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悪い種子 The Bad Seed (1956)

1954年に発表された、ウィリアム・マーチの小説”The Bad Seed”を基にしたマクスウェル・アンダーソンの”同名戯曲”の映画化。
娘が殺人者の血筋を受け継いだことを知った母親の苦悩を描く、製作、監督マーヴィン・ルロイ、主演ナンシー・ケリーパティ・マコーマックヘンリー・ジョーンズアイリーン・ヘッカートイヴリン・ヴァーデンウィリアム・ホッパーポール・フィックス他共演の心理スリラー。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


スリラー/ホラー


スタッフ キャスト
監督:マーヴィン・ルロイ

製作:マーヴィン・ルロイ
原作
ウィリアム・マーチThe Bad Seed
マクスウェル・アンダーソンThe Bad Seed”(戯曲)
脚本:ジョン・リー・メイヒン
撮影:ハル・ロッソン
編集:ウォーレン・ロー
音楽:アレックス・ノース

出演
クリスティン・ペンマーク:ナンシー・ケリー
ローダ・ペンマーク:パティ・マコーマック
リロイ・ジェサップ:ヘンリー・ジョーンズ
ホーテンス・デイグル:アイリーン・ヘッカート
モニカ・ブリードラヴ:イヴリン・ヴァーデン
ケネス・ペンマーク大佐:ウィリアム・ホッパー
リチャード・ブラボー:ポール・フィックス
エモリー・ウェージズ:ジェシー・ホワイト
レジナルド”レジー”タスカー:ゲージ・クラーク
クラウディア・ファーン:ジョーン・クロイドン
ヘンリー・デイグル:フランク・キャディ
病院の警備員:ドン・C・ハーヴェイ

アメリカ 映画
配給 ワーナー・ブラザーズ
1956年製作 129分
公開
北米:1956年9月12日
日本:1957年4月4日
製作費 $1,000,000


アカデミー賞
第29回アカデミー賞

・ノミネート
主演女優(ナンシー・ケリー
助演女優(パティ・マコーマック
助演女優(アイリーン・ヘッカート
撮影賞(白黒)


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー
ケネス・ペンマーク大佐(ウィリアム・ホッパー)と妻クリスティン(ナンシー・ケリー)は、8歳の娘ローダ(パティ・マコーマック)を溺愛していた。

出張でワシントンD.C.に向かうケネスは、アパートの大屋で親友でもあるモニカ・ブリードラヴ(イヴリン・ヴァーデン)に2人のことを任せ、ローダとクリスティンに別れを告げて出かける。

ローダは、モニカからサングラスとロケットをプレゼントしてもらい喜ぶ。

そこに、モニカが雇っている風変わりなアパートの管理人リロイ・ジェサップ(ヘンリー・ジョーンズ)が現れ、モニカは、無作法な彼の態度が気になる。

ローダは、学校のペン習字大会で同級生のクロード・デイグルに負けたことを悔しく思い、それをモニカに話す。

モニカは、ローダをからかうリロイを叱るものの、クリスティンは気にしなかった。

クリスティンはローダと共に、学校の行事のピクニックが行われている湖に向かう。
...全てを見る(結末あり)

湖に着いたクリスティンは、教師のクラウディア・ファーン(ジョーン・クロイドン)と話をする。

クリスティンは、ローダに子供らしさが欠けていることが気になっていたために、その件などをファーンに尋ねる。

問題ないと言われたクリスティンは、一応納得してアパートに戻る。

その後クリスティンは、モニカの部屋で、彼女の弟エモリー・ウェージズ(ジェシー・ホワイト)とレジナルド”レジー”タスカー(ゲージ・クラーク)と共に昼食をとっていた。

犯罪学者で作家でもあるレジーの話を聞いていたクリスティンは、自分が養子ではないかと思い続けていることを彼に伝える。

モニカは、子供時代によく思うことで、気にすることはないとクリスティンに伝える。

クリスティンは、レジーが口にした連続殺人鬼”ベシー・デンカー”の名前が気になる。

モニカと食事の片づけを始めたクリスティンは、ラジオの緊急ニュースで流れた、小学校のピクニックでの子供の溺死事件を知り動揺する。

クリスティンは、ローダのことを心配して取り乱しそうになり、モニカが彼女を落ち着かせる。

続報が入り、溺死したのがクロードだということを知ったクリスティンは、かつて大好きだった教師の死を目の当たりにした経験があるため、ローダの気持ちを考えると不安だった。

