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ミシシッピー・バーニング Mississippi Burning (1988)

1964年にミシシッピ州で起きた、”3人の公民権運動家殺人事件”をベースにした作品。
公民権運動家の失踪事件を担当するFBI捜査官の執念の捜査を描く、監督アラン・パーカー、主演ジーン・ハックマンウィレム・デフォーフランシス・マクドーマンドブラッド・ドゥーリフR・リー・アーメイマイケル・ルーカー他共演の社会派ドラマの秀作。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(社会派)

フランシス・マクドーマンド / Frances McDormand / Pinterest


スタッフ キャスト
監督:アラン・パーカー
製作
フレデリック・M・ゾロ
ロバート・F・コールズベリー
脚本:クリス・ジェロルモ

撮影:ピーター・ビジウ
編集:ジェリー・ハンブリング
音楽:トレヴァー・ジョーンズ

出演
ジーン・ハックマン:ルパート・アンダーソン
ウィレム・デフォー:アラン・ウォード
フランシス・マクドーマンド:ペル夫人
ブラッド・ドゥーリフ:クリントン・ペル保安官補
R・リー・アーメイ:ティルマン町長
マイケル・ルーカー:フランク・ベイリー
ゲイラード・サーテイン:レイ・スタッキー保安官
プルット・テイラー・ヴィンス:レスター・コーエンズ
スティーヴン・トボロウスキー:クレイトン・タウンリー
バジャ・ジョラー:モンク捜査官
ケヴィン・ダン:バード捜査官
トビン・ベル:ストークス捜査官
ダリウス・マクラリー:アーロン・ウィリアムズ

アメリカ 映画
配給 オライオン・ピク チャーズ
1988年製作 126分
公開
北米:1988年12月9日
日本:1989年3月4日
製作費 $15,000,000
北米興行収入 $34,603,940


アカデミー賞
第61回アカデミー賞

・受賞
撮影賞
・ノミネート
作品・監督
主演男優(ジーン・ハックマン
助演女優(フランシス・マクドーマンド
編集・録音賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー
1964年6月21日、ミシシッピ州、ジェサップ郡。
3人の公民権運動家は、パトカーを含む数台の車に追われる。

警官と共に車を止めたフランク・ベイリー(マイケル・ルーカー)は、黒人を乗せた白人を侮辱し、容赦なく射殺する。

その失踪事件の捜査に、FBIは元郡保安官のルパート・アンダーソン(ジーン・ハックマン)と指揮をするアラン・ウォード(ウィレム・デフォー)の2人を派遣する。

目的地の町に着いたアンダーソンとウォードは、保安官事務所に向かう。

ウォードに対する保安官補クリントン・ペル(ブラッド・ドゥーリフ)の態度が気に入らないアンダーソンは彼を脅し、レイ・スタッキー保安官(ゲイラード・サーテイン)に会おうとする。

そこにスタッキーが現れ、アンダーソンとウォードは、失踪事件のことについて話を聞く。

アンダーソンとウォードは、失踪した3人の公民権運動家は、速度違反で一度逮捕され、釈放された後に行方不明になったことなど、不明なことが多い事件の捜査を始める。
...全てを見る(結末あり)

ダイナーに入ったウォードは、満席だと言われるものの、アンダーソンの忠告も聞かずに黒人の席に向かう。

客達はウォードに注目し、彼から質問された黒人青年ホリスは、何も答えずに席を移る。

その後、失踪した3人が話をした”KKK”が焼いた集会所に向かったウォードは、アンダーソンから住人は協力しないと言われるものの、聞き込みを始める。

集会所で被害に遭った黒人の老夫婦から話を聞いたウォードだったが、情報は得られなかった。

その夜ホリスは、ウォードと話したことを白人の男たちに責められ、痛めつけられる。

モーテルで事件の資料などをチェックしていたアンダーソンとウォードは、突然、襲撃される。

窓を割られたアンダーソンは、十字架が外で燃やされていることに気づく。

銃を持って外に出たウォードは警戒し、本部に応援を要請することをアンダーソンに伝える。

その後、映画館を貸し切り捜査本部が設置される。

KKKの幹部が町に現れたことにきづいたアンダーソンは、スタッキーからティルマン町長(R・リー・アーメイ)を紹介され、騒ぎを起こしても何も進展しないと言われて牽制し合う。

