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アリバイなき男 Kansas City Confidential (1952)

銀行強盗に利用され人生を狂わされた男が犯人を突き止めようとする姿を描く、監督フィル・カールソン、主演ジョン・ペインコリーン・グレイプレストン・フォスターネヴィル・ブランドリー・ヴァン・クリーフジャック・イーラム他共演の犯罪ドラマであるフィルム・ノワールの秀作。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(サスペンス/犯罪)


スタッフ キャスト
監督:フィル・カールソン

製作:エドワード・スモール
原作
ハロルド・R・グリーン
ローランド・ブラウン
脚本
ジョージ・ブルース
ハリー・エセックス
撮影:ジョージ・E・ディスカント
編集:バディ・スモール
音楽:ポール・ソーテル

出演
ジョー・ロルフ:ジョン・ペイン
ヘレン・フォスター:コリーン・グレイ
ティム・フォスター:プレストン・フォスター
ボイド・ケイン:ネヴィル・ブランド
トニー・ロマーノ:リー・ヴァン・クリーフ
ピート・ハリス:ジャック・イーラム
テレサ:ドナ・ドレイク
トマソ:マリオ・シレッティ
スコット・アンドリュース:ハワード・ネグリー
マーティン:カールトン・ヤング
ディアス:ドン・オルランドー
モレリ:テッド・ライアン

アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1952年製作 99分
公開
北米:1952年11月11日
日本:1953年8月26日


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー
ミズーリ州、カンザスシティ
”ミスター・ビッグ”(プレストン・フォスター)は、銀行を監視する。

前科がある花屋の配達係ジョー・ロルフ(ジョン・ペイン)は、いつものように銀行の前に車を止めて、花を持ち込む。

現金輸送車が到着し、配達を終えたジョーはその場を去り、ミスター・ビッグは時計で時間を測る。

何日もかけて同じ時間に到着する2台の車をチェックしたミスター・ビッグは、計画実行のために仲間を集める。

ヘビースモーカーで神経質なギャンブル好きのピート・ハリス(ジャック・イーラム)は、ある男(ミスター・ビッグ)からの電話を受け、ホテルの部屋に呼ばれる。

ピートが現れたためにマスクを着けたミスター・ビッグは、銃を向けて警戒し、いきがる彼を殴り命令に従わせる。

その後ミスター・ビッグは、同じ様にマスクをして、女好きのトニー・ロマーノ(リー・ヴァン・クリーフ)とガムばかり嚙んでいる悪党のボイド・ケイン(ネヴィル・ブランド)とも話をつける。
...全てを見る(結末あり)

計画実行の日、午前10時直前。
いつものように銀行に配達に来たジョーは、女性にぶつかり注意され、謝罪して中に花を持ち込む。

現金輸送車が到着した直後に配達を終えたジョーは去り、ミスター・ビッグらは、花屋と同型の車を銀行の前に止める。

現金を銀行から運ぶ2人に襲いかかったミスター・ビッグらは、現金を持ち去り逃走する。

捜査を始めた警察は、3人のマスクをした男が乗った”花屋”の車を捜す。

車をトレーラーの荷台に乗せたミスター・ビッグらは、街を離れる。

警官に追われて車を止めたジョーは、荷台を開けるよう指示され、何もなかったために、現金をどこで降ろしたか訊かれる。

500キロほど走った場所でミスター・ビッグは、4枚のキングのカードを半分に破り、ピートとボイドに渡す。

ほとぼりが冷めてから金は分けると言うミスター・ビッグは、2人を納得させて札束を1つ渡し、それぞれ違う外国に向かい、場所と時間を連絡するまで待つよう指示する。

金を支払うまでマスクを外すなと伝えたミスター・ビッグは、2人をトラックから降ろす。

逮捕されたジョーは、マーティン刑事(カールトン・ヤング)らの取り調べを受け、前科やギャンブルの借金があることで犯人だと決めつけられる。

保険会社のスコット・アンドリュース(ハワード・ネグリー)から、情報を提供すれば奪われた120万ドルの1/4を払ってもいいと言われたジョーは、やっていないことに対して何も話すことができない。

