1978年に発表された、ドナルド・ウッズの著書”Biko”と”Asking for Trouble”を基に製作された作品。 南アフリカの黒人意識運動の中心人物である活動家スティーヴ・ビコと彼を支持したジャーナリストのドナルド・ウッズとの交流を描く、製作、監督リチャード・アッテンボロー、主演ケヴィン・クライン、デンゼル・ワシントン、ペネロープ・ウィルトン、ケヴィン・マクナリー他共演のドラマ。 |
・ドラマ
・デンゼル・ワシントン / Denzel Washington 作品一覧
■ スタッフ キャスト ■
監督:リチャード・アッテンボロー
製作:リチャード・アッテンボロー
原作:ドナルド・ウッズ”Biko”、”Asking for Trouble”
脚本:ジョン・ブライリー
撮影:ロニー・テイラー
編集:レスリー・ウォーカー
音楽
ジョージ・フェントン
ヨナス・グワングワ
出演
ドナルド・ウッズ:ケヴィン・クライン
スティーヴ・ビコ:デンゼル・ワシントン
ウェンディ・ウッズ:ペネロープ・ウィルトン
レソト駐在高等弁務官代理:アレック・マッコーエン
ケン・ロバートソン:ケヴィン・マクナリー
検察官:イアン・リチャードソン
ジミー・クルーガー法務大臣:ジョン・ソウ
デウェット警部:ティモシー・ウェスト
マンペラ・ランペーレ医師:ジョセット・サイモン
ブルース・ヘイ:ジョン・ハーグリーブス
レミック:マイルス・アンダーソン
カニ神父:ゼイクス・モカエ
マペトラ:ジョン・マッシキザ
ンツィキ・ビコ:ジュアニタ・ウォーターマン
ドン・カード:ジュリアン・グローヴァー
アメリカ 映画
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ
1987年製作 157分
公開
イギリス:1987年11月26日
北米:1987年11月6日
日本:1988年2月27日
製作費 $29,000,000
北米興行収入 $5,899,800
■ アカデミー賞 ■
第60回アカデミー賞
・ノミネート
助演男優賞(デンゼル・ワシントン)
作曲・歌曲賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1975年11月24日、早朝、南アフリカ、ケープ州、クロスロード居住区。
政府は、公衆衛生、治安維持の目的で黒人居住者を排除する。
目覚めたマンペラ・ランペーレ医師(ジョセット・サイモン)は、ラジオで事件を知り、黒人意識運動の中心人物である活動家スティーヴ・ビコ(デンゼル・ワシントン)の身を案ずる。
リベラル派のジャーナリストで新聞社”デイリー・ディスパッチ”のドナルド・ウッズ(ケヴィン・クライン)は、カメラマンのケン・ロバートソン(ケヴィン・マクナリー)から、事件現場の写真を見せられる。
ビコを白人差別主義者と呼び記事にしたウッズに会ったランペーレは、黒人差別とは闘っていると言う彼から、白人憎悪を煽るビコとも戦う考えを聞く。
反論できない立場のビコに会いに行くべきだと言われたウッズは、真実を知れば、この国を救える者の1人だと話すランペーレから、軟禁状態のビコの居場所を知らされる。
キング・ウィリアムズ・タウン。
教会に向かったウッズは、ビコの妻(ジュアニタ・ウォーターマン)に迎られ、カニ神父(ゼイクス・モカエ)が、この場をコミュニティー・センターにしていることを知る。
ビコに会ったウッズは、互いの立場を理解して話をする。 翌日、2人は警察に監視されながら、黒人が運営する診療所に向かい、彼らの様子を見たランペーレは嬉しく思う。 ビコは、ウッズを黒人居住区に連れて行き、現状を見せることを考える。 その後、自宅でくつろぐウッズは、妻のウェンディにビコのことと、居住区に案内してくれることを話す。 ビコが居住区に行くことを心配するランペーレだったが、マペトラ(ジョン・マッシキザ)が警官の気を引いている間に抜け出すことを知る。 仲間たちと共に車に乗ったビコはウッズを居住区に連れて行き、貧しい暮らしを続ける人々と、アパルトヘイトの現状を知らせる。 ビコらと話し賛同したウッズは、マペトラとテンジーを社に連れて行き、2人を雇うことをケンに伝える。 密告者の情報でビコを尋問したデウェット警部(ティモシー・ウェスト)は、痛めつけようとするものの逆に殴られてしまう。 証人として法廷に引き出されたビコは、白人優位の政府に向けたメッセージを雄弁に語り、検察官(イアン・リチャードソン)の質問をかわし、白人には関係ない黒人運動の本質を訴える。 その夜、教会に侵入したデウェットらは、内部を破壊する。 翌日、教会に向かったウッズはカニ神父らと話し、デウェットらが襲ったことを知る。 ジミー・クルーガー法務大臣(ジョン・ソウ)に会ったウッズは、ビコを拘束する理由を尋ねる。 クルーガーは、白人がすべてを放棄するという希望を、ビコが黒人に持たせようとすることが問題だとウッズに伝える。 