2010年に発表された、ローラ・ヒレンブランドによるルイス・ザンペリーニの伝記”Unbroken: A World War II Story of Survival, Resilience, and Redemption”を基に製作された作品。 ベルリン・オリンピックに出場したアスリートのルイス・ザンペリーニの過酷な戦争体験を描く、製作、監督アンジェリーナ・ジョリー、主演ジャック・オコンネル、ドーナル・グリーソン、ギャレット・ヘドランド他共演の実録戦争ドラマ。 |
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■ スタッフ キャスト ■
監督:アンジェリーナ・ジョリー
製作
アンジェリーナ・ジョリー
アーウィン・ストフ
クレイトン・タウンセンド
マシュー・ベア
製作総指揮
ミック・ギャリス
トーマス・タル
ジョン・ジャシュニ
原作:ローラ・ヒレンブランド
”Unbroken: A World War II Story of Survival, Resilience, and Redemption”
脚本
ジョエル・コーエン
イーサン・コーエン
リチャード・ラグラヴェネーズ
ウィリアム・ニコルソン
撮影:ロジャー・ディーキンス
編集
ティム・スクワイアズ
ウィリアム・ゴールデンバーグ
音楽:アレクサンドル・デスプラ
出演
ルイス“ルイ”ザンペリーニ:ジャック・オコンネル
ルイス“ルイ”ザンペリーニ(少年期)C・J・ヴァルロイ
ラッセル“フィル”フィリップス:ドーナル・グリーソン
ジョン・フィッツジェラルド:ギャレット・ヘドランド
渡邊睦裕:MIYAVI
フランシス“マック”マクナマラ:フィン・ウィットロック
チャールトン・ヒュー“カップ”カパーネル:ジェイ・コートニー
ミラー:ルーク・トレッダウェイ
クリフ:ジョーダン・パトリック・スミス
ラジオ東京局員:泉原豊
アンソニー:ヴィンチェンツォ・アマート
フランク・A・ティンカー:ジョン・マガロ
ピート・ザンペリーニ:アレックス・ラッセル
ピート・ザンペリーニ(少年期):ジョン・ディレオ
アメリカ 映画
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ
2014年製作 137分
公開
北米:2014年12月25日
日本:2016年2月6日
製作費 $65,000,000
北米興行収入 $115,637,900
世界 $161,459,300
■ アカデミー賞 ■
第87回アカデミー賞
・ノミネート
撮影・音響編集・録音賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1943年4月、太平洋戦争下。
アメリカ陸軍航空軍の爆撃機”B-24 リベレーター”の編隊は、太平洋の”ナウル島”に向かう。
爆撃手のルイス“ルイ”ザンペリーニ(ジャック・オコンネル)は、対空砲火の中で爆弾を投下するものの、ハッチが閉まらないことに気づく。
ゼロ戦の襲来で負傷者が出て機体も損傷し、減速もできないことを知らされたルイは、基地に戻れるか分からないとパイロットのラッセル“フィル”フィリップス(ドーナル・グリーソン)とチャールトン・ヒュー“カップ”カパーネル(ジェイ・コートニー)から言われる。
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カリフォルニア州、トーランス。 家族の幸せを願う両親の思いは理解しながらも、まともに生きることができないルイだったが、兄ピート(ジョン・ディレオ)に走る才能を見出される。 無理だと考えるルイは、自分を信じるようにとピートから言われて走り続ける。 1936年。 ピートに見送られたルイは、オリンピック出場に向けて旅立つ。 基地に着いた機体は、減速できないまま滑走路に向い、何んとか着陸に成功する。 海上に墜落した乗組員を救助しに行く任務を受けたルイらだったが、機体のエンジン不調で2基が停止し、不時着することになる。 1936年8月1日、ベルリン。 5000メートルに出場したルイは、残り1周となったところで後方から激走し、最終ラップの記録を作る。 海面に不時着して機体から脱出したルイは、無事だったフィルとフランシス“マック”マクナマラ(フィン・ウィットロック)と共にゴムボートに乗り、食料と水を確認する。 三人は漂流を続け、カモメを捕らえ、生魚を食べて飢えをしのぎ、嵐に耐える。 自分達を狙うサメを捕らえた三人は、それを食べて何んとか生き延びる。 