バスで戻って来たローダを迎えたクリスティンは事故の状況を聞き、彼女が冷静に話し動じる様子もないために驚く。

クリスティンとローダに気を遣うリロイは、嫌いだったクロードの死を悲しむ気配もないローダを、いつか怖がらせてやろうと思う。

その後クリスティンは、訪ねて来たファーンと話し、クロードのペン習字大会のメダルが紛失したことを知る。

ローダに挨拶したファーンは、読書をするために庭に向かった彼女を見送る。

ファーンは、メダルのことを知らないと言うローダが、クロードを最後に見た子供だとクリスティンに伝える。

さらにファーンは、ローダが何度もクロードからメダルを奪おうとしていたことも話す。

驚くクリスティンは、湖の警備員がローダを見て注意したことも知る。

ファーンが、ローダがこの件に関係し、何かを隠していると思っているため、クリスティンは、彼女が娘を疑っていることに不快感を示す。

クリスティンは、学校に戻るべきではないと言うファーンから転校を勧められて戸惑う。

そこに、クロードの両親ホーテンス・デイグル(アイリーン・ヘッカート)と夫のヘンリー(フランク・キャディ)が現れる。

酔ったホーテンスは、クリスティンとの身分の違いなどを皮肉を込めて話しながら、メダルのことを話さないファーンが何かを隠していると伝える。

ホーテンスは、最後にクロードを見たローダに話を聞いてほしいと言って、クリスティンに情報を求める。

クリスティンは気遣ってくれるものの、納得いかないホーテンスは取り乱し、無礼を詫びるヘンリーは、妻を連れてその場を去る。

迷惑をかけたことでファーンから謝罪されたクリスティンは、ホーテンスに同情しながら、ローダと話し合い協力することを約束する。

ケネスから事件のことで電話があり、詳しい話をしようとしたクリスティンだったが、愛しているとだけ伝えて電話を切る。

そこにモニカが現れ、ローダにあげたロケットの修理店を見つけたと言われたクリスティンは、ローダの宝箱を見に行く。

ローダの宝箱にクロードのメダルがあったために驚いたクリスティンは、モニカにロケットを渡す。

モニカはその場を去り、メダルを取り出したクリスティンは、庭から戻ったローダに説明を求める。

メダルを見せられたローダは一瞬、驚くものの、クロードから奪おうとしたことの言い訳と、お金を払い貸してもらったと言ってウソをつく。

この件をファームに隠していたことも問われたローダは、彼女に嫌われているとクリスティンに伝える。

悲しんでいる母親ホーテンスに返すべきだと言われたローダは、遺体と共に埋めるのはバカげていると平然と話す。

いつも美しいクリスティンのことを自慢していると言うローダは、子供がほしいだけなら養子をもらえばいいと口にしてしまう。

気にしていたことを言われたクリスティンは動揺し、ローダを非難する。

クリスティンは、以前住んでいた場所で世話になった女性のことを話す。

亡くなったらガラス玉をくれると言っていた女性が、階段から落ちて死んだためにガラス玉を受け取った話をしたクリスティンは、隠していることがないかローダに尋ねる。

クリスティンは、ローダが何も話そうとしないために、学校に電話してファーンを呼ぼうとするものの、彼女は不在だった。

どうすることもできないクリスティンは、ローダを抱きしめるしかなかった。

数日後ローダは、父ケネスからのプレゼントで、ままごと用のティーセットが届いたために喜ぶ。

その後ローダは、自分を嫌うリロイから、事件の件の噂で、クロードを殴った棒の血は水では洗い流せないために、警察に調べられると言われて脅される。

2人に気づいたクリスティンは、ローダと二度と話さないようにと伝えて注意する。

リロイは、いつか必ず生意気なローダを苦しめようと考える。

ローダから、血は水で洗い流せず、特殊な粉を使えば認識できるかと訊かれたクリスティンは、リロイが話したと思う。

それを否定するローダに、レジーなら知っているだろうと答えたクリスティンは、正直な子になるようにと伝える。

訪ねて来たレジーを迎えたクリスティンは、彼にローダを紹介する。

モニカと食事をするローダは、彼女の部屋に向かう。

父リチャード・ブラボー(ポール・フィックス)を歓迎したクリスティンは、同じ作家のレジーを紹介する。

リチャードとレジーの会話を聞いていたクリスティンは、才能や犯罪性は幼児期の環境と血筋で決まるという話の中で、先日、話題になった”ベシー・デンカー”について尋ねる。

