1973年に発表された、劇作家リリアン・ヘルマンが心の友であった女性への想いを綴った自伝的著書”Pentimento”を基に製作された作品。 監督フレッド・ジンネマン、主演ジェーン・フォンダ、ヴァネッサ・レッドグレイヴ、ジェイソン・ロバーズ、マクシミリアン・シェル、メリル・ストリープ他共演のドラマ。 |
・ドラマ
■ スタッフ キャスト ■
監督:フレッド・ジンネマン
製作総指揮:ジュリアン・デロード
制作:リチャード・ロス
原作:リリアン・ヘルマン”Pentimento”
脚本:アルヴィン・サージェント
撮影:ダグラス・スローカム
編集
マルセル・ダーラム
ウォルター・マーチ
衣装デザイン:アンセア・サイバート
音楽:ジョルジュ・ドルリュー
出演
リリアン・ヘルマン:ジェーン・フォンダ
ジュリア:ヴァネッサ・レッドグレイヴ
ダシール・ハメット:ジェイソン・ロバーズ
ヨハン:マクシミリアン・シェル
アンネ・マリー:メリル・ストリープ
アラン・キャンベル:ハル・ホルブルック
ドロシー・パーカー:ローズマリー・マーフィー
サミー:ジョン・グローヴァー
ジュリア(少女期):リサ・ペリカン
リリアン・ヘルマン(少女期):スーザン・ジョーンズ
アメリカ 映画
配給 20世紀FOX
1977年製作 117分
公開
北米:1977年10月2日
日本:1978年6月
北米興行収入 $20,714,400
■ アカデミー賞 ■
第50回アカデミー賞
・受賞
助演男優(ジェイソン・ロバーズ)
助演女優(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)
脚色賞
・ノミネート
作品・監督
主演女優(ジェーン・フォンダ)
助演男優(マクシミリアン・シェル)
撮影・編集・衣装デザイン・作曲賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1934年。
劇作家リリアン・ヘルマン(ジェーン・フォンダ)は、処女作”The Children’s Hour”が書けずに苛立ち、同棲中の作家ダシール・ハメット(ジェイソン・ロバーズ)に当り散らす。
ハメットはそんなリリアンに、書けないのなら他所に移るべきだと彼女を突き放す。
そしてリリアンは、幼い頃の親友ジュリアのことを想い起こす。
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富豪令嬢である多感なジュリアと、姉妹以上の仲だったリリアンは、やがて成長し、ジュリア(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)はオックスフォード大学に通うことになる。
その後、ジュリアは医学を学ぶためにウィーン大学に通い、フロイト博士の助手をするつもりでいた。
そしてジュリアは、ファシズムやナチをあからさまに批判し始める。
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リリアンは、ハメットの言葉に従いパリに移り戯曲を書き上げるが、ウィーンで労働者の暴動が起き、200人の死亡者がでたことを知る。
ジュリアも重傷を負ったという報せを受けたリリアンは、急遽ウィーンに向かう。 痛々しい姿のジュリアを見舞ったリリアンだったが、病院を追い出され、”フリッツ・ヘルマン”という人物が予約したというホテルに滞在することになる。 その後リリアンは、言葉を発せないジュリアからメモ受け取り、パリに戻るよう指示される。 ジュリアは秘密裏に移送され、リリアンは彼女の消息が分からないままに、執筆を諦めてハメットの元に戻る。 やがて、リリアンの元にジュリアから一通の手紙が届き、彼女はジュリアの無事を知り執筆を続ける。 そしてリリアンは、戯曲”The Children’s Hour”を書き上げ、ハメットにそれを認められ、舞台は人々から絶賛される。 モスクワの演劇界からの招待を受けたリリアンは、兄のサミー(ジョン・グローヴァー)が共産党員だったアンネ・マリー(メリル・ストリープ)から、上流出身を隠して労働者運動に参加していたジュリアとの関係などを聞かれる。 リリアンは、作家仲間のアラン・キャンベル(ハル・ホルブルック)とドロシー・パーカー(ローズマリー・マーフィー)夫妻と共にパリに向かう。 そこで、ジュリアの知人だというヨハン(マクシミリアン・シェル)に声をかけられたリリアンは、彼の話を聞くようにという指示の、ジュリアからの手紙を見せられる。 ウィーン経由でモスクワ入りする予定だったリリアンだったが、ヨハンはそれを変更してベルリンに向かうよう指示する。 さらにヨハンは、反ヒトラー派のジュリアの同志を救うための、資金5万ドルをモスクワに運ぶことをリリアンに頼む。 