雇い主からも解雇するしかないと言われたジョーは、その後、痛めつけらながら何度も尋問されるものの、何も話さなかった。

地方の警察が、犯行に使われたと思われるトレーラーと同型の車を発見したことで、ジョーに謝罪したマーティンは彼を釈放する。

仕事に復帰したジョーは、新聞の一面に自分が犯人だという記事が掲載されたため、自ら犯人を捜そうと考える。

仕事を失ったジョーは、バーテンダーの友人エディの協力で、裏社会のリックから情報を得る。

自分をハメたと思われるピート・ハリスが、メキシコティフアナにいることを知ったジョーは、”クラップス”にはまっている、おかしな目つきのヘビースモーカーを捜せと言われ、金を渡してくれたエディに感謝してその場を去る。

リックは、戦争の英雄であるジョーが、硫黄島でエディの命を救ったことを知り、見込みがある男だと思う。

その頃ミスター・ビッグは、ティフアナのピートに電報を送る。

タクシーでメキシコに入国したジョーは、運転手のディアス(ドン・オルランドー)に、ギャンブルのできる場所に案内してもらう。

何軒か回り、クラップスを楽しむピートらしき男を見つけたジョーは、彼に警戒されるものの尾行する。

路地でピートに銃を向けられたジョーは、動ずることなく彼の追及をかわし、さらに尾行してホテルに向かう。

部屋に押し入ったジョーは、ピートを殴り銃を奪い、事件のことを聞き出そうとして金を探す。

マスクを見つけたジョーは、ナイフを手にしたピートを叩きのめし、ボラドス行きの飛行機の切符やキングのカードの半分を確認し、それが30万ドルになることを知る。

観念したピートだったが、全員がマスクをしていたために、仲間のことは知らないとジョーに伝える。

今度は自分がピートを利用して仲間を探そうとするジョーは、彼と共に空港に向かう。

チケットを購入したジョーは、現れた警察官が、別の事件で指名手配犯中のピートに気づき逮捕しようとしたために様子を見る。

警官に気づいたピートは、銃を手にしようとして銃撃される。

瀕死のピートから、警官が話を聞こうとしたためにジョーは焦る。

ピートは息絶え、それを確認したジョーは飛行機で飛び立つ。

ボラドス。
ボイド、そしてトニーは、既に到着していた。

女好きのトニーは、ホテルの土産物店の店員テレサ(ドナ・ドレイク)に言い寄る。

支配人のトマソ(マリオ・シレッティ)と話したボイドは、トニーのことが気になる。

そこに現れたティム・フォスター(ミスター・ビッグ)は、トマソからボイドを紹介され、トニーとも簡単な言葉を交わす。

その後、船を桟橋につけたフォスターは、現れた友人のアンドリュースを歓迎し、弁護士を目指す娘ヘレン(コリーン・グレイ)の話をする。

20年間、警察官だったフォスターは、納得できない強制解雇の件をアンドリュースに話し、例の銀行強盗事件の解決につながる情報がないことを知る。

強盗団に心当たりがあると言うフォスターの話が信じられないアンドリュースは、この付近に、宝石強盗で指名手配中のボイドやトニーがいることを知る。

顔見知りでないようなふりをしている2人に加え、もう1人も到着するはずだと伝えたフォスターは、奪った現金の受け渡しがあるはずだとアンドリュースに話し、連絡するまで姿を見せるなと指示する。

報酬が保険会社から25%支払われると、アンドリュースはフォスターに伝える。

ヘレンと共にタクシーを相乗りしてホテルに着いたジョーは、ピート・ハリスの名でチェックインし、宿帳を見たトニーがそれを確認する。

テレサに部屋に案内されたジョーは、ボイドとトニーについて彼女から話を聞く。

ヘレンが来ていることを知り驚いたフォスターは、市長に陳述書を送り、監察官に事件を再検討してもらえたと言われ、警察に戻る気はないものの、彼女の気持ちを嬉しく思い感謝する。

