貧しさから悪の道に進んだ青年の更生に手を貸す弁護士の苦悩を描く、監督ニコラス・レイ、主演ハンフリー・ボガート、ジョン・デレク、ジョージ・マクレディ、アリン・ロバーツ他共演の社会派ドラマ。 |
・ハンフリー・ボガート / Humphrey Bogart / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:ニコラス・レイ
製作:ロバート・ロード
原作:ウィラード・ミトリィ”Knock on Any Door”
脚本
ダニエル・タラダッシュ
ジョン・モンクスJr.
撮影:バーネット・ガフィ
編集:ヴィオラ・ローレンス
音楽:ジョージ・アンタィル
出演
アンドリュー・モートン:ハンフリー・ボガート
ニック・ロマーノ:ジョン・デレク
カーマン地方検事:ジョージ・マクレディ
エマ:アリン・ロバーツ
アデル・モートン:キャンディ・トクスマン
ヴィトー:ミッキー・ノックス
ドレーク判事:バリー・ケリー
ネリー・ワトキンス:カーラ・ウィリアムス
キッド・フィンガーズ:ジミー・コンリン
ジミー:サムナー・ウィリアムズ
”スクイント”ジンスキー:シド・メルトン
フアン・ロドリゲス:ペペ・ヘルン
ブッチ:デューイ・マーティン
ジム”サンシャイン”ジャクソン:デイヴィス・ロバーツ
ジュニア:ハウスリー・スティーブンソン
カール・スワンソン:ヴィンス・バーネット
ホーキンス巡査:トーマス・サリー
レナ:フローレンス・アウアー
パーセル:ピエール・ワトキン
コリー:ゴードン・ネルソン
ロマーノ夫人:アルゼンチン・ブルネッティ
ジュリアン・ロマーノ:ディック・シナトラ
アン・ロマーノ:キャロル・クームズ
マリア・ロマーノ:ジョーン・バクスター
ピアノ奏者:ドゥーリー・ウィルソン
アメリカ 映画
配給 コロンビア・ピクチャーズ
1949年製作 100分
公開
北米:1949年2月22日
日本:1956年10月24日
製作費 $900,000
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
弁護士のアンドリュー・モートン(ハンフリー・ボガート)は、少年時代から世話をしてきたニック・ロマーノ(ジョン・デレク)が、警官殺しの容疑者として逮捕されたことを知り、悪事を続ける彼にうんざりする。
ニックが育った貧民街”スキッド・ロウ”の民生委員をしている妻アデラ(キャンディ・トクスマン)から弁護を頼まれたモートンは、仕方なく警察に向かう。
留置されているニックと話をしたモートンは、自分は無実で、ブッチ(デューイ・マーティン)やジム”サンシャイン”ジャクソン(デイヴィス・ロバーツ)と一緒だったと言う彼を信じることができなかった。
ブッチとサンシャインを捜したモートンは、酔っ払いの老人ジュニア(ハウスリー・スティーブンソン)から、2人がバーに来ることを知らされる。
その後、ブッチとサンシャインから話を聞いたモートンは、事件の際に2人がニックと一緒で、警官は殺していないことを確認する。
強盗に遭ったと証言しているバーテンダーのカール・スワンソン(ヴィンス・バーネット)に会ったモートンは、ここを襲った男に警官が殺されたという話を聞く。 ドレーク判事(バリー・ケリー)の下で裁判は始まり、地方検事のカーマン(ジョージ・マクレディ)は、ニックが犯人であることを確信していた。 弁護を担当するモートンは陪審員を観察しながら、”どんな人間も運命の分かれ目になる瞬間がある・・・”と話し、ニックの過去を語り始める。 6年前。 ニックから母親(アルゼンチン・ブルネッティ)を紹介されたモートンは、ニックと共に3人の弟妹を養う彼女に、夫が出所できるよう努力することを伝える。 モートンは、弁護を担当した自分が責任を果たさなかったと批判され、それを認めて最善を尽くすことを夫人に約束する。 そこに現れた民生委員のアデルはモートンに挨拶し、夫人とニックらに父親が獄中死したことを知らせる。 ショックを受けたモートンは、責任を感じる。 やがてロマーノ家は極貧状態になり、母と共に弟妹の面倒を見るニックは絶望し、悪の道に進んでしまったのだった。 モートンは、ロマーノ家を援助したものの、兵士として徴兵されて家族のことを忘れてしまったことを話す。 ニックは、悲しむ母の話も聞かずに、不良少年のジミー(サムナー・ウィリアムズ)やヴィトー(ミッキー・ノックス)らと共に悪事を働き、警官に逮捕されることを繰り返す。 車の窃盗でニックとジミーは教護院に入れられ、厳しい監視下で過ごす。 ジミーが看守からる酷い仕打ちを受けて、施設内で病死したことを知ったモートンは、同じ様な経験をしてそれを乗り越えたことをニックに話し、社会に対し反発する彼の力になろうとする。 施設を出たニックは、ヴィトーと行動を共にしていた。 ウエイトレスのネリー・ワトキンス(カーラ・ウィリアムス)と付き合っていたニックだったが、”美青年”として評判の彼にとっては、何人もいる女の中の一人でしかなかった。 