1936年に発表された、ジョセフィン・テイのミステリー・小説”ロウソクのために一シリングを”を基に製作された作品。 殺人を疑われた青年と彼に協力する少女の真犯人探しを描く、監督アルフレッド・ヒッチコック、主演ノヴァ・ピルビーム、デリック・デ・マーニー、パーシー・マーモント他共演のサスペンス。 |
・アルフレッド・ヒッチコック Alfred Hitchcock 作品一覧
・アルフレッド・ヒッチコック / Alfred Hitchcock / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:アルフレッド・ヒッチコック
製作:エドワード・ブラック
原作:ジョセフィン・テイ”ロウソクのために一シリングを”
脚本
チャールズ・ベネット
エドウィン・グリーンウッド
アンソニー・アームストロング
ジェラルド・サヴォリ
アルマ・レヴィル
撮影:バーナード・ノールズ
編集:チャールズ・フレンド
音楽
ジャック・ビーヴァー
ルイス・レヴィ
出演
エリカ・バーゴイン:ノヴァ・ピルビーム
ロバート・ティスドール:デリック・デ・マーニー
バーゴイン署長:パーシー・マーモント
オールド・ウィル:エドワード・リグビー
クリスティン・クレイ:パメラ・カーメ
ガイ:ジョージ・カーゾン
ケント警部:ジョン・ロングデン
ミラー巡査部長:ジョージ・メリット
マーガレット:メアリー・クレア
エリカの叔父:ベイジル・ラドフォード
イギリス 映画
配給 General Film Distributors
1937年製作 83分
公開
イギリス:1937年11月
北米: 1938年2月17日
日本:1977年1月8日
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
人気映画女優クリスティン・クレイ(パメラ・カーメ)は、浮気していることを夫のガイ(ジョージ・カーゾン)に追及され、離婚すると言う身勝手さを批判される。
それを聞き入れようとしないクリスティンはガイの頬を叩き、彼は何も言わずに家を出る。
海辺の家を出たガイは、雨の降る中あることを考えながら瞬きをする。
翌朝、水着姿のクリスティンがベルトと共に浜に打ち上げられる。
付近を通りがかったロバート・ティスドール(デリック・デ・マーニー)は、知人だったクリスティンが倒れているのに気づき、死んでいると思い警察に通報しようとしてその場を離れる。 そこに二人の女性が現れてクリスティンを発見し、走り去るロバートを目撃する。 ロバートの報せで浜に駆け付けた警官は、溺死ではなくベルトによる絞殺を視野に入れて聞き込みを始める。 警官は目撃者の話を聞くが、第一発見者だと言うロバートを二人の女性が犯人だと決めつける。 ロバートは、死体を発見したため助けを求めその場を離れ、数分で戻ったことを伝える。 しかし、クリスティンは死亡して数分しかたっていないと、その場にいた者は指摘する。 レインコートのベルトで殺されたクリスティンの事件は大きく報道され、ロバートは容疑者として逮捕拘留される。 凶器はロバートのコートのベルトだったが、彼はそれが盗まれたことをケント警部(ジョン・ロングデン)とミラー巡査部長(ジョージ・メリット)に伝える。 クリスティンとはアメリカで会ったことがあると言うロバートは、愛人関係であることも疑われ、文無しに近い彼には1200ポンドを渡すということが遺書に記されていた。 それを聞いたロバートは失神してしまい、そこに現れたエリカ・バーゴイン(ノヴァ・ピルビーム)は、ケントとミラーと共に彼を介抱する。 ガールスカウトで習ったエリカの応急処置で意識が戻ったロバートは、その場を去った気の強そうな彼女がバーゴイン署長(パーシー・マーモント)の娘だということを知る。 その後、弁護人と打ち合わせをしたロバートは、彼の眼鏡を奪う。 移動するロバートは、ケントとミラーの目を盗み法廷に潜りこみ傍聴席に座る。 ロバートが姿を消したことをケントが裁判長に伝えて、その場は騒ぎとなる。 弁護人の眼鏡をかけたロバートは、裁判所から抜け出す。 駅に向い容疑者を捜すよう部下に指示したバーゴインは、エリカの車で向かわせる。 途中ガス欠で車が止まってしまい、警官は通りがかった馬車で駅に向いエリカと別れる。 車を動かそうとしたエリカはロバートが隠れていたために驚くが、仕方なく彼に車を押してもらう。 給油しようとしたエリカは所持金がなかったためロバートがガソリン代を払い、彼はレインコートをなくしたカフェ”トムズ・ハット”に向かおうとする。 