ヘレンから、一緒に来た男性”ピート・ハリス”に興味があると言われたフォスターは驚く。

その夜、フォスターらと共にポーカーをしたジョーは、隣りに座ったトニーを牽制しながらゲームを続け、席を離れる際にキングのカードをテーブルに落とす。

それを見たトニーとボイドは、ジョーが仲間の1人だと気づき、フォスターはピートに扮しているジョーの考えを探る。

部屋に戻ったジョーは、マスクと電報を引き出しに隠し、外に出て様子を見る。

ジョーの部屋に忍び込んだトニーは、マスクと電報を見つけるものの、戻って来たジョーに殴られて銃を奪われる。

トニーからキングのカードを見せられたジョーは、仲間だったことを確認し、彼が運転を担当したことを知る。

銃を返したジョーはトニーに謝罪し、カードを見ていたボイドも仲間だろうと言われ、分け前も受け取れるか分からないと伝える。

ジョーの部屋を監視していたフォスターは、トニーが帰った後で、ジョーがヘレンに話しかけられたために様子を見る。

ヘレンは、自分のことをあまり話さないジョーをからかい、明朝、プールで会い話をする約束をする。

翌朝、フォスターは、プールにいるジョーとヘレンが気になる。

電報を受け取ったフォスターは、ティフアナで射殺された男の指紋がピートと一致したことを知る。

ヘレンと話したジョーは、彼女が法律を学んでいることを知り、トニーの姿が見えたために、タバコを取りに行くと言って部屋に戻ろうとする。

ジョーの職業が気になるヘレンは、彼が落とした拳銃に気づく。

途中、フォスターと話したジョーは、再びポーカーに誘われるものの、弁護士とデートだと伝える。

勉強しなくては弁護士になれないと言われたジョーは、フォスターと食事の約束をする。

部屋に戻ったジョーは、トニーとボイドに襲われて抵抗するものの、叩きのめされる。

ピートとポーカーをしたことがあるボイドは、ジョーが何者か知ろうとする。

そこにヘレンが現れ、トニーとボイドを紹介したジョーは、彼女から銃を受け取る。

ボイドとトニーはその場を去り、ヘレンは、ジョーが何事も正直に語らないために気分を害して立ち去る。

船に向かう途中で、ガソリン缶が倒れたことに気づいたフォスターは、車を止める。

フォスターは、荷台にこぼれたガソリンをふき取り、その下に隠してあった現金のことを気にする。

船の棚に現金を隠したフォスターは、明日の夜明けに桟橋で会うという手紙を3人に書き、キングのカードを同封する。

3人はトマソから手紙を受け取り、フォスターとヘレンと共に食事をしていたジョーは、家族からだと伝える。

食事を終えたジョーは、ボイドとトニーを気にしながら席を立つ。

フォスターは、ピート(ジョー)のことは忘れるようにとヘレンに伝える。

何も知らないとフォスター伝えたヘレンは、自分も同じだと言われて言葉を返せない。

トニーと外に出たジョーは彼に襲い掛かって銃を奪い、現れたボイドに銃を捨てさせようとする。

銃を井戸に捨てさせたジョーは、ボイドとトニーにピートの金を奪うと伝えて、彼が警察に射殺されたことを知らせる。

はめられた自分に協力することを約束させたジョーは、部屋に向かうよう2人に指示する。

その場に現れたヘレンはジョーを気遣い、力になろうとして父が元警官だったことを伝える。

ヘレンを危険な目に遭わせたくないジョーは、彼女の協力を拒み突き放す。

アンドリュースと電話で打ち合わせをしたフォスターは、警察の船で待機し、互いのサインで行動することを確認する。

フォスターは船に向かい、現金の戸棚のドアを開けてその場を去る。

部屋に戻ったフォスターと話したヘレンは、ピート(ジョー)が窮地に陥ていることを伝る。

助けてほしいと言われたフォスターは、危険なので関わるなと忠告し、理由を訊かれたために、ピートは前科者だと伝える。

納得できないヘレンに理解してもらえないフォスターは、苦悩する。

翌早朝、フォスターは銃を持って出かける。

ボイドとトニーが外にいることに気づいたジョーは、背後から二人に迫り声をかける。

ジョーは襲われるものの、そこに車に乗ったフォスターが現れ、釣りに誘われたジョーらは彼と共に桟橋に向かう。

助手席に座ったジョーは、トニーが銃を手にしていることに気づき、フォスターに話しかけて、警官だったことを確認する。

桟橋に着きジョーらを降ろしたフォスターは、警察の船に合図を送る。

船に乗ったジョーは、隙を見て部屋に入りドアの鍵を閉める。