かつて盗品を売った店を襲おうとしたニックは、店番の美しい少女エマ(アリン・ロバーツ)を騙す気になれず、彼女が病気の叔母レナ(フローレンス・アウアー)と2人で暮らしていることを知る。 エマに惹かれたニックは、タバコ代だと言って有り金を彼女に渡してしまう。 数日後、エマとデートしたニックは、彼女にブレスレットを贈るものの、自分のうような悪い男とは付き合ってはダメだと言って、奪った金で買ったものだと正直に伝える。 その後、ヴィトーやフアン・ロドリゲス(ペペ・ヘルン)と強盗に入ったニックは、警官に逮捕される。 アデルと付き合い始めたモートンは、刑務所に入れられたニックに手を差し伸べてやってほしいと頼まれ、出所した彼の面倒を見ることにする。 ニックの出所後にモートンはセラピーを担当し、彼を誘い釣りなども楽しむ。 モートンの友人である弁護士パーセル(ピエール・ワトキン)が、自分を信用していないことを知ったニックは苛立ち、モートンの財布から100ドル奪って街に戻る。 アデルと会っていたモートンは、エマと寄りを戻したニックを見つけて声をかける。 ニックと路地で話したモートンは彼に襲いかかり、所持金の70ドルを奪い、30ドル貸しだと言いながら、失望したことを伝えてその場を去る。 ニックは、気遣ってくれるエマに自分が悪いことをしたと伝えて、2人で公園に向かって話し合い、これからずっと一緒にいることを約束する。 モートンのオフィスに向かったニックは、パーセルに疑われたので苛立ったと伝えて30ドルを返す。 ニックが結婚することを知ったモートンは侮辱してしまい、彼が真剣だと知って失言を謝罪し、仕事のことを尋ねて協力を約束する。 モートンとアデルは、ニックとエマの結婚を祝福し、4人で食事をする。 その後ニックは、真面目に働こうとするものの長続きせず、次々と仕事を変えてしまう。 ニックは、仲間の”スクイント”ジンスキー(シド・メルトン)に誘われて、酒を飲みギャンブルをして帰宅する。 堅気の生活に耐えられないと言うニックを励ますエマは、自分の人生にとってあなたがすべてだと彼に伝える。 その後、エマと生活のために必死に働くニックだったが、上司に侮辱されたために彼を殴ってしまう。 我慢の限界に達したニックは、自分が元の生活に戻ることを知りショックを受けたエマから、妊娠したと言われるものの、とても子供は育てられないと伝える。 ニックが拳銃を手にして出て行ったために悲しむエマは、絶望してガス自殺する。 駅に向かったニックは、ヴィトーとロドリゲスと共に切符売り場を襲い現金を奪う。 警官に通報されたために逃げるニックは、焦って階下に落下したヴィトーを見捨てて、ブッチが運転する車で逃げ去る。 アパートに寄ったニックは、エマが自殺したことを知り驚き、彼女を見つめながら謝罪する。 葬儀場の付近からエマの葬儀を見守るニックは、悲しみを堪えきれずに涙する。 モートンは、数か月後に、ニックが警官殺しで逮捕されて起訴されたことを話す。 すべて話したのは、ニックが警官殺しには関与していないからだと、モートンは陪審員に向かって語る。 検察側の証人として呼ばれたバーテンダーのスワンソンは、ニックに襲われたことを証言する。 スワンソンに質問したモートンは、自分とかなり長い話をしたことを覚えていない彼の記憶の曖昧さを証明してみせる。 次の証人キッド・フィンガーズ(ジミー・コンリン)に質問したモートンは、彼がプールバーにたむろし、住所不定で前科があり、子供に物乞いをさせた信用できない男だと印象付ける。 スクイントは、事件の際にプールバーにいて銃声を聴き、走り去ったニックを目撃したとカーマンに話す。 モートンは、単なる目撃者だと言うスクイントに、証言が決まって以来、一定の金を受け取っていると伝えて、彼とカーマンを牽制する。 ネリーが証人に呼ばれ、ニックを愛していたことを話し、犯行は彼がするようなことではないと言いながら、かなり前に、バーの強盗は簡単だと聞いたかもかもしれないと証言する。 ロドリゲスが証人に呼ばれ、ニックを見たと証言しないと、不法滞在の自分を追放すると警察に脅されたことを話す。 それを追及しようとしたモートンは、休廷したドレーク判事に、カーマンと共に裁判長室に呼ばれる。 ドレーク判事は、モートンとカーマンが法廷で口ぎたなく言い争うことを許さない。 開廷後ロドリゲスは、国外追放になってもウソはつきたくないとモートンに伝えて、事件の夜はニックを目撃しないことを証言する。 弁護側の証人としてブッチが呼ばれ、ニックは何もしていないと証言する。 次にサンシャインに質問したモートンは、プールバーでニックと飲んでいた言う彼の証言で、ニックが犯人でないことを確認する。 カーマンからニックのことを訊かれたサンシャインは、自分には優しくしてくれたと答え、彼に不利な証言はしない。 