ウォードは、派遣されたバード捜査官(ケヴィン・ダン)から、KKKのリーダーがクレイトン・タウンリー(スティーヴン・トボロウスキー)だということなどを知らされる。

美容師のペルの妻(フランシス・マクドーマンド)と話したアンダーソンは、町に現れた重要人物らしき男がタウンリーだということを知る。

その時、リンチを受けたホリスが車から放り出され、スタッキーから口出しするなと言われたアンダーソンは、ダイナーでホリスと話したウォードを批判する。

聞き込みでタウンリーのことを知ったアンダーソンは、自分で調査するようウォードに指示する。

当然、調べていると言うウォードは、失踪した3人の車が見つかったことをアンダーソンに伝える。

その後、3人を目撃した先住民に会ったウォードとアンダーソンは、沼地で発見された車を引き上げる。

死体は発見されなかったために、ウォードは100人の応援を要請し、沼地を徹底的に捜査するようバードに指示する。

捜査は拡大し、その腹いせとして、黒人は白人に襲われ家は焼かれる。

様々な嫌がらせを受けるウォードは、営業妨害だと言うモーテルを買い取るようバードに指示する。

海軍の予備軍も動員した大規模な沼地の捜査が始まり、その様子は報道され、全米で注目されることになる。

住人は捜査に批判的で、記者の取材を受けるスタッキーは、”NAACP”(全米黒人地位向上協会)の宣伝活動だと言って相手にしない。

アンダーソンと共に集会所の焼け跡に向かったウォードは、集まっていた人々が去る中、少年アーロン・ウィリアムズ(ダリウス・マクラリー)から、自分たちから話を聞くのではなく、保安官事務所を調べるべきだと言われて町に戻る。

