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地獄の逃避行 Badlands (1973)

1958年に実際に起きた、チャールズ・スタークウェザーと恋人キャリル・アン・フューゲートが犯した殺人事件を基に製作された、テレンス・マリックの監督デビュー作。
出演マーティン・シーンシシー・スペイセクウォーレン・オーツ

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(サスペンス/犯罪)


スタッフ キャスト ■
監督:テレンス・マリック

製作総指揮:エドワード・R・プレスマン
製作:テレンス・マリック
脚本:テレンス・マリック
撮影
タク・フジモト

ブライアン・プロビン
ステヴァン・ラーナー
編集:ロバート・エストリン
音楽
ジェームズ・テイラー

ジョージ・ティプトン

出演
キット・キャラザース:マーティン・シーン

ホリー・サーギス:シシー・スペイセク
サーギス:ウォーレン・オーツ
ケイトー:ラモン・ビエリ
保安官補:アラン・ヴィント
保安官:ゲイリー・リトルジョン
富豪の屋敷を訪ねて来た男:テレンス・マリック

アメリカ 映画
配給 ワーナー・ブラザーズ

1973年製作 94分
公開
北米:1973年10月15日
日本:未公開
製作費 $450,000


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
サウスダコタ州。
反抗的な不良青年で市の清掃員のキット・キャラザース(マーティン・シーン)は、15歳のホリー・サーギス(シシー・スペイセク)に声をかける。

看板屋のホリーの父サーギス(ウォーレン・オーツ)は、娘が話していた青年のことを気にする。

清掃員をクビになったキットは、職安で牛舎での仕事を紹介される。

それを知ったホリーは、”ジェームズ・ディーン”にそっくりな彼と、自然に恋が芽生えていく。

幼い頃に母親を亡くしていた、それほど魅力もないホリーを、10歳も年上のキットは誘い続けるが、サーギスには秘密だった。
...全てを見る(結末あり)

しかし、全てを知ったサーギスは激怒して、ホリーの愛犬を射殺し、川に捨ててしまう。

ホリーは父親に監視され、キットは、一応、筋を通して彼女への思いをサーギスに伝えるが、それは受け入れられなかった。

その後キットは、ホリーの家に忍び込んで彼女の荷物をまとめていたが、そこにサーギスとホリーが戻ってくる。

銃を取り出したキットは、ホリーを連れて逃げることをサーギスに伝える。

サーギスはそれを許さずに、警察に通報しようとするが、キットは、容赦なく彼を射殺してしまう。

キットはサーギスが死んだことを確認して、家にガソリンを撒き火を放つ。

そしてキットは、自分と運命を共にする覚悟を決めたホリーと共に逃走する。

二人は、森の中に居住空間を作り生活を始め、追手が現れることを考えて、キットはそれに備える。

やがて、二人の存在を知った者達が現れ、潜んでいたキットは三人の男達を射殺する。

その場を離れた二人は、キットの清掃員仲間だったケイトー(ラモン・ビエリ)を訪ねる。

食事をした三人だったが、キットは不審な行動をとったケイトーを銃撃してしまう。

その後キットは、訪ねて来た若いカップルを地下に閉じ込め、ケイトーが死んだことを確認してその場を去る。

人々にキットの噂は広がり、自警団などが襲撃に備えていた。

食料などの調達のため、富豪の屋敷に押し入ったキットとホリーは、しばらく休息して、今回は主人を殺さずに、車を奪い逃走する。

キットは、検問を避けるために原野を走り、何日も文明から離れた生活を送る。

やがて二人はモンタナに入り、カナダのサスカチュワンに向かう。

しかし、そんな生活に限界を感じ始めたホリーの心は、次第にキットから離れていく。

荒野の採油現場で、ガソリンを調達しようとしたキットだったが、捜索のヘリコプターが現れる。

ホリーは同行を拒み、キットは一人を射殺してその場を逃れ、彼女は投降する。

ガソリンスタンドに寄ったキットは、パトカーに見つかり、その場を走り去る。

その後、逃げきれないことを悟ったキットは、タイヤを撃ち抜きパンクしたことにして、保安官(ゲイリー・リトルジョン)と保安官補(アラン・ヴィント)に投降する。

保安官補に動機を尋ねられたキットは、”悪い奴になりたかったと”答える。

飛行場に連行されたキットは、その場にいたホリーと言葉を交わし、二人は移送される。

刑務所に入れられたキットは、他の囚人とは接触しない独房に入れられ、ホリーは執行猶予となる。

ホリーはその後、弁護士の息子と結婚し、法廷で居眠りをしたキットは、半年後に電気椅子で処刑される。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
サウスダコタ州。
市の清掃員の不良青年キット・キャラザースは、15歳の少女ホリー・サーギスに声をかけ、二人は自然に恋に落ちる。
しかし、ホリーの父サーギスにそれを認めてもらえないキットは、彼女を連れて逃げようと考える。
それをサーギスに止められたキットは、彼を容赦なく彼を殺してしまい、家に火を放ちホリーを連れて逃亡する。
その後も、姿を現す者達を殺害するキットを警戒し、自警団なども組織される。
キットは、検問などを逃れるために道なき原野を走り抜けて逃亡を続ける。
しかし、文明から離れて暮らす生活に限界を感じたホリーの心は、次第にキットから離れていく・・・。
__________

寡作な映画作家である鬼才テレンス・マリックの監督デビュー作。
製作、脚本も担当するまだ20代の彼は、富豪の屋敷を訪ねてくる人物として出演もしている。

物語の主人公は青年なのだが、少女の視点で捉えられているところがポイントで、容赦ない殺人を繰り返す主人公の残虐性とは裏腹に、それを目の当たりにして語る少女の考えは、正に15歳の子供そのものであり、その人生観の未熟さが窺える脚本と演出は実に興味深い。

伝説的な映像作家と言えるテレンス・マリックは、さすがにデビュー作だけに粗さも見えるが、どこまでも続く荒野を映し出す映像が、殺人をゲームのようにして繰り返す暴走青年の心情と重なり、時折見せる詩的な言葉や表情が印象的で、彼のスタイルは既に感じられる作風でもある。

当時のスタッフ・キャストの知名度から言って、本作が日本で公開される要素はなく、マーティン・シーンが、後に「地獄の黙示録」(1979)で名を知られたというだけで、この邦題になった。

ジェームズ・ディーン”に似ているというより、主人公のモデルになったチャールズ・スタークウェザーがファンであったために、似せていると言った方がいいようにも思えるマーティン・シーンは、若くは見えるが既に30歳を過ぎキャリアも積んでいて、殺人に深い感情を示さない主人公を熱演している。

3年後の「キャリー」(1976)で才能が開花するシシー・スペイセクは、平凡な少女の役なのだが、その実力が垣間見れる、主人公をも上回るインパクトのある役柄を好演している。

少女の父親で、主人公に殺される最初の犠牲者ウォーレン・オーツ、主人公の元同僚ラモン・ビエリ、保安官補のアラン・ヴィント、保安官のゲイリー・リトルジョンなどが共演している。


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