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つばさ Wings (1927)

記念すべき第1回アカデミー賞で作品賞に輝いたサイレント映画である映画史上に残る大スペクタクル作品。
第一次大戦下、操縦士として志願したアメリカ人青年2人の友情を描く、監督ウィリアム・A・ウェルマン、主演クララ・ボウチャールズ“バディ”ロジャースリチャード・アーレン、そして若きゲイリー・クーパーの脇役出演も注目の戦争ドラマの傑作。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(戦争)


スタッフ キャスト ■
監督:ウィリアム・A・ウェルマン

製作
ルシアン・ハバード

ジェス・R・ラスキー
B・P・シュールバーグ
原作:ジョン・モンク・サウンダース
脚本
ホープ・ロアリング

ルイス・D・ライトン
撮影:ハリー・ペリー
編集:E・ロイド・シェルドン
音楽:J・S・ザメクニック

出演
メアリー・プレストン:クララ・ボウ

ジャック・パウエル:チャールズ“バディ”ロジャース
デヴィッド・アームストロング:リチャード・アーレン
キャデット・ホワイト:ゲイリー・クーパー
ハーマン・スクウィンプ:エル・ブレンデル
シルヴィア・ルイス:ジョビナ・ラルストン
セレステ:アルレット・マルシャル

アメリカ 映画
配給 パラマウント・ピクチャーズ

1927年製作 142分
公開
北米:1927年8月12日
日本:1928年3月22日
製作費 $2,000,000


アカデミー賞 ■
第1回アカデミー賞
・受賞
作品・技術効果賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
1917年、アメリカのある小さな町。
青年ジャック・ポウエル(チャールズ“バディ”ロジャース)は、飛行家になることを夢みていた。

隣人の快活な娘メアリー・プレストン(クララ・ボウ)は、そんなジャックにちょっかいをだすのだが、彼は相手にする気になれない。

メアリーはジャックに心を寄せているのだが、彼は全くそれに気づかない。

町一番の資産家の御曹司デヴィッド・アームストロング(リチャード・アーレン)は、都会育ちのシルヴィア・ルイス(ジョビナ・ラルストン)と惹かれ合っていた。

そのシルヴィアに夢中のジャックは、改造した車”流星”に彼女を乗せてドライブし、その様子を見たメアリーはショックを受ける。

その後、第一次大戦にアメリカが参戦することになり、多くの若者達は立ち上がり、ジャックとデヴィッドは志願する。

そのことをシルヴィアに伝えたジャックは、彼女に写真が欲しいことを伝える。
...全てを見る(結末あり)