ユダヤ人であるリリアンには危険な仕事で、ジュリアは無理強いはしないとのことだった。 ベルリン行きを決めたリリアンは、予定変更を気にするアランとドロシーと別れ、駅のホームでヨハンに仕事を受けることを告げて旅立つ。 列車内で、ヨハンに言われていた男性に、ジュリアから預かった帽子などを渡されたリリアンは、不安な旅を続ける。 国境でパスポートと手荷物検査を受けたリリアンは、無事にベルリンに到着し、ついにジュリアと再会する。 片足を失っていたジュリアを見て涙するリリアンは、彼女に帽子を渡して、それに隠された資金で、500から1000人の同志が救われることを知らされる。 そしてジュリアは、アルザスに子供がいることをリリアンに告げる。 子供にリリーという名前をつけたジュリアは、リリアンに彼女を預けるつもりだということを告げて、早々に別れを告げる。 乗り継ぎの列車に向かったリリアンは、ワルシャワ経由でモスクワ入りするが、そこで彼女は、ジュリアがナチの手で殺されたことを知る。 ”ジョン・ワトソン”という人物の手配で、ジュリアの遺体はロンドンに運ばれ、その後リリアンの手で埋葬される。 リリアンは”ジョン・ワトソン”を捜したのだが見つからず、アルザスのパン職人に預けられているはずの、ジュリアの娘リリーの消息を追う。 リリーを見つけられずに帰国したリリアンは、ハメットの出迎えを受ける。 ジュリアの祖父母の屋敷でも、彼女の存在が軽視されていたため、リリアンは、ジュリアとの約束が果たせないことで苦しむ日々を送る。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
処女作執筆に行き詰っていた、劇作家のリリアン・ヘルマンは、幼き頃からの心の友であるジュリアを想いつつ日々を過ごしていた。
苛立つリリアンは、同棲中の作家ダシール・ハメットに突き放されてパリに向かう。
その頃、ジュリアが労働者運動に参加して重傷を負ったことを知ったリリアンは急遽ウィーンに向かう。
リリアンはジュリアを見舞うものの、その後、彼女は秘密裏に移送されてしまう。
帰国してハメットの元に戻ったリリアンは、ようやく戯曲”The Children’s Hour”を書き上げ、その舞台は絶賛される。
やがてリリアンは、ファシズムの抵抗分子となったジュリアに加担し、彼女と共に激動の時代に翻弄されていく・・・。
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ウィリアム・ワイラー作品の「偽りの花園」(1941)で、女性初のアカデミー脚本賞候補にもなったリリアン・ヘルマンの人生に、大きく関わった”女性”(ジュリア)の存在を象徴的に描き、気性の激しいリリアンに対し、内面的な強さを持つジュリアの人物像を、ゆったりとした雰囲気や映像美と共に、フレッド・ジンネマンらしい実直さが伝わる演出で仕上げた作品。
第50回アカデミー賞では作品賞をはじめ10部門にノミネートされ、助演男優賞(ジェイソン・ロバーズ)と助演女優賞(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)、そして脚色賞を受賞した。
・ノミネート
作品、監督
主演女優(ジェーン・フォンダ)
助演男優(マクシミリアン・シェル)
撮影、編集、衣装デザイン、作曲賞
*ダシール・ハメットを演じたジェイソン・ロバーズは、前年の「大統領の陰謀」(1976)に続き助演賞を連続受賞した。
また、授賞式の際、助演賞を受賞したヴァネッサ・レッドグレイヴが、受賞スピーチで政治的な発言をして大ブーイングを受けて話題にもなった。
全編を通しての出演となる主演のジェーン・フォンダ以外は出番がそれほど多くない実力派俳優それぞれが、短い登場場面で非常に印象的な演技を見せている。
主人公リリアン・ヘルマンを演ずるジェーン・フォンダは、気が強く物怖じしない女性には見えるが、親友ジュリアのような芯の強さと大胆さのない、意外にもろい人物を見事に演じている。
揺るぎない持論の持ち主であり、リリアンを時に突き放し、そして支える、ハードボイルド作家のダシール・ハメットを演ずるジェイソン・ロバーズの、淡々とした抑え気味の演技、僅かな出演で派手さもないが強烈なインパクトを残し、アカデミー助演賞候補になった名優マクシミリアン・シェルら、玄人受けする役者の演技も見所の一つだ。
労働者運動のリーダー的な立場として信念を貫き、後に左翼思想に傾倒する親友リリアン・ヘルマンの憧れの存在として、繊細且つ力強い演技を見せるヴァネッサ・レッドグレイヴ、まだ20代の端役であるが、落ち着いた演技で、才能の片鱗を見せるメリル・ストリープ、その兄ジョン・グローヴァー、作家アラン・キャンベル役ハル・ホルブルックとその妻ドロシー・パーカーのローズマリー・マーフィーなどが共演している。