オーストリアの至宝と言われた名画、グスタフ・クリムトの”アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I”の正当な所有者であることを主張し返還を求めたマリア・アルトマンと弁護士E・ランドル・シェーンベルクの信念を貫く姿を描く、製作総指揮、監督サイモン・カーティス、主演ヘレン・ミレン、ライアン・レイノルズ、ダニエル・ブリュール、ケイティ・ホームズ他共演の実録ドラマ。 |
・ドラマ
■ スタッフ キャスト ■
監督:サイモン・カーティス
製作
デヴィッド・M・トンプソン
クリス・サイキエル
製作総指揮
クリスティーン・ランガン
ハーヴェイ・ワインスタイン
ボブ・ワインスタイン
サイモン・カーティス
ロバート・ワラク
ネギーン・ヤズディ
レン・ブラヴァトニック
エド・ウェザレッド
アラン・イェントープ
エド・ルービン
ティム・ジャクソン
原案
E・ランドル・シェーンベルク
マリア・アルトマン
脚本:アレクシ・ケイ・キャンベル
撮影:ロス・エメリー
編集:ピーター・ランバート
音楽
マーティン・フィップス
ハンス・ジマー
出演\
マリア・アルトマン:ヘレン・ミレン
E・ランドル・シェーンベルク:ライアン・レイノルズ
フベルトゥス・チェルニン:ダニエル・ブリュール
パム・シェーンベルク:ケイティ・ホームズ
マリア・アルトマン(若年期):タチアナ・マスラニー
フレデリック“フリッツ”アルトマン:マックス・アイアンズ
シャーマン:チャールズ・ダンス
フローレンス=マリー・クーパー判事:エリザベス・マクガヴァン
ウィリアム・レンキスト判事:ジョナサン・プライス
バーバラ・シェーンベルク:フランシス・フィッシャー
アデーレ・ブロッホ=バウアー:アンチュ・トラウェ
グスタフ・クリムト:モーリッツ・ブライブトロイ
フェルディナント・ブロッホ=バウアー:ヘンリー・グッドマン
ドライマン:ユストゥス・フォン・ドホナーニ
ハインリッヒ:トム・シリング
ロナルド・ローダー:ベン・マイルズ
スタン・グールド:ロルフ・サクソン
グスタフ・ブロッホ=バウアー:アラン・コーデュナー
テレーズ・ブロッホ=バウアー:ニーナ・クンツェンドルフ
イギリス/アメリカ 映画
配給
BBC Films(イギリス)
ワインスタイン・カンパニー(北米)
2015年製作 109分
公開
イギリス:2015年4月10日
北米:2015年4月1日
日本:2015年11月27日
製作費 $11,000,000
北米興行収入 $33,307,790
世界 $61,619,770
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1907年、オーストリア=ハンガリー帝国。
画家グスタフ・クリムト(モーリッツ・ブライブトロイ)は、アデーレ・ブロッホ=バウアー(アンチュ・トラウェ)の肖像画を描く。
クリムトから集中していないようだと言われたアデーレは、いろいろ心配事があと答え、将来のことが・・・と伝える。
1998年、ロサンゼルス。
ナチス・ドイツによるアンシュルス/オーストリア併合後にアメリカに移ったユダヤ人のマリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)は、波乱の人生を共にした姉ルイーゼの葬儀を済ませる。
家族ぐるみの付き合いである、マリアと同じくオーストリアから移住したバーバラ・シェーンベルク(フランシス・フィッシャー)に参列してくれたことを感謝したマリアは、彼女の息子が弁護士であることを確認する。 姉ルイーゼの遺品の中にある手紙があり、信頼できる人物の意見が欲しいことを伝えたマリアは、バーバラから、息子に連絡をさせると言われる。 就職先を探していたバーバラの息子E・ランドル・シェーンベルク(ライアン・レイノルズ)は、バーゲン・ブラウン・シャーマン法律事務所の経営者シャーマン(チャールズ・ダンス)に面会する。 オーストリアの作曲家である祖父アルノルト・シェーンベルクや判事だった父のことをシャーマンから訊かれたランドルは、採用されることになる。 母バーバラからの連絡を受けたランドルはマリアの自宅に向かい、彼女から遅れたことを注意される。 