ジョージ・S・カウフマンとモス・ハートのブロードウェイ舞台劇をロバート・リスキンが脚色したヒューマン・コメディ・ドラマの傑作。 製作、監督フランク・キャプラ、主演ジーン・アーサー、ライオネル・バリモア、ジェームズ・スチュワート、エドワード・アーノルド、アン・ミラー共演。 |
・ジェームズ・スチュアート / James Stewart / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:フランク・キャプラ
製作:フランク・キャプラ
原作:
ジョージ・S・カウフマン(戯曲)
モス・ハート(戯曲)
脚色:ロバート・リスキン
撮影:ジョセフ・ウォーカー
編集:ジーン・ハヴリック
音楽:ディミトリ・ティオムキン
出演
ジーン・アーサー:アリス・シカモア
ライオネル・バリモア:マーティン・ヴァンダーホフ
ジェームズ・スチュワート:トニー・カービー
エドワード・アーノルド:アンソニー・P・カービー
アン・ミラー:エシー・カーマイケル
ミシャ・オウア:ボリス・コレンコフ
スプリング・バイントン:ペニー・シカモア
ドナルド・ミーク:ポピンズ
ダブ・テイラー:エド・カーマイケル
メアリー・フォーブス:カービー夫人
サミュエル・S・ハインズ:ポール・シカモア
H・B・ワーナー:ラムゼイ
ホーリウェル・ホブス:デピンナ
チャールズ・レイン:ウィルバー・G・ヘンダーソン
エディー・アンダーソン:ドナルド
クラレンス・ウィルソン:ジョン・ブレークリー
イアン・ウォルフ:カービーの秘書
ハリー・ダヴェンポート:判事
ウォード・ボンド:マイク(刑事)
アメリカ 映画
配給 コロンビア・ピクチャーズ
1938年製作 126分
公開
北米:1938年8月23日
日本:1939年
製作費 $1,644,740
■ アカデミー賞 ■
第11回アカデミー賞
・受賞
作品・監督賞
・ノミネート
助演女優(スプリング・バイントン)
脚本・編集・撮影・録音賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
銀行家のアンソニー・P・カービー(エドワード・アーノルド)は、軍需工場拡大に伴う工場敷地買収で、ある頑固な一家に梃子摺っていた。
仲介していた不動産業者ジョン・ブレークリー(クラレンス・ウィルソン)も、それには困り果てていたのだが、そこに家主であるマーティン・ヴァンダーホフ(ライオネル・バリモア)が現れる。
ヴァンダーホフは帳簿の検算をしていたポピンズ(ドナルド・ミーク)をつかまえ、今の仕事が楽しいかを尋ねる。
ポピンズは、当然、仕事と割り切っていると答えるのだが、彼は、寝食を忘れて没頭できる、何よりも好きなおもちゃ作りのことをヴァンダーホフに話す。
ヴァンダーホフは、自分の家族は、好き勝手に思い思いのことをしていることを伝えて、ポピンズを、家族として招き入れようとする。 迷ったポピンズだったが、ブレークリーを笑い飛ばして退散しようとするヴァンダーホフの後を追い、会社を辞めてしまう。 そんなヴァンダーホフは、町で見かけた夢のある人々を自分の家に呼び寄せ、やりたいことをさせている楽天家だった。 ヴァンダーホフの娘ペニー・シカモア(スプリング・バイントン)は戯曲を書き、その夫ポール(サミュエル・S・ハインズ)は花火職人、娘のエシー(アン・ミラー)はバレエを習い、彼女にはいたずら好きの菓子職人の夫エド(ダブ・テイラー)がいた。 帰宅したヴァンダーホフは、ポピンズに家族を紹介して、ポールや助手のデピンナ(ホーリウェル・ホブス)は、彼のおもちゃに感心する。 