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メリー Mary (1931)

1928年に発表された、クレマンス・デーンの著書”Enter Sir John”を基に製作された、アルフレッド・ヒッチコック監督、脚本による「殺人!」(1930)の、ドイツ人俳優を起用したドイツ語バージョン。
殺人事件の陪審員を務めた高名な役者が死刑を宣告された女優の無実を証明しようとする姿を描く、監督アルフレッド・ヒッチコック、主演アルフレート・アベールオルガ・チェホーワポール・グラーツロッテ・シュタイン他共演のサスペンス。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(サスペンス/犯罪)

アルフレッド・ヒッチコック Alfred Hitchcock 作品一覧
アルフレッド・ヒッチコック / Alfred Hitchcock / Pinterest


スタッフ キャスト
監督:アルフレッド・ヒッチコック

原作:クレマンス・デーンEnter Sir John
脚本
ヘレン・ド・ゲリー・シンプソン
アルマ・レヴィル
ハーバート・ユトケ
ゲオルク・C・クラレン
撮影:ジャック・E・コックス

出演
ジョン・メニアー卿:アルフレート・アベール
メリー・ベアリング:オルガ・チェホーワ
ボビー・ブラウン:ポール・グラーツ
ベベ・ブラウン:ロッテ・シュタイン
ミラー:ヘルミネ・スターラー
ヘンデル・フェーン:エッケハルド・アレント
ゴードン・ムーア:マイルズ・マンダー
ジョン・スチュアート:ジョン・マイロン

イギリス/ワイマール共和国 映画
配給
British International Pictures(イギリス)
Sud-Film(ワイマール共和国)
1931年製作 82分
公開
ワイマール共和国:1931年3月2日
日本:未公開


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー
ある夜、女優メリー・ベアリング(オルガ・チェホーワ)が住んでいるミラー(ヘルミネ・スターラー)の下宿屋から叫び声が聞こえる。

窓から騒ぎの様子を見守る劇団の座長ボビー・ブラウン(ポール・グラーツ)と妻べべ(ロッテ・シュタイン)は、警官が現れ劇団支配人のゴードン・ムーア(マイルズ・マンダー)が騒いでいることに気づく。

メリーの部屋に入った警官は、ムーアの妻エレンの死体を確認する。

メリーの近くには、エレンを殴ったと思われる血の付いた火かき棒が落ちていた。

ムーアは、エレンを嫌っていたと言ってメリーを犯人だと決めつける。

泣き崩れるムーアを落ち着かせようとした警官は、彼にブランデーを飲ませようとするが、それを注ごうとしたブラウンは、瓶が空だと気づく。
...全てを見る(結末あり)

ミラーと話した警官は、エレンがメリーに食事に招かれたことを知る。

ブラウンは、2人が劇団員であることを警官に話し、自分が座長でムーアは支配人だと伝える。

放心状態のメリーを気遣い、お茶を入れようとしたミラーと話をしたべべは、退団するつもりだったメリーをゴードンが引き留め、不仲だったエレンが態度を変えて、メリーと仲直りしようとしたと伝える。

ベべは、和解しようとしたメリーがエレンと自分を食事に招いたのだが、遠慮したと付け加える。

翌日、メリーとエレンの役は代役が演じ、舞台は上演された。

逮捕されたメリーは連行され、留置場に入れられる。

舞台が進行中に主演のヘンデル・フェーン(エッケハルド・アレント)は、警官の事情聴取を受ける。

警官は、同じ役者のジョン・スチュアート(ジョン・マイロン)の話しもブラウンとべべから聞く。

フェーンは拘留中のメリーが気になり、ブラウンから彼女が逮捕された際の状況を聞き、釈放させたいと考える。

その後、殺人容疑で起訴されたメリーの裁判は始まり、彼女は事件のことを思い出せず、自分が何かをしたとしても、無意識のうちにしたことだと主張する。

判事は、被告が女優だということを考慮して協議するよう陪審員に指示する。

高名な役者ジョン・メニアー卿(アルフレート・アベール)他、陪審員の協議が始まる。

メリーとエレンが、ある男性をめぐって口論になったことなどが話し合われ、検察側の主張する現状証拠では紛れもなく有罪なのだが、本人の証言で、無意識だったことも考慮される。