美術品返還のことを知っているかと訊かれたランドルは、全く知識がないと答え、マリアから、これから学ぶようにと言われる。 家に招かれたランドルは家族の写真に気づき、マリアと姉ルイーゼ、両親のグスタフ(アラン・コーデュナー)とテレーズ(ニーナ・クンツェンドルフ)、砂糖会社を経営していた叔父のフェルディナンド(ヘンリー・グッドマン)、その妻で若くして亡くなったアデーレのことを知る。 子供のなかった叔父夫婦は自分達と暮らし親も同然だったと言うマリアは、裕福だったブロッホ=バウアー家のことをランドルに話す。 1948年に書かれた、ウィーンの弁護士からルイーゼに送られた手紙をランドルに見せたマリアは、ナチに没収された絵画などが、美術品返還法の改定で、過去の訴えが再審理されることになったということを話し、一枚の絵を見せる。 叔父フェルディナンドがグスタフ・クリムトに描かせた”アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I”をナチが家から奪っていき、現在はウィーンの”ベルベデーレ宮殿”の絵画館(オーストリア・ギャラリー)所蔵になっていることをマリアは話す。 それを取り戻すのが目的であることを知ったランドルは、大富豪になれるとマリアに伝える。 お金の問題ではなく、過去の記憶を死なせたくないだけだと言うマリアは、正義というものもあると付け加える。 ランドルが興味を示さないことに気づき諦めようとしたマリアは、彼から、転職したばかりで養う妻子もいると言われる。 遺品の中でマリアが手にしていた本”もじゃもじゃペーター”を祖母に読んでもらったことがあると言うランドルは、怖かった思い出があると伝える。 自分も怖かったと言うマリアは、裁判に持ち込めるかだけでも調べてほしいとランドルに伝えて手紙を渡す。 帰宅してベッドに入り、妻のパム(ケイティ・ホームズ)に手紙を読んで聞かせたランドルは、アデーレが美術品を美術館に寄贈した証明となる遺言状を、誰も確認していないことを知る。 翌日、マリアを事務所に呼んだランドルは、アデーレの遺言状を捜し、オーストリアの文化省に再審査を要請することを伝える。 返還専門の弁護士料が払えないと言うマリアは、諦めようとするランドルに、自分と同じオーストリア人の血を引くことを考え検討するよう彼を説得する。 仕方なく今回の件を調べ始めたランドルは、アデーレの肖像画”ウーマン・イン・ゴールド”の評価額が、少なくとも1億ドル以上であることを知る。 それをシャーマンに話したランドルは、国の至宝とも言える絵をオーストリアが手放すとは思えないと言われるが、試してみる価値はあると伝えて、1週間の条件でオーストリア行きを許可される。 ブティックを経営するマリアの店に向かったランドルは、自分がオーストリアに向かい遺言状を捜すことを伝える。 美術品返還審問会が開かれることを伝える新聞記事を見せたランドルは、同行してその場で発言することをマリアに提案する。 祖国ではあるが、家族を奪われ友人を殺された地には二度と戻らないと言うマリアは、想い出は捨てたとランドルに伝える。 考えを変えないマリアから、なぜ急にやる気になったのかを訊かれたランドルは、あなたが好きになったからだと答える。 帰宅したランドルは、オーストリアに出張することをパムに伝える。 その夜、アデーレがお気に入りだったネックレスをつけてあげた時のことを想いだしたマリアは、オーストリアに行くことを電話でランドルに伝える。 ウィーン。 自分達のことを知り声をかけてきた雑誌記者のフベルトゥス・チェルニン(ダニエル・ブリュール)に挨拶したマリアとランドルは、協力者が必要ではないかと言われる。 国のPRのために行われた美術品の返還が思わぬ騒ぎになってしまったと言うフベルトゥスは、愛国者として協力したいことを二人に伝える。 ホテルに戻ったマリアは、1937年、オペラ歌手フレデリック“フリッツ”アルトマン(マックス・アイアンズ)と結婚した時の若き日の自分(タチアナ・マスラニー)を想いだす。 叔父フェルディナンドから、若くして亡くなったアデーレにこの日を見せたかったと言われたマリアは、叔母が大切にしていたネックレスを贈られる。 勝ち気で好奇心旺盛だったアデーレの血を引いていると言われたマリアは、宝物にすると伝えてフェルディナンドに感謝する。 