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透明人間 The Invisible Man (1933)

1897年に発表された、H・G・ウェルズの小説”透明人間”を基に製作された作品。
新薬を発明し透明人間になった化学者が巻き起こす騒動と恐怖を描く、製作カール・レムリJr.、監督ジェームズ・ホエール、主演クロード・レインズウィリアム・ハリガングロリア・スチュアートヘンリー・トラヴァース他共演のホラー映画の傑作。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


スリラー/ホラー


スタッフ キャスト
監督:ジェームズ・ホエール

製作:カール・レムリJr.
原作:H・G・ウェルズ透明人間
脚本:R・C・シェリフ
撮影:アーサー・エディソン
編集:テッド・J・ケント
音楽:ハインツ・レームヘルド

出演
ジャック・グリフィン博士/透明人間:クロード・レインズ
アーサー・ケンプ博士:ウィリアム・ハリガン
フローラ・クランリー:グロリア・スチュアート
クランリー博士:ヘンリー・トラヴァース
ジェニー・ホール:ウナ・オコナー
ハーバート・ホール:フォレスター・ハーヴェイ
主任刑事:ダドリー・ディグス
バード警部:ハリー・スタッブス
ジェファーズ巡査:E. E.クライヴ
記者:ドワイト・フライ
自転車を盗まれる男:ウォルター・ブレナン
情報提供者:ピーター・リッチモンド/ジョン・キャラダイン

アメリカ 映画
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ
1933年製作 71分
公開
北米:1933年11月13日
日本:1934年3月
製作費 $328,030
世界 $26,744


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー
イングランドウェスト・サセックスアイピング
吹雪の中、顔に包帯を巻いた異様な男(クロード・レインズ)が、酒場”ライオンズ・ヘッド”に現れる。

男から部屋を借りたいと言われた店主のハーバート・ホール(フォレスター・ハーヴェイ)は、妻のジェニー(ウナ・オコナー)に用意をさせようとする。

宿屋は夏場だけで今はシーズンオフだと言われるものの、部屋を貸してもらえることになった男は、案内してくれたジェニーに、駅の荷物を届けてほしいと伝える。

長期滞在だと言う男は、荷物を今日中に運ぶことは無理だということを確認し、ジェニーに食事の準備をしてもらう。

異様な雰囲気の男を脱獄犯だと思う客もいて、用心するように言われたハーバートは金を隠す。

食事を運んだジェニーは、ドアの鍵のことを訊かれてないと答える。

マスタードを忘れたために部屋に向かったジェニーは、顔中に包帯を巻いた男の姿を見て驚き、店に戻り、それをハーバートらに伝えて、男が大変な事故に遭ったと考える。

化学者のクランリー博士(ヘンリー・トラヴァース)は、娘のフローラが、姿を消した恋人である助手のジャック・グリフィン博士(クロード・レインズ)のことを心配するために、そのうち戻ると言って安心させる。
...全てを見る(結末あり)