警察が教会を襲ったことを伝えたウッズは、調査し対処すること約束してくれたクルーガーの言葉を信じる。 翌日、訪ねて来た警官レミック(マイルス・アンダーソン)から、クルーガーと話をしたことで嫌がらせを受けたウッズは、それが彼からの指示だったことを知る。 そのことをウッズから知らされたビコは、夜中にレミックらが来たことに気づき、反政府関係の書類を隠していると言われ家宅捜査を受ける。 ビコが令状を確認する間に、妻は書類を子供のオムツに隠し、レミックらは何も見つけられなかった。 ウッズは、家政婦のエブリナを調べに来た警官に銃を向けて追い払う。 翌日、恋人と街にいたケンは、マペトラが警察に連行される様子を写真に撮る。 マペトラの件でウッズの家を訪ねたビコは、黒人学生の集会でケープタウンに向かうことを伝える。 テンジーも逮捕されてしまい、ウッズはそのことを記事にしようとする。 その後、マペトラが独房で首を吊ったことを知ったウッズは、ビコからの電話を受ける。 マペトラが死ぬ前日に、看守が糸で吊ったマペトラの人形を囚人に見せたという話をビコから知らされたウッズは、ショックを受ける。 ランペーレからケープタウン行きは危険だと言われたビコだったが、車で現地に向かう。 車を止められたビコは名前を言うよう指示され、”バントゥー・スティーヴ・ビコ”と答える。 1977年8月18日、ビコは逮捕拘束される。 1977年9月11日。 1977年9月12日、プレトリア。 それを知った妻、カニ神父、ランペーレは悲しむ。 妻を安置所の外に出したウッズは、ケンにビコの遺体を撮影させる。 ウッズとウェンディは、盛大に行なわれたビコの葬儀に参列する。 その後、ウッズの留守中にウェンディは、電話や発砲騒ぎで嫌がらせを受ける。 カニ神父、友人のドン・カード(ジュリアン・グローヴァー)、オーストラリアの外交官ブルース・ヘイ(ジョン・ハーグリーブス)と話し合ったウッズは、ウソをついたクルーガーを追及すればビコの死の真相が暴かれると考え、アメリカに向かい世論を動かそうとする。 1977年10月19日。 ビコの遺体の写真は没収され、仕事も禁じられたウッズは、既に写真は海外の通信社に届けられているので、自分を逮捕しても無駄だと警官に伝える。 自宅軟禁状態となったウッズは、カニ神父から亡命を勧めら、それをウェンディに伝えて、イギリスの出版社が本を出すことを約束したことを話す。 5人の子供を抱えて仕事もない現状で、故郷を捨てる気にもなれないウェンディは、ビコの死を無駄にしたくないウッズが、何としても本を出版したいという気持ちは理解するものの迷う。 その後、家に小包が届き、子供たちは中に入っていたビコのTシャツを見て喜ぶ。 メアリーが目が痛いと言って泣き始め、シャツに刺激物が付着していることに気づいたウッズとウェンディは驚く。 ドンからの電話で、小包を送ってきたのが保安警察だと分かり、ウェンディは、本を出版するようにとウッズに伝える。 監視の目を避けて家を抜け出したウッズは、ブルースの協力で国外脱出計画を立てる。 ”カレン神父”に扮するウッズは、ニューイヤーズ・イヴにレソト経由でボツワナに飛行機で向かうことになる。 カニ神父とも打ち合わせをしたウッズは、単独でレソトに行き、ウェンディと子供たちは車で両親の家に向かわせて、打ち合わせた時間に彼女に連絡する計画を確認する。 1977年、ニューイヤーズ・イヴ。 計画を知る長男のディロンと長女のジェーンが、幼い弟妹の世話をしている間に、ウェンディはウッズを連れ出すことになっていた。 ジェーンとディロンを抱きしめたウッズは、ウェンディが運転する車の後部座席に隠れ、警察の監視に気づかれずに家を出る。 車を降りたウッズは、ヒッチハイクをしてレソトのマセルに向かうことになる。 ビコの死に関する審問会が開かれ、彼の死が、第三者の加えた違法行為であることを示す証拠は何もないという結論となる。 ウェンディは、ウッズは2階にいることを子供たちに伝えて新年を祝う。 スタターハイム、マセルまで520Km。 護送車を降りたウッズはかなり遅れてしまい、待っていたカニ神父の車に乗る。 午前5時20分、テレ川。 国境検問所が開くのを待つウッズは、郵便配達人のモーゼの車に乗せてもらえることになる。 子供たちを連れて海岸に向かうことにしていたウェンディは、エブリナに愛犬チャーリーを任せる。 何も気づかないエブリナに別れを告げたウェンディは、監視に疑われることなく家を去る。 橋を越えてレソトに入国したウッズは、ビコのことと自由について考える。 街道を走るウェンディは、子供たちに、祖父母の家に向かいウッズの電話を待ち、合流して皆でイギリスに向かうことを伝る。 子供たちは、エブリナやチャーリーのことを気にする。 ウッズは、先回りして待っていたブルースと共に、急いでマセルに向かう。 エブリナは、家族の身の回りのものが消えていることに気づく。 