アンシュルス(オーストリア併合)が迫る中、グスタフから、自分達がそれを阻止すると言われたフェルディナンドは、危険を感じていたため、ルイーゼを連れてチューリッヒに発つことを兄に伝える。 後を追ってほしいと伝えたフェルディナンドだったが、グスタフから、片づけることが済んでからだと言う兄に、危機感が足りないと意見する。 翌日、文化省に向かったマリアとランドルは、審問会が訴えを受け入れたことを知らされる。 関係者と話をすることを要求したマリアは、部外者扱いする役人から、手続きは進めると言われただけだった。 フベルトゥスの協力で、ベルベデーレ美術館の資料室に入れてもらえることになったマリアは彼に感謝する。 美術館に向かったマリアとランドルは、フベルトゥスの案内でアデーレの絵の場所に向かう。 ”ウーマン・イン・ゴールド”を前に、マリアはアデーレのことを想いだす。 1938年。 世の中は激変するものの、信念を変えないグスタフは、いつもの習慣を守り家族の前でチェロを弾く。 旅行申請に行ったマリアとフリッツだったが、ユダヤ人ということで却下される。 二人は家に戻り、グスタフらは押し入ってきた親衛隊から、フェルディナンドの砂糖会社が100万マルクの脱税をしたため、返納するまで財産を凍結し、監視兵の下、家族は自宅監禁すると言われる。 美術館の休館日に資料室に向かったマリアとランドルは、膨大な量の書類を調べ始める。 二人はある資料を見つけて、ランドルとフベルトゥスがそれを徹夜で調べ、マリアはアデーレのことを話す。 1925年にアデーレは43歳で髄膜炎で亡くなり、1923年に遺言を書いた。 その内容を聞いたマリアは、他の絵画は夫フェルディナンドの死後、ベルベデーレ美術館に寄贈するというアデーレの遺志だったことを知り、この旅が無駄だったと言って嘆く。 それは条件付きだったと言うフベルトゥスとランドルは、”フェルディナンドの死後”とあったとマリアに伝える。 マリアらが出国後、美術品はナチの高官に奪われ、ヴァルトミュラーの絵(Graf Esterhazy mit einem Kaninchen vor bewaldeter Berglandschaft)はヒトラーの山荘”ベルクホーフ”に、ネックレスはゲーリング夫人のものに、退廃的なクリムトの絵は好まれずベルベデーレ美術館に運ばれた。 それが1941年であり、フェルディナンドは1945年に亡くなったため、遺言状に反していること が分かる。 フェルディナンドも、自分が残すものは全てルイーゼと自分に譲るという遺言状を遺したと言われたマリアは、それでもアデーレの遺志で絵は美術館に渡ったと二人に伝える。 フェルディナンドが絵の代金を払ったという証明書を見せたランドルは、法的に絵の所有者は彼だとマリアに伝える。 フベルトゥスから、アデーレに絵を譲渡する権利はなく、遺言が無効であることを確認したマリアは、法的には叔母の”願望”であると言われる。 この証拠を審問会のヴラン議長に見せれば絵と共に帰国できると、ランドルはマリアに伝える。 しかしフベルトゥスは、”ウーマン・イン・ゴールド”はオーストリアの”モナ・リザ”であり、簡単には手放さないはずだと考える。 その後、何度も連絡するものの返事がないヴラン議長に会ったマリアとランドルは、資料を受け取ってもらえただけだった。 ヒトラーも受験した美術学校で返還審問会は開かれ、財産を奪われた人々と共に、マリアも壇上に上がり自分のものを取り戻したいと語る。 終了後にベルベデーレ美術館のコーラー博士から声をかけられたマリアは、他の美術品は返すが、”ウーマン・イン・ゴールド”は国の至宝であるために返還できないと言われる。 それに意見しようとしたマリアは、ランドルから弁護士の忠告を聞くようにと言われたために気分を害し、歩いてホテルに戻ると言って建物を出る。 傍聴者から、過去は、ホロコーストへのこだわりと共に葬るべきだと言われたマリアは、ある薬局に向かい、フリッツと共に脱出した時のことを想いだす。 フリッツから、飛行機でケルンに向かう計画を実行すると言われたマリアは、両親に別れを告げる。 親衛隊の監視兵ハインリッヒ(トム・シリング)に、高熱が出た父の薬を買いに薬局に行くことを伝えたマリアは、付いて行くと言う彼とフリッツと共に街に出る。 