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シング・ストリート Sing Street (2016)

1980年代のダブリンを舞台に、ある少女との出会いをきっかけに音楽に目覚める少年の成長を描く、監督、原案、脚本、音楽ジョン・カーニー、主演フェルディア・ウォルシュ=ピーロルーシー・ボイントンジャック・レイナーエイダン・ギレンマリア・ドイル・ケネディ他共演の青春恋愛ドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(青春)


スタッフ キャスト
監督:ジョン・カーニー

製作:アンソニー・ブレグマン
原案
ジョン・カーニー
サイモン・カーモディ
脚本:ジョン・カーニー
撮影:ヤーロン・オーバック
編集
アンドリュー・マーカス
ジュリアン・ウルリッチ
音楽
ゲイリー・クラーク
ジョン・カーニー

出演
コナー”コズモ”ロウラー:フェルディア・ウォルシュ=ピーロ
ラフィーナ:ルーシー・ボイントン
ブレンダン・ロウラー:ジャック・レイナー
ロバート・ロウラー:エイダン・ギレン
ペニー・ロウラー:マリア・ドイル・ケネディ
アン・ロウラー:ケリー・ソーントン
ダーレン・マルヴェイ:ベン・キャロラン
エイモン:マーク・マッケンナ
ンギグ:パーシー・チャンブルカ
ラリー:コナー・ハミルトン
ギャリー:カール・ライス
バリー:イアン・ケニー
ブラザー・バクスター:ドン・ウィチャリー
ミス・ダン:リディア・マクギネス

アイルランド/イギリス/アメリカ 映画
配給
ワインスタイン・カンパニー(北米)
Lionsgate Films(イギリス)
2016年製作 106分
公開
イギリス:2016年5月20日
北米:2016年4月15日
アイルランド:2016年3月17日
日本:2016年7月9日
製作費 $4,000,000
北米興行収入 $3,237,120
世界 $13,624,520


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー
1985年、ダブリン
失業したロバート・ロウラー(エイダン・ギレン)は、妻のペニー(マリア・ドイル・ケネディ)との諍いが絶えず、次男のコナー(フェルディア・ウォルシュ=ピーロ)は両親の不仲が気になる。

不況のためにロンドンに向かう若者が急増し、大学を中退した長男のブレンダン(ジャック・レイナー)、長女のアン(ケリー・ソーントン)そしてコナーを呼んだロバートとペニーは、家族会議を開く。

家計が厳しいことを話すロバートとアンは、生活費を削るために、コナーをカトリック系の公立高校に転校させることにする。

クリスチャン・ブラザース・スクール”シング・ストリート”に転校したコナーは、荒れた校内に戸惑いながら通い始める。
...全てを見る(結末あり)