ジャックは机の上にあった写真入のペンダントを、自分のために用意してあったと勘違いして、シルヴィアが、デヴィッドに渡そうとした物とは知らずに持ち去る。

そこにデヴィッドが現れ、シルヴィアは失意の彼に、戦場に向かう者への同情から渡したと言って理由を話し、彼に愛を告げる。

旅立つ日を迎えたジャックは、メアリーに別れを告げて、彼女からも写真を受け取り訓練所に向かう。

デヴィッドは両親との別れで、母が大切にしていてくれた、子供時代に遊んだ、小さなクマのぬいぐるみをお守りにして持参する。

そして、ジャックとデヴィッドは、ドイツ系のハーマン・シュウィンプフ(エル・ブレンデル)らと共に、訓練所の生活を始める。

厳しい訓練は始まり、ジャックとデヴィッドはライバル心を燃やすものの、お互いを理解し始めた二人には友情が芽生える。

その頃、女性自動車部隊員の募集を知ったメアリーは、ジャックに会えるかも知れないと考えて、志願することを決める。

無二の親友になっていたジャックとデヴィッドは、いよいよ始まる飛行訓練のために宿舎に向かい、そこで、キャデット・ホワイト(ゲイリー・クーパー)に出会う。

デヴィッドのようにお守りを持たず、運命に身を任せるというキャデットは、その直後の訓練飛行で死亡する。

そして、ジャックとデヴィッドの飛行訓練も始まり、それを終えた二人は、西部戦線に配属される。

操縦士に落第したハーマンは整備士となり、彼が準備を整えた複葉機で、ジャックとデヴィッドは、初めての任務である偵察飛行に飛び立つ。

間もなく敵機と遭遇したジャックとでデヴィッドの編隊は、激しい空中戦を繰り広げる。

敵味方、損害を出しながらの戦いは続き、デヴィッドは機銃が故障してしまう。

しかし、それを知った騎士道精神を持つ敵機の操縦士は、デヴィッドへの攻撃を中止する。

デヴィッドの背後には二機の”フォッカー”が迫り、攻撃を受けて機体が損傷し、彼は仕方なく不時着して塹壕に身を潜める。

イギリス兵と合流したデヴィッドは、指揮官にジョークで迎えられる。

数週間後。
ジャックとデヴィッドは、既にベテランの域に達していた。

自動車部隊に入隊したメアリーは、西部戦線に配属され、医薬品を届けていた。

敵の”ゴータ製”銃爆撃機は、大量の爆弾を積んで襲い掛かる。

メルヴァル
自軍は村に集結し、ジャックとデヴィッドは敵機襲来の知らせに飛び立つ。

爆撃機は村上空に接近し、そこに出入りしていたメアリーは、人影がないことを不思議に思う。

その時、敵機の爆撃は始まり、自軍は甚大な被害を受ける。

爆撃機は攻撃を終えて引き返すが、そこにジャックとデヴィッドの機が現れて襲い掛かる。

二人は、爆撃機と護衛機二機を撃墜し、地上のメアリーは、ジャックが攻撃していたことを知り喜ぶ。

武勲を称えられた二人は、フランス政府から勲章を授与されて中尉に昇級する。

休暇を与えられた二人はパリに向かい、大いに楽しみ英気を養う。

連合軍は、最大の攻撃作戦を計画し、フランス駐留の全兵力が戦闘体制に入る。

メアリーもジャックを追ってパリに到着し、帰営命令が出た羽目を外している彼を捜す。

フォリー・ベルジェール
ようやくジャックを見つけたメアリーは、酔った彼が娼婦セレステ(アルレット・マルシャル)と戯れていることを知り落胆する。

ジャックはメアリーに気づかず、命令を聞いてもそれを無視して飲み続ける。

失意のメアリーは、ある女性に、愛する者のために軍服を脱ぎドレスを着るよう言われジャックの元に向かう。

メアリーは、セレステから何とかジャックを引き離してホテルに連れて行くが、彼は酔い潰れてしまう。

ジャックが持っていたペンダントを見たメアリーは、それには、自分が渡した写真が入っていると思い感激するが、中はシルヴィアの写真だった。

憤慨したメアリーだったが、愛するジャックに、いつかは気持ちが伝わると考える。

軍服に着替えようとしていたメアリーだったが、そこに憲兵が現れ、彼女は、正気のジャックと話もできないまま部隊に戻ることになる。

大攻勢を控え、デヴィッドは帰還できない予感がしたために、勲章とクマのぬいぐるみを母親に渡してほしいことをジャックに伝える。

ジャックに励まされたデヴィッドだったが、生死が隣合わせの毎日であることから、彼の気力も限界に近かった。

メアリーが除隊して帰国することを知ったジャックは、彼女のことをからかう同僚に噛みつく。

デヴィッドは、ジャックがメアリーに好意を持っているかを確かめるが、彼はシルヴィアを愛し彼女も同様だと言って写真を見せる。

落ちた写真の裏書を見たデヴィッドは、それが自分に渡すつもりだったものだと知る。

故郷で、シルヴィアが自分に伝えた言葉が真実だと知ったデヴィッドだったが、彼は親友であるジャックを傷つけたくないために、写真をそのままペンダントに入れてあげよぅとする。