薬屋に向かったマリアとフリッツは、店の外で待つハインリッヒと店主の隙を見て裏口に向かう。 マリアとフリッツは店主に見つかてしまい、その場から逃げるものの、フリッツがハインリッヒに捕まりそうになる。 フリッツから先に行くようにと言われたマリアは、現れた彼と共に手配してあった車で空港に向かう。 搭乗しようとしたマリアとフリッツは手ぶらであることを疑われ、彼女が機転を利かせて、カラヤンの指揮によるオペラの代役で夫が歌うことを係官に伝える。 搭乗を許可された二人だったが、ケルン行きの便は遅れる。 夜になり、ようやく搭乗が始まるが、二人を連行するという親衛隊が現れる。 父子が連行され、マリアとフリッツは安堵するものの、二人は、飛び立った機内で両親のことを案ずる。 翌日、文化省に向かったマリアとランドルは、大臣から、ベルベデーレ美術館側の弁護士ドライマン(ユストゥス・フォン・ドホナーニ)を紹介される。 ヴラン議長からクリムトの作品はベルベデーレ美術館に留め置くと言われて納得いかないランドルは、アデールの遺言を重要視するドライマンに、絵の所有権を持つのは夫のフェルディナンドだと伝えて資料を見せる。 絵が奪われた状況を隠蔽しようとしていると言われたドライマンは、アデーレの遺志だと伝える。 ランドルは法的には無効な遺言だと主張し、アデーレが国の未来を知っていても遺言を書いたと思うのかとマリアは問う。 決議は変わらないので、納得できなければ裁判しかないと大臣から言われたマリアは席を立つ。 アデーレがこの決定を聞いたらオーストリア人を名乗ることを恥じるはずであり、恥を知るようにとドライマンらに伝えたマリアは、ランドルと共にその場を去る。 フベルトゥスから、絵が高価なため裁判費用として180万ドルの預託金が必要だと言われたマリアは、無理だと判断して帰国することを考える。 ホテルに戻り荷造りをするマリアは、併合時にナチを歓迎した悪事が連鎖して暴かれるのを、役人や美術館が恐れているのだろうとランドルに話す。 翌日、マリアと共にホロコースト記念碑に向かったランドルは、曾祖父が亡くなった収容所の名が刻まれた文字を確認する。 アメリカに逃れた自分の祖父や曾祖母の話をするマリアに、ランドルは、空港に行く前にトイレに行きたいと伝える。 トイレに向かい、この場に来た目的と悲惨な目に遭った人々のことを考えるランドルは、動揺して涙する。 帰国したマリアとランドルは、迎えてくれた家族や友人らに旅の報告をする。 マリアは、できる限りのことをしたと言って、思いつめるランドルを励ます。 その夜、1億ドル以上する絵と知って金のために行動したことを恥じるランドルは、パムから、もう終わりなので気にすることはないと言われる。 9か月後。 ベルベデーレ美術館のカタログだと言ってそれをマリアに見せたランドルは、アメリカにいても訴訟は起こせると伝える。 国際法に背く収奪による物品が政府機関(美術館)にあり、それがアメリカ国内で商業活動をしているため、書物の発行をしている場合は訴えられるとランドルは話す。 シャーマンも今回は乗る気になれず、ランドルは仕方なく独断でオーストリア政府に対し訴訟を起こしてしまう。 それを望んでいないマリアはランドルの勝手な行動を批判し、彼が事務所を辞めて訴訟を起こしたことを知り驚く。 二人目の出産を控えていたパムは、自分に相談もしてくれなかったランドルを責めるが、謝罪する彼から、自分の中で何かが変わってしまったと言われる。 法廷に向かったマリアとランドルは、オーストリアから来たドライマンと弁護士のスタン・グールド(ロルフ・サクソン)に挨拶する。 フローレンス=マリー・クーパー判事(エリザベス・マクガヴァン)の下で裁判は始まる。 外国主権免責法を適用させようとするのが原告側の主張であり、制定された1976年から38年遡っての適用はあり得ないと言うグールドだったが、それは間違いだと指摘するランドルは3件の事例を提出する。 オーストリアでの裁判が妥当だと言うグールドに対し、費用面で無理なのでアメリカで訴訟を起こしたとランドルは主張する。 免責法が過去にも適用されたことが証明されたことを確認したクーパー判事は、費用の面も考慮し、オーストリアでの提訴は不適当だと考え、被告側の訴えを却下する。 