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暗黒街の弾痕 You Only Live Once (1937)

犯罪者を愛した女性の一途な思いと2人の逃亡を描く、製作総指揮ウォルター・ウェンジャー、監督フリッツ・ラング、主演シルヴィア・シドニーヘンリー・フォンダバートン・マクレーン他共演によるフィルム・ノワールにして犯罪ドラマの秀作。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(サスペンス/犯罪)


スタッフ キャスト ■
監督:フリッツ・ラング

製作総指揮:ウォルター・ウェンジャー
脚本
ジーン・タウン

C・グレアム・ベイカー
撮影:レオン・シャムロイ
編集:ダニエル・マンデル
音楽:アルフレッド・ニューマン

出演
ジョーン”ジョー”グレアム:シルヴィア・シドニー

エディ・テイラー:ヘンリー・フォンダ
スティーヴン・ホイットニー:バートン・マクレーン
ボニー・グレアム:ジーン・ディクソン
ドーラン神父:ウィリアム・ガーガン
ヒル医師:ジェローム・コーワン
イーサン:チャールズ・セール
ヘスター:マーガレット・ハミルトン
マグシー:ウォーレン・ハイマー
ウィーラー刑務所長:ジョン・レイ
ロジャース:グイン”ビッグ・ボーイ”ウィリアムズ
ケイシー:ウォード・ボンド
ガソリンスタンドの店員:ジャック・カーソン

アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ

1937年製作 86分
公開
北米:1937年1月29日
日本:1937年6月3日
製作費 $628,140
北米興行収入 $589,500


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
ジョーン”ジョー”グレアム(シルヴィア・シドニー)は、弁護士スティーヴン・ホイットニー(バートン・マクレーン)の秘書を務めながら、恋人エディ・テイラー(ヘンリー・フォンダ)が刑期を終えて出所する日を迎える。

エディを弁護したことでジョーから感謝されたスティーヴンは、犯罪者であるエディに献身的に尽くす彼女に感心するものの不安が過ぎる。

帰宅したジョーは、エディと結婚して旅立つため準備をするが、姉のボニー(ジーン・ディクソン)は、前科者の男を愛するジョーの気持が理解できない。
...全てを見る(結末あり)

ウィーラー刑務所長(ジョン・レイ)から、三度目の出所であるため再び戻ることがないようにと警告されたエディは、それを約束してスティーヴンと共に刑務所を去ろうとする。

世話になったドーラン神父(ウィリアム・ガーガン)に声をかけられたエディは、迎えに来ていたジョーに再会して喜ぶ。

エディとジョーは、スティーヴンとドーラン神父に感謝して旅立つ。

ジョーの本心が愛なのか憐れみなのかを考えるスティーヴンに、神父は愛だと答える。

結婚した二人は宿に泊まるが、主人のイーサン(チャールズ・セール)は、エディの顔に見覚えがあり態度が気になったことを妻へスター(マーガレット・ハミルトン)に伝える。

