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荒れ狂う河 Wild River (1960)

フランクリン・ルーズベルト大統領が実施した大恐慌の対策事業”ニューディール政策”の一つである”テネシー川流域開発公社”(TVA)職員が、水没する島に居座ろうとする老女を説得して任務を果たすまでを描く、製作、監督エリア・カザン、主演モンゴメリー・クリフトリー・レミックジョー・ヴァン・フリートアルバート・サルミ他共演のドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(社会派)


スタッフ キャスト ■
監督:エリア・カザン

製作:エリア・カザン
原作
ボーデン・ディール

ウィリアム・ブラッドフォード・ヒューイ”Mud on the Stars”
脚本:ポール・オズボーン

撮影:エルスワース・フレデリックス
編集:ウィリアム・レイノルズ
音楽:ケニヨン・ホプキンス

出演
チャック・グラヴァー:モンゴメリー・クリフト

キャロル・ガース・ボールドウィン:リー・レミック
エラ・ガース:ジョー・ヴァン・フリート
ハンク・ベイリー:アルバート・サルミ
ベティ・ジャクソン:バーバラ・ローデン
ハミルトン・ガース:ジェイ・C・フリッペン
キャル・ガース:ジェームズ・ウェスターフィールド
ウォルター・クラーク:フランク・オーヴァートン
サイ・ムーア:マルコム・アターベリイ
トム・メイナード町長:ジャームズ・スティークリー
ジャック・ポーター:ブルース・ダーン

アメリカ 映画
配給 20世紀FOX

1960年製作 110分
公開
北米:1960年3月26日
日本:未公開


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
1933年5月18日。
アメリカ大統領フランクリン・ルーズベルトは、大恐慌の対策で実施した、”ニューディール政策”の一環として、テネシー川流域の開発事業を推進する、”テネシー川流域開発公社”(TVA)を政府機関として設立する。

川の氾濫などを食い止めるために、ダムを建設する事業は雇用を確保する利点はあったが、それにより水没地域の住民との問題も抱えていた。

その交渉役としてTVA職員チャック・グラヴァー(モンゴメリー・クリフト)が現地に赴任する。

TVAは、水没する地域の土地を買い占めようとしていたが、川に浮かぶ島の住民の代表エラ・ガース(ジョー・ヴァン・フリート)の説得が難航していた。

事務員ベティ・ジャクソン(バーバラ・ローデン)に、困難な状況を説明されたグラヴァーは、トム・メイナード町長(ジャームズ・スティークリー)の元に向かう。
...全てを見る(結末あり)

グラヴァーは、保安官やマスコミを巻き込まずに、エラを説得するのは不可能だと町長に言われる。

しかし、何か方法があるはずだと考え、グラヴァーは島に向かう。

グラヴァーは、エラや孫キャロル(リー・レミック)に相手にもされなかったが、川沿にいたエラの息子ハミルトン(ジェイ・C・フリッペン)や弟キャル(ジェームズ・ウェスターフィールド)とは会話ができた。