ランドルから調停の受け入れを提案されたドライマンは、それを拒み最高裁まで持ち込むと伝えてその場を去る。 6か月後。 最高裁がランドルには荷が重すぎると言うローダーから、最高の弁護士を雇うことを提案されたマリアだったが、彼女はそれを断る。 準備を進めるランドルは、パムから破水したと言われて慌ててしまう。 自分を病院に送りワシントンD.C.に向かうようパムから指示されたランドルは、信念を捨てないようにと言われて励まされる。 アメリカ合衆国最高裁判所。 ニューヨーク、エリス島。 ウィリアム・レンキスト主席判事(ジョナサン・プライス)の下で審理は始まり、グールドは、本件はオーストリアの事件でありアメリカの法廷とは無関係だと伝える。 政府の見解を聞いたレンキスト判事は、この免責法が適用されると、多くの国で同様訴訟が起き、国際関係の複雑化を誘発する恐れがあると言われる。 日本やフランスで事例があり、原告が絵の返還を求めると日本との関係が悪化する恐れがあり得ることをレンキスト判事は確認する。 レンキスト判事から、これ以上、裁判を続けると自分が世界外交の破綻の責任を負わされると言われたマリアは苦笑する。 発言したランドルは、免責法は過去を遡るだけのものかと問題提起するが、レンキスト判事から、”過去にも”という言い方もできると言われる。 どのような場合に司法権を行使できるのかが問題なのかと訊かれたランドルは、質問の意味が分からないと答える。 自分にも分からないと言うレンキスト判事は、誰も理解できないことを確認する。 政府の懸念は理解できるが、我が国とオーストリアは協定国であり、牽制する被告側は国際紛争の危険性を持ち出していると話すランドルは、自分の所有物の返還を求める、平和を求めてこの国に来た一人の女性の訴えだと伝え、正義を求める。 出来る限りのことをしたマリアとランドルは、満足してロサンゼルスに戻る。 帰宅したランドルは、無事に生まれた息子を見て感激する。 4か月後。 和解の道があると考え、それを美術館側に提案したマリアとランドルは、不法収奪を認め補償の問題をクリアできればだとドライマンに伝える。 ドライマンは、自分のものに金は払わないと言って、それを断固として拒む。 ウィーンで調停することを提案したランドルは、ドライマンの同意を得られる。 マリアから反対されたランドルは、”敵地”で自分達に有利な調停ができるわけがないと言われる。 それ以外に方法はないと言うランドルは、自分に任せてほしいと伝えるが、マリアはそれを拒み、自分は降りるとドライマンに伝えてその場を去る。 マリアを説得に行ったランドルは、自分達の考えは間違いで、負けを認めて元の暮らしを取り戻すと言われる。 疲れ果てたので絵もいらないと言うマリアは、今日限りで解雇するとランドルに伝える。 この件に全てを捧げて借金まみれとなり、家族も犠牲にしてまで絵を取り戻そうとしたにも拘らず、今更、解雇するとは酷過ぎるとと言うランドルは、あと少しで何とかできると考える。 美術館は決して絵を手放さないと言うマリアは、屈辱は二度と味わいたくないことと、ウィーンには行かないとランドルに伝える。 単身でウィーンに向かったランドルは、フベルトゥスから、自分達が選ぶ調停員はいいが、残りの二人はどうでるか分からないと言われる。 不安もあるランドルだったが、祖父のアルノルト・シェーンベルクの曲が演奏されるコンサートホールに入り、フベルトゥスと共に心を落ち着かせる。 調停は始まり、発言を許されたランドルは、会場に現れたマリアを確認して心強く思う。 オーストリア国民に語りかけるランドルは、マリアや家族、そして国に対し過去に犯した罪を認めてほしいと訴える。 その後、”プラーター公園”で大観覧車を眺めながら結果を待つマリアとランドルは、15歳の時に父がナチ党員だと知ったフベルトゥスが、父の罪を贖う努力をして、なぜそうなったのかを自分に問い、父から遠ざかろうとしたという話を聞く。 フベルトゥスに素晴らしい人物だと伝えたマリアは、ランドルに呼び出しがあったために会場に向かう。 調停員は、関連する資料を公平に調査した結果、”アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I”とクリムトの作品は、アデーレ・ブロッホ=バウアーの姪マリア・アルトマンに返還することを決定する。 