第二次大戦下のイギリス駐留アメリカ軍爆撃航空群基地を舞台に、着任した将校が指揮官としての使命と部下との信頼関係に苦悩し葛藤する姿を描く、監督ヘンリー・キング、主演グレゴリー・ペック、ヒュー・マーロウ、ゲイリー・メリル共演による戦争ドラマの傑作。 |
・グレゴリー・ペック / Gregory Peck / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:ヘンリー・キング
製作:ダリル・F・ザナック
原作・脚本
バーン・レイJr.
サイ・バートレット
撮影:レオン・シャムロイ
編集:バーバラ・マクリーン
音楽:アルフレッド・ニューマン
出演
グレゴリー・ペック:フランク・サヴェージ准将
ヒュー・マーロウ:ベン・ゲートリー中佐
ゲイリー・メリル:キース・ダベンポート大佐
ミラード・ミッチェル:パトリック・プリチャード少将
ディーン・ジャガー:ハーヴェイ・ストーヴァル少佐
ポール・スチュワート:カイザー軍医
ジョン・ケロッグ:コッブ少佐
ロバート・アーサー:マクレニー軍曹
アメリカ 映画
配給 20世紀FOX
1949年製作 132分
公開
北米:1949年12月21日
日本:1950年11月10日
北米興行収入 $3,225,000
■ アカデミー賞 ■
第22回アカデミー賞
・受賞
助演男優(ディーン・ジャガー)
録音賞
・ノミネート
作品
主演男優賞(グレゴリー・ペック)
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1949年、ロンドン。
ある骨董店で、見覚えのある”トビー・ジャグ”を見つけたアメリカ人弁護士ハーヴェイ・ストーヴァル(ディーン・ジャガー)は、それを手に入れてアーチベリーに向かう。
アーチベリーに着いたストーヴァルは、戦後まだ数年しか経っていないにも拘らず、朽ち果ててしまった飛行場を前に、想い出にふける。
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1942年。
ストーヴァル少佐の赴任していたアーチベリー飛行場は、苦戦するアメリカ第918航空群の陸軍航空軍基地だった。
連日の無謀な白昼爆撃で、兵士は疲労の極に達して士気も低下していた。
部下を案ずる航空司令キース・ダベンポート大佐(ゲイリー・メリル)は、翌日の出撃に備えていたが、精神的不安定な兵士の状態を、カイザー軍医(ポール・スチュワート)から指摘される。
任務と部下の命との板ばさみで、ダベンポート自身も休養が必要だった。
上官フランク・サヴェージ准将(グレゴリー・ペック)の元に向かったダベンポートは、既に出撃命令を出した将軍に、部隊の状況などを説明して抗議する。 司令官パトリック・プリチャード少将(ミラード・ミッチェル)から、作戦失敗が続く、第918航空群の欠点を指摘するよう命ぜられたサヴェージは、指揮官ダベンポートに問題がある可能性があることを伝える。 指揮官としては優秀なダベンポートだが、人の良さが裏目に出て、任務よりも部下を重視してしまうことが欠点だと、友人でもある彼を、サヴェージは厳しい視点で見ていた。 基地に向かったプリチャード少将は、同行したサヴェージの指摘した、ダベンポートの指揮官としての資質を確認して彼を解任する。 そしてプリチャード少将は、基地全体の大改革を行う為に、サヴェージを第918航空群の新指揮官に任命する。 重責を背負い、人格まで変えて基地に赴くサヴェージは、副官ストーヴァル少佐を呼び出し、決死の覚悟で部下を鍛え始める。 問答無用のサヴェージは、ダベンポートの足を引っ張るような行動をとったと、酒に酔っていた現飛行司令ベン・ゲートリー少佐(ヒュー・マーロウ)を逮捕し、プライドを傷つけて罵倒して解任してしまう。 部隊員を前にしたサヴェージは、即刻、飛行訓練を開始することを告げ、自分の意思に従えない者は、基地を去るよう言い放つ。 