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怪物はささやく A Monster Calls (2016)

2011年に発表された、パトリック・ネスヤングアダルト小説”A Monster Calls”を基に製作された作品。
突然、姿を現した大木のモンスターに人生と人間の本質を教えられる少年の心の成長を描く、監督J・A・バヨナ、出演ルイス・マクドゥーガルシガニー・ウィーバーフェリシティ・ジョーンズトビー・ケベルリーアム・ニーソンジェラルディン・チャップリン他共演のダーク・ファンタジー。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ファンタジー


スタッフ キャスト
監督:J・A・バヨナ
製作:ベレン・アティエンサ
製作総指揮
パトリック・ネス
ジェフ・スコール
ビル・ポーラッド
ジョナサン・キング
ミッチ・ホーウィッツ
パトリック・ワックスバーガー
エンリケ・ロペス・ラビニュ
ジスラン・バロワ
アルバロ・アウグスティン
原作:パトリック・ネスA Monster Calls
原案:シヴォーン・ダウド
脚本:パトリック・ネス
撮影:オスカル・ファウラ
編集
ベルナ・ビラプラーナ
ジャウマ・マルティ
音楽:フェルナンド・ベラスケス

出演
クレイトン夫人:シガニー・ウィーバー
エリザベス・クレイトン:フェリシティ・ジョーンズ
コナー・オマリー:ルイス・マクドゥーガル

コナー・オマリー(5歳):マックス・ゴール
リアム・オマリー:トビー・ケベル
モンスター/クレイトン:リーアム・ニーソン
ハリー:ジェイムズ・メルヴィル
校長:ジェラルディン・チャップリン

アメリカ/スペイン/イギリス 映画
配給
ユニバーサル・ピクチャーズ
Entertainment One
2016年製作 108分
公開
北米:2016年12月23日
日本:2017年6月9日
製作費 $43,000,000
北米興行収入 $3,740,820
世界 $47,309,310


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー
イングランド
少年コナー・オマリー(ルイス・マクドゥーガル)は、毎晩、教会が破壊されて崩落し、できた穴に落下する母エリザベス・クレイトン(フェリシティ・ジョーンズ)を助けられなかった悪夢を見て、12時7分に目覚める。

自分で朝食の支度をして洗濯もしたコナーは、重病で化学療法を行っているエリザベスの様子を見て学校に向かう。

学校でコナーは、クラスメイトのハリー(ジェイムズ・メルヴィル)を睨み、彼に殴られる。

帰宅したコナーは、祖父の古い映写機を用意してくれたエリザベスと共に”キングコング”を観る。

美術を志していたエリザベスの才能を受け継いでいたコナーは、その夜、絵を描いていた。

周囲の異変に気づき窓の外を見たコナーは、近づいてきた”イチイ”の”癒しの木”のモンスター(リーアム・ニーソン)から、さらいに来たと言われたために驚く。
...全てを見る(結末あり)

モンスターに体を掴まれたコナーは、3つの物語を話すと言われ、その後に4つ目を自分が話し、その物語こそが真実だと知らされる。

自分が隠している真実が悪夢だと言うモンスターに、話すことを断った場合はどうなるか尋ねたコナーは、現実に戻る。

怖くなったコナーはエリザベスのベッドに向かい、5分だけいさせてほしいと言って眠る。

結局、朝までエリザベスと眠ってしまったコナーは、教会の敷地内の大木を見に行く。

アメリカにいる別れた夫リアム(トビー・ケベル)の元にコナーを行かせるつもりのエリザベスは、訪ねて来た母(シガニー・ウィーバー)に反対される。

祖母から一緒に暮らすことを提案されたコナーは、冷酷で厳しい彼女の意見に従わず、エリザベスが回復することを確信する。

しかし、苦しむエリザベスの姿を見たコナーは、祖母の指示に従いソファで眠る。

12時7分になり、悪夢で目覚めたコナーは、庭にいたモンスターの元に向かい、話を聞くことになる。
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遠い昔、この地が王国だったころ、王は3人の息子を失い、王妃もその後を追った。

王は、唯一の世継ぎである幼い孫を王子として育て、勇敢で誠実な人物に成長し、国民は彼を慕い期待した。

再婚した王は病に倒れ、毒を盛った若い王妃は魔女だと噂され、その後、王は崩御する。

王子が成人していないために、王妃が1年間、王国を統治することになる。

その頃、農家の娘と恋に落ちていた王子を、国民は祝福した。

王位が気に入った王妃は王子と結婚しようとしたが、王子はそれを拒んで馬で逃走し、イチイの木の下で夜を明かした。

恋人が殺されていることに気づいた王子は、王妃の仕業と考え、村人たちは復讐のために立ち上がった。

それに加勢したのがモンスターであり、王妃の姿は二度と見られなかった。

モンスターは王妃を遠い場所に運び、彼女は海辺の村で別の人生を歩んだ。

ところが、恋人を殺したのは王妃ではなく、王妃の失脚を狙った王子の犯行だったのだ。
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物語の内容に納得できないコナーに、世の中とはそういうものだと話すモンスターは、王妃は人殺しではなかったが魔女だったことは確かだと伝える。
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王妃は毒を盛ったのではなく、王は老衰で死んだのだった。