マリアは、ランドルとフベルトゥスに感謝し、ドライマンらは愕然とする。 ドライマンから、美術館から絵を持ち出さないことを約束してくれれば、満足できる額の代償を払うと言われたマリアは、自分も叔母を祖国から引き離したくはないと話す。 話し合いを求め続けたにも拘らず、全く聞く耳を持たなかったドライマンを批判したマリアは、もう疲れたと言って、叔母も自分と同じように大西洋を渡りアメリカに行くと伝える。 ドライマンはその場を去り、複雑な心境のマリアを心配するランドルは、彼女から感謝される。 自分は間違っていたと言うマリアは、こういう結果になれば満足すると思っていたが、違っていたとランドルに伝える。 両親をこの国に残して逃げたと言って涙するマリアは、ランドルに抱きしめられながら、あの日のことを想いだす。 旅立つマリアは行きたくないと両親に伝えるが、母テレーズから、この国に未来はないため、生きるようにと言われる。 父グスタフからは、アメリカが自分の国になると教えられたマリアは、ウィーンに来た時は貧しかったものの、国民になるために懸命に働き、その努力と成果と子供達が誇りだと言われる。 自分達のことを忘れないでほしいと言われたマリアは、両親と抱き合い、そしてその場を去る。 ニューヨークニューヨークのローダーのギャラリーに絵を預けることを考えているとランドルに話したマリアは、自分の家には置くスペースがないと伝える。 新しい家を買えるのにと言われたマリアは、食器洗浄機は買うつもりだとランドルに伝える。 過去を甦らせたことで祖父は喜んでいると伝えたマリアは、ランドルから、自分だけの力ではなかったと言われる。 かつて住んでいた家に向かったマリアは、その場が会社になっていることを知り、許可を得て見て回る。 マリアは、当時のことが想いだす。 母テレーズと戯れる自分と姉ルイーゼ、”もじゃもじゃペーター”を読んでくれた叔父のフェルディナンド、”ストラディバリ”のチェロを弾く父グスタフ、自分と踊る夫のフリッツ、そして、肖像画の前には美しいアデーレが立っていた。 マリアは、自分を見つめるアデーレに微笑みかける。 ナチに奪われた絵は、68年後にマリア・アルトマンの元に戻った。 ”アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I”は、現在、ニューヨークの”ノイエ・ギャラリー”に展示されている。 ロナルド・ローダーの購入額は、1億3500万ドルだった。 E・ランドル・シェーンベルクは、事件の報酬で美術品返還を専門とする法律事務所を設立し、ロサンゼルスのホロコースト博物館の資金も提供した。 マリアは、同じ家に住み店の経営を続け、絵画の売却益は親族や慈善事業、”ロサンゼルス・オペラ”の資金になった。 2011年、マリアは94歳で世を去った。 ナチが略奪した10万点を超える美術品は、未だに正当な持ち主に戻されていない。
...全てを見る(結末あり)
数々の想い出が甦るマリアは、自宅があった建物を前に当時のことをランドルに話す。
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オーストリア併合後、フェルディナンドの決断が正しかったことを悟ったグスタフは、自分達の力ではどうにもならんない現実を知る。
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その後も今回の件を調査したランドルは、書店でクリムトの画集を見つけて購入し、マリアの店に向かう。
実業家である美術収集家のロナルド・ローダー(ベン・マイルズ)に会ったマリアは、自分達の行動に敬意を表する彼から、是非、絵をギャラリーで展示させてほしいと言われる。
資料をチェックするランドルは、マリアから、負けてもオーストリアの女性としてここまで来れたことを誇りに思うと言われる。
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カリフォルニアにいるルイーゼからの電報を受けたマリアは、ウィーンからの知らせがあり、父が亡くなったとフリッツに伝える。