その頃、カービー家の御曹司トニー(ジェームズ・スチュワート)は、父の気苦労もどこ吹く風、副社長であるにも拘らず、呑気に、ヴァンダーホフの孫娘で秘書のアリス(ジーン・アーサー)に夢中になっていた。 二人が親密なのを知ったカービー夫人(メアリー・フォーブス)は、息子トニーがアリスと結婚を考えていることを察して顔をしかめる。 立ち退きを迫られている住民は、ヴァンダーホフに意見を求めるが、彼は、持ち家の自分が家を売らなければ、工場は建たないと答えて人々を安心させる。 トニーに求婚されたアリスは、家族に、彼が家に来ることを伝える。 アリスは、祖父ヴァンダーホフに求婚されたことを伝え、相手がカービーの息子だと知らせる。 ヴァンダーホフは、そんなことも気にせずに孫娘の結婚を祝福し、彼女は、最愛の祖父にハーモニカを贈る。 そして、夕食を待つ家族は、現れた来客がアリスの相手だと思い込むが、国税局員ウィルバー・G・ヘンダーソン(チャールズ・レイン)だった。 ヘンダーソンは、22年分の所得税を、ヴァンダーホフに請求しようとするが、そこにトニーが現れて、家族は彼を歓迎する。 税金の利用法などを説明されたヴァンダーホフは納得できず、ヘンダーソンは呆れてその場を立ち去ってしまう。 そして、準備ができたアリスとトニーは外出し、食事時に合わせたように、入れ替わりでエシーのロシア人バレエ教師ボリス・コレンコフ(ミシャ・オウア)が現れる。 アリスとトニーはバレエの公演に行くのを止め、公園で家族のことなどを話し、子供達とダンスを踊る。 その後、食事に行った二人は、レストランでトニーの両親に出くわし、アリスは気まずい雰囲気で挨拶を済ませる。 アリスは、自分の家族をあれこれ詮索されるのを嫌い、トニーの両親を思い切って家に招くことを考える。 ヴァンダーホフの家族は、いつものように夕食の前のひと時を過ごしていたが、そこに突然、トニーとカービー夫妻が現れる。 約束が翌日だと聞いていた家族は驚き、カービー夫妻はその家族の様子に呆れてしまう。 そこに、アリスが階段の手すりを滑り降りて現れ、カービーは言葉も出ない。 慌てふためくアリスは、トニーがわざと一日前に訪問し、お互いの家族のありのままを見せようとしたことを知る。 悪気はないが、カービー夫妻は、無礼にしか思えない家族の態度を見て、彼らはその場を去ろうとする。 心残りのトニーだったが、まともな持て成しもできないアリスは落胆して彼を恨む。 そこに刑事マイク(ウォード・ボンド)らが現れ、エシーの夫エドが、キャンディの箱に革命を支持する言葉を印刷したことを問い詰める。 地下室からは大量の火薬が見つかり、デピンナのパイプの火が花火に引火して大爆発を起こし、大変な騒動になってしまう。 そして、その場にいた家族やカービー夫妻も含めた全員が逮捕されてしまう。 留置場に入れられたアリスは、カービー夫人に侮辱されてしまい、カービーは、身分違いの人々と同じ空間にいることが耐えられない。 苛立つカービーは、ヴァンダーホフの自由気ままに生きる生活を批判する。 しかし、ヴァンダーホフは、”死ぬ時には、金があっても持っていけない”と言い返す。 そこに不動産業者ブレークリーが現れ、ヴァンダーホフに家を手放すよう迫るが、彼は当然それに応じない。 そこにカービーが割って入り、ヴァンダーホフを陥れると言っていたブレークリーは、自分の依頼人まで牢屋に入っているのに驚き、早速、弁護士を呼びに行かされる。 我慢の限界に達したカービーは、ヴァンダーホフが、息子のトニーを利用して、自分から金を巻き上げる気だと言い張る。 コレンコフらは一斉にカービーを批判し、彼は留置場の人々を侮辱して罵倒する。 それを聞いた普段は温厚なヴァンダーホフは、カービーを一喝してしまう。 