バーで非礼な態度を取ったコッブ少佐(ジョン・ケロッグ)を飛行司令に任命したサヴェージは、兵士の士気が、危機的な状況にまで低下していることを、カイザー軍医から知らされる。 兵士達がダベンポートを慕っていたのが原因で、軍医は、サヴェージの、兵士に対する厳しい態度を弱めることを提案をする。 サヴェージは、時間的な余裕がないことを理由にそれを拒絶し、自分のやり方で、兵士達にプライドを取り戻させようとする。 サヴェージの厳しさに転任希望者が続出する中、彼の真意を理解するストーヴァルは、転任手続きの引き伸ばしに尽力する。 ゲートリーの機体は”臆病集団”と名付けられ、連日飛行訓練を続け、そして、ついに出撃命令が届き、その報せとして、バーの”トビー・ジャグ”が兵士に顔を向ける。 二度の出撃で未帰還機は一機と、以前に比べ損害は激減するが、サヴェージは、爆撃の命中率の低さを指摘し、航空群への忠節を第一に考えるよう徹底させる。 ダベンポートが基地に姿を現し、転任者の引き伸ばしによって、暴動が起きる可能性をサヴェージに告げる。 部下の心の支えになる必要性を指摘するダベンポートだったが、サヴェージはそれを拒み、あくまで厳しく接する意思を示す。 サヴェージは出撃の度に指揮を執り、自ら出来うる限りの情熱を、この航空群に捧げた。 その後、出撃中に、無線連絡を怠ったサヴェージを責めるプリチャード少将だったが、敵の重要拠点爆撃に成功した部下達を称えるよう、サヴェージは直訴する。 サヴェージは、ダベンポートの意見を参考にしてみるものの、部下達の心は動かずに苦悩する。 そして、移動希望者が減らないまま、サヴェージは志半ばながらは基地を去ろうとする。 しかし、飛行司令コッブ少佐の報告で、兵士達が移動申請を取り下げたと知り、ついにサヴェージの気持ちが部下に理解される。 サヴェージは、それにも拘らずコッブに厳しい指示を出して彼を戸惑わせるが、ストーヴァルは理想の高い上官の真意を察する。 その後、航空群は、いよいよドイツ本土爆撃に出撃し、負傷者を出しながらも攻撃に成功して編隊は帰還する。 航空群の兵士は、徐々にプライドを取り戻し、地上に待機することこそが屈辱だと感じるような、自覚を取り戻していく。 そして、ストーヴァルら地上勤務者まで、無許可で戦闘に出撃し、サヴェージから警告を受ける。 次の出撃で、サヴェージの直属だった若い兵士の機が撃墜されゲートリーも負傷して入院する。 サヴェージは、ゲートリーが以前の出撃で負傷しながら出撃を続けていたことを、カイザー軍医から知らされる。 入院しているゲートリーを見舞ったサヴェージは、自分に反感を持つ彼の気持ちを察し、言葉少なく声をかけて立ち去る。 しかし、サヴェージは、看護師にゲートリーの大佐昇進を伝え、彼への特別な待遇を命ずる。 それを知ったゲートリーは、サヴェージの気持ちを知り涙する。 そして、航空群に最高司令部からの最重要指令が下り、ドイツ空軍の軍需の拠点である、ボール・ベアリング工場を爆撃することになる。 航空群は精鋭となるが、プリチャード少将は部下に情の移ったサヴェージが、ダベンポートと同じ過ちを犯す可能性を心配する。 サヴェージが指揮する、ベアリング工場攻撃に飛び立ったB-17の編隊は目的地に近づき、敵の対空砲火と戦闘機の攻撃を受ける。 友軍機に被害を出しながら、目的地上空に到着した編隊は爆撃を開始するが、コッブの機も撃墜される。 1日目の任務を果たした編隊は帰還し、サヴェージは、翌日も指揮を執り出撃しようとする。 しかし、心身ともに疲労の極限に達していたサヴェージは、出撃直前で錯乱状態になってしまう。 編隊は、ゲートリーが指揮を代わり出撃するが、基地に残ったサヴェージの心は、編隊と共に戦地にあり、彼の症状は一向に回復しない。 その時、ダベンポートの元に、編隊の攻撃が成功して、戦果を上げたという報告が入る。 ダベンポートはサヴェージを励まし、見事に航空群を立て直した彼の功績を評価する。 サヴェージの様子は変わらなかったが、編隊の帰還を知り、正気を取り戻した彼は眠りに就く。 そして、今は退役したストーヴァルは、思い出を飛行場に残しその場を去る。