ジャックがそれを拒んだために、デヴィッドは写真を破いてしまい、二人は喧嘩を始めそうになる。

そこに、敵飛行船が接近しているという報告が入り、二人は出撃命令を受け、デヴィッドはクマのぬいぐるみを忘れて行ってしまう。

心乱れるデヴィッド、そして、ジャックは彼の思いやりに気づかないまま恨みを抱きつつ飛び立つ。

集中力に欠ける二人だったが、デヴィッドはジャックを守るために無謀な攻撃を仕掛ける。

デヴィッドは数機の敵機を撃墜して、攻撃を逃れるために雲の中に突入しする。

ジャックは、飛行船を発見して撃墜し、デヴィッドを案じながら帰還する。

敵機に追撃されたデヴィッドは被弾して沼地に墜落し、機体から脱出するものの、銃撃を受けながらその場から逃走する。

夜明けの戦闘を控えて、連合軍は夜間に移動を始め、デヴィッドは敵陣の背後に回り、ジャックは彼の無事を祈る。

明け方、一機の敵機が飛来し、墜落した兵士が捕虜を拒み死亡したというメッセージを投下して、ジャックは、それがデヴィッドである可能性が高いため愕然とする。

連合軍の総攻撃は始り、ジャックは、クマのぬいぐるみを手にして、ハーマンに励まされながら出撃する。

復讐に燃え、単独で敵陣に向かったジャックはドイツ軍部隊に襲いかかる。

地上でも激しい戦いが繰り広げられ、ジャックは、敵の増援部隊を奇襲し、司令官の将軍らの乗る車に攻撃を加える。

午前中半ばには、連合軍が全ての前線を突破する。

第一波、二派のアメリカ軍兵がドイツ陣営に突撃し、ジャックもそれを援護する。

その頃、デヴィッドは敵陣の湿地帯に迷い込み、たどり着いた飛行場の敵機を奪い飛び立ち攻撃を加える。

敵は敗走を始め、連合軍やジャックは容赦なく背後から攻撃し、戦いに勝利する。

空の戦いも終わりジャックも基地に向かうが、敵機を見つけ、彼はそれがデヴィッドとは気づかない。

デヴィッドはジャックと気づくが、親友への叫びも届かず、攻撃を受けて民家に墜落する。

デヴィッドはフランス軍兵士に機体から降ろされ、着陸したジャックは称えられる。

民家の住人は、助からない操縦士がいることをジャックに伝える。

ジャックは、操縦士がデヴィッドと気づき医者を探そうとするが、兵士に手遅れだと言われる。

ジャックはデヴィッドに、写真のことで憤慨したことを謝罪し、友情の方が大切だと語る。

デヴィッドは、いつも確かめ合っていた、離陸時に掛け合う言葉を残し息を引き取り、ジャックは悲しみに打ちひしがれる。

戦いは終わり、基地に戻ったジャックは、シルヴィアが、誤解している自分のことをデヴィッドに伝えて、愛を語る手紙を見つける。

ジャックは、デヴィッドが自分を思いやり、そのことを伝えずにいてくれたことを知り、友を想い涙する。

凱旋の日。
英雄として故郷に戻ったジャックだったが、デヴィッドの両親は複雑な思いで彼の凱旋パレードを見守る。

シルヴィアの悲しみも深く、ジャックは、デヴィッドの勲章とクマのぬいぐるみを手に心は沈む。

デヴィッドの両親を訪ねたたジャックは、自分が彼を死なせてしまったことを正直に伝え、勲章とぬいぐるみを母親に渡す。

悲しみがこみ上げ、泣き崩れる母親に謝罪するジャックだったが、彼女は、悪いのは戦争だと語る。

その後ジャックは、メアリーが懐かしく思え、彼女に再会する。

ジャックは、パリの夜のことを語ろうとするが、メアリーはそれを遮り、お互い苦しく悲しい体験をしたが、これから何をするか、未来を考えることが大切だと伝える。

そして、流れ星を見た二人は、キスして愛を確かめ合う。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
1917年、アメリカのある小さな町。
飛行家に憧れる青年ジャック・ポウエルは、隣人のメアリー・プレストンが、自分に好意を抱いていることにも気づかなかった。
そんなジャックは、町の富豪の御曹司デヴィッド・アームストロングと惹かれ合っている、都会育ちのシルヴィアに心を寄せ、メアリーはショックを受ける。
やがて、第一次大戦にアメリカが参戦して、ジャックとデヴィッドも志願する。
ジャックは、シルヴィアが自分に好意を寄せていると思い込み、デヴィッドとはその件でいがみ合いながら訓練所に向かう。
厳しい訓練の間、反発し合っていたジャックとデヴィッドには友情が芽生え、やがて彼らは西部戦線に配属される。
その後、二人は操縦士として戦果をあげ、同じ頃、ジャックに会いたい一心のメアリーは、女性自動車部隊に応募し戦地へと向かうのだが・・・。
__________

トーキー時代の到来の直前という、時代背景を考えながら観ると、その壮大なドラマ展開や映像、さらには欠かすことのできないユーモアなど、どれをとっても新鮮に思える。

第一次大戦でパイロットとして活躍した、監督ウィリアム・A・ウェルマンの、力感溢れる演出も見応え十分で、映画ファンとしては、必ず観ておかなくてはいけない作品とも言える。

現代に置き換えても、見事としか言いようのない空中戦の映像、手抜きのない大規模な戦場の戦闘シーンには、破格の、200万ドルという製作費をかけただけあり圧倒される。

チャールズ・リンドバーグ大西洋単独無着陸飛行成功の直前に撮影は終了し、その偉業達成の三カ月後に公開されたというところが注目で、長距離飛行への憧れを抱く、夢も感じられる作品でもある。

第1回アカデミー賞では、作品賞の他、技術効果賞を受賞したのは当然と言える結果だ。

1997年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。

主演というよりも、随所で登場するインパクトのある役柄が印象的な快活な女性で、肌も露わにするシーンには驚きのクララ・ボウ、固い友情で結ばれる主人公の二人を熱演するチャールズ“バディ”ロジャースリチャード・アーレン、操縦士としてわずか数分の出演だった、若きゲイリー・クーパー、整備士エル・ブレンデル、主人公の二人が心を寄せる女性役ジョビナ・ラルストンパリの娼婦アルレット・マルシャルなどが共演している。


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