言葉を返せないカービーに、言い過ぎたことを謝罪するヴァンダーホフは、彼にお詫びてハーモニカを渡す。 その後、それをきっかけに、カービーの気持ちに変化が表れる。 やがて、判事(ハリー・ダヴェンポート)の下で夜間法廷が始まり、自ら罪を認めたヴァンダーホフは執行猶予となり、罰金100ドルを言い渡される。 それをカービーが支払おうとするが、法廷に集まっていたヴァンダーホフの知人達は、即座にカンパして彼に手を差し伸べる。 判事はその微笑ましい光景を笑顔で見つめ、自らも小銭を出し、それを見ていたカービーの心はさらに動く。 そして、判事はカービーが現場にいた理由を問い質すが、弁護団や夫人はこの期に及んでも、自分達の地位をひけらかして無罪を主張する。 カービーを気の毒に思ったヴァンダーホフは、彼らが家の売却交渉に訪れたと言ってかばう。 しかし、さらに夫人に侮辱されたアリスは、自分を娘婿に相応しいかを確かめに来たと言い放つ。 トニーはアリスに同調するが、アリスは彼を見限り法廷から走り去ってしまう。 記者達も押し入り法廷は大混乱となり、カービー夫人は失神し、結局アリスは行方不明になってしまう。 その後トニーは、新聞で”シンデレラ”と書き立てられるアリスを必死に捜すが、彼女の家族の理解は得られないでいた。 そんな時、アリスから家族に手紙が届き、苦しいんでいる彼女の心情を知ったヴァンダーホフは、ブレークリーに連絡して家を売却してしまう。 直ちに、周辺地域の住民には立ち退き命令が出されるが、上院委員会は、カービーの弾薬製造会社の合併事業を警戒し、その影響で株式市場は落ち込みが続く。 その頃、カービーはヴァンダーホフのハーモニカを見ながら思い悩むが、後戻りできない彼は、気分を入れ替えて同士を会議室に呼び寄せる。 しかし、そこに今回の事業で大打撃を受け、破産寸前のライバルのラムゼイ(H・B・ワーナー)が現れる。 ラムゼイは、財産が幸福とは関係しないことを語り、今の自分のようになった時に、手を差し伸べてくれる者がいるかで、人間の価値が決まることをカービーに言い残し、倒れそうになりながらその場を去る。 そこに現れたトニーから、会社を辞めて旅に出ると別れを告げられたカービーは、ついに息子まで自分の元を離れてしまったことに愕然とする。 さらにカービーは、秘書(イアン・ウォルフ)から、ラムゼイが急死したことを知らされる。 その後、エレベーターで会議室に向かったカービーは、ヴァンダーホフが、同じようにそのまま階下に降り会社を辞めた話を思い出し、会議を放棄してしまう。 同じ頃、立ち退きの準備をしていたヴァンダーホフの家族の元にトニーが現れ、アリスの居場所を知ろうとする。 ヴァンダーホフに、アリスの荷物が送られる場所を確認するよう言われたトニーだったが、そこに彼女が現れる。 トニーはアリスと話もできず、彼女の部屋に入れてもらえない。 貧しくても心でつながる人々の気持ちは、金では買えない価値がある、自分の周りに集まる人間は全て金で動き、心など通っていないことにカービーは気づく。 思い出の詰まる家を離れる悲しさで、泣きだすペニーを励ますヴァンダーホフの前に、カービーが現れる。 ヴァンダーホフは、片付け終わった家の中にカービーを招き入れ、二人きりで腹を割って話し始める。 カービーはトニーが出て行ったことを伝え、ヴァンダーホフに助言を求める。 謝礼を払おうとするカービーに、ヴァンダーホフは、ただハーモニカを吹き危機を乗り越えることを勧める。 ヴァンダーホフに促されたカービーは、戸惑いながらも”ポリー・ウォリー・ドゥードゥル”を彼と二重奏する。 やがて、エドが木琴を弾き始め、エシーがバレエを踊り、家中に人々が集まる。 