デンカーの件を手掛けたリチャードは、その件に触れようとしなかった。

クリスティンはレジーから話を聞き、凶悪犯でありながら罪を逃れたデンカーには娘がいたことなどを知る。

レジーは、クリスティンとリチャードに感謝してその場を去る。

クリスティンは、不安げな顔をしていることを気にするリチャードに、にわか精神科医のような大屋のモニカとの話をきっかけに、あることで悩んでいると伝える。

自分が養子のような気がするとモニカに打ち明けたと話すクリスティンは、その不安が消えないことをリチャードに伝える。

ローダが心配だと言うクリスティンは、リチャードから何が不安だと訊かれ、自分は誰の子かと父に尋ねる。

動揺するリチャードの様子から、自分が養子だと確信したクリスティンは、デンカーの娘だったことを知りショックを受ける。

クリスティンは、自分の出生がローダの社会性の原因であり、彼女の行動は血筋であると考える。

リチャードは、母親とは違う世界に生き、自分たちに幸せを与えてくれたと言ってクリスティンに感謝し、それでも納得しない娘を気遣う。

そこにモニカが現れ、挨拶したリチャードは、孫娘のローダを抱きあげるものの、戸惑いを隠せない。

リチャードは、クリスティンのことを気にしながら、モニカが用意してくれた部屋に向かう。

その後クリスティンは、ローダが部屋から何かを持ち出そうとしていることに気づき、それを追及する。

それが靴だったためにクリスティンは、クロードの額の三日月形の傷が、靴のかかとの金具の痕だと気づき、ローダがそれで彼を殴ったと考える。

それを認めたローダは、クロードがメダルさえくれれば、こんなことにはならなかったと言って泣き崩れる。

ローダが泣いていないことに気づいたクリスティンは、すべてを話すよう彼女に強要する。

ローダはクロードを何度も叩き、助けることもできたのに、告げ口されることを恐れて止めを刺したことを知ったクリスティンは、ショックを受ける。

ローダを見捨てることができないクリスティンは、誰にも話さないことを約束させて、以前の隣人の女性の件を尋ねる。

クリスティンは、ローダがわざと滑って女性を階段から転落させたことを知る。

靴を地下の焼却炉で燃やすよう指示されたローダは、ダストシュートにそれを投げ込む。

翌日ローダは、金具がついた靴を履いていないことを知ったリロイから、棒ではなくそれでクロードを叩いたと言われたために、既に焼却したと伝える。

地下にいて金属の音で気づいたと言うリロイは、靴を証拠として保管してあるとローダに伝える。

靴を返すようにと言われたリロイは、冗談だと思っていたものの、その後もローダがそれにこだわるために不思議に思う。

リロイはからかっていただけだったのだが、ローダが本当にクロードを殴ったと考える。

そこにクリスティンが買い物から戻り、ローダがリロイから靴を取り戻そうとしていることを知る。

リロイは地下室に向かい、クリスティンは、内緒にしておく話だったと言ってローダを責める。

焼却炉を調べたリロイは、靴を確認して恐ろしくなる。

その後ローダは、モニカが直してくれたロケットをはめてもらい、アイスクリーム屋が来たことに気づき、クリスティンの許可を得てバッグからお金を取り出し、外に向かおうとする。

