミティは、オリーに声をかけられて返事をする。 翌日、船は敵機の攻撃を受け、スミティは銃弾を浴びて死亡する。 イングランドに帰港した船から下ろされたスミティの遺体は、妻と子供たちに引き取られ故郷に戻る。 残りの乗組員たちは、グレンケアンの次の航海の契約のことを考えながら下船する。 オリーは、10年ぶりにスウェーデンの家族の元に帰るつもりだった。 船員斡旋業者のニック(J・M・ケリガン)に話しかけられたドリスコルらは、酒場を紹介されるものの、オリーを船に乗せるまでは飲まないことにする。 アミンドラの船員にも声をかけられたドリスコルは、悪名高き奴隷船だと言って無視する。 ニックはアミンドラの船員に合図し、ドリスコルらを追う。 オリーの乗船券を手に入れたドリスコルは、ついてきたニックからジョー(ビリー・ビーヴァン)の酒場を紹介される。 オリーが乗船するまで飲む気はなかったドリスコルらだったが、オリーの門出を祝い、スミティとヤンクを偲ぶことにして酒場に向かう。 酒を飲まないために外で待っていたオリーは、酒場から出てきたドリスコルらと共に船に向かう。 アイルランドの曲が流れる酒場に入ろうとしたドリスコルは、出征者専用だったために断られ、ニックに誘われてジョーの酒場に向かうことになる。 店に案内されたドリスコルは、5~6年前にジョーに金を盗まれたことを思い出し、騙したらただではすまさないと言って、彼を脅して皆で飲み始める。 オリーは、船に乗り遅れたくないために、楽しむ気にはなれない。 ジョーと組んでいたニックは、店にフリーダ(ミルドレッド・ナトウィック)らを呼び、ドリスコルは彼女らを歓迎する。 皆は騒ぎ始め、アクセルに別れを告げたオリーは、独りで船に向かおうとするが、フリーダに呼び止められて戻る。 ニックはドリスコルらを奥の部屋に誘い、フリーダと話をしたオリーは、上着に金を隠してあることを彼女に教えてしまう。 アルコール度が低いジンジャービールを飲んだオリーは、騙されて酒を飲まされていることに気づかない。 酔ったオリーは気を失ってしまい、現れた2人の男が彼を連れ去る。 戻ったドリスコルらは、オリーが船に向かったことを知り寂しく思う。 意識がないオリーは、アミンドラに連れて行かれる。 見送りはできると考えたドリスコルは、ジョーを殴り倒して皆と共にオリーを追う。 フリーダは、まじめな好青年のオリーを騙したことを後悔する。 ドリスコルらは途中でニックに出くわし、オリーのオウムのカゴを持っていたために、彼に襲いかかり追及する。 オリーがアミンドラに乗せられたことに気づいたドリスコルらは、出港しようとする船に乗り込む男たちと格闘になり叩きのめす。 アクセルらがオリーを助け出すものの、ドリスコルはこん棒を投げつけられて意識を失う。 アミンドラは出航し、ドリスコルは始末される。 アクセルは、戻らないドリスコルのことが気になる。 翌日、仲間たちとグレンケアンに戻ったアクセルは、ドンキーマンからオリーのことを訊かれ、ストックホルムの故郷に戻ったと伝える。 ドリスコルのことを訊かれたアクセルは、アミンドラに乗って行ってしまったとドンキーマンに伝える。 ドンキーマンが海に捨てた新聞には、アミンドラが撃沈されたことが書かれていた。 オリーは故郷に戻り、ドリスコルは命を落とし、ヤンクとスミティは思い出を抱きながら逝き、他の乗組員の果てなき航海は続く。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストーリー)
第二次世界大戦下。
イギリスの不定期貨物船”グレンケアン”は、西インド諸島からボルチモアを経由しイングランドに向かう予定だった。
航海後に故郷スウェーデンに戻るつもりのオリー、アイルランド人の古参水夫ドリスコル、悩みを抱えるイギリス人スミティ、乗務員のコーキーら船員は、途中で高性能爆弾を積み込んだことを知りながら、戦闘海域の航海を続けるのだが・・・。
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ユージン・オニールの戯曲”The Moon of the Caribbees, In the Zone, Bound East for Cardiff, and The Long Voyage Home”を基に製作された作品。
原作は第一次大戦時に書かれたものだが、本作の設定は第二次大戦時に設定され、ナチス・ドイツがポーランドに侵攻した7か月後の時期に撮影が行われた。
もちろんアメリカはまだ参戦していない。
第二次世界大戦下、西インド諸島からイングランドに向かう貨物船乗組員の航海を描くドラマ。
戦争時に洋上で逞しく生きる男たちを描く作品ではあるが、暗い雰囲気がイメージとして先行し、一般受けする内容でなかったために、興行的には成功しなかった作品。
しかし、陰湿な雰囲気の中に”美しさ”を感じさせながら、人間の欠点や弱さ、優しさ思いやりなどを繊細に描くジョン・フォードの演出は見事だ。
また、終盤の上陸時、詐欺師らに騙されそうになる船員たちが起こす派手な騒ぎは、いかにも彼らしい演出であり、ファンを楽しませてくれる。
第13回アカデミー賞では受賞は逃すものの、作品、脚色、撮影(白黒)、編集、特殊効果、作曲賞にノミネートされた。
ジョン・フォードは監督賞にノミネートされなかったものの、同年の「怒りの葡萄」(1940)で監督賞を受賞した。
その後のジョン・フォード作品、「ドノバン珊瑚礁」(1963)でもアレンジされる、リチャード・ヘイグマンの美しいメロディも印象に残る。
故郷に戻るスウェーデン人青年を演ずる、ファーストクレジットのジョン・ウェインなのだが、個性派ぞろいの”ジョン・フォード一家”の面々に支えられているという感じであり、演技自体は控えめだ。
前年の「駅馬車」(1939)で期待に応えたため、ジョン・フォードに気に入られている存在であることが確認できる作品。
小柄ではあるが、リーダー格の船員を豪快に演ずるトーマス・ミッチェル、アルコール依存症で海軍を追放された過去があり苦悩するイアン・ハンター、船の乗務員バリー・フィッツジェラルド、船長のウィルフリッド・ローソン、船員のジョン・クォーレン、終盤で船員を騙す酒場の女ミルドレッド・ナトウィック、事故で命を落とす船員のワード・ボンド、同じく船員のアーサー・シールズ、ジョセフ・ソーヤー、ジャック・ペニック、ボブ・E・ペリー、ハリー・テンブルック、一等航海士のシリル・マクラグレン、二等航海士のダグラス・ウォルトン、終盤で船員たちを騙す男J・M・ケリガン、彼と組む酒場の主人ビリー・ビーヴァン、船に乗船する女ラファエラ・オッティアーノとカルメン・モラレスなどが共演している。