アンダーソンと共にペルを訪ねたウォードは、3人が失踪した日の行動を確認する。

自分に好意的なペルの妻と話をしたアンダーソンは、その場を去ろうとするウォードからペルのアリバイは妻次第だと言われ、怪しいペルはKKKだと確信する。

その後、もう一度ペルの妻を訪ねたアンダーソンは、夫のアリバイを確認する。

教会に集まっていた黒人たちは、待ち伏せするKKKに襲われ、容赦なく痛めつけられる。

マスクを被ったベイリーは無抵抗のアーロンを蹴り倒し、FBIと話したら殺すと言って脅す。

進展しない沼地の捜査を見ていたベイリーらはマスコミと揉め事を起こし、ティルマン町長やタウンリーは公然と白人至上主義を主張する。

ペルやベイリーらがたむろする酒場に顔を出したアンダーソンは、探りを入れる。

ためらいなく黒人を殺せると言うベイリーは、3人のことは諦めて町を出ろと凄むものの、アンダーソンは彼を痛めつけて逆に脅しをかける。

勝手な行動だと言って非難するウォードに、情報を入手する方法を知らないと意見するアンダーソンは、ペルの妻は夫に不利な証言はしないと伝える。

ウォードから、本人の自白がなければ有罪にできないと言われたアンダーソンは、納得するしかなかった。

厳戒態勢の中、黒人たちの自由のためにの行進が町を通過する。

その夜、黒人青年がKKKに襲われる様子を監視していたウォードとアンダーソンは、青年がトラックにに乗せられたためにそれを追う。

林の中でトラックを見つけたウォードとアンダーソンは、倒れていた青年を助ける。

襲われた黒人青年の家族に訴えを起こすよう説得するウォードだったが、面倒に巻き込まれたくない黒人たちは関りを避ける。

ペルを尋問したウォードは何も聞き出せず、ティルマンに過剰な捜査を非難されるものの、アンダーソンと共に聞き入れる気はなかった。

焼き討ち事件が起き、アンダーソンは、アーロンの協力で目撃者の少年ウィリーの証言を聞き出す。

3人の男の名前が浮かび上がり、容疑者として裁判にかけられるものの、町に来た部外者を批判する判事は、被告に軽犯罪の判決を言い渡す。

その直後に焼き討ちがあり、ウォードから説明を求められたスタッキーは、黒人が騒いでいるだけだと伝える。

FBIに協力したアーロンの父親は、ベイリーらに家を焼かれ、殴られて吊るされる。

ベイリーらはその場を去り、アーロンは瀕死の父親を助ける。

現場を調べたアンダーソンとウォードは、ペルの妻が夫と一緒にいたという50分がカギだと考える。

捜査を気にしないタウンリーらは集会を開き、人々を扇動する。

その場を調べるウォードは、政治集会だと言うペルに、KKKにしか見えないと伝えて立ち去る。

訪ねて来たアンダーソンを迎え入れたペルの妻は、人々の醜さに耐えられなり、夫が失踪事件に関わったことと、3人の遺体が埋められた場所をアンダーソンに教える。

ペルの妻の気持ちを察するアンダーソンは、彼女を気遣い抱きしめる。

遺体は発見され、病院に運ばれて解剖されることになるが、FBIは声明を発表しない。

スタッキーから家で問題が起きたと言われたペルは、ベイリーらを連れて帰宅し、妻を痛めつける。

それを知ったウォードは病院に向かい、モーテルにいるアンダーソンを連れてくるようバードに指示する。

治療を受けて病室で眠るペル妻の痛々しい姿を見たアンダーソンは、怒りを抑えきれずに復讐しようとする。

それを制止するウォードと口論になったアンダーソンは、ペルの妻と親しくしていたと言われたため、彼を殴り襲いかかるものの、銃を向けられる。

追い詰めて逮捕すると言う同じ考えのウォードから、その方法を訊かれたアンダーソンは、自分のやり方で強硬手段を実行することに同意させる。

ウォードのガッツを認めたアンダーソンは、ストークス捜査官(トビン・ベル)らを呼び寄せる。

殺し屋を装ったモンク捜査官(バジャ・ジョラー)がティルマン町長を脅し、タウンリーの指示で3人の失踪者を追ったペルとベイリーらが殺したことを聞きだす。

強要などでは有罪にできないと考えるウォードは、汚い手を使うアンダーソンを非難するが、最低の人間が相手だと言われて納得するしかなかった。

その後、不穏な動きを察したタウンリーらは焦り始める。

ストークスと共にレスター・コーエンズ(プルット・テイラー・ヴィンス)を連行したアンダーソンは、彼を車に乗せて町を走り、犯行を自白させて黒人の居住地で降ろす。

黒人たちに睨まれ焦るレスターは走り去る。

床屋にいたペルを脅したアンダーソンは、レスターからすべて聞いたことを伝えて痛めつける。

アンダーソンを止めようとするウォードだったが、他の捜査官に制止される。

レスターの家に銃弾が撃ち込まれ、外には燃えた十字架が立てられる。

裏切り者と思われたレスターはトラックで逃げるが、仲間たちに追われて捕らえられ吊るされそうになる。

そこにアンダーソンとウォードらが現れたために、レスターを襲った男たちは逃げる。

ウォードは、すべてを話すなら保護するとレスターに伝える。

逃げた男たちは、KKKを装ったストークスらだった。

逮捕されたベイリーは公民権侵害で禁固10年、レスターは禁固3年、ペルは禁固10年、スタッキーは無罪放免、タウンリーは禁固10年の判決が下される。

ティルマンは首を吊って自殺し、バードは、罪を問われない彼が命を絶ったことを不思議に思う。

見て見ぬふりをするのは有罪だと言うウォードは、実行犯と同じであり、たぶん自分たちもだとバードに伝える。

その後、ペルの家に向かったアンダーソンは、荒れ果てた様子を見て驚く。

退院していた妻に同情するアンダーソンは、生まれた家なので留まり、自分のしたことは正しいと思う人、美容師の自分を好きな人もいるとると言われて微笑み、握った彼女の手にキスする。