証言することを決めたニックは、モートンの質問に対し、事件には関わっていないと答える。 ニックに質問するカーマンは、犯人逃走経路で見つかった証拠品の帽子を彼に被ってもらい、サイズが一致することを確認する。 証拠品を見たいと言いモートンは、判事の許可を得てそれを陪審員の前で被り、サイズが合うことを確認し、自分も犯人かと皆に尋ねる。 カーマンは、警官を殺していないと言うニックに拳銃を渡す。 自分のものではなく、撃っていないと言うニックは退席しようとするが、カーマンから、エマの死は自分の責任だと追求される。 動揺するニックは、エマのことを思い出しながら取り乱し、警官殺しを認めてしまう。 ニックから自分も殺すと言われたカーマンは、満足して席に戻る。 謝罪するニックを落ち着かせたモートンは言葉をかけ、判事に陪審員の退廷を求める。 陪審員は退廷し、モートンは、被告人の答弁を無罪から有罪に変更する許可を判事に求める。 それをニックに確認して認めた判事は、休廷して退席する。 判決が下る日、意見を求められたモートンは、ニックのような人間を作ったのは自分たちでもあり、社会や生きる環境が原因だと問題提起する。 モートンは、慈悲を乞いたい、ニックのためでなく自分たちのためにと判事に伝えて話を終える。 被告人を起立させた判事は、州立刑務所にて、11月29日金曜日に死刑に処すことをニックに伝える。 死刑執行当日。 そしてモートンは、処刑場に向かうニックを見つめる。
...全てを見る(結末あり)
モートンは、父親が無実の罪で服役していると言うニックの話を聞き、生活が困窮していることを知らされ、彼の家に案内される。
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ニックと話したモートンは、同じ境遇の者を助ける努力をすることを彼に約束して握手する。
*(簡略ストー リー)
弁護士のアンドリュー・モートンは、少年時代から世話をしてきたニックが、警官殺しの容疑者として逮捕されたことを知り、悪事を続ける彼にうんざりしていた。
モートンは、ニックの暮らす貧民街”スキッド・ロウ”で民生委員をしている妻アデラの要望で、起訴された彼の弁護をする。
裁判は始まり、地方検事のカーマンはニックを犯人と確信していたが、モートンは、運命が決まった瞬間であるニックの過去を語り始める・・・。
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1947年に発表された、ウィラード・ミトリィの小説”Knock on Any Door”を基に製作された作品。
ハンフリー・ボガートの主演ながらハードボイルド・タッチとは異る、法廷劇を中心に描くフィルム・ノワールの佳作。
まだ30代のニコラス・レイの監督デビュー作。
大スターのハンフリー・ボガートの貫禄と、若手期待の美男スター、ジョン・デレクの新鮮さを活かし、貧困や社会に対する問題提起をテーマにした、ニコラス・レイの力強い演出は見応えがある。
主演のハンフリー・ボガートは、自身も悪のはびこる貧民街(スキッド・ロウ)出身の弁護士という異色の役柄を演じている。
少年時代から面倒を見る青年を、優しく受け入れるかと思えば遠ざけたりと、単なるエリーとではない、アクの強い主人公を好演している。
正に紅顔の美少年/青年のジョン・デレクは、その後は脇役が多かったものの、本作では大スターのハンフリー・ボガートを相手に熱演している。
但し、ハンフリー・ボガートには、見栄えがするだけで”ヒヨっ子”呼ばわりされたようであり、それも致し方がないところだろう。
業界では有名な”美顔”である彼は4度の結婚を経験し、2度目が初代ボンド・ガールのウルスラ・アンドレス、4度目の妻は「テン」(1979)のボー・デレクであり、彼女とは30歳の年の差があったが、亡くなるまでの22年間、結婚生活を続けた。
ニック(ジョン・デレク)の更生を諦めない、主人公の妻で民生委員役のキャンディ・トクスマン、裁判では主人公と激しくやり合う地方検事のジョージ・マクレディ、ニックを愛する悲劇の女性を印象的に演ずるアリン・ロバーツ、ニックの不良仲間ミッキー・ノックスとサムナー・ウィリアムズ、ニックの裁判を担当する判事のバリー・ケリー、ニックと付き合った女性カーラ・ウィリアムス、プールバーにたむろする老人ジミー・コンリン、ニックの悪党仲間シド・メルトン、ペペ・ヘルン、デューイ・マーティン、デイヴィス・ロバーツ、新聞売りのアル中老人ハウスリー・スティーブンソン、強盗に遭ったバーテンダーのヴィンス・バーネット、巡査のトーマス・サリー、エマ(アリン・ロバーツ)の叔母フローレンス・アウアー、主人公の弁護士仲間ピエール・ワトキンとゴードン・ネルソン、ニックの母親アルゼンチン・ブルネッティ、ニックの弟ディック・シナトラ、妹のキャロル・クームズとジョーン・バクスター、ピアノ奏者のドゥーリー・ウィルソンなどが共演している。