マセル。 到着したウェンディと話したウッズは、無事についたことを伝えて、テレ橋に向かうよう指示する。 レソトの政府職員と話をしたウッズは、危険を承知で空路ボツワナに向かう考えを変えない。 テレ橋。 飛行場に着いたウェンディと子供たちは、ウッズとブルースに迎えられる。 ウッズの逃亡を知った監視の警官は、家に押し入る。 出発を前にウッズは、高等弁務官代理から、南アフリカ政府から強制着陸の警告を知らされるものの、旅立つ決意をする。 首相の命令で政府職員も同行することになり、ウッズらは飛び立つ。 ウッズは、南アフリカ上空を飛行しながら、ビコに電話をした”ソウェト蜂起”のことを考える。 この暴動で、700名の学生が死亡し、負傷者は4000人を超えた。 1962年の議会法案で、南アフリカ政府は、裁判を行わずに拘留措置をとることを合法化した。 ”神よ、アフリカに祝福を”が流れる中、スティーヴ・ビコを含めた、拘置中に死亡した者の名前が表示される。
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拘束され過酷な環境で拷問を受けたビコは、脳に重度の障害を負ってしまい、1100キロ先のプレトリアの警察病院に移送されることになる。
車の荷台に乗せられて悪路を移動したビコは、その後、拘留中に死亡する。
出国しようとしたウッズは、保安警察の尋問を受け、拘束監視されることになり、イースト・ロンドンを出ることを禁じられる。
黒髪に染めたウッズは、原稿を鞄に入れて、ウェンディと共に出発する準備を整える。
村人から話を聞いた警官は神父のウッズを疑うことなく、クイーンズタウンに向かう彼を護送車に乗せる。
カニ神父と別れたウッズは川を渡ろうとするものの、諦めて付近の村落に向かう。
高等弁務府に向かったウッズは、高等弁務官代理(アレック・マッコーエン)に会い、政治亡命を希望して両親の家に電話をかける。
雨の中、義父母に見送られたウェンディは、子供たちを連れて国境を越え、迎えの車の元に向かう。
*(簡略ストー リー)
南アフリカ、ケープ州、イースト・ロンドン。
リベラル派のジャーナリスト、ドナルド・ウッズは、黒人意識運動の中心人物である活動家スティーヴ・ビコに興味を持ち、監視され軟禁状態の彼に接触して親交を深める。
ビコの考えを指示したウッズだったが、ビコは、逮捕拘留中に重度な脳障害を負い死亡してしまう。
ビコの死の真相を突き止めようとしたウッズは、それに関する記事を書いたために、警察に監視されて仕事も禁止される状況となる。
イギリスでビコに関する著書を出版する考えがあるウッズは、家族と共に政治亡命する決意をして、計画を実行に移すのだが・・・。
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「ガンジー」(1982)でアカデミー作品賞と監督賞を獲得したリチャード・アッテンボローが、”アパルトヘイト抵抗運動”の活動家である、若くしてこの世を去ったスティーヴ・ビコと、彼の考えを指示したジャーナリスト、ドナルド・ウッズとの交流を描いたドラマ。
物語は、1975年の南アフリカ政府によるクロスロード黒人居住区の排除から始まり、主人公とドナルド・ウッズと親交を深めたスティーヴ・ビコは、中盤前に拘束中に亡くなってしまう。
後半は、ビコの死の真相の解明と政府に抵抗することを決めた、ドナルド・ウッズとその家族の自由を求めた亡命計画が描かれている。
前半の繊細な人間描写と、後半の亡命計画のサスペンスとしての面白味を加えた見応えのある内容と共に、リチャード・アッテンボローの訴えようとするアパルトヘイトへの問題提起など、深く考えさせられる作品に仕上がっている。
主演のケヴィン・クラインは、スティーヴ・ビコとの親交を深め、彼の考えを理解するドナルド・ウッズを好演している。
スティーヴ・ビコの思想や人間性を見事に表現し演じたデンゼル・ワシントンの演技は絶賛され、第60回アカデミー賞では助演男優賞にノミネートされた。
*他のノミネート
作曲・歌曲賞
主人公である夫を支える妻ウェンディ・ウッズを印象的に演ずるペネロープ・ウィルトン、レソト駐在高等弁務官代理のアレック・マッコーエン、主人公に協力するカメラマンのケヴィン・マクナリー、検察官のイアン・リチャードソン、主人公を裏切るジミー・クルーガー法務大臣のジョン・ソウ、主人公らに嫌がらせをする警部ティモシー・ウェスト、ビコと共に活動するマンペラ・ランペーレ医師のジョセット・サイモン、主人公の亡命計画に協力するオーストラリア人の外交官ブルース・ヘイ役ジョン・ハーグリーブス、警官のマイルス・アンダーソン、主人公に協力する神父のゼイクス・モカエ、ビコと共に活動する青年ジョン・マッシキザ、ビコの妻ジュアニタ・ウォーターマン、主人公の協力者ジュリアン・グローヴァーなどが共演している。