上空の飛行機に気づいた三人は合図して、それが戻って来ることを確認するが、敵機だったために攻撃を受ける。 海に飛び込んだ三人はサメに襲われそうになり、ボートに戻り二度目の攻撃にも耐える。 ルイとフィルが被弾したボートを修理し、マックがサメを追い払う。 その後、衰弱したマックは死亡し、ルイとフィルは彼を海に葬る。 日本軍の船に発見されて救助されたルイとフィルは、マキン島で監禁され、この場に9人の海兵隊員が捕えられていたことを知る。 大佐の元に連れて行かれて情報提供を求められたルイは、何も知らないことを伝える。 オリンピック選手として有名だったことを大佐から訊かれたルイは、それを認めて、B-24の無線機図を描かされる。 この場に拘束されていた海兵隊のことを訊いたルイは、全員が斬首されたことを知る。 精神的に限界に達するルイだったが、フィルと共に何んとか生き延びて移動させられる。 他の捕虜達と共に目隠ししたまま輸送船に乗せられ、ある場所に上陸したルイは、フィルと引き離されてしまう。 そこが東京だと考えるルイは、自分が東京オリンピックに出場する予定だったことを仲間に話す。 大森捕虜収容所に着いたルイは、渡邊睦裕伍長(MIYAVI)に目を付けられ、仲間達の前で殴られる。 夜になり、宿舎に向かったルイらは、管理責任者のミラー(ルーク・トレッダウェイ)からベッドを割り当てられる。 ”バード”とあだ名される渡邊は、両家の生まれにも拘らず将校になれなかったことで性格が歪んだことなどを、ルイはその場にいたジョン・フィッツジェラルド(ギャレット・ヘドランド)らから知らされる。 翌日、ルイがオリンピック選手であることを知った渡邊は、彼に走ることを命じて部下と競争させる。 体力が落ちているルイは勝てるはずがなく転倒するが、立ち上がって走り始める。 その夜、ジョンらは日本側の地図を書き写して情報を得て、アメリカ軍がマーシャル諸島に侵攻したことを知る。 それを聞いたルイは、戦況が有利になったと言われる。 その後も情報収集などを続けた捕虜達だったが、それが渡邊に知られ、数人の捕虜が痛めつけられる。 渡邊に殺意を抱いたルイだったが、それでは負けたことになると言うジョンは、生き抜くことが復讐だと彼に伝える。 ルイは、”耐え抜けば、やれる”と教えてくれた兄ピートの言葉を思い出す。 アメリカ軍の本土攻撃は激しくなり、ルイらは希望を抱く。 そんなルイは、アメリカ政府の発表では戦死したことになっていた。 それを利用とした日本側は、ルイを”ラジオ東京”に出演させようとする。 渡邊に命令されたルイは、ラジオ東京局員(泉原豊)と共に局に向い、両親と兄妹、そして友人達に対し、自分が無事であり、捕虜としての待遇に不満がないことを話す。 アメリカ本土でもそれは知らされ、家族はルイが生存していたことを知り驚く。 レストランでの食事を提供されたルイは、今後も放送を続けるように指示され、放送台本を渡される。 しかしルイは、内容が祖国を批判するものだったためにそれを拒み、収容所に戻される。 戻ったルイに、敬意を教えると言う渡邊は、捕虜全員に彼を殴ることを命ずる。 ジョンはそれを拒むが、渡邊は衰弱する捕虜を痛めつける。 ルイから殴るようにと言われたジョンは仕方なくそれに従い、全員のパンチを受けたルイは気を失う。 その後、昇進したことをルイに伝えた渡邊は、翌日この場を去ることを知らせる。 翌日、渡邊は、捕虜達を前に振り向きもせず収容所を去る。 空襲が激しくなり、捕虜達は終戦が近いと考えるが、ジョンは、連合軍が勝てば自分達は殺されると話す。 別の収容所に移動することになった捕虜達は、大空襲で焼け野原になった東京の街を通り抜ける。 列車に乗せられた捕虜達は、新潟県の直江津捕虜収容所に到着する。 その場の所長であった軍曹の渡邊は、日本軍のために石炭を船に積む作業を捕虜達に命ずる。 翌日から、捕虜達は過酷な労働を科せられる。 1945年4月。 絶望しかけるルイは、作業中に休んでいるところを渡邊にみつかり、重い木の梁を頭上に持ち上げるように指示される。 渡邊は、落したら射殺するようにと部下に命じ、耐えるルイを見守る捕虜達は彼を励ます。 ルイは、最後の力を振り絞り梁を更に高く持ち上げ、動揺する渡邊は、彼を竹刀で殴り痛めつける。 その後、停戦となったことを知らされた捕虜達は、両国の未来を考ると言う日本側から、保倉川での入浴を許可される。 捕虜達は喜ぶことなく、これで殺されると考えながら川に向かう。 川に入った捕虜達は、上空に現れた”B-29”を見て、戦争が終ったことを知り歓喜する。 