校長のブラザー・バクスター(ドン・ウィチャリー)が教室に現れたために、騒いでいた生徒は一瞬にして静まり、黒い靴を履いていないコナーは校則違反を指摘される。

不良少年のバリー(イアン・ケニー)に声をかけられたコナーは、トイレに連れて行かれてゲイだと言われて脅される。

家族で”デュラン・デュラン”のMV/ミュージック・ビデオを見ながら話をしたコナーは、彼らに憧れる。

翌朝、バクスターから黒い靴を履いてこなかったことを指摘されたコナーは、校長室に呼ばれて、母には伝えたが今は買う余裕がないと言われたと伝える。

コナーの意見は聞き入れられず、靴を置いて行くようにと指示されたコナーは、靴下のままで食堂に向かう。

いきなりバリーに殴られたコナーは、買ったチョコバーを奪われてしまう。

それを見ていたダーレン・マルヴェイ(ベン・キャロラン)は、バリーに目をつけられ弱みを見せたら1年間いじめられるとコナーに伝える。

対策を教えると言うダーレンは、コナーに名刺を渡す。

毎朝、校門の向かいにいるというラフィーナ(ルーシー・ボイントン)のことをダーレンに尋ねたコナーは、彼女に声をかけて、学校には通わずにモデルをしていることを知る。

ロンドンに行くつもりのラフィーナは、コナーから、自分のバンドのビデオに出ないかと誘われる。

ラフィーナから経験がないと言われたコナーは、プロデューサーに聞くと伝えてダーレンを指差す。

連絡するので電話番号を知りたいとラフィーナに伝えてノートを渡したコナーは、”a-ha”のヒット曲を歌ってほしいと言われる。

コナーが”Take On Me”を歌ったために、ラフィーナは電話番号をノートにメモして渡す。

バンドを組むことをダーレンに伝えたコナーは、楽器の名手であるエイモン(マーク・マッケンナ)の家を訪ねて紹介される。

楽器も揃っているためにバンドに加わることにしたエイモンはギターを担当し、コナーはボーカルでダーレンがマネージャーをすることになる。

ダーレンの意見で黒人を入れることにしたコナーは、学校ではメンバーを募集しながら、黒人少年のンギグ(パーシー・チャンブルカ)のアパートを訪ねる。

キーボードのンギグをメンバーに加えたコナーらは、応募してきたドラムのラリー(コナー・ハミルトン)とベースのギャリー(カール・ライス)をメンバーに入れる。

バンド名を決めようとしたコナーらは、エイモンのアイデアで、学校名”Synge Street”と掛けて”Sing Street/シング・ストリート”にすることで意見が一致する。

曲を録音したコナーは、音楽を愛する兄ブレンダンに聴いてもらうものの、最低だとけなされ、目的がラフィーナなら他人の曲で口説くなと言われる。

コナーはブレンダンに曲作りを教わり、エイモンの協力で書いた詞に曲をつけてもらう。

曲を録音したテープをラフィーナに渡したコナーは、スーパーの裏道でMV撮影することを伝える。

撮影当日、約束の場所に向かったラフィーナは、コナーらの衣裳に驚き、スタイリストとして手を貸してほしいと言われる。

曲が気に入ったので来たと伝えたラフィーナは、コナーらにメイクをして撮影を始めようとする。

そこに現れたバリーは、父親から仲間に加わるようにと言われ、それに逆らったために殴られてその場を去る。

ダーレンがビデオカメラで撮影し、それを終えたコナーは皆と別れ、ラフィーナを自転車で送って行く。

家のことや不仲の両親のことなどを話したコナーは、両親がいないと言うラフィーナとできるだけ長く過ごそうとする。

ラフィーナの家に着いたコナーは、彼女を迎えに来たエヴァンから曲を聴いたと言われ、”デュラン・デュラン”ぽくてよかったと褒められる。

コナーにキスしたラフィーナは、エヴァンの車に乗って去る。

建物のプレートを確認したコナーは、そこが女子児童養護施設であることを知る。

帰宅したコナーはブレンダンにビデオを見てもらい、なかなか良くなったと言われて、ラフィーナがいいので全作品に出すようにと助言される。

ラフィーナのことなどを話していたブレンダンは、両親が言い争いをしている声が聴こえたため、母ペニーが浮気をしているとコナーに伝える。

その後、エイモンの家に向かったコナーは、ブレンダンから渡された”ジョー・ジャクソン”のレコードなどを参考にして曲作りをする。

バンドの演奏は日に日に上達し、コナーが届けてくれたテープを聴いたラフィーナは感激する。

人目を気にせずメイクをして登校するようになったコナーは、バクスターに呼ばれて校長室に向かう。

メイクのことを訊かれたコナーは、靴の色の校則はあるが化粧や髪の色の規定はないと答える。

絵具で塗った靴を見せたコナーは、化粧を落とすようにというバクスターの指示に従わずに教室に戻ろうとする。

憤慨したバクスターはコナーをトイレに連れて行き、彼の顔を水が溜まった洗面台に押し付けて、”ボウイはやめろ”と伝えてその場を去る。

下校しようとしたコナーは、待っていたラフィーナから”コズモ”と呼ばれて公園に誘われる。

いい曲だったので泣けたと言われたコナーは、エヴァンは恋人なのかとラフィーナに尋ねる。

複雑な関係だと答えるラフィーナから、エヴァンとロンドンに行く計画があることを知らされたコナーは、嫉妬しているのかと訊かれる。

コナーの自分に対する気持ちを知ったラフィーナは、楽しい曲も作ってほしいと言って、”悲しみの喜び”を知るのが愛で、喜びと悲しみは同じだと伝える。

両親のことを訊かれたラフィーナは、アル中の父は車に轢かれて亡くなり、母は躁うつ病だと答える。

出発前に撮影するなら知らせてほしいと言うラフィーナは、直ぐに旅立つとコナーに伝えてその場を去る。

ブレンダンと”悲しみの喜び”について話したコナーはラフィーナへの思いを伝えて、”ザ・キュアー”のレコードを渡される。

ポップから方向を変えたコナーは撮影を続け、海に飛び込んだラフィーナから、何でも中途半端はだめだと言われる。

ラフィーナにキスしてしまったコナーは謝罪するが、勇気があると言われる。

コナーがエヴァンのことを口にしたため、ラフィーナは、雰囲気が壊れたと伝える。

沖を指差し、イングランドが見えることがあると話すコナーは、祖父が船乗りだったので、よくこの場に来て釣りをしたとラフィーナに伝えて、ロンドンから手を振ると言われる。