しかし、グラヴァーは川に投げ込まれてしまい、ずぶ濡れのままオフィスに戻る。

その後、グラヴァーの元にハミルトンが現れ、川のことを謝罪し、翌日エラが会うということを伝える。

翌朝、島に向かったグラヴァーは、自分達が土地から立ち退かない理由をエラから説明される。

グラヴァーは、貧困に苦しむ人々により良い生活をさせるための政府の考えをエラに伝える。

エラは、苦労してこの島にたどり着き、家族を持ち亡くなった夫の墓と自分が入る墓を見せ、立ち退かない理由を語る。

それに対し言葉を返せないグラヴァーは、夫に死に別れ、幼い子供二人を抱えたエラの孫娘キャロルが、それほど島に執着していないことに気づく。

愛していない男性との結婚を考えているというキャロルに、グラヴァーは仕事を抜きにして親身になって助言する。

さらにグラヴァーは、島のアフリカ系の人々にダムの仕組みなどを教え、オフィスに訪ねて来るよう優しく語り掛ける。

キャロルは、そんなクラヴァーに接し惹かれるようになり、彼と川を渡り、かつて自分の住んでいた家に向かう。

結婚すれば、その家に住めると分かっていても、祖母のエラを呼び寄せたいキャロルは、それが叶うわけがないと嘆いてしまう。

グラヴァーは、島のアフリカ系の人々を、TVAが白人と同じ条件で雇い入れれば、エラも仕方なく立ち退くかもしれないと考える。

サイ・ムーア(マルコム・アターベリイ)ら町の実業家は、それが混乱を招くとグラヴァーに忠告する。

そこに、島から訪ねてきたアフリカ系の人々が町に現れ、クラヴァーは早速、彼らが宿舎として使うことになるかもしれない場所に案内する。

電気を使ったこともない人々は、部屋に案内され電球の灯りだけで驚いてしまう。

アフリカ系の人々が、島を出る決意をしたことを、川岸の家にいたキャロルに知らせたクラヴァーは、彼女が愛しくなる。

仕事が終われば去っていくクラヴァーを、愛する訳にはいかないキャロルだったが、クラヴァーを受け入れてしまう。

翌日、島からアフリカ系の人々が去ったことを知ったエラは、クラヴァーと愛し合ったキャロルも追い出してしまう。

ムーアらと意見を同じくする、ガソリンスタンドを経営するハンク・ベイリー(アルバート・サルミ)は、キャロルと親密になったグラヴァーを良く思わない。

キャロルを送り届けたクラヴァーは、彼女との結婚を望むウォルター・クラーク(フランク・オーヴァートン)に出くわし、彼と町に戻ることになる。

クラークは、クラヴァーの部屋で待ち伏せする男の元に、彼を誘き出したのだった。

しかし、良心が咎めたクラークは、クラヴァーに待ち伏せを知らせ立ち去る。

部屋にいたのはベイリーで、彼の綿花畑のアフリカ系の男がTVAの仕事に移ったことで言いがかりをつけ、クラヴァーは叩きのめされてしまう。

それをきっかけに、クラークとは友人になったクラヴァーは、泥酔してエラの元に向かい酔いつぶれてしまう。

本部から、ダムの水を止めると言われたクラヴァーは、仕方なく強行手段を出ようとする。

しかし、エラの息子ハミルトンとキャルが、母親には判断能力がないと言って弁護士を伴い島を売ろうとする。

母親を裏切ろうとする、ハミルトンらを見たクラヴァーは、彼らを相手にせず、連邦保安官の元に向かい、協力を約束される。

その後、再びエラの元に向かったクラヴァーは、酔いつぶれたことを謝罪するが、彼女はそのことで彼に親しみを感じるようになっていた。

クラヴァーは、息子達が島を売ろうとしていることと、連邦保安官が退去命令を出すことをエラに伝える。

キャロルの元に向かったクラヴァーは、今はエラを安全に立ち退かせることしか考えていないことを告げる。

クラヴァーが町を出る時に、自分も連れて行って欲しいと頼むキャロルは、心から愛していることを彼に伝える。

キャロルはクラヴァーに寄り添うが、そこにクラークが現れ、ベイリーらがクラヴァーに言いがかりをつける。

ベイリーらに屈しないクラヴァーは、キャロルと共に痛めつけられ、現れた保安官が中に入り騒ぎを鎮める。

その後、共に立ち向かってくれたキャロルにクラヴァーは求婚し、二人は結婚式を挙げる。

そして、クラヴァーとエラの元に向かった連邦保安官は、命令書に従わなかった彼女に、土地家屋などを接収することを言い渡す。

エラはついに島を離れることになり、クラヴァーが用意した町外れのポーチのある家にキャロルらと共に移り住む。

急激に衰えたエラはやがて亡くなり、彼女の島の家は水没前に焼き払われる。

眼下に、エラや夫が眠る墓のみが残る水没した島と巨大なダムを見ながら、仕事を終えたクラヴァーは、キャロルと子供達を連れ飛行機で町を離れる。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
ルーズベルト大統領が、大恐慌の対策として考えた”ニューディール政策”の、一環事業で発足したテネシー川流域開発公社TVA)職員チャック・グラヴァーは、ダム建設のために、川に浮かぶ小島に住む住民を立ち退かせようとする。
しかし、グラヴァーは頑なに抵抗する老女エラの説得に難航する。
当初、相手にもされなかったエラを、少しずつ理解していくグラヴァーは、やがて、彼女の孫娘キャロルと心触れ合い、愛し合うようになる・・・。
__________

1942年に発表された、ウィリアム・ブラッドフォード・ヒューイの小説”Mud on the Stars”と、ボーデン・ディールの小説を基に製作された作品。

大恐慌に苦しみながら、貧しくもその土地を守り抜くことに使命感を感じる老女と、政府の役人の対立を、エリア・カザンらしい鋭い切り口でリアルに描いた、アメリカ国内での評価が非常に高い、社会派ドラマの秀作。

土地の立ち退き問題から、人種問題も絡んでくる展開と、臨時赴任の主人公と地元女性との恋愛、それぞれの、考え方は平行線をたどり全てが丸く収まるわけではないが、一気にまとまりを見せるクライマックスの描き方なども見事だ。

しかし、日本ではテレビ放映されたのみで、劇場未公開なのは残念だ。

2002年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。

病気や交通事故の不運など、辛い時期を乗り越え、精力的に仕事をこなし始めていたモンゴメリー・クリフトは、一見ひ弱に見えるものの、誠実さで、立ち退く土地の人々の心を掴んでいく役人を好演している。

若く結婚して夫を亡くし、若者らしい将来への希望も持てない女性を演ずるリー・レミックの、しっとりとした演技も光る。

実はまだ40代半ばだったジョー・ヴァン・フリートは、女性ながら、島を統率する長老を見事に演じ、圧倒的な存在感を見せてくれる。

典型的な南部の悪党という雰囲気のアルバート・サルミTVA事務所職員バーバラ・ローデン、老女の息子ジェイ・C・フリッペンジェームズ・ウェスターフィールド、キャロル(L・レミック)との結婚を望むフランク・オーヴァートン、町の実業家マルコム・アターベリイ、そして町の若者役で、ブルース・ダーンが端役で出演している。


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