その場には食料や物資が投下され、ルイは、渡邊が逃亡したことを知る。 帰国して祖国の地にキスしたルイは、家族に迎えられる。 1946年、ルイは恋人のシンシアと結婚して一男一女に恵まれた。 フィルも生還して結婚し、その後もルイとの友情は続いた。 戦犯となった渡邊は逃亡して、サンフランシスコ講和条約後に恩赦を受けた。 ルイは、心的外傷後ストレス障害に何年も苦しんだが、約束通り、神に身を捧げることを決めて、復讐ではなく赦すことを選んだ。 来日して元日本兵と再会したルイだったが、渡邊は現れなかった。 80歳のルイは、冬季オリンピック長野大会の聖火ランナーを務め、オリンピックで再び走る夢を実現させた。
イタリア移民の子だったルイ(C・J・ヴァルロイ)は、盗みや喧嘩に明け暮れる手の付けられない不良だった。
...全てを見る(結末あり)
ピート(アレックス・ラッセル)の協力でその才能を発揮したルイは、1マイルの高校生全米最高タイムを記録し、ベルリン・オリンピックの出場を決める。
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オリンピック・スタジアムでの開会式に臨んだルイは、興奮しながら日本人選手と目を合わせる。
*結果は8位。
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ルーズベルト大統領が死去したことを捕虜達に伝えた渡邊は、希望を失わせる。
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■ 解説 評価 感想 ■
*(簡略ストー リー)
1943年、太平洋戦争下。
かつてベルリン・オリンピックに出場した、アメリカ陸軍航空軍の爆撃機”B-24”の爆撃手ルイス“ルイ”ザンペリーニらは、墜落機捜索の任務を受ける。
しかし、エンジンの不調で機体は墜落し、脱出したルイは、同僚のフィルとマックと共に漂流を続ける。
衰弱したマックは死亡し、ルイとフィルは日本軍の船に救出されて捕虜となり、その後、東京の大森収容所に移動する。
そこでルイは、”バード”とあだ名される冷酷な所長の渡邊伍長に目を付けられてしまう・・・。
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トップ・スターのアンジェリーナ・ジョリーが、製作を兼ねて監督した作品として話題になった作品。
日本軍による捕虜虐待を描いている作品であるため、日本では上映反対運動が起き、そのため、公開が北米よりも1年以上遅れた。
注目作”アンブロークン”として宣伝したくないとも思える、誰に配慮しているのか不明な、邦題の”不屈の男”などという言葉は不要だ。
副題であっても必要なし。
アンジェリーナ・ジョリーが、日本軍による捕虜の虐待そのものを責める意図で製作したのではないことは明らかで、当事者の渡邊睦裕軍曹がそれを認めたことは事実であり、ルイス・ザンペリーニの生き方を追及する人間ドラマとして観ることをお勧めします。
捕虜の虐待は犯罪として捉えるべきだが、ドラマでは、国際法違反であるアメリカ軍による市民に対しての爆撃も描かれているため、戦争の悲惨さを素直に受け入れるべきだ。
それよりも、耐えることや信じることの大切さを身をもって体験した80歳のルイス・ザンペリーニが、冬季オリンピック長野大会の聖火ランナーを務め、かつて死を覚悟した地である、直江津収容所のあった上越市内を笑顔で走る姿を見て、希望を見出すことに未来があると思う。
ルイス“ルイ”ザンペリーニは本作公開の5か月前に他界している。
第87回アカデミー賞では、撮影、音響編集、録音賞にノミネートされた。
評価はそれほど高くはなかったが、北米興行収入は約1億1600万ドル、全世界では約1億6100万ドルという結果になり、世界的には受け入れられなかったことが分かる。
主人公のルイス“ルイ”ザンペリーニを熱演するジャック・オコンネル、その少年期C・J・ヴァルロイ、主人公と共に捕虜となるドーナル・グリーソン、主人公を励ます収容所の同僚ギャレット・ヘドランド、髪の毛くらいは坊主にして日本軍人らしくしてほしいという印象しか残らない、サディスティックな収容所長の渡邊睦裕を演ずるMIYAVI、主人公と漂流するフィン・ウィットロック、パイロットのジェイ・コートニー、同僚兵士のジョーダン・パトリック・スミス、捕虜のルーク・トレッダウェイとジョン・マガロ、主人公の兄アレックス・ラッセル、その少年期ジョン・ディレオなどが共演している。