カービーは二階から降りてきたトニーに気づき、アリスとの結婚を祝福する表情を見せる。 救われた気分になったカービーは、満面の笑みで現れた妻にもダンスをするよう伝えるのだが、彼女は気を失ってしまう。 その後、困難を乗り越えた両家族には平和が訪れ、アリスとトニーは結婚し、カービーは、ヴァンダーホフの家を買い戻してくれる。 そして、ヴァンダーホフの感謝の祈りで、両家の賑やかな夕食が始まる。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
銀行家カービーは、事業拡大に伴う土地買収で、ある一軒の家の主がそれに抵抗していることに頭を悩ます。
その家の家長ヴァンダーホフは、夢のある人物を家族として招き入れてしまう楽天家だった。
そんなヴァンダーホフの孫娘アリスが、カービーの息子トニーと恋仲だったために、両家が微妙な関係となる。
ヴァンダーホフは、分け隔てない人物だったが、富豪であるカービーは地位にこだわり、しかも、相手の家族が自分の悩みの種だと知り心穏やかではいられない。
そんな両家は、アリスの提案で顔を合わせることになるのだが、トーニーの、家族のありのままを見せようとしたアイデアが裏目に出てしまい、事はさらに複雑になる・・・。
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まず、一人一人が意味を持つ、登場人物の多さに驚かされる。
その各人の個性を引き出し見事にまとめ上げ、単純明快にして、人生とは何たるかを教えてくれる。
それが、押し付けがましくもなく描かれているところも、いかにもフランク・キャプラらしい演出で心豊かになる作品だ。
原題”You Can’t Take It With You” (それを持って行くことはできない)、ドラマ中のセリフにもあるが、金はいくら稼いでも、あの世には持ってはいけない、また金で人の心を買うことも出来ないという、痛烈な皮肉でもある。
後年とは大分雰囲気の違う、ディミトリ・ティオムキンの楽しい音楽も今見ると実に新鮮だ。
第11回アカデミー賞では作品、監督賞を受賞した。
・ノミネート
助演女優(スプリング・バイントン)
脚本・編集・撮影・録音賞
悟りを開く老主人ライオネル・バリモアと、金と権力で人々を支配するエドワード・アーノルドとの、クライマックスの友情は実の微笑ましい。
気の強いジーン・アーサーとジェームズ・スチュワートの御曹司ぶりも正に適役だ。
実際にはジーン・アーサーの方が8歳も年上で、姉さん女房的雰囲気の彼女にジェームズ・スチュワートが圧倒されているところも注目だ。
また、鉛筆のようなノッポのジェームズ・スチュワートが妙に印象に残る。
まだ15歳のアン・ミラーが、天才ダンサーの片鱗を見せているが、作品中では教師ミシャ・オウアに見込みがないと見られている。
どう見ても少女にしか見えない彼女が、実際は母親の年齢のジーン・アーサーの姉役というのも面白い。
*アン・ミラーが23歳も年下。
翌年「駅馬車」(1939)の乗客役で活躍する、発明家ドナルド・ミークも、なかなかいい役を演じている。
主人公の母スプリング・バイントン、父サミュエル・S・ハインズ、娘婿ダブ・テイラー、カービー(E・アーノルド)夫人メアリー・フォーブス、カービーのライバル、H・B・ワーナー、秘書イアン・ウォルフ、家族の一員ホーリウェル・ホブス、国税局員チャールズ・レイン、家族の使用人エディー・アンダーソン、不動産業者クラレンス・ウィルソン、判事ハリー・ダヴェンポート、そして、刑事ウォード・ボンドなど、名バイプレイヤー競演の豪華配役も嬉しい。