無罪と考える1人の女性は、被告の精神状態の不安定さは病気であり、行動が本人の意思でなかったと語る。

1回目の投票が行われ、4名の無罪主張者の1人が、決断するのは早いと意見しつつも、有罪に変えてしまう。

無罪と主張する女性が自分の考えを話すが、別の女性に、病気だとすれば再発して再び殺人を犯す可能性があると指摘され、その意見に納得して有罪に変える。

犯人だと思えないというだけの理由だった男性も、有罪とする。

最後の無罪主張者ジョン卿は、メリーが何も覚えていないというのは真実であり、ブランデーを飲んでいないと確信していた。

医師がメリーの飲酒を確認したと言われたジョン卿は、食事中のワインの可能性があると考える。

メリーとエレンの不仲説もフェーンが否定したと言うジョン卿だったが、様々な状況証拠をあげる皆から反論を求められる。

ジョン卿は、メリーは酒で自分を見失うような女性ではないと考えるが、ブランデーの瓶が空だったことを指摘され、侵入者がいた可能性も否定される。

何も思いだせない本人が認めていないとしか答えられないジョン卿は、再び証拠を突きつけられ、仕方なく有罪を認める。

判決が下され、メリーは死刑を宣告される。

その後ジョン卿は、かつて自分の劇団への参加を希望したメリーの無罪を主張し続けなかったことを後悔する。

そんなジョン卿は、別の人間がブランデーを飲んだのではないかと考える。

殺人の可能性は認めたメリーが、ブランデーを飲んでないとはっきりと答えたことが気になるジョン卿は、飲んだ人物が誰かを考える。

舞台をキャンセルしたジョン卿はブラウンを呼び、メリー事件の陪審員だったことを伝えて、その件について話を聞こうとする。

予定する芝居を任せることをブラウンに伝えて、年間契約も仄めかしたジョン卿は、喜ぶ彼から、女優の妻べべを推薦され、外で待つ彼女を部屋に呼ぶ。

ジョン卿は事件のことを話し始め、メリーが犯人だと思えないと言ってブラウンに意見を求めながら、彼女のは無罪を信じる。

そこにべべが現れ、ジョン卿に歓迎された彼女は、仕事をもらえたことをブラウンから知らされる。

ジョン卿がメリーの釈放を願い乾杯しようとしたため、驚いたべべは、その考えに賛成できない。

自分とブラウンは無実を信じると言う、ジョン卿に反対できない状況になったべべは、メリーを救うための協力を申し出る。

ブラウンとべべは用意された昼食の席に着き、ジョン卿と共に侵入者が誰かを考える。

べべは事件の夜に警官を見かけたことを話し、ジョン卿はそれに興味を持つ。

騒ぎに気づいたべべは警官を目撃してブラウンに知らせたが、目を離している間にその警官は姿を消したのだった。

その後、ブラウンとべべはジョン卿と共に家に向かい、警官が2人いた可能性を考える彼に対し、それを否定する。

酔ったムーアが、エレンに会いたいと言ってミラーの部屋に押し入ろうとしていることに気づいたブラウンは、ジョン卿とべべと共にその場に向い彼を制止する。

ミラーにジョン卿を紹介したブラウンは、彼女と共に事件現場のメリーの部屋に向かう。

ジョン卿は、その場に置かれていた自分の写真を確認する。

劇場の楽屋方面にある窓から侵入者が入った場合、よほど身軽でないと無理だと考えたジョン卿は、楽屋口に向かう。

ジョン卿とブラウンは、フェーンとスチュアートの楽屋の洗面台が壊れたことを知り、落ちていたタバコ入れを渡されてその場を見に行く。

洗面台の上の窓の先が事件現場の部屋だと確認したジョン卿は、誰が洗面台を壊したのかを考える。

ジョン卿は、その日は下宿で一夜を過ごし、翌朝、女主人から、子供を叱ったスチュアートの鞄に、警官の制服が入っていたことを知る。

現れたブラウンからタバコ入れの話を聞いたジョン卿は、べべがスチュアートのものだと言っていたことを知る。

汚れを落とそうとして、それが血だと分かり持参したというブラウンは、タバコ入れをジョン卿に見せて確認させる。

ジョン卿は、芝居で警官を演じるのがフェーンとスチュアートだということを確認し、事件の鍵は、ブラウンが目撃した”警官”だと考える。

警官が2人いたことを確信するジョン卿は、1人目は偽者だと考え、メリーが隠している男が誰かを、タバコ入れをヒントにして突き止めようとする。

刑務所に向かったジョン卿はメリーと面会し、陪審員のことを話そうとするものの、それを制止する彼女から新作について訊かれる。

自分は代役を頼み、裁判の陪審員だったことを伝えたジョン卿は、罪を犯した可能性を語るメリーが死を望んでいるような話をするため、自分の劇団に入ることを希望した件について尋ねる。

