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ペーパー・ムーン Paper Moon (1973)

詐欺師と娘の奇妙な旅と心の触れ合いを描く、製作、監督ピーター・ボグダノヴィッチ、主演ライアン・オニールテイタム・オニールマデリーン・カーン他共演のコメディ・ドラマの秀作。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(コメディ)


スタッフ キャスト ■
監督:ピーター・ボグダノヴィッチ

製作:ピーター・ボグダノヴィッチ
原作:ジョー・デヴィッド・ブラウン
脚本:アルヴィン・サージェント
撮影:ラズロ・コヴァックス
編集:ヴァーナ・フィールズ

出演
モーゼ・プレイ:ライアン・オニール

アディ・ロギンズ:テイタム・オニール
トリクシー・デライト:マデリーン・カーン
ハーディン保安官補/ジェス・ハーディン:ジョン・ヒラーマン
フロイド:バートン・ギリアム
イモジン:P・J・ジョンソン
オリー:ジェシー・リー・フルトン
ロバートソン:ノーブル・ウィリンガム

リロイ:ランディ・クエイド

アメリカ 映画
配給 パラマウント・ピクチャーズ

1973年製作 102分
公開
北米:1973年5月9日
日本:1974年3月9日


アカデミー賞 ■
第46回アカデミー賞

・受賞
助演女優(テイタム・オニール
・ノミネート
助演女優(マデリーン・カーン
脚色・録音賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
大恐慌の時代。
母親が亡くなり、身寄りのなくなった少女アディ・ロギンズ(テイタム・オニール)は、牧師と知人とで、母親の簡単な葬儀を済ませようとしていた。

かつてアディの母と関係のあった、モーゼ・プレイ(ライアン・オニール)が彼女の埋葬に顔を出し、彼女をミズーリにいる伯母の家に連れて行くことを、参列者に頼まれる。

それを断ったモーゼだったが、あごの形がアディに似ていたために、父親ではないかとも言われてしまう。

セントルイスに行く途中ということもあり、モーゼは仕方なくアディを連れ出発する。

その後、モーゼは事故を起こし、アディの母を死亡させたと言って、相手運転手の親族ロバートソン(ノーブル・ウィリンガム)から200ドルを受け取ることに成功する。
...全てを見る(結末あり)

その金で車を直したモーゼは、アディを汽車に乗せて伯母の元に向かわせ、厄介払いしようとする。

アディは、母親が何人もの男と関係していたことを知っていたため、モーゼが父親ではないかと尋ねる。

当然モーゼはそれを否定するが、アディはそれなら自分の200ドルを渡せと彼に迫る。

既に金を使ってしまったモーゼと、譲らないアディは押し問答となり、彼は仕方なく切符を払い戻す。

そしてモーゼは、200ドルを返せと言うアディのために”商売”を始める。

一応、聖書のセールスマンという肩書きのモーゼが、汚い手口で未亡人に聖書を売りつけるのを、アディは観察する。

100ドル余りの借金をアディに返すため、次のセールスである未亡人を訪ねたモーゼは、居合わせた保安官に疑われてしまう。

その場を退散しようとしたモーゼだったが、アディが口添えすると、保安官はモーゼを信用し、聖書を購入してくれた。

詐欺師としてのプライドを捨て、10歳にも満たないアディに手を組む提案をしたモーゼは、それを承知した彼女と次の未亡人の家に向かう。

アディは、幼い子供を何人も抱える未亡人には、聖書を無料で渡し、資産家には倍以上の値段を吹っかけて、小遣いまで貰ってしまう。

400ドル余りを稼ぎ出した二人は、聖書の他に、つり銭詐欺も試みる。

同じ店で他人を装い買い物をした二人は、まずモーゼが、アディの伯母さんの名前を書いた20ドル札で小物を買い店を出る。

次に5ドル札で小額の買い物をしたアディは、20ドル札を渡したはずだと言って店員に確認する。

店員は5ドル札だと言い張るが、アディは伯母さんが誕生日のお祝いにくれた20ドル札だと、涙ながらに訴える。

店主が伯母さんの名前入りの20ドル札を確認し、アメを付けてそれをアディに渡す。

少しばかり金回りの良くなったモーゼは、女癖の悪さが復活して、見世物小屋の踊り子トリクシー・デライト(マデリーン・カーン)を旅に同行させることになる。

それが気に入らないアディは、貯めた金をトリクシーに貢ぎ、車まで替えてしまったモーゼを許せなくなる。

アディは、トリクシーの世話係を辞めたがっているイモジン(P・J・ジョンソン)と結託し、ホテルのフロント係のフロイド(バートン・ギリアム)と彼女の浮気現場を、モーゼに目撃させてしまう。