現金を確認したジョーは棚の扉を閉めて、押し入ってきたボイドとトニーに銃を向けられる。

ボイドが外に出たために、ジョーは、金の在りかを知っているとトニーに伝えて、戸棚の中の現金を確認させる。

120万ドルを2人で山分けすることをジョーに提案されたトニーは、戻って来たボイドを射殺する。

金を独り占めしようとしたトニーだったが、現れたフォスターに銃を向けられる。

トニーが捨てた銃を拾ったフォスターは、正体を知っていることをジョーに伝えて、ピートが殺されてことを話してしまう。

ジョーから、ピートを知っている人物は電報で指示した者だであり、強盗に関与していなければ、報酬を受け取れると言われたフォスターは焦る。

ジョーに突き倒されたトニーは、フォスターを銃撃する。

トニーはジョーと格闘になるものの、フォスターに射殺される。

ジョーを撃たなかったフォスターは、この件をヘレンには秘密にしてほしいと伝える。

フォスターは、警官と共に現れたアンドリュースに、ジョーの指示ですべてうまくいったと言いながら、第三の男はティフアナで射殺されたピートだと伝える。

誰かに報酬を渡すならジョーにとアンドリュースに伝えたフォスターは、医者を呼ぼうとするジョーを制止する。

ヘレンを頼んだとジョーに伝えて感謝したフォスターは、息を引き取る。

その後、ヘレンに事件のことを話したアンドリュースは、フォスターが事件の解決に貢献してくれたことを伝える。

アンドリュースは、昔は色々なことがあったジョーは好青年であり、会社が彼に報酬を払うことを伝える。

父を理解しようとしてきたとアンドリュースに伝えたヘレンは、愛を伝えてほしいという言葉を、父が言い残してくれたことを知る。

外でヘレンの様子を気にするジョーは、自分の話をしておいたと言うアンドリュースに促され、彼女の元に向かい愛を確かめる。


解説 評価 感想

*(簡略ストー リー)
ミズーリ州、カンザスシティ
元警官のフォスターは、3人の悪党ボイル、トニー、ピートを仲間にして銀行を襲う。
4人は犯行前からマスクをしていたために、フォスター以外は互いの顔を知らないまま、強盗に成功する。
ほとぼりが冷めてから金を分配することになり、ボイルら3人は外国でフォスターの連絡を待つことになる。
一方、犯行直前まで花屋の配達で銀行にいたジョー・ロルフは、同型の車を使った犯人に利用されて逮捕される。
前科があったために疑われたジョーだったが、犯行に使われた車が見つかり釈放される。
その後、強盗犯ということで新聞に報道されてしまったジョーは、仕事を失い絶望し、自ら犯人を捜すことを決意するのだが・・・。
__________

様々なジャンルの作品を手掛けたフィル・カールソンの代表作にして、フィルム・ノワールの秀作。

フィル・カールソンと主演のジョン・ペインは、同じくフィルム・ノワール作品として評価の高い「ギャングを狙う男」(1953)、さらには「悪魔の島」(1955)でも組んでいる。

銀行強盗に利用されて人生を狂わされた男が、執念で犯人を突き止めようとする姿を描く犯罪ドラマ。

警察を強制解雇された犯行を実行するリーダーが、警察組織の行動などを把握した上で立てる強盗計画や、奪った現金そのものが目的でなく、保険会社の報酬を正当に受け取ろうとするという、緻密に練られた知能犯の犯行が、当人と事件に絡んだ主人公だけが知る形で進行していく。

娘の登場で計画は狂いかけるが、主人公を信頼したリーダーが、彼にすべてを託して息を引き取るクライマックスや、主人公が新たな人生を取り戻し、爽やかな雰囲気で終わるラストもいい。

主演のジョン・ペインは、銀行強盗に利用されて窮地に追い込まれながら、執念で事件を解決する主人公を見事に演じている。

主人公に惹かれながら支えようとするコリーン・グレイ、その父親である元警官で、銀行強盗のリーダーを好演するプレストン・フォスター、その仲間となる3人の悪党ネヴィル・ブランド、同年「真昼の決闘」(1952)でデビューしたばかりのリー・ヴァン・クリーフ、神経質なヘビースモーカーであるジャック・イーラム、ホテルの売店の店員ドナ・ドレイク、ホテルの支配人マリオ・シレッティ、保険会社の調査員ハワード・ネグリー、主人公の取り調べをする刑事カールトン・ヤング、主人公を賭博場に案内するタクシーの運転手ドン・オルランドーなどが共演している。


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