メリーは名女優になれる可能性があると考えるジョン卿は、エレンとの争いの原因になった男の名前を尋ねるが、無関係だと答える彼女からエレンの話を聞く。

ジョン卿は、エレンから悪口を言われ耳を塞いだと言うメリーに、それなら誰かが侵入しても気づかないと伝える。

メリーがあくまで男を庇おうとするため、ジョン卿は、それはスチュアートだと言ってタバコ入れを彼女に見せる。

それはフェーンのものだと言われたジョン卿は驚き、面会時間は終わり、メリーは看守に連れて行かれる。

その後ジョン卿は、フェーンがサーカス団に加わり、女装をして空中ブランコ乗りをしていることを知る。

ジョン卿はブラウンとサーカスを見に行き、この事件を題材にした架空の芝居のオーディションを行い、彼に役をつけて演じさせることを考える。

屋敷でフェーンと面会したジョン卿は、適役だと伝えて、芝居の内容がメリー・ベアリング裁判を題材にしていることを話す。

動揺するフェーンは、ムーアの劇団にいたことを訊かれ、メリーとエレナを知っていたと答える。

ジョン卿は台本を用意し、事件を再現するシーンで、フェーンに侵入者の犯人を演じさせる。

台本が未完成だと気づいたフェーンは、ジョン卿が、それを完成させる手伝いをさせようとしていたことを知る。

それを拒んだフェーンは、台本が完成したら連絡してほしいと言ってその場を去る。

今一歩だったと悔しがるジョン卿は、フェーンの演技を見るためにサーカスに向かう。

出番を待つフェーンは手紙を書き、ジョン卿とブラウンが楽屋に現れる。

ジョン卿とブラウンは、落ち着くためだと言って、フェーンがブランデーを飲んでいることに気づく。

フェーンは、出番が終わった後で、作品の結末について素晴らしい案を提供できるとジョン卿とブラウンに伝える。

女装したフェーンは、ブランコに向かい演技を始める。

一通りの演技を終えたフェーンは、ロープで輪を作り、それを首にかけて飛び降りる。

場内は騒然となり混乱し、ジョン卿とブラウンは驚く。

その後、ジョン卿はフェーンからの手紙を受け取り、それを読んだ彼は、事件の謎を解こうとする。

ジョン卿は、芝居の結末だと言ってブラウンに手紙の内容を話し始める。

”男は火かき棒を手にして現れ、女は突き飛ばされて頭を打ち意識を失う。
男はもう一人の女を撲殺して、血にまみれた死体を見て我に返る。
男はブランデーを飲み干し、窓から出て楽屋に戻り洗面台を壊した。
男は通りの人々を見て怖気づくが、舞台衣装で警官に扮し、気づかれないまま部屋に戻る。”

次は動機だと言うジョン卿は、エレンに秘密をばらすと脅されたことだ話しながら、フェーンを哀れに思う。

ジョン卿は、フェーンは逃亡中の囚人であり、逮捕されるという恐怖心を背負いながら生きていたことをブラウンに話す。

その後、出所したメリーを迎えに行ったジョン卿は、泣かないでほしいと言って、涙する彼女を気遣う。


解説 評価 感想

*(簡略ストーリー)
ある夜、劇団員メリーの部屋で同僚のエレンが殺される。
死体の傍らで呆然とするメリーの近くには、血の付いた火かき棒が落ちていた。
状況証拠からメリーは逮捕され、殺人容疑で起訴され裁判が開かれる。
メリーは無意識のうちに起きた事件だと主張し、陪審員が協議に入る。
陪審員の一人で高名な役者ジョン・メニアー卿は、メリーの犯行とは思えず無罪を主張するものの、証拠を示せなかった。
そして、メリーの有罪は確定して、彼女は死刑を宣告される。
ジョン卿は、かつて自分の劇団に入ることを希望したメリーを救うことができず悔やみ責任を感じる。
メリーの無実を証明しようとしたジョン卿は、不可解な事件の真相を暴こうとするのだが・・・。
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クレマンス・デーンの著書”Enter Sir John”を基に製作された、アルフレッド・ヒッチコック監督、脚本による前年の「殺人!」(1930)の、ドイツ人俳優を起用したドイツ語バージョン。

ヒッチコックは前作では脚本も担当したが本作では監督に専念し、妻アルマ・レヴィルは前作同様、本作でも脚本に加わっている。

前作と役名などが変わっている配役はあるが、同じセットを使い撮影され、ほぼ同様のシチュエーションで進行する内容であり、ヒッチコック唯一のドイツ語映画というのも注目だ。

とは言え前作と違った工夫も見られ、クライマックスで犯人が動揺しながら演技するサーカスの空中ブランコのシーンなどは、その後のヒッチコック作品に影響を与えたとも言える。

かつて自分を慕った女優の犯行を疑い、彼女を救うために事件の真相を暴こうとする陪審員でもあった高名な役者アルフレート・アベール、犯人と疑われて死刑囚となるオルガ・チェホーワ、彼女の所属する劇団の座長ポール・グラーツ、その妻ロッテ・シュタイン、下宿の女主人ヘルミネ・スターラー、犯人だった役者エッケハルド・アレント、妻を殺される劇団の支配人マイルズ・マンダー、劇団員のジョン・マイロンなどが共演している。


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