考え過ぎだと言われたイーサンは、古い犯罪雑誌を調べてみることにする。

幸せを実感するエディとジョーは、その場にあった池で語り合う。

カエルの鳴き声を聴いたエディは、子供時代にカエルをいじめた友人を殴ったため鑑別所に入れられたのが、悪事に走るきっかけだったことを話す。

なぜそんな自分に尽くしてくれるのかを問うエディだったが、ジョーは恋したからだと伝え、二人は愛を確かめ合う。

エディが要注意人物だと雑誌に掲載されていることを確認したイーサンは、へスターと共に彼らの部屋に向かう。

迷惑なので出て行ってほしいと言われたエディは、怒りを抑えてそれを承知するしかなく、ジョーに気にすることわないと言われる。

その後、スティーヴンに運送屋の仕事を紹介されていたエディは運転手として働くが、仕事中にジョーと共に売り家を見に行ってしまう。

ジョーと別れたエディは、運送会社の社長に遅れたことを責められ、前科者は信用できないと言われてクビになってしまう。

悪党仲間から銀行強盗に誘われていたエディは、新居に引っ越したと言うジョーからの電話を受け、仕事の件を話せないまま考えを巡らせる。

ジョーを悲しませたくないエディは運送会社に向い、社長に謝罪してもう一度チャンスが欲しいと言って頼みこむ。

しかし、相手にされないエディは出て行けと言われ、憤慨して相手を殴ってしまう。

その頃、銀行の現金輸送車襲撃事件が起き、車は奪われるものの、犯人は危険地帯で事故を起こし崖から落ち川に転落する。

犯人に疑われたエディはジョーが待つ家に向かい、6人が犠牲になった現場に自分の帽子が落ちていたことを報ずる新聞を彼女に見せる。

罪を着せられたことを伝えるエディは、ジョーが自分を信じてくれることを確認する。

逃亡を考えるエディだったが、ジョーに自首するようにと言われる。

今度こそ電気椅子で処刑されると言って、それに納得できないエディは、押し入ってきた警官に逮捕されてしまう。

有罪となったエディは死刑判決を受け、再び刑務所に戻り処刑の日を待つことになる。

法廷から出たエディは、自首するように言ったジョーが後悔して涙しても何も答えずその場を去る。

裁判所の外で市民から非難されたジョーは、無実の者が死刑になるのが楽しいかと言って人々を罵倒する。

何とかエディを助けようとするスティーヴンだったが、こうなるのが運命だと考えるボニーに、無駄な努力は止めるよう言われる。

妊娠しているジョーのためにも、エディのことは忘れるようにとボニーは付け加える。

ジョーの面会を断るエディだったが、彼女も苦しんでいるとドーラン神父に言われ、何か役に立つはずだと説得されたため会う気になる。

愛を告げるジョーにそれを証明するよう伝えたエディは、銃を手に入れて最後の面会で渡すよう指示する。

不可能だと言うジョーに、自分が殺されてもいいのかと伝えたエディは席を立つ。

ドーラン神父と共にエディの面会に向かったジョーは、金属探知機に反応してしまう。

機転を利かせた神父が、ナイフを持参してしまったことを看守に伝えて部屋に戻る。

銃を渡すよう神父に言われたジョーはそれに従い、面会に行くことを拒む。

エディの最後の時に、カエルの話は覚えていると伝えてほしいとジョーは神父に頼む。

看守のロジャース(グイン”ビッグ・ボーイ”ウィリアムズ)にジョーに会いたいと伝えたエディだったが、規則違反だと言われる。

エディと仲の良かった終身犯マグシー(ウォーレン・ハイマー)が食事を運び、エディにメモがあることを知らせる。

病棟のベッドに銃が隠してあることを知ったエディは、コップを壊してそれで手首を切る。

エディは病棟に運ばれて治療を受け、ヒル医師(ジェローム・コーワン)が輸血の準備をする。

ヒルに電話をしたウィーラー所長は、エディが無事であることを確認し、死刑執行は予定通り11時に行うことを決める。

ロジャースの血液を輸血して助かったエディは、その場で暴れるものの取り押さえられ、個室に連れて行かれる。

死刑執行が迫るジョーは、エディのことを諦めようとする。

ベッドに隠された銃を手に入れたエディは、ヒルを人質に取りその場から逃れようとする。

警報が鳴り、それを知らされたウィーラーは、エディを見つけ次第射殺するよう命ずる。

所内放送をしたウィーラーは、ヒルの安全を確保しつつエディの射殺許可を出す。

門に向かったエディは、無駄な抵抗はやめるようウィーラーに言われるが、それに従おうとしない。

その頃、逃走した現金輸送車が川から引き上げられ、真犯人が乗っていたため、エディが無実だったことが刑務所に電信で届く。

それがウィーラーに知らされ、恩赦により釈放されるとエディに伝える。

ウィーラーの言葉を信じないエディは、門を開けなければヒルを殺すと答える。

ドーラン神父が説得に向かうものの、エディは彼さえも信じようとせずグルだと言って銃撃してしまう。

仕方なくウィーラーは門を開け、エディを見守るドーラン神父は息絶える。

11時が迫り動揺するジョーは、服毒自殺をしようとする。

その頃エディはダイナーに立ち寄り、自分が無実だという話が真実だったことを知り、ジョーに電話をかける。

エディからの電話をボニーに知らされたジョーは、毒の入ったコップを捨てて受話器を取る。

銃弾を受けていたエディは、駅の貨物車両に隠れていることをジョーに伝える。