芸術を目指す者は国を出るべきだと考えるブレンダンのことを話題にしたコナーは、ドイツに行きたかった兄が母に見つかり諦めたことをラフィーナに話す。

自分の父も同じで、友達と外出することを許さないのは愛しているからだと言われたことを、ラフィーナはコナーに伝える。

ラフィーナから、親の愛は不思議だと言われたコナーは、帰宅後、自分の人生を犠牲にして生きているような母ペニーについいて、ブレンダンと語り合う。

学校でバリーに絡まれたコナーは彼を相手にせず、”暴力だけで何も生まれない”と伝える。

学期末のディスコ大会で演奏することをエイモンとダーレンに提案したコナーは、曲作りを始める。

中間試験を終えたコナーは、ラフィーナを誘って船で沖に出る。

ダルキー島で休憩したコナーとラフィーナは、自然に惹かれ合いキスする。

コナーと船に戻ったラフィーナは、次の撮影が土曜日だと知り戸惑う。

翌朝、再び家族会議が開かれ、両親は別居することになり、ペニーは愛人とアパートに住み、ロバートも部屋を借りるので、子供達は行き来することになる。

ブレンダンは、愛人のアパートになど住めないと意見し、コナーも論外だと伝える。

自分は笑い者の落ちこぼれで、イカレタ両親の間でいつも一人きりだったと言うブレンダンは、末っ子のコナーは褒められたが、かつては自分が気流に乗っていたと苛立ちながら話し、怒りを露にする。

驚いたコナーはトイレに向かい、涙しながら顔を洗う。

体育館での撮影が始まり、ラフィーナが姿を現さないことを心配しながら、コナーはリハーサルを始める。

ラフィーナの笑顔、バクスターからも支持され、仲の良い両親が踊り、バイクで現れたブレンダンが、ラフィーナに迫るエヴァンを追い払う・・・。

そんなことを想像して演奏したコナーは、ラフィーナが来なかったことにショックを受けながら本番を始める。

その夜、ラフィーナを訪ねたコナーは、彼女が昨夜エヴァンとロンドンに向かったことを知り悲しむ。

家は売りに出されることになり、落ち込むコナーはその思いを詞にする。

街に戻っていたラフィーナを見かけたコナーは、彼女に声をかけるものの、人違いで妹だと言われる。

ウソをつけないラフィーナは、エヴァンに騙されたことをコナーに話し、殴られたアザのことも訊かれる。

自分が悪かったと言うラフィーナが、以前と違い夢を諦めるような話を始めたために幻滅したコナーは、リハーサルがあると伝えて、その話を聞きたがる彼女にそれを断り立ち去る。