その後、王子は敬愛される王になり、王国を統治した。
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物事に善も悪もないと言うモンスターは、祖母をどうにかしてほしいコナーに、その必要はないと伝える。

学校から戻ったコナーは、祖母から父が日曜に来ることを知らされ、数日、彼女の家に泊まることになる。

エリザベスと話したコナーは、祖母の家に行かなくてはならない理由を尋ね、今の治療がうまくいっていないために、別の治療を試すことを知る。

自分には本当のことを言ってほしいと伝えたコナーは、エリザベスと抱き合う。

放課後、ハリーを睨んだコナーは、教室で振り向いた際に自分を見ている理由を訊かれて殴られる。

祖母から、居間にある代々伝わる柱時計の話を聞かされたコナーは、仕事に出かける彼女から、何も触らないようにと言われ、努力しようとする。

指示に従わず色々なものに触れて絵を描いたコナーは、ある部屋が気になり鍵穴から中を覗く。

訪ねてた父リアムと共に遊園地に行き楽しんだコナーは、レストランに向かう。

リアムからクリスマス休暇にロサンゼルスに遊びに来ることを提案されたコナーは、祖母と一緒に暮らしたくないと伝える。

自分の居場所はここだと言われたコナーは、リアムに従うしかなかった。

家に送ってもらったコナーは、質問に対し何一つ満足する返事をしてもらえないため、リアムに腹を立てて車を降りる。

苛立つコナーは、6時の時報を知らせる柱時計をいじり、12時7分を差したところで針を折ってしまう。

現われたモンスターは、最後は破壊で終わる2つ目の物語を語り始める。
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150年前、工業が急速に発展し環境が破壊されたが、緑の残る町外れに、調合師と言われた時代遅れの頑固者がいた。

人々に信頼される牧師は、村人の反感を買う調合師の治療法に反対した。

そのせいで、調合師は廃業に追い込まれた。

牧師の庭にあったイチイの木の実や樹皮を正しく調合すれば、どんな病も治せる薬が作れたため、木を切らせてもらおうとした調合師だったが、牧師に許してもらえなかった。

その後、最愛の娘2人が病に倒れた牧師は、調合師に助けを求める。

プライドを捨て、信念を貫かない牧師に協力する気がない調合師はそれを断る。

牧師の娘たちは亡くなり、木のモンスターは立ち上がり、牧師の家を破壊した。
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調合師は治療者としての信念を貫いたと話すモンスターは、それこそが大切なことだとコナーに伝える。