ボニーとスティーヴンの制止を振り切り、現金を渡され車を借りたジョーは駅に向かう。

貨物車両のエディを見つけたジョーは、彼が怪我をしていることと、ドーラン神父を信じずに殺してしまったことを知らされる。

エディを励ますジョーは、彼を車両から降ろして逃亡する。

警察に呼ばれたボニーは、二人の居場所を知らないと言って、妹ジョーを救うよう訴える。

無実のエディを逮捕し死刑判決を下していた警察側を、スティーヴンは激しく非難する。

食料や衣料品を手に入れたジョーは、エディを介抱しながら逃亡を続けていたが、ボニーの元に戻るようにと彼に言われる。

ドーラン神父の顔が頭に浮かぶと言うエディに、神父を殺したのも自分だと答えたジョーは、一緒に逃げることを伝える。

エディとジョーは、指名手配されて5000ドルの賞金がかけられ、していない犯罪まで彼らのせいにされる。

回復したエディは、妊娠中のジョーを労りながら警察の追跡を逃れ、彼らの賞金は1万ドルに上がる。

病院にも行かないまま、やがて二人には子供が生れる。

モーテルに来て欲しいと言うエディからの手紙を受け取ったスティーヴンは、ボニーと共にその場に向う。

現れたジョーは、連れて来た子供の名前も付けづに”ベイビー”と呼んでいたことをスティーヴンとボニーに伝える。

ジョーが子供を置いてエディの元に戻ろうとするため、ボニーは船で外国に逃がす準備はできていることを知らせる。

エディと逮捕された場合は、10年の刑は覚悟しなければならないと言うスティーヴンは、ハバナに向かえば全てがうまくいき子供のためにもそうするべきだと説得する。

考えを変えないジョーは、二人に感謝して別れを告げてその場を去る。

販売機でタバコを買うジョーが、指名手配中の逃亡者だと確認したモーテルのオーナーは、賞金が1万ドルだったことに気づき警察に通報する。

エディの元に向い車で出発し、永遠に一緒だと伝えたジョーは、もうすぐ国境だと言われる。

モーテルの部屋の中を覗いていたエディは、子供が心地よさそうだったことを話し、家で暮らすのが望ましいことをジョーに伝える。

どの場所でも自分達がいる場所が家だと語るジョーに、エディは愛してくれたことを感謝する。

買ってきたタバコに火を点けエディにくわえさせたジョーは、目の前に現れた警官に驚く。

引き返した二人だったが、ジョーは銃弾を受けてしまう。

事故を起こしたエディは、国境だと言ってジョーと共にその場を離れる。

歩けないジョーを抱きかかえたエディは、国境を越えたところで立ち止まる。

瀕死のジョーは、また一緒に生きたいとエディに言い残して息を引き取る。

エディも銃弾を受けてしまい、ジョーにキスした彼には、”君は自由だ、扉は開かれている”というドーラン神父の声が聞こえる。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
ジョーン”ジョー”グレアムは、周囲の心配も気にせずに出所した恋人のエディ・テイラーと結婚する。
世話になった弁護士で、ジョーの雇用主でもあったスティーヴンに紹介された運送屋の運転手として働きだしたエディだったが、不手際を責められ解雇されてしまう。
その後、銀行の現金輸送車襲撃事件の犯人にされたエディは逮捕され、4度目の刑期に加え犠牲者を出したために死刑判決が下る。
それでもエディへの愛は変わらないジョーは、何んとか彼の命を救おうとするのだが・・・。
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オーストリア出身でユダヤ人であるためナチの迫害から逃れ亡命したという話には諸説あるフリッツ・ラングが、アメリカに渡り撮った作品。
フリッツ・ラングは自らナチに協力を申し出て、映画制作を続けたとも言われている。

ほぼ迷いが生じないまま、犯罪者である男性への愛を貫き通すか弱き女性の生き様を通し、人間の逞しさなども教えてくれる、フリッツ・ラングの寸分の狂いもないその映像表現には唸らされる。

ヒロインであるシルヴィア・シドニーの、悲しみに耐える表情が笑顔に変わる”輝き”、その恋人のヘンリー・フォンダが彼女を見つめるうつろな眼差しを捉える映像の素晴らしさ。

追い詰められる主人公の心理状態を表現する雨や霧などを効果的に使い、謎めいた現金輸送車襲撃事件の演出も見事だ。

アルフレッド・ニューマンの、ドラマにマッチした緊迫感溢れる音楽も印象に残る。

上記のように、表情だけで訴えるものがあるシルヴィア・シドニーヘンリー・フォンダの演技は秀逸で、まだ名優というには若過ぎる20代半ばと30代前半の二人の役者としての実力が十分に生かされている。

主人公の二人を助けようとする弁護士バートン・マクレーン、彼と協力し合いヒロインである妹の行動を見守るジーン・ディクソン、主人公を温かく見守る神父のウィリアム・ガーガン、エディ(ヘンリー・フォンダ)が脱獄する際に人質にとられる医師ジェローム・コーワン、主人公らが宿泊する宿の主人チャールズ・セールと妻マーガレット・ハミルトン、エディの脱獄に手を貸す終身犯ウォーレン・ハイマー、刑務所長のジョン・レイ、看守グイン”ビッグ・ボーイ”ウィリアムズウォード・ボンド、ガソリンスタンドの店員でジャック・カーソンなどが共演している。


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