マッチも持って出ようとしたローダは、クリスティンに注意されてそれを戻すものの、数本持ち去る。

モニカから、心配ごとがあるなら話してほしいと言われたクリスティンだったが、悩みを伝えることはできなかった。

そこに酔ったホーテンスが現れ、ローダと話したいと言われたクリステンは、彼女に酒をもてなす。

戻って来たローダと話したホーテンスは、彼女を抱きしめて、クロードとのことを尋ねる。

不安に思ったモニカがローダを部屋から連れ出し、クリスティンは、ホーテンスのことを心配するヘンリーからの電話を受ける。

ホーテンスは、ローダは何かを知っているはずだとクリスティンに伝えるものの、二度と来ないでほしいと言われ、その場を去ろうとする。

クリスティンの顔色が悪いことに気づいたホーテンスは、美容師だったために、自分の店に来るようにと伝える。

ヘンリーが迎えに来たために帰ろうとするホーテンスは、何か隠していると言って、クリスティンを抱きしめてその場を去る。

ケネスに電話をしようとしたクリスティンは、苦しみを説明することができないために電話を切る。

クリスティンの様子を見に来たモニカは、ビタミン剤と睡眠薬を渡す。

誰かが助けを求める叫び声が聴こえて、ローダが部屋に戻ってくる。

ローダが叫び声に気づかないために、不思議に思ったクリスティンとモニカは、地下室に火を放たれたリロイが苦しんでいることに気づく。

リロイはエモリーらに運び出されるものの息を引き取り、動揺するクリスティンは、ローダが弾くピアノの音を気にしながら泣き崩れる。

エモリーから、敷物にタバコの火が燃え移ったことを知らされたクリスティンは、ローダの仕業だと考え、彼女のピアノを止めさせようとして部屋に向かい、興奮して取り乱す。

モニカに制止されたクリスティンは、ローダではなく自分が悪いと言って、彼女をモニカに預けて涙する。

その夜、冷静になったクリスティンは、ローダにメダルを湖に投げ込んだことを伝える。

クリスティンは、ビタミン剤だと言って、ローダに致死量の睡眠薬を飲ませる。

ローダから、マッチを持ち出して、警察に言うと脅したリロイの敷物に火を放ち、戸に鍵をかけたという話を聞いたクリスティンは、眠ろうとする彼女に本を読んであげる。

クリスティンは、眠ったローダを寝室に運び拳銃自殺する。

一命を取り留めたクリスティンは病院に運ばれ、駆け付けたケネスは、2日間、意識不明の彼女のことを心配する。

ケネスはクリスティンの行動が理解できず、付き添っていたリチャードは何も話そうとしない。

モニカから、無事だったローダのことを考えるべきだと言われたケネスは、クリスティンにソックリな娘を抱きしめる。

ケネスは、主治医から、昏睡状態ではあるクリスティンは容態が変わらないため、家で休むようにと言われてそれに従う。

主治医と話したリチャードは、クリスティンがうわ言で何か言わなかったか尋ねる。

”悪い血筋・・・”と言っていたように思えると話す主治医は、小説を書くつもりだったクリスティンが、そんなことを口にしていた記憶があるとリチャードから知らされる。

血筋で犯罪者になる可能性を訊かれた主治医は、それを否定し、そんなことがあれば、誰も子供を持たなくなると言ってリチャードを納得させる。

ローダを寝かせたケネスは、モニカが亡くなればペットのインコがもらえると言う彼女に、まだまだ先の話だと伝える。

ケネスは、明日、屋根の上でモニカと日光浴をすると言うローダの話を聞き、彼女を寝かせて寝室に向かう。

夜中に起きたローダは、ケネスが眠っていることを確認して、雨の中、カッパを着て出かける。

電話で目覚めたケネスは、病院の主治医からの連絡を受け、意識が戻ったクリスティンと話をする。

罪を犯してしまったと話すクリスティンは、償わなければならない、許してほしいとケネスに伝える。

2人で償おうと言われたクリスティンは、ケネスに感謝する。

湖の桟橋に着いたローダは、網を使って水中のメダルを捜す。

その時、落雷がローダを直撃し、彼女は死亡する。
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ペンマーク家の中で、出演者が紹介される。
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クリスティンは、イタズラするローダにお仕置きをする。


解説 評価 感想

*(簡略ストーリー)
クリスティン・ペンマークは、陸軍大佐である夫のケネスと9歳の娘ローダと共に平穏に暮らしていた。
学校の行事のピクニックで、ローダの同級生の少年クロードが溺死する事件が起きる。
クリスティンは、クロードに最後に会ったローダが、彼のペン習字大会のメダルを奪おうとした話を担任のファーンから知らされて動揺する。
その件をローダに追及したクリスティンは、動じることなく平然と話をする彼女の態度が気になる・・・。
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ウィリアム・マーチの小説”The Bad Seed”を基にした、マクスウェル・アンダーソンの大ヒット”同名戯曲”の映画化。

数々の名作を世に残したマーヴィン・ルロイが、製作を兼ねて監督した作品であり、舞台でトニー賞を受賞した主演のナンシー・ケリーをはじめ、主要登場人物が本作にも出演した。

何不自由ない生活を送る家族が、あることをきっかけに、自分が殺人者の血筋であることを知り、死を覚悟するまで苦悩する姿が切実に描かれた心理スリラーの秀作。

主人公の母娘役ナンシー・ケリーパティ・マコーマック、被害者の母親役アイリーン・ヘッカートの鬼気迫る演技は、舞台と共に本作でも絶賛され、第29回アカデミー賞では、主演女優、助演女優賞にそれぞれノミネートされた。
*他ノミネート 撮影賞(白黒)

個人的には、主人公の父親役のポール・フィックスの出演が嬉しい。
彼は、盟友ジョン・ウェイン作品の常連だったことで知られる名バイプレイヤーであり、同年の「ジャイアンツ」(1956)では、エリザベス・テイラーの父親役も演じている。
ウェイン作品では、補佐的に目立ち過ぎないように演技しているのだが、本作では、苦悩する娘を案ずる父親として、存在感のある役柄を見事に演じている。

ペンマーク家の娘を嫌いからかう、風変わりなアパートの管理人ヘンリー・ジョーンズ、彼を雇うアパートの大屋で主人公家族の友人でもあるイヴリン・ヴァーデン、主人公の夫である陸軍大佐ウィリアム・ホッパー、主人公の父親ポール・フィックス、モニカ(イヴリン・ヴァーデン)の弟で主人公の友人ジェシー・ホワイト、犯罪学者のゲージ・クラーク、学校の教師ジョーン・クロイドン、被害者の少年の父親フランク・キャディ、病院の警備員ドン・C・ハーヴェイなどが共演している。


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