調合師の家ではなく牧師の家を壊すとコナーに伝えたモンスターは、コナーに手伝わせて牧師の家を破壊する。

現実に戻ったコナーは、部屋の中を破壊していることに気づく。

帰宅した祖母は驚き、大切にしていた柱時計に触れながら怒りを堪え、動揺するコナーから話しかけられるものの、何も話さずに部屋を出る。

翌朝コナーは、朝食の用意をしていたリアムから、祖母から電話があり、エリザベスの容態が悪化したために病院に行ったことを知らされる。

コナーと共に居間を片付けたリアムは、コナーが5歳の時に祖母に渡した映像のDVDを見つける。

妊娠したエリザベスが美大に行けなかったことを知ったコナーは、それでも彼女は喜び幸せを感じたと言うリアムから、人生は複雑だということを教えられる。

リアムと共に病院に行ったコナーは、治療がうまくいかないので、新しい薬を試すことをエリアベスから知らされる。

今度の薬が、エリザベスがいつも話している”癒しの木”で作られていることを知ったコナーは、モンスターの話を思いだし母の回復を期待する。

その夜の12時7分にモンスターを呼んだコナーは、エリザベスが試す薬のことを確認し、治る病なら効くと言われ、3つ目の物語の件について話をされる。

その後は自分が話す番だと言うモンスターは、その場を去る。

翌日コナーは、ロサンゼルスに戻るリアムに、今度の薬は効くと伝え、たぶん無理だと言う父に、12時7分に来るモンスターの話をする。

それはただの夢で現実を見るようにと言われたコナーは、旅立つリアムと別れる。

その夜コナーは、DVDを見つけた祖母が、5歳の自分(マックス・ゴール)とエリザベスが絵を描く映像を見ていることに気づく。

学校のランチの時間、コナーが自分に殴られたいと思い睨んでいることが分かったハリーは、もう相手にしないと言ってコナーと握手し、母親の回復を祈り別れる。

12時7分になり、現われたモンスターは、3つ目の物語を語る時だとコナーに伝える。

誰からも見えない男が、無視されていることに嫌気がさしてモンスターを呼んだと言われたコナーは、ハリーに向かって走り襲い掛かる。

校長(ジェラルディン・チャップリン)に呼ばれたコナーは、校則に従えば退学だが教師としてはできないと言われ、罰は与えられなかった。

授業に戻ったコナーは、病院からの連絡があり、容態が悪化したエリザベスの元に祖母と共に向かう。

エリザベスから新しい治療が効かないことを知らされたコナーは、100年、一緒にいたかったと言われて悲しくなる。

大木に向かったコナーは、現われたモンスターに癒しの木が効かなかったことを伝える。

助けを求めるコナーに、4つ目の物語を語る時だと伝えたモンスターは、エリザベスが来ていることを教える。

エリアベスは、崩壊した教会の陥没した穴に落ちそうになり、コナーが母を救おうとする。

モンスターから、物語の真実であり自分の悪夢だと言われたコナーは、エリザベスを助けることができなかった。

コナーは、真実である4つ目の物語を話すことをモンスターから強要される。

エリザベスの苦しみを終わらせるために、手を放し死なせたと言うコナーは、穴に落下するもののモンスターに救われる。

勇敢だったと言われたコナーは、治らないと分かっていたとモンスターに伝える。

孤独から逃れたかったと言うコナーは、頑張れたのにいつも手を放してしまうとモンスターに伝える。

それが自分の真実だと言われたコナーは、エリザベスは自分のせいで死ぬとモンスターに伝える。

苦痛から逃れたかっただけで人間なら当然だと言うモンスターは、それを否定するコナーに、人殺しの王子は国民に愛され、調合師は嫌われ者だが正しいことをしたと伝える。

人間は複雑な生き物であり、考えることよりも行動することだと言うモンスターは、どうするべきか尋ねるコナーに、真実を話すようにと伝える。

疲れたコナーは、大木の下で眠ってしまう。

夜になり、捜しに来た祖母と共に病院に向かったコナーは、車内で彼女に謝罪する。

コナーを許した祖母は、互いに学ばなければいけない、エリザベスという共通点もあると伝えて彼を抱きしめる。

病院に着き、エリザベスの元に向かい手を握ったコナーは、現れたモンスターから、物語の結末が始まると言われ、試練は乗り越えられると励まされる。

行かないでほしいと言うコナーを抱きしめたエリザベスは、母の手も握り締める。

物語の終わりは、少年は母親を抱きしめ、それでようやく彼は母親を手放せるのだった。

時計は12時7分を表示していた。

翌朝、帰宅した祖母は、用意していた部屋の鍵をコナーに渡す。

祖母が自分のために準備していた部屋には、エリザベスの画集が置かれていた。

それには、モンスターが語った物語が描かれ、コナーは、エリザベスが自分と同じ経験したことを知る。


解説 評価 感想

*(簡略ストー リー)
イングランド
少年コナー・オマリーは、毎晩12時7分に、母エリザベスを助けられなかった悪夢を見て目覚める。
重病で化学療法を行っているエリザベスの回復を願うコナーは、冷酷で厳しい祖母の世話になることになる。
エリザベスと離婚した父リアムもロサンゼルスから訪ねて来たため、それが何を意味するか不安だったコナーの前に、突然”癒しの木”のモンスターが現れ、3つの物語を語ることを知らされる。
4つ目の物語を自分で話すことをコナーに強要したモンスターは、最初の物語を語り始めるのだが・・・。
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47歳でこの世を去った作家シヴォーン・ダウドのアイデアをパトリック・ネスが小説化し、ベストセラーとなった”A Monster Calls”を基に製作された作品。

「永遠のこどもたち」(2007)、「インポッシブル」(2012)などで世界的な評価を得たJ・A・バヨナの監督作品。

突然、姿を現した”癒しの木”のモンスターに、人生と人間の本質を教えられる少年の心の成長を描くダーク・ファンタジー。

重病で苦しむ最愛の母との別れを、主人公の少年は現実として受け入れられない姿が実に痛々しい。

少年が主人公のファンタジーではあるが、人生の厳しさや世の中の不条理を描く、あらゆる年齢層が楽しめる作品に仕上がっている。

モンスターの造形や特殊効果も見事であり、物語を解説するアニメーションなど美しい映像も印象的だ。

モンスターの声を演ずるリーアム・ニーソンは、主人公の少年の祖父として写真の中でも登場する。

主人公を演ずるルイス・マクドゥーガルは、母親との別れという現実を受け入れられない少年を好演している。

娘の死を見届けなければならない辛い立場であり、主人公に厳しく接する祖母のシガニー・ウィーバー、息子と共に末永く生きることを望みながら重病と闘う母親フェリシティ・ジョーンズロサンゼルスで暮らすその夫トビー・ケベル、主人公をいじめるクラスメイトのメルヴィル、校長のジェラルディン・チャップリンなどが共演している。


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