ガソリン代を払ったとロバートに言われたエリカは、仕方なくそのカフェに向かおうとする。 ある空き家に着いたエリカはロバートを降ろし、無実だと言って余裕を見せる彼を残して車で走り去る。 二階の窓からエリカの様子を見ていたロバートは、彼女が警官と出くわしても何も話さなかったことを確認する。 帰宅して家族と食事をしたエリカは、弟達が事件について語り始めたため動揺する。 電話を受けた父が事件の進展がないことを報告されたことを知り、エリカは外出して空き家に向かう。 食べ物を持参したエリカは、眠っていたロバートに借りた3シリングを返して立ち去ろうとする。 目覚めたロバートは食べ物をもらい、なくなったコートを見つければ疑いが晴らせることをエリカに伝える。 ロバートが悪人に思えないエリカは、彼とクリスティンの関係などを聞く。 その時、ロバートが窓から投げ捨てた食べ物の包みを、二人の警官が目撃して家を調べようとする。 警官が内部を調べている間に、二人はその場を脱出して車で走り去る。 今後のことを考えたロバートだったが、エリカの立場などを考えて町に戻ろうとする。 しかし、道路が工事中だったため、エリカは仕方なく”トムズ・ハット”に向かう。 その場に着いたエリカは通報を恐れ、自分が様子を見てくるとロバートに伝えて店に入る。 店主に忘れ物のことなどを聞いたエリカだったが、ある老人のことを話そうとした男と他の者達が争いを始める。 ロバートはエリカを助けようとして争いに巻き込まれ、頭を打ち彼女に介抱される。 コートを持っていると思われる老人オールド・ウィル(エドワード・リグビー)の居場所を知ったエリカとロバートは別れることになるが、二人は既に惹かれ合うようになっていた。 ヒッチハイクをしてウィルに会いに行くと言うロバートは立ち去るが、エリカは彼を追い二人は車で目的地に向かう。 途中、叔母マーガレット(メアリー・クレア)の娘の誕生日だったため、屋敷に寄ったエリカは引き止められてしまう。 危険を感じるロバートはエリカにメモを残して去ろうとするが、そこに彼女の叔父(ベイジル・ラドフォード)が現れ屋敷に招かれてしまう。 二人はパーティーに参加させられて、なかなかその場から抜け出せない。 マーガレットは、エリカとロバートの関係が気になり探りを入れる。 エリカとロバートが帰りたい様子を察した叔父は、気を利かせて二人に去るよう指示する。 それを知ったマーガレットは、二人が家と違う方向に向かったことを確認してバーゴインに連絡する。 必ず行き先などは伝えるエリカの行動を、父バーゴインも不審に思う。 バーゴインから連絡を受けていた警官はエリカの車を止め、父親に電話をするよう伝える。 警官はロバートが逃亡者だと気づき、エリカは車を出して走り去る。 大事になったことで焦るエリカは、とにかくコートを探さなけらばならないとロバートに伝える。 エリカがロバートと逃亡したと知らされたバーゴインは驚き、彼女の名前は伏せておくよう捜査する警官に指示する。 夜になり目的地に着いたロバートは、動揺しながらも結果を見届けたいと言うエリカを残し、ウィルがいるはずの簡易宿泊所に向かう。 ウィルがどの男かわからないままその場で眠ってしまったロバートは、翌朝、彼を確認してコートの件を話す。 コートのことは知らないと言うウィルに、命が懸っていると伝えて騒ぎを起こしたロバートは、エリカが見つかってしまうためウィルを連れて彼女の元に向かう。 通報を受けた警官は二人を追い、ロバートはウィルを車に乗せて待っていたエリカと共に車で走り去る。 ロバートはウィルが重ね着していたコートに気づき、エリカと共にそれを喜ぶ。 ところが、コートのベルトがなかったため、ロバートとエリカは、ウィルがそれを受け取った男を捜さなければならなかった。 瞬きに特徴があるその男の話などを聞くため、三人は森の廃坑に向い、追ってきた警官も同じ場所に向かう。 廃坑に着いた三人だったが、車が陥没した穴に落ちエリカが取り残される。 エリカを助けたロバートだったが、愛犬を捜しに行くという彼女は駆けつけた警官に保護されてしまう。 署に戻ったエリカはケントの質問を受けるが、殺人を犯すような人物でない優しいロバートが無実であることを訴える。 バーゴインと共に自宅に戻ったエリカは、ロバートの行方を父に聞かれるものの知らないと答える。 娘の行動に対する責任があることをエリカに伝えたバーゴインは、彼女に辞表を見せる。 部屋にいるよう指示されたエリカは、ベッドの上で泣き崩れる。 