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最高裁が自分達の味方に付いたことを知ったマリアは喜ぶが、ランドルは、相手が引き延ばし作戦を始めて数年かかると考え、マリアの寿命のことなども心配する。
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■ 解説 評価 感想 ■
*(簡略ストー リー)
1998年、ロサンゼルス。
ナチス・ドイツによるアンシュルス/オーストリア併合後にアメリカに移ったユダヤ人のマリア・アルトマンは、亡くなった姉ルイーゼの遺品の中から、ある手紙を見つける。
グスタフ・クリムトの描いた叔母アデーレの肖像画などを含む美術品を、叔母の死後、美術館に寄贈するというのが彼女の遺言だったのだが、それを確認した者は誰もいないというウィーンの弁護士からの手紙だった。
友人バーバラの息子で、弁護士のE・ランドル・シェーンベルクに相談したマリアは、オーストリアの至宝と言われるアデーレの肖像画”ウーマン・イン・ゴールド”の返還を求めようとする。
妻子を抱えようやく法律事務所に就職できたランドルは、マリアの人柄に惹かれて調査を始め、”ウーマン・イン・ゴールド”が1億ドル以上の価値がある絵だと知り、事務所の許可を得て返還の訴えが再審理されるウィーンに向かおうとする。
同行を求められたマリアは、かつて家族や友人を失ったアンシュルス時代のことを思うと、その気にはなれなかった。
ランドルに説得されたマリアは、かつての想いを胸に祖国オーストリアに向かうのだが・・・。
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オーストリアの至宝と言われ、正当な持ち主として判断されたマリア・アルトマンの元に返還され、実業家である美術品収集家のロナルド・ローダーが、当時の最高価格1億3500万ドルで購入したことで話題になった、グスタフ・クリムトの”アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I”を巡る実話を基にした作品。
一通の手紙から、不可能に近い、収奪された名画の返還の可能性を探る老婦人と若い弁護士の苦悩、その行動力と信念を貫く姿を描く、製作総指揮を兼ねるサイモン・カーティスの繊細且つ力強い演出が見どころの作品。
それに加え、ユダヤ人富豪一家の優雅な生活や、アンシュルス(オーストリア併合)当時のウィーンの情勢、ナチによる迫害が激化していく様子などが丁寧に描かれている。
主人公が想いだすフラッシュバックの、彩度を落とした映像も実に美しい。
残念ながら、本作の撮影3年前に94歳で亡くなったマリア・アルトマンを演ずるヘレン・ミレンは、激動の時代を生き抜き自由を求めた地で質素に暮らしながらも、良家に育った気品を漂わせる女性を好演している。
設定は80歳を超える女性なのだが、60代後半くらいにしか見えない。
それは別として、主人公の勝ち気で好奇心旺盛な性格を見事に表現し、また、その美しさが印象に残る。
主人公の人柄に惹かれ彼女を支える弁護士E・ランドル・シェーンベルクを熱演するライアン・レイノルズ、二人に協力するウィーンの雑誌記者フベルトゥス・チェルニンのダニエル・ブリュール、ランドルの妻ケイティ・ホームズ、主人公の若年期タチアナ・マスラニー、その夫マックス・アイアンズ、弁護士事務所の経営者チャールズ・ダンス、フローレンス=マリー・クーパー判事のエリザベス・マクガヴァン、最高裁主席判事ウィリアム・レンキストのジョナサン・プライス、ランドルの母バーバラ・シェーンベルクのフランシス・フィッシャー、”ウーマン・イン・ゴールド”のモデルである主人公の叔母アデーレのアンチュ・トラウェ、その夫である主人公の叔父ヘンリー・グッドマン、主人公の両親アラン・コーデュナーとニーナ・クンツェンドルフ、ベルベデーレ美術館側の代表ユストゥス・フォン・ドホナーニ、グスタフ・クリムトのモーリッツ・ブライブトロイ、主人公の家族を監視する親衛隊の兵士トム・シリング、”ウーマン・イン・ゴールド ”を購入するロナルド・ローダーのベン・マイルズ、ベルベデーレ美術館側のアメリカの弁護士ロルフ・サクソンなどが共演している。