ウインクして去ろうとするアンダーソンを呼び止めた妻は、出張先からハガキを出さなくてもいいと伝える。

妻に微笑んだアンダーソンは、その場を去る。

アンダーソンとウォードは、黒人の集会に立ち寄り、町の人々の間に人種を越えた共存が始りつつあることを見届けて去って行く。

破壊された黒人の公民権活動家の墓石には、”忘れてはいけない”と書かれていた。


解説 評価 感想

*(簡略ストー リー)
1964年6月21日。
ミシシッピ州、ジェサップ郡で起きた3人の公民権運動家失踪事件に、FBIは元郡保安官のルパート・アンダーソンとウォードのを派遣する。
目的地に着いた二人は、スタッキー保安官と保安官補ペルに会い、事件に非協力的な彼らを不審に思う。
その後、アンダーソンとウォードは、町のルールを無視して捜査を始めたために様々な妨害に遭い、彼らに協力した黒人は痛めつけられ焼き討ちに遭う・・・。
__________

公民権法の制定直前から制定された後でも、容易には事件が解決できない様子など、緊迫感溢れる描写でスリリングに描く、アラン・パーカーの演出は見応え十分だ。

1964年にミシシッピ州で起きた、”3人の公民権運動家殺人事件”をベースにした作品なのだが、実際には、FBIがこれほどまでに積極的な捜査を行ったということに反論する意見があるのも事実で、それを思うと、いかにアメリカ社会に根強く残る差別が大きな問題かがよく解る。

第61回アカデミー賞では作品賞以下7部門にノミネートされ、撮影賞を受賞した。
・ノミネート
作品・監督
主演男優(ジーン・ハックマン
助演女優(フランシス・マクドーマンド
編集・録音賞

フレンチ・コネクション」(1971)の主人公”ポパイ”がやや大人しくなったようなキャラクターのジーン・ハックマンの一匹狼風の迫力ある演技は圧巻で、下積み時代のルームメイト、ダスティン・ホフマンの「レインマン」(1988)が候補でなければ、2度目のオスカー受賞は間違いなかっただろう。

ジーン・ハックマンのセリフにもあるが、当時の司法長官ロバート・ ケネディの秘蔵っ子であるエリート捜査官という設定のウィレム・デフォーも、円熟の極みと言えるジーン・ハックマンと互角に渡り合い、彼に銃を向けて脅してまで説得するシーンなどを含めた熱演は見ものだ。

差別がなくなるはずもない町に留まり、強く生きていこうとするクライマックスが感動を呼ぶ、フランシス・マクドーマンドの体を張った演技も見事であり、デビューから4作目にして早くもアカデミー助演賞候補になったのも頷ける。

犯行に加わった安官補のブラッド・ドゥーリフ、脅迫を受けて自殺してしまう町長のR・リー・アーメイ、犯人の一人で、正に悪党面のマイケル・ルーカー、結局、無罪になってしまう保安官のゲイラード・サーテインKKKのリーダー、スティーヴン・トボロウスキー、犯人のプルット・テイラー・ヴィンス、ウォード(ウィレム・デフォー)の部下ケヴィン・ダン、町長を脅す捜査官バジャ・ジョラー、どちらが悪党かわからないほど凄みのある捜査官トビン・ベル、主人公に協力する黒人少年ダリウス・マクラリーなどが共演している。


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