日が暮れて、眠っていたエリカは、窓から侵入したロバートに気づき抱きつく。 犯人が見つかっていないことをロバートから知らされたエリカは、出頭する気であると彼に言われる。 ”グランド・ホテル”のマッチがポケットにあったコートは押収されたことを伝えたエリカは、その場を去るとロバートに言われて涙する。 そのホテルには行っていないことに気づいたロバートは、犯人が宿泊客である可能性があるため、エリカとウィルと共にその場に向かう。 ”グランド・ホテル”。 クラブの席に着いた二人は、お茶を注文してバンドの演奏を聴く。 バンドのドラマーだったガイ(クリスティンの夫)は、黒人風に顔を黒く塗って演奏をして特徴ある瞬きをしながら、テーブルのウィルに気づく。 男の瞬きの仕方を聞いたエリカは、ウィルと踊りながら犯人を捜す。 ガイは二人の様子や外の警官を気にして不可解な行動をしたため、バンド・リーダーに注意される。 緊張すると瞬きが激しくなるガイは休息中に薬を飲み、現れたバーゴインとケントに気づき焦る。 バーゴインとケントが踏み込もうとすることを知ったロバートは、逮捕されるのを覚悟して二人に話しかけ、エリカが無関係であると伝える。 ケントはエリカとウィルを呼び出し、演奏を始めたガイは挙動がおかしくなり失神しかけて騒動になる。 父バーゴインらと共にその場を離れようとしたエリカは騒ぎに気づき、ガイに応急手当てをしようとする。 エリカはガイの瞬きを見てウィルを呼び、顔のメイクを拭き取らせる。 ウィルがガイからコートをもらったことを確認したエリカは、ベルトのことを尋ねる。 クリスティンの首にベルトを巻き付けて締め殺したことを話すガイは高笑いをする。 ロバートの元に駆け寄ったエリカは、犯人を見つけたことを伝える。 自分達を見つめるバーゴインに気づいたエリカは、ロバートを食事に招くことを父に提案する。 バーゴインはロバートに歩み寄り、笑顔のエリカは二人を見つめる。
...全てを見る(結末あり)
正装したウィルは、エリカと共にコートの男を捜し始める。
★ヒッチコック登場場面
上映約14分、容疑者逃亡で混乱する裁判所の外にいる、ハンチング帽を被りカメラを持つ太った男性がアルフレッド・ヒッチコック。
何かを話そうとしたりアクションをするので非常に解り易い。
*(簡略ストー リー)
人気映画女優クリスティンが殺害され、彼女の知人であった発見者のロバート・ティスドールが状況証拠から逮捕されてしまう。
凶器はロバートのレインコートのベルトであり、彼はそれをカフェ”トムズ・ハット”でなくしたことをケント警部に伝えるが信じてもらえない。
クリスティンが自分に遺産を遺したことを知ったロバートは失神してしまい、その場に居合わせた警察署長の娘エリカ・バーゴインは彼を介抱する。
その後ロバートは、コートを探すために裁判所から逃亡し、エリカの車に忍び込み彼女の協力を経てカフェに向かおうとする。
ロバートが殺人犯には思えないエリカはカフェに向い、ウィルという老人がコートを持っていることを突き止めるのだが・・・。
__________
主人公の二人が疑われ、逃亡しながら真犯人を追うという緊迫感溢れる展開、その後の作品で更に成熟された演出効果として見られる、アルフレッド・ヒッチコックの才能が様々なシーンで発揮される興味深い作品。
冒頭の男女の言い争いの迫力たるや凄まじく、間違いなく殺人を意識させる荒れ狂う波や雨、そして終盤でポイントとなる犯人の独特の表情など、オープニングでいきなり圧倒させられる。
誰の目からも犯人は明らかであり、主人公達がいかにして真相を明らかにするか、それに至るクライマックスの工夫も見所だ。
殺人の容疑者を助けることになるのが少女であり、更に警察署署長の娘だという設定も面白く、観客は二人を応援したくなる。
また、容疑者に悲壮感がなく、悪人として見ていない観客を安心させる、それ以上の好人物に見せる演出もまたよろしい。
母親がいない設定であるためか、何人もの弟達の世話をする確り者のヒロインを演ずる撮影当時まだ10代のノヴァ・ピルビームは、時折見せる少女らしい表情も実に愛らしい。
疑いを晴らすために必死に犯人を捜す青年を熱演するデリック・デ・マーニー、ヒロインの父親で警察署長のパーシー・マーモント、犯人を知る老人エドワード・リグビー、被害者の女優パメラ・カーメ、その夫である犯人のジョージ・カーゾン、警部ジョン・ロングデン、巡査部長ジョージ・メリット、ヒロインの叔母メアリー・クレア、叔父ベイジル・ラドフォードなどが共演している。