いなくなって1か月が経ったと言うフローラにクランリーは、暫く連絡しないというメモがあり、困難な実験の後は休養が必要だと伝える。

何の実験だったのか訊かれたクランリーは知らないと答え、フローラは、グリフィンがトラブルに巻き込まれた可能性を考える。

クランリーの助手のアーサー・ケンプ博士(ウィリアム・ハリガン)は、フローラが同僚のグリフィンのことを心配していることを知り、気晴らしに彼女をドライブに誘う。

ケンプは、手掛かりを探そうとするフローラに、自分たちは地味な実験をしていたにも拘わらず、グリフィンは秘密の実験をしていたことを伝える。

グリフィンは実験のことしか考えていないと言うケンプは、惹かれていた自分の気持ちをフローラに伝えるものの、彼女は泣き崩れてしまう。

荷物が部屋に運び込まれ実験を始めた男/グリフィンは、元の姿に戻る方法を考える。

グリフィンに食事を運んだにも拘らず追い払われたジェニーは憤慨し、直ぐに追い出すようハーバートに指示する。

溜まっている宿代をグリフィンに請求して追い出そうとしたハーバートは、静かに実験をさせてほしいと言う彼の話を聞こうとしない。

実験道具を片付け始めたハーバートに襲い掛かったグリフィンは、彼を階段から突き落とす。

それを知ったジェニーは取り乱し、客達は通りにいたジェファーズ巡査(E. E.クライヴ)にそのことを話す。

現れたジェファーズから連行すると言われたグリフィンは憤慨し、正体を教えると言って顔の包帯を外す。

グリフィンが顔が見えない透明人間だったために驚いたジェファーズらは、その場から逃げる。

グリフィンは透明人間なので、服を脱げば捕まえることができないと言うジェファーズは、再び彼の部屋に向かう。

シャツだけの状態になっていたグリフィンを捕えられないジェファーズは、姿が完全に消えた彼から、どんな悪事でもできると言われる。

ジェファーズの首を絞めたグリフィンは、その場にいた男を殴り倒し、階段を下りて店に向かい外に出る。

男(ウォルター・ブレナン)の自転車を盗み、老人の帽子を取って池に投げ込み、ベビーカーを倒し商店のウインドウに石を投げたグリフィンは、人々を怖がらせる。

上司のバード警部(ハリー・スタッブス)に電話をしても透明人間のことを信じてもらえないジェファーズは、ハーバートに話をさせる。

ケンプと共に手がかりを探そうとしたクランリーは、焼却炉の資料の燃えカスしか見つからず、実験道具もなくなっていた。

薬品リストを見つけたクランリーは、”モノカイン”という薬品が気になり、インド産の花からとれる薬で、触れると色が消えることをケンプに伝える。

犬の実験に使われたと言うクランリーは、注射された犬は大理石のように真っ白になり精神が錯乱したと話す。

グリフィンが使っていなければいいと考えるクランリーは、彼は薬の作用を知らないはずだとケンプに伝える。

クランリーは、警察に失踪届を出すしかないと考える。

帰宅してくつろぎラジオを聴いていたケンプは、アイピングで起きた透明人間の事件を知り驚く。

その場に忍び込んだグリフィンの声が聞こえたケンプは動揺する。

暖炉の前で揺り椅子に座りタバコを吸い始めたグリフィンは、包帯とサングラスそれにパジャマとガウンと手袋を用意するようケンプに指示する。

それを用意し、グリフィンから逃げるなと言われたケンプは、警察に通報しようとするものの思い留まる。

捜査を終えたバードはライオンズ・ヘッドに向かい、透明人間など存在しないと言って、騒ぎを店の宣伝に使ったと思われるハーバートを非難する。

商売のために怪我までするはずがないと反論するハーバートと客達を、バードは尋問しようとする。

顔に包帯を巻きサングラスをかけてケンプと話したグリフィンは、姿を消す実験には成功し、ある村で解毒剤を完成させようとしたものの、邪魔をされたことを話す。

世紀の発見をしたかった実験は予想を超える成果を得て、世界を支配できるパワーを感じ始めたと話すグリフィンは、パートナーとして選んだことをケンプに伝える。

殺人や破壊工作を計画するグリフィンは、怯えるケンプを脅して車の用意をさせる。

アイピングに向かい、実験内容を記したノートを取りに行くと言うグリフィンは、ケンプに準備をさせる。

包帯を外し衣服を脱ぎ透明になったグリフィンは、車に乗り毛布に包まり、ケンプの運転でアイピングに向かう。

その頃バードは、帽子を飛ばされた老人や自転車を奪われた男から話を聞いていた。

アイピング。
車を止めさせたグリフィンはケンプと共に店に向かい、ノートを受け取る準備をさせる。

入り口から店に入ったグリフィンは、気づかれることなく二階に向かい、ノートを集めて窓から落としケンプに渡す。

証言した者の話をまったく信じないバードだったが、透明人間が現れたことに気づいたジェニーが騒ぎ始める。

その場は混乱して人々は店から逃れ、バードに襲い掛かったグリフィンは彼を殺す。

ケンプと共に車に乗って走り去るグリフィンは、警官を殺したことを伝える。

警察に向かったクランリーは、透明人間が警官を殺したという新聞記事を確認する。

家に戻りケンプに今後の指示を与えたグリフィンは、食事を済ませて眠る。

捜査の指揮を執る主任刑事(ダドリー・ディグス)は部下に指示を出し、有志を含め1万人を超える大規模な捜査を始める。

透明人間のことは周辺市民に知らされ、警戒態勢に入る。

クランリーに電話をしたケンプは、グリフィンが透明人間であることを伝える。

フローラから説明を求められたクランリーは、ケンプの家に居るグリフィンが透明人間であることを伝える。

懸賞金目当ての情報提供者(ピーター・リッチモンド/ジョン・キャラダイン)は、透明人間を捕える方法を警察に提案する。

警察に通報したケンプだったが、直ぐには対応できないと言われる。