ロンドンに行くことがラフィーナの夢であり運命だったと考えるコナーは、曲作りをするエイモンから、自分が連れて行けばいいと言われる。

飛行機代やバンドのことを考えるコナーに、レコード契約を取って自分達を救い出すようにと伝えたエイモンは、名案かもしれないと言われる。

ラフィーナにテープを届け、ブレンダンをギグに誘ったコナーは、バクスターの顔写真を200枚コピーする。

ダーレンと共にバリーのアパートを訪ねたコナーは、彼をバンドに誘い”ローディー”を任せる。

ライブは始り、ステージに上がったコナーらは、ヤジを気にせずに演奏を始める。

一曲目の”ガールズ”に続き、バラードの”君を捜して”を歌おうとしたコナーはブーイングを浴びる。

メンバーからも意見され、その場から去るものもいる中、コナーはラフィーナに捧げる曲を歌う。

部屋で曲を聴いたラフィーナは感動し、公園に向かいベンチで涙する。

歌い終えたコナーは、気分を変えてノリのいい曲をバクスターに捧げると伝える。

照明を点けるようにと指示したバクスターは、それを無視するコナーらに警告する。

覚悟を決めたコナーらは、教師とイジメの曲”ブラウン・シューズ”の演奏を始める。

生徒達は熱狂し、コナーは用意したバクスターのマスクを配り、それを被って演奏をする。

止めることができないバクスターは、その場を去る。

笑顔で現れたラフィーナと共に、演奏を終えたコナーは自宅に向かう。

ブレンダンにラフィーナを紹介したコナーは、港まで車で送ってほしいと頼み、祖父の船で二人でイングランドに向かうことを伝える。

今直ぐに行くと言うコナーとラフィーナは、金も何もないが写真とデモとビデオがあるとブレンダンに伝える。

荷物をまとめたコナーは眠っている両親の部屋に向かい、車のキーを探して、ペニーに大好きだと伝える。

港に着いたブレンダンはコナーに詞を渡し、まとまりはないが、ある男女の話なので曲をつけるようにと伝える。

コナーをラフィーナに任せたブレンダンは、二人とハグして別れる。

沖に向かうコナーとラフィーナを見守るブレンダンは、思わずガッツポーズをして興奮する。

雨が降り始め、前方にフェリーが現れたことに気づいたコナーは、それを避けてラフィーナと共に乗客に手を振る。

コナーとラフィーナは、フェリーを追うようにしてウェールズを目指す。
__________

1980年代には旧式だったクリスチャン・ブラザース・スクールの”シング・ストリート”は、現在では改革が行われ、教師も真摯な態度で指導している。


解説 評価 感想

*(簡略ストー リー)
1985年、ダブリン
失業したロバートは妻ペニーとの諍いが絶えず、家計が苦しくなったことから、次男のコナーを公立のクリスチャン・ブラザース・スクール”シング・ストリート”に転校させる。
登校したコナーは、荒れた校内やバクスター校長からの厳しい指導を受けて戸惑う。
そんなコナーは、学校に通っていない少女ラフィーナに惹かれ、彼女の気を引くために、仲良くなったダーレンと共にバンドを結成してMV/ミュージック・ビデオを作ろうとする。
楽器の名手エイモンらをメンバーに加えて、バンド名を”Sing Street/シング・ストリート”にしたコナーらは、MVの撮影にラフィーナを誘い、彼女に協力してもらう。
両親もいない児童養護施設に住むラフィーナのために詞を書くコナーは、兄ブレンダンの助言を受けながら夢を追うため人生を変えようとするのだが・・・。
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ONCE ダブリンの街角で」(2007)、「はじまりのうた」(2013)など、音楽を題材にした作品で世界的な評価を得たジョン・カーニーの原案により、彼が監督、脚本、音楽を務めた青春恋愛映画の秀作。

家庭の事情で公立学校に転校した内気で平凡な少年が、ある少女との出会いをきっかけにして音楽に目覚め、夢を追求して人生を切り開いていく姿を描く感動のドラマ。

幸薄い少女への淡い恋心から彼女の幸せを願うようになったひ弱な少年が精神的に逞しく成長していく過程を、1980年代のアイルランドの世相や音楽と共に描く、ジョン・カーニーの繊細な脚本と演出が光る愛すべき作品。

本作は、ゴールデングローブ賞では作品賞(ミュージカル・コメディ)にノミネートされた他、批評家及び全世界の映画祭などでも絶賛された。

アイルランドの中流階級の家庭の問題からドラマは始り、兄の音楽嗜好に感化される主人公が、落ちこぼれ気味の兄を尊敬しながら成長していく興味深い展開や、その当時の音楽を知る者にとってはたまらないヒット曲の使い方など、観客の心を捉える素晴らしい仕上がりとなっている。

ひ弱な少年から逞しく成長し、夢を抱きながら旅立つ主人公を好演するフェルディア・ウォルシュ=ピーロ、彼の思いを受け止める幸薄い少女を演ずる、注目のスター、ルーシー・ボイントン、落ちこぼれだと認めながらも主人公を愛し助言する兄を印象的に演ずるジャック・レイナー、主人公の両親エイダン・ギレンマリア・ドイル・ケネディ、バンドメンバーでマネージャー兼カメラマンのベン・キャロラン、ギターのマーク・マッケンナ、キーボードのパーシー・チャンブルカ、ドラムのコナー・ハミルトン、ベースのカール・ライス、主人公をいじめる不良少年ではあるが、終盤ではローディーとしてバンドに加わるイアン・ケニー、校長のドン・ウィチャリー、美術教師のリディア・マクギネスなどが共演している。


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