...全てを見る(結末あり)
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*(簡略ストー リー)
1949年。
見覚えのある”トビー・ジャグ”を、骨董店で見つけたアメリカ人弁護士ストーヴァルは、それを手に入れて、かつて赴任していた陸軍航空軍の爆撃航空群基地アーチベリー飛行場に向かい、想い出にふける。
1942年。
ストーヴァル少佐の所属する、アメリカ第918航空群は苦戦し、連日の無謀な白昼爆撃で、兵士は疲労の極に達し士気も低下していた。
部下を案ずる、航空司令ダベンポート大佐自身も休養が必要だったが、彼は出撃指令を出す上官のフランク・サヴェージ准将の元に向かい、部隊の状況などを説明して抗議する。
司令官プリチャード少将は、作戦失敗が続く、航空群指揮官ダベンポートの欠点をサヴェージから指摘され、彼を解任する。
そしてプリチャード少将は、基地全体及び航空群の大改革を行う為に、サヴェージを新指揮官に任命するのだが・・・。
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重厚なドラマではあるが、米独双方の実写による白昼爆撃の激しい戦闘シーンなど、迫力映像も見応えある。
戦争というものは、敵との戦いだけでなく、自分自身との厳しい戦いであり、また、人間が大きく成長するために必要な試練とは何かを感じさせてくれる作品でもある。
精神的に極限状態に達する主人公の苦悩など、ヘンリー・キングの繊細な人物描写なども見事だ。
1998年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
第22回アカデミー賞では、助演男優(ディーン・ジャガー)と録音賞を受賞した。
・ノミネート
作品
主演男優賞(グレゴリー・ペック)
アルフレッド・ニューマンの音楽も、いつもながらに心に染みる曲に仕上がっている。
グレゴリー・ペック演ずる指揮官のフランク・A・アームストロング中将をはじめ、各主要キャストは実在の軍人である。
*参照
その厳しい出撃で、本来の軍人としての自覚やプライドまでもが失われるほどの精神状態が続き、連隊の士気を低下させた時、さらに追い討ちをかける猛訓練で立ち直らせるという、すさまじい使命感に燃えた指揮官を演じたグレゴリー・ペックの熱演は、紳士や人格者役の多い彼のキャリアの中でも、ベストに近い役柄ではないだろうか。
30代前半にして、なかなかあの雰囲気、貫禄は出せるものではない。
「ホワイト・クリスマス」(1954)でも、部下に慕われた退役将校を演じた、もう一人の主人公ディーン・ジャガーの、指揮官(グレゴリー・ペック)を支える忠実で思慮深い副官役も素晴らしい。
正にアカデミー助演賞受賞にふさわしい名演である。
ペックが赴任し、いきなり罵倒されて飛行司令を解任させられるヒュー・マーロウの昇進を、ペックが看護師に告げて去っていくシーンは、作品中、最も感動的な場面でもある。
また、ペックが指揮官を引継ぎ、心を決めて基地に向かう場面もなかなかいい。
しごきの矢面に立たされ、指揮官としての資質を試される部下ヒュー・マーロウ(実はG・ペックより5歳も年上)、同じく解任されたにも拘らず、主人公を支える元航空群指揮官のゲイリー・メリル、航空群の統括司令官ミラード・ミッチェル、軍医ポール・スチュワート、命を落とす航空司令のジョン・ケロッグ、そして、主人公の直属軍曹役ロバート・アーサーなどが共演している。
1964年から、アメリカABCでテレビ放映された”Twelve O’Clock High”は、「頭上の敵機」、「爆撃命令」と題を変えて日本で放映され、本作をテレビドラマ化したものである。