モーゼはあっさりとトリクシーを捨てて、アディは思惑通りに二人の旅に戻ることができる。

ある宿で、アディは大金を持っている酒の密売人ジェス・ハーディン(ジョン・ヒラーマン)に目をつける。

モーゼは、ハーディンの酒を盗み出し、彼を誘い出してその酒を売りつけ600ドル以上を騙し取る。

取引現場から逃げたモーゼだったが、ハーディンの保安官補の弟(ジョン・ヒラーマン)に車を止められ、保安官事務所に連行されてしまう。

金が見つからないハーディン保安官補は苛立ち、密売人の兄の元に向かってしまい、その隙に、アディの機転で彼女とモーゼは逃亡してしまう。

民家に逃げ込んだ二人は、車をトラックと交換しようとするが、その家の息子リロイ(ランディ・クエイド)がそれを拒絶する。

モーゼは決闘でリロイを殴り倒し、腕ずくでトラックを手に入れ、ようやくミズーリに到着する。

伯母の家が近づき、モーゼとの別れに寂しさを感じ始めたアディだったが、彼は、大きな町で荒稼ぎをすることを提案する。

大仕事の準備を整えたモーゼは、ハーディ保安官補に捕らえられ、金を奪われて痛めつけられてしまう。

アディは、もう一度出直して稼ごうとモーゼを励ますが、彼はアディを伯母の家に送り届けて別れを告げる。

モーゼは、本当に父親ではないのかと再びアディに聞かれるが、それを否定して立ち去る。

アディは伯母の家に招き入れられ、モーゼは車に置いてあった、彼女がカーニバルの小屋で”紙の月”に座って撮った写真を見つける。

自分宛にという、アディの言葉を添えた写真を見たモーゼは、彼女が急に愛しくなる。

すると、伯母の家から抜け出したアディが、停車していたモーゼの車に駆け寄ってくる。

”もうごめんだ”と言ったはずだというモーゼに対し、アディは、”まだ200ドル貸しよ”と答える。

一瞬、怒りを露にするモーゼだったが、坂道で動き出したトラックに、アディと飛び乗り旅立っていく。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
聖書セールスの詐欺師モーゼ・プレイは関係を持ったことのある女性が死亡したため、その娘アディを伯母の家に送り届けることになる。
アディを利用して、ある男から金を騙し取ったモーゼは、少女を早々に厄介払いしようとする。
しかし、確り者で強かなアディは、父親でなければ、奪った金を渡せとモーゼに食ってかかる。
それをきっかけに、二人の奇妙な旅が始まり、モーゼはアディに対し、次第に父親のような愛情を感じ始める・・・。
__________

1971年に発表された、ジョー・デヴィッド・ブラウンの小説”Addie Pray”の映画化。

ラスト・ショー」(1971)で絶賛されたピーター・ボグダノヴィッチが、大恐慌の時代の疲弊しきった人々や、その隙間をすり抜けるように生き抜く、しがない詐欺師と少女の交流とを、ノスタルジックに描いたロード・ムービーの秀作。

第46回アカデミー賞では、ライアン・オニールの娘とはいえ、演技経験のない映画初出演のテイタム・オニールが、10歳4ヶ月の史上最年少で助演賞を受賞した。
この記録は現在まで破られていない。
・ノミネート
助演女優(マデリーン・カーン
脚色、録音賞

その脚色賞候補になった、アルヴィン・サージェントの、丹念に練り上げられた脚本は秀逸で、勝気な少女に芽生える”父親”願望と詐欺師の男との親交が、涙で結ばれて深まるのかと思わせる・・・。
それが裏切られつつも、ほのかな幸せが伝わるラストなどは素晴らしい演出だ。

荒野の決闘」(1946)のラストを髣髴させる描写は、ジョン・フォード研究家でも知られるピーター・ボグダノヴィッチの、間違いなく、フォード、もしくはその作品に対するオマージュだ。

ジョン・フォードは、地平線を上下に位置させる構図で、ショットの芸術的な価値を高めようとすることが多いが、「荒野の決闘」も本作も、地平線はほぼ真ん中に位置していることからも、その意図が窺える。

有名な20ドル札のつり銭詐欺の場面は実に面白い。
既に軌道に乗ってきた詐欺行為の報酬にしては、20ドル弱の金銭と50セントの品物では・・と思うのだが、同じ場所で派手に行動しないプロの鉄則か、又は腕試しと考えると実に巧みな演出にも見える。

若手二枚目スターの代表格であり「ある愛の詩」(1970)の爆発的なヒットも記憶に新しい頃のライアン・オニールは、二流の詐欺師を熱演し、やや演技力に難ありと言われていた彼は、本作でゴールデングローブ賞にノミネートされた。

おしゃまで”強欲”な少女を演ずるテイタム・オニールは、そのセリフ回しなどが、とてもアマチュアには思えない。
さらに、タバコを吸う姿や無駄のない動きなど、大人の目を楽しませる好演を見せる。

出番は少ないがインパクトがある、見世物小屋のダンサー、マデリーン・カーン、その世話係P・J・ジョンソン、酒の密売人と、その弟の保安官補二役のジョン・ヒラーマン、ホテルのフロント係役のバートン・ギリアム、主人公に金を巻き上げられる男性ノーブル・ウィリンガム、そして、車を交換するために、主人公と決闘をする民家の長男で若き日のランディ・クエイドが端役出演している。


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