クランリーはグリフィンを元に戻す方法を考え、フローラは、危険を承知で彼の元に向かい説得しようとする。

起きて来たグリフィンは車が止まったことに気づき、ケンプが警察に通報したと思うものの、現れたのはクランリーとフローラだった。

ケンプから、フローラが心配していたので連絡したと言われたグリフィンは、彼女のことは忘れていたと伝えて、支度をして会おうとする。

ケンプはクランリーとフローラを招き入れ、彼女はグリフィンの元に向かう。

グリフィンが眠っている間に麻酔をかけて警察に通報することを、ケンプはクランリーに提案する。

フローラとの再会を喜ぶグリフィンは助けたいと言われ、大発見をして富と名誉を得て、歴史に名を残したかったと伝える。

元に戻る方法を必ず見つけるとフローラに伝えたて興奮するグリフィンは、父クランリーが協力すると言われるものの、彼のことを侮辱する。

クランリーはモノカインのことを知っていると言うフローラは、それが性格を変えてしまったとグリフィンに伝える。

それを調べれば元に戻れれると言うフローラの言葉に耳を貸さないグリフィンは、どんな悪事でも可能であり世界を支配できると彼女に伝える。

警官隊に包囲されたことに気づいたグリフィンは、フローラを部屋から出し対抗しようとする。

姿を消したグリフィンは、裏切ったケンプに、明日の夜10時に必ず殺しに来ると伝えて家を出る。

警官をからかいながら、グリフィンはその場から逃げる。

クランリーとフローラは警官に尋問され、怯えるケンプは、クランリーの助手グリフィンが透明人間だと話してしまう。

ケンプ家の件の報告を受けた主任刑事は、効果的な案に1000ポンド出すよう指示する。

捜索が行われる中、何人かはグリフィンに殺され、列車の脱線事故も起きる。

グリフィンは、銀行の金を奪い通りにばら撒き人々を混乱させる。

捜査は10万人規模となり、有効策の提案者には2000ポンドが払われることになる。

必ず殺しに来ると言われたケンプは、グリフィンを捕える警察のおとりになることを拒む。

主任刑事から、協力を拒むのなら別の場所に移動するようにと言われたケンプは、警官に扮して警察署を離れることになる。

警官に扮して家に戻ったケンプは、車で山中に向かう。

その車に乗っていたグリフィンは、予告した10時になり、ケンプに襲い掛かり拘束し、彼を車に乗せて崖から落とす。

その後、ある農夫は、納屋のワラの中のいびきに気づき透明人間だと思い、警察に向かいそれを伝える。

雪が降る中、納屋を包囲した主任刑事は火を放つよう指示する。

納屋から出てきたグリフィンの足跡に向かい発砲した主任刑事は、倒れている彼を確認する。

病院に運ばれたグリフィンが助からないことを主任刑事に伝えた医師は、フローラの名を呼んでいることをクランリーに知らせる。

医師から助からないことを知らされたクランリーは、死ねば薬の効果が切れて姿が現れるだろうと言われる。

寄り添うフローラに、計画が失敗したことを謝罪したグリフィンは、神の領域に踏み込んでしまったことを後悔する。

フローラとクランリーに見守られながら息を引き取ったグリフィンは、やがて姿を現す。


解説 評価 感想

*(簡略ストー リー)
イングランドウェスト・サセックスアイピング
新薬を発明した化学者のジャック・グリフィン博士は、それにより透明人間になってしまう。
宿屋の部屋を借りたグリフィンは、元に戻る方法を見つけるために実験を始めるものの邪魔をされてしまい、誰にも見えない姿で騒動を起こす。
グリフィンの恩師である化学者のクランリーは、娘のフローラが、恋人であるグリフィンが消息不明となったために心配することが気になる。
怪我人や死亡者も出す事件を起こし、警察に追われるグリフィンは、同僚のケンプ博士の家に向かい、彼をパートナーにして世界を支配する計画を話すのだが・・・。
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H・G・ウェルズの小説”透明人間”を基に、「フランケンシュタイン」(1931)などで知られるジェームズ・ホエールが、同作でも組んだカール・レムリJr.の製作で演出したホラー映画の傑作。

平凡な化学者が、世紀の発明の結果”透明人間”となり、性格まで変貌して世界支配まで考える”モンスター”と化す姿は恐ろしい。

そんな物語の中で、透明化した主人公が人々をからかう様子などがユーモラスに描かれ、恐怖描写と共に絶妙の演出で観客を楽しませてくれる。

上記の「フランケンシュタイン」(1931)にも通じる、世間から疎外される存在となった主人公の悲哀なども描かれ、それが物語のテーマともなっている。

当時の技術を考えると、透明人間を映し出す見事な特撮は必見だ。

2008年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。

主演のクロード・レインズは、狂人と化した透明人間である化学者を熱演し、その姿はラストでしか登場しないことに注目。

主人公の同僚である化学者であり、協力を拒み殺されるウィリアム・ハリガン、主人公の身を案ずる恋人のグロリア・スチュアートタイタニック/1997出演で知られる)、その父親である化学者で主人公の恩師ヘンリー・トラヴァース、宿屋の主人フォレスター・ハーヴェイ、その妻ウナ・オコナー、捜査を指揮する主任刑事のダドリー・ディグス、主人公に殺される警部のハリー・スタッブス、その部下である巡査のE. E.クライヴ、記者のドワイト・フライ、自転車を盗まれる男のウォルター・ブレナン、情報提供者でピーター・リッチモンドとして配役されたジョン・キャラダインなど、後に活躍する名優の端役出演も見逃せない。


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